離婚をする際、有責配偶者という概念があるのをご存知ですか?離婚には、お互いの性格の不一致などから合意して離婚するケースと、一方の配偶者の行為がきっかけで離婚せざるを得ない環境に置かれるケースとがありますが、「有責配偶者」は後者のケースで登場する概念となります。
「有責配偶者」の意味や条件を知っておくことで、自分にとって有利な形で離婚を進められるかもしれません。この記事では有責配偶者とは何か、有責配偶者となる原因、有責配偶者からの離婚請求について解説します。ぜひ最後までお読みください。
目次
有責配偶者とは
有責配偶者とは、夫婦関係を破綻させるような行為を働いて離婚の原因を作った配偶者のことを指します。よくある例としては「不倫」や「DV」など配偶者の信頼を裏切る重大な行為をした人が有責配偶者として扱われます。
ただ、全ての離婚において有責配偶者がいるのではなく、性格の不一致などお互いに離婚の原因がある場合では、有責配偶者がいない離婚となります。
有責配偶者に対しては慰謝料を請求できる
有責配偶者に対しては、民法第709条・710条で定められている「不法行為に基づく損害賠償」として慰謝料を請求することができます。先ほども例にあげた不倫やDVは不法行為に該当するので、その行為によって精神的な苦痛を味わったのであれば、配偶者に対して慰謝料を請求することが可能です。
また、慰謝料の相場としては、不法行為の内容によって異なりますが、例えば「不貞行為」が理由で離婚した場合の慰謝料相場は「100~300万円程度」になります。
・離婚で慰謝料請求できる条件や理由
・離婚の慰謝料相場|年収との関係や請求できないケースとは
有責配偶者という扱いはいつまで続く?
有責配偶者という扱いにおいて「時効」はありません。そのため、何年続くのかという明確な基準は存在しないことになります。ただし、不倫やDVなど有責配偶者にあたるとされる行為をしてから数年経った後に、それが原因で関係が破綻したとする主張は認められない可能性があります。
不倫やDVをしたその時点ではもちろん主張は認められますが、数年経っていれば、その間は夫婦として過ごしていたことになるので、関係が破綻したとは言いづらい状況になります。また、慰謝料請求には時効が存在するため注意が必要です。
有責配偶者となる離婚原因
続いて、有責配偶者となる離婚原因についてご紹介していきます。主な有責配偶者となる離婚原因民法770条に定義されている次の5つに該当するかどうかがポイントとなります。
(裁判上の離婚)第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。一 配偶者に不貞な行為があったとき。二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。2 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。引用元:民法 | e-Gov法令検索
それぞれ解説していきます。
不貞な行為があった
不貞な行為とは、浮気や不倫などがこれにあたります。不貞行為に該当するかどうかは、肉体関係の有無がポイントとなります。ただ、不貞な行為の現場を証拠として押さえるのは、かなり難しいといえます。そのため、ホテル、または相手の自宅などで長い間一緒に過ごしていた事実など、客観的に見て浮気や不倫をしていたと判断されるような証拠を提出することが重要です。
・【不貞行為の定義とは】どこからが不倫?簡単にわかりやすく解説
悪意で遺棄された
次に、悪意で遺棄された場合です。夫婦は民法第752条で「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」と定められています。つまり、夫婦はお互い協力して生活することが義務となっています。
正当な理由や配偶者の同意なく同居や協力、扶助義務を行わなければ、悪意の遺棄とされ、有責配偶者となる可能性があります。例としては、以下の4つが挙げられます。
- 一方的な別居や頻繁な家出
- 生活費を渡さない
- 病気・怪我の配偶者を扶養しない
- 家事を放棄
これらの行為は悪意の遺棄と判断される可能性が高くなります。
生死が三年以上明らかでない
続いて、生死が三年以上明らかでない場合です。三年以上も居場所を確認する術がなく、生死がわからない場合には、婚姻を継続させる意義がないと判断されます。不慮の事故等で行方不明になっている可能性もありますが、便宜上有責配偶者として扱われ、裁判を行うことで離婚することができます。
強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
4つ目は、強度の精神病にかかり、回復の見込みがない場合です。強度の精神病にかかってしまうと、互いに協力することができないなど、夫婦の義務が果たせなくなります。調停や裁判になった場合は、専門家による鑑定が必要で、それが認められれば離婚が成立することとなります。
その他婚姻を継続し難い重大な事由がある
今までのケースに当たらなくても、「婚姻を継続し難い重大な事由」があれば離婚を請求できます。
その例としてよく挙げられるのが「DV」がある場合です。DVは婚姻を継続し難い状態であることは明らかです。
殴ったり蹴ったりするなどの肉体的な苦痛を与えてくることはもちろん、悪意のある言葉遣いや性行為の強要など、精神的な苦痛を与えてくる場合にもDVが認められます。他にも、子供に対して暴力を振るう場合も「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたり、有責配偶者とみなされます。
・DVで離婚する場合の慰謝料相場や必要な証拠
・モラハラで離婚する場合の慰謝料相場と該当する行為
有責配偶者からの離婚請求は原則認められない
有責配偶者からの離婚請求は原則認められていません。請求を求めること自体ができないわけではありませんが、主に人道上の観点から裁判所に却下される可能性が非常に高いため、原則認められていないのです。基本的には、被害を受けた側の配偶者から離婚請求がなされることになります。
有責配偶者だけど離婚できるケース
しかし、以下の条件を満たせば、有責配偶者からの離婚請求が認められる場合があります。
一つ目の条件は、夫婦関係が破綻して長い間経っていることです。過去には「七年ほど別居が続いていた」場合に離婚が認められたことがあります。二つ目の条件は、経済的に自立していない子どもがいないことです。子どもを育てることは夫婦の義務です。そのため、未成年や経済的に自立していない子どもがいれば離婚は認められません。
三つ目の条件は、相手の生活保障を行うことです。被害者のほうの配偶者が、離婚をした後に職がなく生活に困窮し、精神的な苦痛を受けることがない状態を用意する必要があります。慰謝料を支払ったり、財産を分与することで生活を保障できれば離婚が認められる可能性が高いです。
有責配偶者は厳しい離婚条件を突きつけられるケースが多い
有責配偶者は離婚原因を作った側になるので、離婚条件を決める際は不利な立場になりやすくなります。慰謝料の請求を受ける可能性や、財産分与や親権などにおいて相手から厳しい条件を突きつけられることがあります。
しかし、有責配偶者であっても「相手が望む条件をすべて吞まなければいけない」という訳ではありません。相手が望む離婚条件に合意できなければ、弁護士に依頼するなどして自分にとって不利な決定にならないようにすることが大切です。
まとめ
今回は有責配偶者について解説しました。パートナーが有責配偶者であるケースも、あなた自身が有責配偶者であるケースも考えられます。いずれにしても、独断でさまざまな判断を下していくのはリスクが高いといえます。
そのため、まずは弁護士に相談することがおすすめです。弁護士に依頼することで、離婚の話し合いがスムーズに進み、依頼者の味方となって交渉をしてくれます。当事務所でも離婚に関する無料相談を実施していますので、まずはお気軽にご連絡ください。