離婚時には慰謝料を請求しなかったものの、離婚後に慰謝料を請求したいと考える方もいるでしょう。とにかく離婚成立を優先したかったケースや、離婚後に慰謝料請求できることが判明した、というケースも珍しいことではありません。

しかし、そもそも離婚後の慰謝料請求は可能なのでしょうか?ここでは、離婚後の慰謝料請求をしたい方、慰謝料を請求された時の対処法などについて解説していきます。

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離婚後の慰謝料請求の時効は3年

結論から言えば、離婚後に慰謝料を請求することは可能です。しかし、離婚後の慰謝料請求には時効があり、離婚が成立した日から3年で時効を迎えます。

(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
第七百二十四条 不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
 不法行為の時から二十年間行使しないとき。

引用元:民法 | e-Gov法令検索

時効について、詳しくは「不倫慰謝料の消滅時効とは|民法改正による変更点」をご覧ください。

離婚の慰謝料とは精神的苦痛に対して支払われるお金

そもそも慰謝料とは、精神的苦痛に対して支払われる損害賠償金です。離婚で請求できる慰謝料には、「離婚自体への慰謝料」と「離婚原因に対する慰謝料」の2種類があります。離婚をすることで生じる精神的苦痛に対する慰謝料請求の場合、離婚が成立した時から原則として時効のカウントが始まります。

一方で、離婚原因になった行為に対する慰謝料請求の場合、損害を知った時が起算点になります。例えば、配偶者の浮気が原因で離婚をしたのであれば、浮気を知った時が時効の起算点となります。

精神的苦痛を受けて離婚する場合の慰謝料相場

離婚後に請求できる慰謝料の相場

離婚によって請求できる慰謝料の金額は、法律によって定められているわけではありません。そのため、慰謝料の金額は個別の事案によって大きく変動します。離婚原因ごとの慰謝料の相場は次のようになっています。

離婚の慰謝料相場
不貞行為(浮気、不倫) 100~300万円
DV、モラハラ 50~300万円
悪意の遺棄 50~300万円
セックスレス(一方的な性行為の拒否) 0~100万円

こちらはあくまでも相場金額になるため、自身の慰謝料の金額の適正性を知りたい場合には弁護士に相談することをおすすめします。

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離婚後の慰謝料請求が難しいケース

離婚後も時効を迎える前であれば、慰謝料請求することは可能です。しかし、時効に関係なく慰謝料請求自体が難しいようなケースもあります。次のようなケースでは、離婚後の慰謝料請求が難しいと考えられます。

慰謝料が発生する離婚原因がない

そもそも慰謝料が発生する理由がなければ、慰謝料を請求することはできません。離婚で慰謝料を請求するのであれば、相手が離婚原因を作った有責配偶者でなければなりません。

有責配偶者となる離婚原因としては、不貞行為やDV、モラハラ、悪意の遺棄、セックスレスなどが挙げられます。性格の不一致や価値観の違いなど、互いに離婚の原因がある場合に慰謝料を請求することはできません。

有責配偶者とは|有責配偶者になる原因と離婚できるケース

離婚時に金銭面の取り決めをしている

離婚時には、婚姻期間に共同で築いた財産を分配する「財産分与」が行われます。財産分与と慰謝料は別途請求できるものですが、財産分与に慰謝料が含まれるようなケースもあります。

例えば、浮気が原因で離婚に至った場合であれば、浮気された方の配偶者が財産分与で多く財産を分配してもらうことを慰謝料の代わりにするというケースです。

この場合はすでに慰謝料の代わりに財産を多く受けているため、別途慰謝料を請求することは難しくなります。また、離婚時に「慰謝料の請求はしない」など金銭面の取り決めを行っていた場合も慰謝料を請求することは困難になるでしょう。

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証拠がない

離婚の慰謝料を請求するには、立証するための証拠が必要です。証拠がなければ、相手は慰謝料の請求原因について否定する可能性もあり、言い逃れもできてしまいます。

また、協議ではなく裁判で慰謝料を請求する場合には、口頭の主張だけでは信憑性がありません。裁判で裁判官を説得するために証拠は必要であり、その証拠から慰謝料の支払有無や金額について判決が下されます。

離婚後に浮気が発覚した場合の慰謝料

離婚時に金銭面の取り決めを行っていた場合でも、その時にはまだ浮気を知らなかったというようなケースもあるでしょう。離婚時に浮気の事実が発覚していなかった場合には、合意した事実と異なることを理由に、慰謝料を請求できる可能性があります。

証拠がない場合でも慰謝料請求できる?

離婚後に浮気が発覚したのであれば、「当時浮気していた証拠が見つかった」からだと思いますので、それをもとに慰謝料を請求することは可能です。

証拠がまったく無いのであれば、慰謝料を相手に支払ってもらうのは難しいと考えられます。しかし、当事者同士の話し合いによって慰謝料を請求する場合には、証拠が不十分でも請求することは可能です。

相手が慰謝料の支払いに合意すれば、証拠がなくても慰謝料を支払ってもらうことができます。しかし、「多分浮気していただろう」という憶測だけで慰謝料を請求することは控えた方が良いでしょう。

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浮気相手への慰謝料請求の時効

慰謝料請求の時効のカウントダウンは、損害や加害者を知った時から始まります。つまり、浮気と浮気相手を知った時から慰謝料請求のカウントダウンは始まっています。

そのため、離婚成立前から浮気と浮気相手を知っていた場合には、離婚後に慰謝料請求を請求することは時効直前もしくは時効成立後の可能性があるので注意が必要です。

ただし、浮気していることは分かっていても浮気相手が誰か分からない場合は、浮気相手が判明するまで時効は進行しません。

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離婚後に慰謝料を請求されたら

離婚前や離婚成立時に元配偶者から慰謝料を請求されなかったものの、離婚後に慰謝料を請求されるようなケースもあります。離婚後に慰謝料を請求された場合には、次のように対処しましょう。

内容証明等が届いたら無視はNG

慰謝料の請求はメールや電話でも行えますが、一般的には内容証明郵便という郵送サービスを使って書面で届きます。慰謝料請求をされた場合には、請求方法や請求内容に関係なく、無視することは避けるべきです。

無視をすることで、裁判などに発展する恐れがあります。裁判になれば解決までに時間がかかるだけではなく、遅延利息を含めた慰謝料の支払いが命じられる可能性もあるでしょう。また、慰謝料請求を無視したことは裁判で不利になり、慰謝料の増額要因になる恐れもあります。

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慰謝料の支払い義務や金額が妥当か確認する

慰謝料請求された場合、慰謝料の支払いを求める理由や金額が文面に書かれているはずです。まずは慰謝料の支払い義務が本当にあるのかどうか検討し、支払い義務がないのであれば相手が納得できるように説明する必要があります。

また、慰謝料の支払い義務がある場合には、慰謝料の妥当性について検討します。請求された慰謝料が高額すぎる場合や、経済的な事情で支払いが難しい場合には、減額や支払方法について相手と交渉しなければなりません。

離婚で慰謝料請求できる条件や理由

まとめ

離婚後でも時効が成立していなければ、慰謝料を請求することは可能です。慰謝料請求できる条件が揃っている場合には、離婚後でも慰謝料請求について検討してみてください。

また、弁護士に相談すれば慰謝料請求の可否や慰謝料の相場などを知ることができます。離婚後の慰謝料請求は複雑なケースも多いので、少しでも早く弁護士に相談してみてください。