離婚する際には婚姻期間中に夫婦で築き上げた財産を分割する「財産分与」について話し合う必要があります。離婚後に経済的な不安がある方にとって、財産分与でいくらくらい受け取れるのかは気になるところでしょう。

そこで今回は、財産分与でもらえる平均額や相場、離婚の際に決めておきたいお金の話についてご紹介します。これから離婚を考えている方や、財産分与について詳しく知りたい方はぜひ参考にしてみてください。

離婚時の財産分与でもらえる平均額や相場

まず財産分与には具体的な相場はありません。財産分与でもらえる金額は夫婦の資産や職業、その他の事情などを考慮して決まります。また、財産分与は原則2分の1ずつ分配するのが一般的なため、仮に対象となる財産が1,000万円だった場合は、500万円ずつ分けることになります。

令和2年度の司法統計で財産分与の平均額を調べると、調停成立又は調停に代わる審判で財産分与の取り決めがあった件数は6,764件、そのうち金額として最も多いのは100万円以下となっています。

財産分与の取り決め金額
金額 件数
100万以下 1,552件
200万以下 762件
400万以下 899件
600万以下 546件
1000万以下 653件
2000万以下 539件
2000万以上 259件

参照URL:第27表 「離婚」の調停成立又は調停に代わる審判事件数―財産分与の支払額別婚姻期間別―全家庭裁判所

ただし、これはあくまで統計上の数字であり、ご自身に当てはまるとは限らないので参考程度にとどめておきましょう。

熟年離婚の財産分与の相場

婚姻期間が長くなるほど夫婦で築き上げた財産が多くなるため、熟年離婚の場合などは財産分与で受け取れる金額も高額になる傾向があります。

先程の司法統計から婚姻期間別に見てみると、婚姻期間20年以上の夫婦の場合、1000万円以下で財産分与の取り決めをした夫婦が最も多くなっています。

財産分与の取り決め金額-熟年離婚-
金額 婚姻期間20年以上 婚姻期間25年以上
総数 852 1385
100万円以下 88 92
200万円以下 66 86
400万円以下 115 176
600万円以下 82 149
1000万円以下 117 228
2000万円以下 109 224
2000万円以上 51 124

反対に婚姻期間が短い夫婦の場合、夫婦で築き上げた資産も少ないと考えられるため、財産分与の金額も低くなる傾向があります。

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離婚時の財産分与の割合

財産分与を取り決める際は、大きく次の3種類の考え方によってどのように分配するかを決定します。

種類 意味
清算的財産分与 対象となる財産を夫婦それぞれの寄与度を考慮した上で分配する
扶養的財産分与 離婚後に経済的な不安を抱えている配偶者に対して、短期間の支援を目的とする
慰謝料的財産分与 精神的苦痛に対する慰謝料として支払う

一般的に行われる財産分与は「清算的財産分与」で、婚姻期間中に夫婦で協力して築いた共有財産を公平に分割することが求められます。

しかし、財産を2分の1ずつ分けることでかえって不公平になるケースも見られます。そのため、判例では収入額のみで評価するのではなく、家事労働も考慮したうえで夫婦の分与割合を原則2分の1として認めている傾向にあります。

ただ、例外的に割合を変えて財産分与を認めた判例もあります。夫婦の一方が特殊な資格や技術を有し、特別な努力や能力によって非常に高額な財産形成があったケースです。夫が一級海技士の資格を保有していた夫婦の離婚裁判では、資格取得は夫の努力であるとされ、共有財産のうち妻に対しては3割程度の分配としています。(大阪高裁平成12年3月8日判決)

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専業主婦の財産分与の割合

清算的財産分与において「財産形成・維持に対する夫婦それぞれの寄与度を考慮する」とご紹介しましたが、仕事をしていない専業主婦の場合、どの程度の寄与度があったとみなされるのでしょうか。

たとえ夫だけが働いて妻が働いていなかったとしても、夫婦の財産を形成・維持できたのは家事・育児を担ってきた妻の協力があったからこそと考えられ、現在は2分の1ずつ分割するのが一般的です。離婚後に収入面で不安がある場合は、扶養的財産分与ができないか夫と話し合ってみてもいいかもしれません。

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財産分与なしで離婚するケースはある?

