更新日:2021年5月28日 (金)
公開日:2020年10月19日 (月)
刑事事件の弁護士の選び方|不起訴・早期釈放に向けた対応
サマリー
ご自身やご家族が刑事事件の捜査対象となったり逮捕されたりした場合、今後の生活や手続きへの不安から、どのように弁護士を選べばよいか悩まれる方も少なくありません。刑事事件においては、早期釈放や不起訴を目指すために、迅速かつ適切な弁護活動を行うことが重要とされています。この記事では、私選弁護士と国選弁護士の違いや早期対応が重視される理由、信頼できる弁護士を選ぶ際の確認ポイント、依頼する際の手順について解説します。
刑事事件における私選弁護士と国選弁護士の違い
刑事事件において被疑者や被告人の弁護活動を行う弁護士には、「私選弁護士」と「国選弁護士」の2種類があります。両者は選任できる時期や条件、費用の負担方法などに明確な違いが存在します。
| 比較項目 | 私選弁護士 | 国選弁護士 |
|---|---|---|
| 選任の時期 | 逮捕前や逮捕直後など、いつでも可能 | 原則として勾留決定後など |
| 選任できる人 | 本人、家族など | 裁判所(国が選任手続きを行う) |
| 選任の要件 | 特になし(自由に依頼可能) | 資力基準(原則50万円未満)などの条件あり |
| 費用の負担 | 依頼者側の自己負担 | 原則として国が負担 |
| 弁護士の選択 | 希望する弁護士を自由に選任可能 | 自身で弁護士を選ぶことは原則不可 |
私選弁護士の特徴と選任のメリット
私選弁護士は、本人やその家族が契約を結んで選任する弁護士です。逮捕される前の捜査段階や、逮捕直後の警察による取り調べ段階など、事件のあらゆる時期から弁護活動を依頼できる点が特徴です。
逮捕直後は家族であっても面会が制限されることが一般的ですが、弁護士であれば接見(面会)を行い、取り調べへの対応方法を助言できます。
また、刑事事件の対応経験や相性を直接確認した上で依頼できるため、納得感を持って弁護活動を任せやすい点もメリットといえます。弁護士費用は自己負担となりますが、早期の身柄解放や示談交渉に向けた迅速な初動が期待できます。
国選弁護士の仕組みと留意点
国選弁護士は、経済的な理由などにより私選弁護士を選任できない場合に、国の費用負担によって選任される弁護士です。資力基準などを満たしていれば、費用の負担を抑えて弁護活動を受けられます。
一方で、国選弁護士が選任されるのは原則として裁判官による勾留決定が出た後となります。そのため、逮捕直後の数日間にわたる取り調べ対応や、勾留請求そのものを阻止するための初期活動を依頼することはできません。
さらに、国が名簿に基づいて選任するため、どのような弁護士が担当になるかを事前に指定したり、相性が合わないといった理由で自由に交代させたりすることは原則として難しい点に留意が必要です。
刑事事件において早期の対応が重要とされる理由
刑事事件において早期の対応が極めて重要とされる背景には、逮捕後の刑事手続きが法律で定められた厳格な時間制限のもとで進められるという事情があります。
逮捕から勾留決定までの時間制限と身柄拘束への影響
被疑者が警察に逮捕された場合、警察は逮捕から48時間以内に事件を検察官へ送致するか、あるいは釈放するかを判断しなければなりません。
送致を受けた検察官は、24時間以内(かつ逮捕時から通算して72時間以内)に、裁判官に対して勾留請求を行うか、釈放するかを決定します。
一度勾留が決定してしまうと、原則として10日間、延長が認められれば最長20日間にわたり身柄拘束が継続することになります。
勾留による長期間の身柄拘束は、勤務先や学校への欠席につながり、社会生活への影響が拡大するリスクを高めます。そのため、勾留請求が行われる前や裁判官による勾留決定前の段階で、身柄解放に向けた働きかけを行うことが重要とされています。
示談交渉や不起訴・釈放に向けた初期対応の重要性
被害者が存在する事件においては、被害者との示談交渉をいかに迅速に進められるかが、身柄解放や最終的な刑事処分に大きく影響します。
検察官が起訴・不起訴を判断する前や、勾留の要否を判断する前に示談が成立し、被害届の取り下げや宥恕(処罰を求めない意思表示)が得られれば、被疑者に有利な情状として考慮される傾向があります。
限られた時間の中で適切な弁護活動や示談交渉を進めるためには、事件発生直後の初期対応が極めて重要となります。
刑事事件の弁護士を選ぶ際に確認したいポイント
刑事事件において私選弁護士を選任する場合、依頼者が自由に弁護士を選べるからこそ、どのような基準で選ぶべきかを把握しておくことが大切です。
刑事事件の弁護活動では、手続きの知識だけでなく、状況に合わせた適切な判断や初動の早さが求められます。法律事務所を検討する際は、主に以下の点を確認することが推奨されます。
刑事事件の取り扱い経験やノウハウの有無
弁護士が扱う法分野は多岐にわたるため、刑事事件の相談や弁護活動の取り扱い経験が豊富であるかを確認することが大切です。
窃盗などの財産事件、性犯罪、薬物事件、暴行・傷害事件など、事件の類型によって捜査の流れや被害者対応の進め方は異なります。また、勾留決定に対する準抗告の申立てなど、身柄解放に向けた手続きの経験やノウハウが蓄積されているかどうかも着目したいポイントです。
