結婚生活において、人格否定や暴言などのモラルハラスメント(モラハラ)が問題になるケースがあります。
夫婦間のモラハラは外部からは判明しづらく、被害者本人も「自分が悪いのでは?」と感じてしまうこともあるでしょう。
ここでは、モラハラ夫(妻)の特徴や、モラハラにあたる行為の具体例を紹介し、被害を受けた際の対処法について解説します。
モラハラに悩んでいる人や、夫婦関係に違和感を覚えている人は、ぜひ参考にしてください。
ネクスパート法律事務所が
問題解決に向けて全力でサポートいたします
夫婦間のモラルハラスメントの定義とは
モラルハラスメント(モラハラ)とは、言葉や態度、表情などによって相手に精神的な苦痛を与える行為を指します。
夫婦間のモラハラでは、日常的な言動が積み重なることで、被害者が大きなストレスや自己否定感を抱くケースが見られます。
モラハラは、身体への暴力と同様にDVの一種に含まれます。
しかし、暴力とは異なり傷やアザなどの明らかな証拠を伴わないため、周囲から気づかれにくく、被害者自身も「自分が悪いのかもしれない」と思い込んでしまうことがあります。
例えば、「お前は何をやってもダメだ」といった人格否定の発言、無視、過剰な束縛、経済的な制限などもモラハラに該当します。
モラハラ夫(妻)の特徴
配偶者がモラハラをするかどうかは、結婚前にはわかりづらいこともあるでしょう。
モラハラの加害者は、無自覚かつ日常的にモラハラを行っていることがほとんどです。
ここでは、モラハラ夫(妻)となりやすい傾向がある人の特徴をいくつか紹介します。
「モラハラ夫の特徴と共通点チェックリスト」こちらの記事も参考にしてください。
自己中心的でプライドが高い
モラハラ夫の大きな特徴の一つが、自己中心的でプライドが高いことです。
モラハラをする人は、自分の意見や考えが常に正しいと思い込んでおり、配偶者の意見を軽視したり、否定したりする傾向があります。
例えば、夫が仕事の愚痴をこぼしたときに妻が「大変だったね」と共感すると、「お前に何が分かるんだ」と突き放すような発言をするなどです。
ミスを指摘されると素直に認めず、逆に相手を責めることで自分の非を認めないようにするのもよくある特徴です。
このような夫はプライドが非常に高く、他人からの評価を気にするため、自分が間違っていると認めることを極端に嫌います。
束縛気質である
モラハラ夫は、妻の行動を細かく制限しようとする傾向があります。
これは愛情ではなく、相手をコントロールしたいという支配欲の表れです。
例えば、どこへ行くにも事前に報告を求める、友人との交流を制限する、スマホの中身をチェックするなどの行動が見られます。
「お前のためを思って」と言いながら、実際には妻の自由を奪い、精神的な負担を与えるのです。
仕事を持つ妻に対しても、「家のことを優先しろ」「女が働く必要はない」といった言葉でキャリアを否定し、家庭に縛りつけようとすることもあります。
経済的な自立を妨げることで、妻が離れられないようにしているともいえるでしょう。
外面が良い
モラハラ夫は、外では非常に魅力的な人物として振る舞っているケースもあります。
仕事場では上司や同僚から信頼され、友人の前では気配り上手な一面を見せます。
そのため、家庭での冷酷な態度を他人に指摘されることはほとんどなく、妻が共通の知人などに相談しても「そんな人には見えない」と軽く流されてしまうことが多いです。
このような夫は、外では完璧な人格を装い、周囲からの高評価を得ることに執着します。
家庭内ではその反動で妻を見下し、自分のストレスを発散するかのように攻撃的な態度を取ります。
実家の両親がモラハラ気質
モラハラ夫の背景には、幼少期の家庭環境が深く関係していることがあります。
実家の両親がモラハラ気質である場合、その影響を受けて育った夫は、無意識のうちに同じ価値観や行動パターンを身につけてしまうことが多いです。
例えば、父親が母親を常に支配していた家庭では、夫は「男性が主導権を握るのが当たり前」と思い込み、自分の結婚後もその価値観を妻に押し付けることがあります。
さらに、実家の両親が夫の味方をし、妻の苦しみを軽視するケースも少なくありません。
夫婦間でのモラハラにあたる行為チェックリスト
モラハラと思える言動を受けたとしても、結婚が間違っていたと思いたくないために、モラハラを認めない人も一定数います。
ここでは、夫婦間のモラハラにあたる行為として具体例をいくつか紹介します。
以下のいずれかにあてはまる場合は、モラハラを受けていると考えて、早めに対処すべきです。
日常的に威圧的な言動をとる
