不二子が愛子に対し、不二子と愛子との間で締結された和解契約書に基づき和解金450万円の支払いを求めた事案である。
愛子はH28年1月4日、不二子らの婚姻関係を知りながら、不二夫と肉体関係を結び、不貞の事実を知った不二子は、不二夫と別居した。不二子は不二夫のLINEアカウントを使用して愛子を呼び出し、愛子に不二夫が既婚者であることを知りながら不貞行為をしたことを認め、不二子に慰謝料500万円を支払う旨記載させ、署名指印させた。不二子は愛子に対し、同月8日までに慰謝料の支払いを求めたが、愛子は不二子に対し500万円を一括で支払うことができないと伝え、同月9日、不二子と会い、一部金50万円を支払い、残額を分割で支払うことを話し、合意書を取り交わした。
愛子は合意書の契約について取り消すとの意思表示をしたため、合意の成立、心理留保、錯誤、、公序良俗違反による無効となるか、詐欺、強迫によるものであるか、清算条項による和解金支払債務が清算されているかどうかが争点となった。
合意書は、愛子の署名指印があり、真正に成立したものであり、不貞があったことを知った不二子が、不二夫を装って愛子を呼び出したこと、愛子に不貞があったことを認めるとともに、慰謝料を支払うように強く迫ったこと、そのために愛子は覚書を取り交わすとともに、その3日後に合意書を取り交わしていることが認められ、やむを得ずにせよ、愛子が不貞を認めて医者慮の支払いを合意したことは明らかというべきであって、合意は不貞にかかる慰謝料の額や支払い方法を定めて当事者間の紛争を止める和解契約であると認められ、心理留保や錯誤無効に関する愛子の主張は認められなかった。
また、愛子は慰謝料500万円が相場よりはるかに高く、愛子の窮状に乗じた暴利行為である旨主張したが、確かに1回の不貞に関する慰謝料額としてはいささか高額であるが、著しく高額というものではなく、愛子が自認している以上、暴利行為とまでは言えず、公序良俗に反する首長も採用できないとした。
さらに不二子が愛子を詐罔したとは認められず、不二子の強硬な態度に愛子がひるんでいたとしても、ほかの利用客もいる喫茶店での話し合いであること、仮に、覚書の締結の際に愛子が畏怖していたとしても合意に至るまでに3日の期間があり、同畏怖の状態が継続していたとも認めたいことに照らして脅迫に関する主張も採用されず、合意の内容は、趣旨に鑑みればその目的、主眼が不貞があることを前提に愛子が不二子に合意した金額について分割払いをさせることにあることは明らかであって、その趣旨、目的に沿って合理的に理解すれば、本件合意による合意した事項以外に債権債務がないことを確認する趣旨であると解され、不二子の愛子に対する合意すなわち和解契約に基づく請求は理由があるからこれを容認するとした。
当事者の情報
不貞期間 | 1回 |
請求額 | 450万円 |
認容額 | 450万円 |
子供人数 | 2人(2歳、1歳) |
婚姻関係破綻の有無 |