離婚原因を作った有責配偶者が離婚を望む場合でも、配偶者に合意してもらえれば離婚できます。

しかし、配偶者がすんなり離婚に合意するとは限りません。その場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てる流れになります。

この記事では、有責配偶者が離婚調停を申し立てられるかどうか、早期に離婚合意をするためにすべきことについて解説します。

有責配偶者が離婚調停を申し立てられるか?

有責配偶者でも、離婚調停の申立てができます。

裁判では、以下のような事情がない限り、有責配偶者からの離婚請求は原則として認められません。

  • 別居が相当の長期間に及んでいる
  • 夫婦の間に未成年の子どもがいない
  • 配偶者が離婚によって過酷な状況に置かれない

調停は、話し合いを前提とする手続きで裁判のような制限はないため、相手方の合意が得られれば離婚が成立します。

よって、有責配偶者も離婚調停の申立てが可能です。

有責配偶者が離婚調停で早期に合意を目指すためにすべきことは?

有責配偶者が、離婚調停で早期に合意を目指す場合のポイントは、以下の3つです。

  • 別居中の婚姻費用について配慮する
  • 早期に離婚に応じたほうが有利だと思える条件を提示する
  • 弁護士に相談する

別居中の婚姻費用について配慮する

別居中の婚姻費用について配慮しましょう。

義務者が有責配偶者の場合

離婚調停に先立って別居した場合、有責配偶者が婚姻費用を支払う義務者であれば、離婚成立までの間、婚姻費用をきちんと負担することを心がけましょう。

配偶者の経済的不安をなくすために、婚姻費用をしっかりと支払い、誠意を示すことが大切です。

権利者が有責配偶者である場合

有責配偶者が婚姻費用を受け取る権利者で、別居や夫婦関係が破綻するに至った原因が主として権利者のみにある場合、婚姻費用の請求が信義則上認められないと判断されることもあります。この場合、義務者が負担する婚姻費用のうち、権利者の生活費相当部分が免除・減額されることがあります。

もっとも、婚姻費用は、資産・収入その他一切の事情を考慮して算定すべきものであるため、必ずしも有責配偶者からの婚姻費用の請求が認められないわけではありません。

しかし、請求が認められない場合に備えて、婚姻費用が免除・減額されても自活できるように準備しておくことも重要です。

なお、権利者と共に生活をしている未成熟子の養育費部分は、免除・減額されないと考えられています。ですから、有責配偶者が子どもを連れて出ていったような場合には、養育費に相当する婚姻費用は認められることが多いでしょう。

有責配偶者であるにもかかわらず、自らの希望で離婚を求めるには、それを補完できるよう、婚姻費用についても上記の点を踏まえて誠意を示すことが大切です。

早期に離婚に応じたほうが有利だと思える条件を提示する

早期に離婚に応じたほうが有利だと思える条件を提示するのも一つの方法です。

次の条件について譲歩することで、他方配偶者が離婚に応じてくれるかもしれません。

  • 慰謝料
  • 財産分与
  • 養育費

慰謝料

慰謝料を多く支払うことで、離婚に応じてもらえることがあります。

配偶者が専業主婦(夫)の場合、離婚したら生活ができなくなる、路頭に迷ってしまうという理由で離婚を拒否するケースも少なくありません。
離婚原因にもよりますが、慰謝料の相場は50万円から300万円といわれています。

配偶者が納得する慰謝料を支払うことで、経済的な不安が少なくなり、離婚に応じてもらえるかもしれません。

財産分与

通常より多く配偶者に財産を分与することで、離婚に応じてもらえる可能性があります。

婚姻期間に築いた財産は、原則2分の1ずつ分けますが、夫婦間の合意があれば自由に変更できます。

離婚に合意をしてもらうためにすべての財産を渡すことも可能ですし、本来であれば財産分与の対象にならない特有財産を対象にしてもかまいません。

養育費

未成年の子どもがいる場合、養育費を増額することで、離婚に応じてもらえる可能性が高まる場合もあります。

通常は裁判所が公表している養育費・婚姻費用算定表をもとに養育費を決めますが、それよりも上乗せして支払うことを約束すれば配偶者が納得するかもしれません。

もっとも、養育費は未成熟子が社会人として独立自活できるまでに必要とされる費用なので、離婚の合意を得たいからといって、到底履行できない金額を定めることは適切ではありません。

子どもや配偶者が離婚後も安定した生活を送れて、かつ、履行を確保できる範囲で決めることが重要です。

弁護士に相談する

有責配偶者が離婚調停の申立てを考え、早期に離婚合意を目指すのであれば、弁護士に相談しながら進めていきましょう。

有責配偶者は、配偶者に対して最大限配慮しながら離婚について話し合いを進めていかなければいけません。少しでもやり方を間違えると話がこじれて離婚合意が遠ざかってしまいます。

独断で話を進めるのではなく、離婚案件を多数手がけてきた弁護士のアドバイスを受けながら手続きを進めていったほうが間違いはないでしょう。

まとめ

有責配偶者からの離婚は認められないと思い込んでいる人が一定数いらっしゃると思いますが、話し合いを持ちかける場である離婚調停の申立てはできます。

どうしても離婚をしたいと考えるなら、離婚調停が正念場となりますので、十分な準備をした上で臨みましょう。

ネクスパート法律事務所には、離婚案件が得意な弁護士が在籍しています。初回相談料は原則30分無料ですので、お気軽にお問合せください。