日常的に威圧的な言動を繰り返される場合は、モラハラを受けていると考えてよいでしょう。
例えば、「誰のおかげで生活できていると思っているんだ」などと相手を見下す発言をしたり、些細なことで怒鳴ったりする行為が挙げられます。
舌打ちをする、ドアを閉める時に大きな音を立てるなどの行為も、相手を威圧するための手段として使われることがあり、モラハラの一種といえます。
こうした行為が続くと、被害者は常に相手の機嫌を伺うようになり、心理的に追い詰められてしまいます。
生活費を渡さないなど経済的に束縛する
経済的な束縛も、モラハラの一種です。
夫が家計を完全に管理し、妻に必要な生活費を渡さない、もしくは最低限しか与えないといったケースです。
「無駄遣いするから金は渡さない」「金の管理は俺がする」といった理由をつけ、妻に自由な経済活動をさせないのです。
妻がパートや仕事をしようとすると「家事や育児をしっかりやれ」と圧力をかけ、経済的に自立する機会を奪うこともあります。
反対に、妻が家計を管理し、夫に対して十分な小遣いを渡さないなどもモラハラの一種です。
「生活費をくれないモラハラ夫の特徴と対処法について解説」の記事も参考にしてみてください。
子どもに配偶者の悪口を吹き込む
モラハラの加害者は、配偶者を孤立させるために子どもを巻き込むこともあります。
例えば、「お母さんはダメな人間だ」などといった悪口を子どもに吹き込み、配偶者の評価を下げる行為が典型的です。
このような言葉を繰り返し聞かされることで、子どもは次第に母親を軽視するようになり、親子関係が悪化する原因になります。
子どもを味方につけることで、妻が孤立しやすくなり、反論できる環境を奪うのも目的の一つです。
家庭内でこのような心理的操作が行われると、子ども自身も精神的なストレスを抱えることになり、将来的な人間関係に問題を抱えるリスクが高まります。
他人との交流を制限する
モラハラ夫は、妻を支配するために、他人との交流を制限しようとすることがあります。
「お前の実家とは付き合うな」などと命令し、家族や友人との関係を断たせるケースも少なくありません。
外出の予定を細かくチェックし、「どこへ行くのか」「誰と会うのか」と詮索したり、外出を許可制にしたりすることもあります。
電話やLINEの履歴を勝手に確認し、交友関係を監視することも、モラハラの一環です。
こうした行為によって、被害者は次第に周囲に相談できなくなり、孤立を深めてしまいます。
夫婦間でのモラハラの対処法
配偶者からモラハラを受けて悩んでいる場合は、以下の対処法をとりましょう。
- モラハラ被害を日記やメモで記録する
- 自分に対する暴言を録音する
- 友人や親族など第三者に相談する
- 専門機関に相談する
- 弁護士に相談する
- 別居や離婚を検討する
それぞれについて、具体例を挙げながら簡単に紹介します。
モラハラ被害を日記やメモで記録する
モラハラの被害に遭っている場合に重要なのは、日々の被害を記録に残すことです。
加害者は後になって「そんなことは言っていない」「お前の勘違いだ」などと否定し、被害者を混乱させることがあります。
しっかりとした被害の記録がないと、離婚手続きや慰謝料請求の際に不利になるおそれもあるでしょう。
これらを防ぐためにも、モラハラを受けた日時、具体的な言葉や行動、状況などを詳細に記録しておくことが大切です。
後々、専門機関や弁護士に相談する際にも、客観的な証拠として役立つため、こまめに記録する習慣をつけましょう。
自分に対する暴言を録音する
モラハラの証拠として、加害者の暴言を録音するのも有効な手段です。
特に「お前なんか生きている価値がない」「誰のおかげで暮らせていると思っているんだ」といった精神的に追い詰める発言や、大声で怒鳴るような言葉は、モラハラの証拠として有効です。
録音する際は、スマートフォンのボイスレコーダー機能などを活用するとよいでしょう。
証拠としての信頼性を高めるために、録音データの日時を明確にし、必要に応じて文字起こしをしておくと、後々役立ちます。
友人や親族など第三者に相談する
モラハラ被害は、加害者と被害者の間だけの問題と思い込んでしまいがちですが、一人で抱え込むと逃げ場がなくなり、精神的に追い詰められてしまいます。
そのため、早い段階で友人や親族など信頼できる第三者に相談することが重要です。
相談相手が状況を理解してくれれば、いざという時に助けを求めることがしやすくなります。
専門機関に相談する
モラハラの被害に遭っている場合、専門機関に相談することも重要です。