財産分与は夫婦の共有財産を正確に把握するところから始まり、財産をどのように分けるのか話し合いが必要になるため簡単には終わりません。財産分与の話し合いが中々進まないために「これ以上相手と話し合うのが苦痛」「もう財産分与はしなくていいから、一刻も早く離婚したい」と思う人は少なくありません。

財産分与は個人の自由であり、強制されるものではありません。なので、財産分与をしなくても離婚することは可能です。ただ、せっかく受け取れる財産ですから、それを放棄してでも離婚を急ぐのはもったいないと言わざるを得ません。夫婦同士の話し合いで解決が難しい場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

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離婚後の財産分与の請求期限

財産分与は離婚の際に行うのが一般的ですが、離婚後に行うこともできます。その場合、離婚が成立した日から2年を経過すると財産分与の請求権が消滅します。この2年間は法律上「除斥期間」といい、更新したり中断したりできない点で時効とは異なります。

Q4 財産分与はいつすればよいですか。
離婚までに協議をしておき離婚と同時に分与してもよいですし,離婚をしてから分与を請求することもできます。ただし,離婚から2年が経過すると,家庭裁判所に申立てをすることができなくなりますので,ご注意ください。

引用元:法務省:財産分与

2年を過ぎると法律上の請求権は失われますが、相手が合意しているか、悪質な財産隠しがあった場合には財産分与の手続きができます。離婚時にさまざまな事情により財産分与ができなかった人は、離婚後に財産分与を請求してもいいかもしれません。

ただ、離婚後の財産分与は多くの場合、対象となる財産を処分してしまったり、相手と連絡が取れなくなってしまったりと簡単には応じてもらえないのが現実です。可能な限り、離婚時に財産分与をどうするか取り決めておきましょう。

離婚で請求できるお金と相場

財産分与のほかにも、離婚の際に請求できるお金についてご紹介します。

離婚慰謝料の相場

離婚原因がDVやモラハラ、不倫(不貞行為)などの場合は、法律上「不法行為」と呼ばれ、証拠があれば慰謝料を請求できます。

慰謝料の金額は相手の責任の程度や経済力によって異なります。ただ、500万円を超えるケースは極めて稀で、100~200万円程度が最も多い傾向があります。悪質性が高いと判断されれば、慰謝料はより高額になります。

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養育費の相場

養育費の金額は子どもの人数や年齢、養育費を支払う側と受け取る側の年収によって金額が異なります。自分の場合はどれくらい貰えるのか、裁判所が公開している「養育費算定表」で確認できます。

算定表に記載されている金額はあくまで目安です。支払いを続けている時に病気や事故に遭い収入が減ったなどの事情があれば減額もできます。算定表を参考に夫婦で話し合って養育費を決めるのが一般的です。

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婚姻費用の相場

婚姻費用も養育費と同様に裁判所が作成した「婚姻費用算定表」をもとに金額を決めるのが一般的です。離婚をしていなくても別居している間は婚姻費用が発生しているので、収入の高い側から低い側に支払う義務があります。

この表を参考にすると、例えば夫が年収600万円の会社員で妻が専業主婦、子どもが0~14歳の場合の婚姻費用は月10~12万円です。なお、別居を解消するか離婚すれば婚姻費用の支払いは終了します。

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財産分与の相場まとめ

離婚の際の財産分与の相場についてご紹介しました。このように、財産分与で取得できる金額は個別の事情によって異なるので、一概には金額をお伝えするのが難しいところです。たとえ自分から2分の1ずつで分配したいと相手に伝えても、相手が有利に話を進めようとして2分の1ずつ分けるのを拒否する可能性もあります。

「自宅の名義は夫だけど妻である自分が居住しつづけたい」「相手から提案された財産分与の割合が不公平」など、夫婦ともに譲れない条件があって交渉がうまくいかないことがあるかもしれません。また、夫婦の共有財産をすべてリストアップし、分割割合を決めるのは大変労力がかかります。

そのような時は離婚問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に相談しながら話を進めた方が、自分に有利な条件で離婚を進められる可能性もあります。当事務所も無料相談を実施しておりますので、まずはお気軽にご連絡ください。