配偶者がアルコール依存症になると、仕事をやめてしまったり、治療費がかさんだりして経済的に行き詰まることも少なくありません。配偶者の要領を得ない言動や暴力・暴言などにより悩むこともあるでしょう。

そのために離婚を考えるようになるケースも多々あるといえます。

そこで今回は、配偶者のアルコール依存症を理由に離婚できるか、離婚できる場合にどのような対応が必要かなどについて、解説していきます。

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アルコール依存症とは

アルコール依存症とは、お酒の飲み方をコントロールできず、お酒を飲まずにいられない状況のことをいいます。

世界保健機関(WHO)では、アルコール依存症の診断基準として、以下の6項目を挙げています。

①  渇望

 

飲酒したいという強い欲望・切迫感がある。
②  飲酒行動のコントロール

 

飲酒行動に関して、自分の意思で制御することが困難である。
③  離脱症状

 

断酒あるいは減酒したときに、手が震える、汗をかく、不眠、不安になるなどの離脱症状がある。
④  耐性の増大

 

お酒を飲み続けるうちに、次第にお酒に強くなった、あるいは高揚感を得るのに必要な飲酒量が増えた。
⑤  飲酒中心の生活

 

飲酒のために、仕事、家族との交流、友人との付き合い、趣味等の本来の生活を犠牲にする。

アルコールの影響から回復に要する時間が長くなった。

⑥  有害な使用に対する抑制の喪失

 

心身に明らかに有害な結果が起きているにもかかわらず、飲酒を続ける。

このうち3項目以上が同時に1か月以上継続したり繰り返し出現したりした場合に、アルコール依存症と診断されることとなります。

アルコール依存症を理由に離婚できるか

では、配偶者のアルコール依存症を理由に離婚できるでしょうか。

以下では、離婚の手続きにしたがって解説していきます。

協議離婚の場合

協議離婚とは、夫婦の話し合いによる離婚です。

協議離婚においては、離婚理由がどんなものであっても、夫婦が合意できれば離婚できます。

したがって、配偶者のアルコール依存症が理由でも、夫婦の間で離婚の合意ができれば、協議離婚ができます。

調停離婚の場合

アルコール依存症の配偶者が離婚に応じなかった場合、または相手の性格や精神的な問題点などにより、夫婦のみでの協議が難しい場合には、調停離婚を試みることとなります。

調停離婚とは、家庭裁判所に離婚調停を申し立てて、調停委員等を介して話し合って行う離婚のことです。

協議離婚では離婚に応じなかった相手方も、調停離婚では、調停委員や裁判官の話を聞いて、離婚に同意する場合があります。

調停手続きにおいて、夫婦が離婚に合意できれば調停が成立し、合意の内容が調停調書という書面に記載されることとなります。

調停が不成立に終わった場合には、次項の裁判離婚を試みるか検討することとなります。

裁判離婚の場合

裁判離婚は、文字通り、裁判を提起して離婚する場合のことを指します。

法律上、離婚裁判はすぐに提起できず、前提として調停を起こすことが必要とされています(調停前置主義)。

夫婦の問題はなるべく話し合いで解決できるのが望ましいと考えられているからです。

先に述べたように、調停離婚を試みて、調停不成立となった場合に、離婚裁判を提起して離婚をするかどうか検討することとなります。

ここで注意しなければならないのは、裁判離婚できる原因は、法律で限定されているということです。

民法という法律に定められている裁判離婚原因は、以下のとおりです。

  1. 配偶者に不貞行為があったとき
  2. 配偶者から悪意で遺棄されたとき
  3. 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
  4. 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
  5. その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき

そこで、アルコール依存症自体が、上記の5つの事項のいずれかに該当するかが問題となります。

一見、④配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないときに該当するようにも見えますが、アルコール依存症に関しては、一般的に治療による回復が可能であるため、④に該当するケースは非常に限定されるといわざるを得ません。

そのため、アルコール依存症により裁判離婚する場合には、これに付随した事情があって、上記のいずれかに該当するケースであることが必要と考えられています。

例えば、アルコール依存症になったことにより、幻覚や幻聴等を原因として暴言や暴力を日常的に受けるようになったケースにおいては、⑤その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるときに該当すると考えられます。

アルコール依存症の配偶者がお金を使い果たし、生活費を一切渡さないうえ、家事育児に全く関与しなくなったような場合には、夫婦の同居・協力・扶助義務を果たしていないことになるため、②配偶者から悪意で遺棄されたときに該当すると判断されることがあるでしょう。

アルコール依存症の配偶者と離婚したい場合にすべきこと

それでは、アルコール依存症の配偶者と離婚したい場合にどのような準備をしておくべきか、以下で解説します。

証拠の確保

調停や訴訟になった場合を見据えて、①配偶者がアルコール依存症であること、②悪意の遺棄をされていること、暴言や暴力をうけていることなどの証拠を確保しておくことが必要です。

調停は話し合いの場ではありますが、調停委員に自身の主張を理解してもらうためには証拠が必要です。

訴訟においては、離婚を請求する当事者が離婚原因について立証する必要があるため、証拠を集めておく必要があります。

具体的には、配偶者がアルコール依存症の治療を受けているのであれば、病院からカルテなどを取り寄せることが考えられます。それ以外にも、配偶者が飲んだアルコールの瓶や缶などの写真を撮っておくことも考えられます。

生活費を入れてもらっていないことについては、自分や配偶者の預金通帳が証拠となりえます。

暴力や暴言に関しては、これを受けたときにこまめにメモなどをして記録をつけておくこと、病院で治療を受けた場合には、診断書やカルテを取得しておくことが必要です。

自治体や警察の女性相談センターに相談した場合には、その相談の記録も証拠となるので、開示しておいてもらうようにしましょう。

弁護士への相談

弁護士に相談することも必要です。

相手方の離婚に対する意向やアルコール依存に伴い裁判離婚原因に該当する事情があるのかないのか等により、離婚に向けてどのような戦略を立てていくかは異なります。

弁護士であれば、専門的な見地から、どのような手続きから始めるか、証拠としてどのようなものが必要か適切にアドバイスすることが可能です。

アルコール依存症の配偶者と離婚したいと考えたら、なるべく早く、弁護士に相談するのが良いでしょう。

さいごに

アルコール依存症の配偶者の中には、要領を得ない発言や態度に終始し、離婚に向けた話し合いがまともにできないケースも少なくありません。

ネクスパート法律事務所には、このような困難なケースにおいても対応できる弁護士が揃っております。

アルコール依存症の配偶者との離婚をお考えの方は、是非一度、当事務所にご相談ください。お待ちしております。