夫婦間で離婚の話し合いがまとまらない場合、裁判所で解決を図ります。「弁護士に頼むと費用がかかりそうだから、自分で離婚裁判手続きをしたい」と考える人もいるかもしれません。今回は、離婚裁判は弁護士なしでできるのかについて解説します。
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目次
離婚裁判と離婚調停の違い|弁護士なしだとより難しいのはどっち?
ここでは、離婚裁判と離婚調停の違いについて解説します。
離婚調停とは
離婚調停とは、離婚に関する様々な問題を話し合う家庭裁判所の手続きです。
離婚調停は裁判所で行う話し合い
離婚は、当事者の合意なしに成立しません。言い換えれば、夫婦間で離婚について話し合いがまとまり、役所に離婚届を出して受理されることで離婚が成立します。これを協議離婚といいます。
夫婦間で離婚について合意ができなければ、いつまでたっても離婚は成立しません。どちらかが離婚を拒否している、子の親権を双方が譲らないなど、合意できない理由は様々です。夫婦だけで話し合いを続けても平行線で解決しなければ、家庭裁判所に調停の申立てをします。調停委員会が間に入って話し合いを進め、離婚成立を目指します。
離婚調停の手続きの流れ
離婚調停の申立ては、相手の住所地を管轄する家庭裁判所か当事者同士が合意して定める家庭裁判所にします。例えば、別居をしていて、相手が東京、自分が大阪に住んでいるとします。この場合は、東京の家庭裁判所に申し立てをするか、双方が合意すれば大阪、あるいは中間地点である名古屋の家庭裁判所にも申し立てられます。
調停の申立てには、下記の書類が必要です。
- 離婚調停申立書
- 事情説明書
- 未成年の子がいる場合、子についての事情説明書
- 連絡先等の届出書
- 進行に関する照会回答書
- 夫婦の戸籍謄本
- 収入印紙および郵便切手
- 非開示の希望に関する申出書(必要時のみ)
- 年金分割のための情報通知書(必要時のみ)
関連記事:離婚調停の申立てに必要な書類と入手方法
家庭裁判所で申立てが受理されると、1~2週間ほどで当事者に調停期日通知書が届きます。その通知書には、第一回調停期日の日程や場所の記載がされています。指定された期日に家庭裁判所へ出向き、調停委員を通して話し合いをします。
第一回調停期日は、申立てから1~2か月以内に設定されることが多いです。
調停は月に1回程度のペースで設けられ、一般的に3回から6回ほどで終わります。双方が合意できれば調停が成立し、その時点で法律上離婚が成立します。もっとも、家庭裁判所から調書を受領したら、市区町村役場への離婚届の提出が必要です。
裁判離婚とは
離婚裁判とは、裁判制度を利用して裁判官に離婚の判断をしてもらう手続きです。
離婚裁判は、裁判所に離婚を認めてもらう方法
調停で離婚について合意できなかった場合、離婚訴訟を提起し、判決によって離婚を成立させるのが離婚裁判です。離婚裁判では、申立てにより、離婚の審理と併せて、下記についても審理を行えます。
- 子の親権をどちらが持つか
- 子の養育費の金額や支払いの方法
- 財産分与の金額や支払い方法
- 年金分割について など
これらの附帯処分の申立ては口頭弁論終結時まで行えますが、実務上は、訴えの提起と同時に申立てがされる場合が多いです。なお、附帯処分等の申立は、書面でしなければなりません。
離婚に伴う慰謝料請求は、不法行為に基づく損害賠償請求なので、訴額に応じて地方裁判所または簡易裁判所に訴えますが、家庭裁判所に人事訴訟が係属している場合には、離婚訴訟と併合して審理できます。そのため、慰謝料請求も離婚請求と併せて提起できます。
離婚裁判の手続きの流れ
離婚裁判は、すでに離婚調停の手続きを経ていることが必要で(調停前置主義)、いきなり離婚裁判の提起はできません。