各自治体には、配偶者からの暴力や家庭内問題について無料で相談できる機関があります。
具体的には、以下のような窓口でモラハラの相談を受け付けてくれます。
- DV相談プラス
- 配偶者暴力相談支援センター
- 女性相談センター
- 警察の生活安全課 など
専門機関に相談することで、法的な選択肢や支援策を知ることができるだけでなく、必要に応じてシェルターや一時保護の手配を受けることも可能です。
一人で抱え込まず、早めに相談することが重要です。
参考URL:
DV相談プラス
配偶者暴力相談支援センター
東京都女性相談支援センター
弁護士に相談する
モラハラが深刻な場合や、離婚を考えている場合は、弁護士に相談することが有効です。
モラハラ被害は、精神的な暴力として法的にも認められるケースが多く、慰謝料請求や離婚調停の際の重要な要素となります。
弁護士に相談すれば、具体的にどのような証拠を集めればよいのか、どのような手続きが必要なのかといった点を詳しく理解できます。
さらに弁護士が代理人として加害者と交渉することで、直接関わる必要がなくなり、安全を確保しながら解決を目指すことができます。
配偶者に経済的に依存していて離婚へ踏み切れない場合や、相手が強圧的で話し合いが難しい場合、弁護士が大きな助けとなるでしょう。
別居や離婚を検討する
モラハラが続く場合、最終手段として、別居や離婚も検討しましょう。
精神的な支配や虐待が続くと、被害者の心身に深刻な影響を与えます。
今後の自分自身や子どもの人生のためにも、安全な環境に移ることが最優先です。
別居を考える際は、実家や友人宅、自治体や専門機関が紹介してくれるシェルターなど、安全に避難できる場所を確保しましょう。
別居後の生活費や子どもの親権問題なども事前に整理しておくと、スムーズに手続きを進められます。
離婚に関しては「モラハラで離婚をするなら証拠を集めよう!有効な証拠と注意点について解説」の記事も参考にしてください。
夫婦間のモラハラに関してよくある質問
ここでは、夫婦間のモラハラに関してよくある質問をまとめました。モラハラ被害に悩んでいる人はぜひ参考にしてください。
モラハラで離婚する人は多い?
2023年の司法統計によると、離婚動機としてモラハラにあたる精神的な虐待を選択した申立人は夫側で全体の21.4%、妻側で全体の26.1%と、多くの夫婦が一方のモラハラが原因で離婚を選択しています。
離婚の原因として最も多いのは性格の不一致ですが、モラハラなどの精神的虐待は、それに次いで2~3番目に多い原因となっています。
モラハラ夫の影響で妻が病気になることはある?
モラハラによる精神的な圧力やストレスは、被害者の心身に深刻な影響を及ぼします。
長期間にわたって精神的虐待を受け続けることで、以下のような精神疾患を発症するリスクが生じます。
- うつ病
- 不安障害
- 適応障害
- PTSD(心的外傷後ストレス障害)など
強いストレスは自律神経のバランスを崩し、慢性的な頭痛、めまい、胃痛、過敏性腸症候群(IBS)などの身体症状としても現れることがあります。
モラハラで離婚した際に慰謝料は請求できる?
モラハラによる精神的苦痛が認められれば、慰謝料を請求することは可能です。
モラハラによる慰謝料の相場は50~300万円ほどで、モラハラの程度や期間、離婚の原因としてどれほど影響を与えたかによって、慰謝料の金額は変わります。
慰謝料については「モラハラで離婚する場合の慰謝料相場と該当する行為」の記事も参考にしてください。
モラハラで円満調停を目指すにはどうしたらいい?
モラハラが原因で離婚を考えているものの、できるだけ穏便に解決したい場合は、家庭裁判所の円満調停を利用する方法があります。
円満調停(夫婦関係調整調停)とは、夫婦関係の修復を目的とし、中立的な調停委員が間に入って話し合いを進める制度です。
円満調停は、基本的には夫婦関係の修復の場として利用されます。
その一方で、離婚するべきか悩んでいる方向けに中立的な立場の第三者が具体的なアドバイスをくれる場でもあります。
【参考:夫婦関係調整調停(円満)- 裁判所】
まとめ
本記事では、モラハラ夫の特徴や、夫婦間でのモラハラの対処法について詳しく解説しました。
モラハラは、身体への暴力を伴わない分周囲への発覚が遅れてしまいがちですが、れっきとしたDVの一種であり、離婚の原因にもなり得ます。
モラハラをする夫に対して離婚や慰謝料請求の交渉をしても、素直に受け入れてもらえないケースも多いでしょう。
モラハラ被害に悩んでいる場合は、弁護士などの専門家に相談するのが解決への近道です。