各法律事務所のウェブサイト等で、刑事事件に関する取り扱い実績や注力分野についての記載を事前に確認しておくと参考になります。
相談時の話しやすさと丁寧な報告姿勢
弁護活動を円滑に進めるためには、依頼者やその家族と弁護士との間に十分な信頼関係を築けるかどうかが重視されます。
相談時に話を丁寧に聞き取ってくれるか、難しい法律用語をわかりやすく説明してくれるかなど、コミュニケーションの取りやすさを確認することが有益です。
刑事事件では手続きが目まぐるしく進むため、進捗状況や今後の見通しをこまめに共有してくれる姿勢があるかどうかも大切な判断材料となります。
迅速な初動対応が可能な体制
刑事事件は時間的な制限が厳格であるため、依頼を受けてから迅速に接見や示談交渉へ動ける体制が整っているかどうかも重要です。
弁護士が複数在籍している事務所などでは、被害者対応と身柄解放の手続きを並行して進めるなど、役割分担による効率的な弁護活動が期待できる場合があります。初回の相談受付から接見までのスピード感についても確認しておくとよいでしょう。
私選弁護士へ依頼する際の手順と相談のポイント
私選弁護士へ依頼する際の手続きは、本人が身柄拘束を受けているかどうかによって流れが大きく異なります。それぞれの状況に応じた適切な手順を把握しておくことが大切です。
本人が身柄拘束されていない場合の手順
在宅事件のように本人の身柄が拘束されていない場合は、本人自身が主体となって法律事務所を探し、相談や契約を進めることが一般的です。
- 法律事務所の選定と問い合わせ
- 法律相談の予約
- 弁護士との法律相談・方針の確認
- 委任契約の締結(本人が未成年の場合は法定代理人が契約)
相談時には事件の詳しい経緯を弁護士に伝え、今後の手続きの見通しや弁護方針について納得したうえで契約手続きに進みます。
本人が身柄拘束されている場合の手順
逮捕や勾留により本人が拘束されている場合は、外部と自由に連絡を取ることができません。そのため、ご家族などが代理で弁護士を探し、初回接見の手配を行う必要があります。
- 捜査機関から逮捕や勾留の連絡を受ける
- 法律事務所へ相談・接見の依頼を行う
- 弁護士が留置施設などで本人と接見(面会)を実施
- 弁護士からご家族へ接見内容や本人の様子を報告
- 報告内容を踏まえて正式な委任契約を検討・締結
まずは弁護士に留置場所へ向かってもらい、かけられている容疑の内容や認否、本人の意向を直接確認したうえで、正式に委任するかどうかを判断します。
相談時に事実関係や希望目的を整理するポイント
限られた時間で的確な助言を受けるためには、事前に事実関係を整理しておくことが役立ちます。「いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのようにしたか(5W1H)」をメモにまとめておくと、状況を正確に伝えやすくなります。
ご家族が接見を依頼する場合は、本人が拘束されている警察署等の留置施設名や、把握できている罪名を正確に伝えることが重要です。
あわせて、早期釈放を目指したい、被害者との示談を進めたい、不起訴処分を目指したいなど、弁護活動に求める目的を明確にしておくことで、より具体的な方針の検討につながります。
刑事事件に関する弁護士への相談
刑事事件において適切な弁護活動を進めるためには、個々の事案が置かれている状況を正確に把握したうえで、今後の見通しや方針を検討することが大切です。
状況に応じた弁護活動方針の検討
刑事事件の手続きは、罪名や本人の認否、被害者の有無、身柄拘束の状況などによって必要な対応が大きく異なります。そのため、相談の場において事実関係を詳しく共有し、どのような弁護活動が適しているかを確認することが重要となります。
弁護士から今後の刑事手続きの流れや、想定される処分についての一般的な見通しを聞くことで、本人や家族が抱える不安の軽減や、冷静な状況判断につながりやすくなります。
事件の全体像を把握し、見通しに沿った弁護方針を立てることが適切な対応への第一歩となります。
弁護士費用や活動範囲の事前確認
弁護士へ正式に依頼する際には、着手金や報酬金、実費などの費用体系や内訳について、あらかじめ詳細な説明を受けておくことが推奨されます。
接見の回数や示談交渉、身柄解放に向けた手続きなど、どの範囲までが委任内容に含まれているのかを事前に明確にしておくことで、認識の食い違いを防ぐことができます。
刑事事件は時間の経過とともに手続きが進行していくため、自身や家族の状況に適した対応を取るためにも、疑問点や不安がある場合は早めに弁護士へ相談し、方針や費用を確認することが有益です。
コラム監修者
HIROYUKI FUJIIE
所属:北九州オフィス 支店長
福岡県福岡市出身。東福岡高校、西南学院大学法学部、中央大学法科大学院を卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。人生の紆余曲折を経て、弁護士として法曹界に入り、一般民事全般・刑事分野の相談・交渉に取り組む。ネクスパート法律事務所の北九州オフィス所長として、依頼者に寄り添い、本当の意味での経済的・精神的満足という結果をご提供することを常に心がけている。