離婚調停が不成立になったら、家庭裁判所に訴状を提出することで、訴えの提起ができます。提出先は、夫もしくは妻の住所地の家庭裁判所です。訴えを提起した方を原告、提起された方が被告となります。訴えの提起に必要な書類は、以下のとおりです。
- 訴状
- 夫婦の戸籍謄本
- 年金分割のための情報通知書(必要時のみ)
調停不成立証明書(他庁で調停が不成立となった場合)訴状が提出されると、裁判所は第一回口頭弁論の期日を原告、被告の双方に通知し、その際に被告には訴状も送達されます。被告は、訴状を読んで原告が言っていることへの反論や自分の意見を答弁書で主張します。
第一回口頭弁論では、原告の訴状と被告の答弁書をもとに、裁判官が争点を確認します。口頭弁論は1か月~1か月半に1回のペースで開かれ、原告と被告は書面でお互いの言い分を法廷で主張します。判決までの過程で、裁判官が和解を提案したり、当事者一方が和解を提案したりすることがあります。この和解案に合意すれば、和解成立と同時に離婚が成立します。
争点整理段階で和解が成立しない場合には、尋問期日に移ることがあります。尋問が終わると、裁判の審理はほぼ尽くされるので、裁判官から最終的な和解案が提示されることが多いです。ここで和解が成立しなければ、裁判官が原告の離婚請求を認めるか否かの判決を下します。
裁判所が下した判決に不服があれば、判決書等の送達を受けた日から2週間以内に控訴可能ですが、控訴期間が過ぎれば判決は確定し、離婚が成立します。判決確定後、10日以内に原告は離婚届を提出しなければいけません。
離婚裁判は、弁護士なしでできるのか?
ここでは、離婚裁判は弁護士なしでできるのかどうかについて解説します。
離婚調停を弁護士なしで進める際のポイントと注意点
離婚調停を弁護士なしで進める際のポイントや注意点は、以下のとおりです。
調停委員を味方につけることが重要
離婚調停で重要なのは、調停委員を味方につけることです。そのためには、冷静に自分の意見を言わなければいけません。とかく離婚調停では感情的になってしまいがちですが、愚痴を並べ立てたり、要点の定まらないことを延々と話し続けたりすれば、調停委員もウンザリしてしまいます。
あらかじめ自分の意見をまとめ、簡潔かつ的確に自分の主張をして、調停委員の心をつかまなければいけません。
話し合いがまとまらなければ調停は終了する
離婚調停は、話し合いがまとまらなければ調停不成立として終了します。時間や費用をかけたにも関わらず、必ずしも離婚できるわけではないということは、心に留めておきましょう。
離婚裁判を弁護士なしで進める際のポイントと注意点
離婚成立の判決を得るためには法定離婚事由が必要
離婚成立の判決を得るためには、民法で定められた下記の法定離婚事由の存在が必要です。
- 不貞行為(配偶者以外と肉体関係を持つこと)
- 悪意の遺棄(配偶者に生活費を与えない、互いに協力して生活ができないなど)
- 3年以上の生死不明
- 強度の精神的な疾患があり、回復の見込みがないこと(夫婦としての交流ができない状況であること)
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があること(DV、モラハラなど)
適切な主張・立証には法律の知識が不可欠
離婚裁判は、訴状、答弁書などの書面によって、お互いの言い分を述べていきます。そのため、論点が絞られた書面を作成する力が必要です。親権、財産分与、慰謝料、養育費の請求をするにあたっては、法律の知識がなければ太刀打ちできないことがあります。
離婚裁判を弁護士なしで対応するメリットとデメリット
ここでは、離婚裁判を弁護士なしで対応するメリットとデメリットについて解説します。
離婚裁判を弁護士なしで対応するメリット
離婚裁判を弁護士なしで対応する一番のメリットは、弁護士報酬がかからない点です。
離婚裁判を弁護士なしで対応するデメリット
裁判所への手続きなど、事務処理が複雑
離婚裁判は、家庭裁判所に訴状を提出することから始まって、事務処理が大変複雑です。中には法律の知識がなければ対応できないこともあります。間違った書類を作成すると裁判所は受理しないため、訂正のために何度も裁判所との対応が必要になってきます。
法律の知識がなければ、裁判が不利に進んでいく可能性がある
離婚裁判は、書面によって自分の意見を主張していきます。裁判官に納得してもらうには、なぜ自分の主張が正しいのか証拠を提出して証明しなくてはいけません。ゆえに法律の知識がなければ正確に自分の主張ができず、裁判が不利に進んでいく可能性があります。
離婚裁判を弁護士なしで対応するか、弁護士に依頼するかの判断基準
ここでは、離婚裁判を弁護士なしで対応するか否か、判断基準について解説します。
離婚に附帯して請求するものが多い(争点が多い)かどうか
離婚裁判で、離婚だけでなく、慰謝料請求、親権の獲得、養育費の問題、財産分与など争うことが多い場合は、裁判が長期化する傾向があります。
一つ一つの争点について、主張を整理して、立証を進める必要があるため弁護士に依頼したほうがよいです。
相手方に弁護士がついているかどうか
相手方に弁護士がついている場合、法律知識の格差から、裁判が不利な方向に進んでいく可能性があります。相手方に弁護士がついている場合は、自分も弁護士に依頼したほうがよいです。ある程度法律の知識があっても、弁護士は知識と経験を使い、あらゆる手法で依頼人のために知恵を絞ってきます。弁護士と対峙するには、かなりの法律知識がなければ難しいでしょう。
弁護士費用に見合った価値・結果を得られるかどうか
裁判で離婚成立のみを争った場合、弁護士費用の相場は50万円から100万円といわれています。これに慰謝料、親権、養育費、財産分与などが加わると、さらに費用が高くなります。しかしこれを高いとみるか、安いとみるかは考え方によるでしょう。離婚を成立させることはもちろんのこと、慰謝料を得る、親権・養育費を獲得する、納得できる財産分与を勝ち取ることは、一生を左右することです。納得できる裁判結果を得たいと考えるのなら、弁護士に依頼する方が得策です。
離婚裁判を弁護士なしで対応するのが不安な場合、弁護士に依頼するメリット
ここでは、離婚裁判を弁護士に依頼するメリットについて解説します。
裁判手続きなど、事務処理を弁護士に任せることができる
離婚裁判における訴状の提出など、裁判所のホームページなどで手続き方法が紹介されていますが、実際にやってみると難しい側面が多々あります。弁護士に依頼することで手続きを任せることができます。
弁護士に依頼することで、適切に法的な主張ができる
弁護士に依頼すれば、適切に法的な主張ができます。裁判になると書面で自分の主張や意見を記さなければいけません。弁護士が関わることで、裁判を有利に運ぶ書面の作成が期待できます。
孤独感を味わうことなく、離婚成立に向けて頑張れる
離婚裁判は孤独な戦いです。弁護士に依頼することで、事務処理面で心強いことはもちろんのこと、精神面で支えになります。離婚成立に向けては越えなければいけないハードルがありますが、弁護士のアドバイスで離婚成立に向けて解決の糸口を見つけることができます。
知識不足によって不利益を被るリスクを軽減できる
離婚裁判は、離婚を成立させたいという理由だけで提起する人は少ないです。慰謝料や養育問題など、離婚に付帯した理由が存在することが多く、納得のいく判決を得るには、法律の知識を駆使して自分の意見を主張しなければいけません。弁護士に依頼すれば、知識不足で不利益を被るリスクを軽減できます。
まとめ
離婚裁判を起こしたいが、弁護士費用が心配なので自分で対応しようと考える人も多いようです。確かに弁護士費用は安くありませんが、裁判で満足できる結果を得られる可能性が高いです。離婚裁判は一生を左右するものです。
後悔しない結果を得るためにも、弁護士に相談・依頼することをおすすめします。