事実婚でも浮気相手に対する慰謝料請求は認められる?裁判例も紹介

  • 最終更新日: 2025.03.3

事実婚のパートナーの浮気が発覚したあなたは、「浮気相手に慰謝料を請求したいけど、事実婚でも請求できるのだろうか」と悩んでいませんか。

この記事では、事実婚でも浮気相手に対する慰謝料請求は認められるかどうか、詳しく解説します。
事実婚で慰謝料請求が認められたケース・事実婚が否定されて慰謝料請求が認められなかったケースの裁判例も紹介しますので、ぜひご一読ください。

事実婚でも浮気相手に対する慰謝料請求は認められる?

事実婚(内縁)でも、浮気相手に対する慰謝料請求が認められる可能性があります。

内縁のパートナーが浮気相手と肉体関係を持った場合は、不貞行為に該当するためです。

裁判所は、内縁は法律上の婚姻に準ずる関係であると認めています(最高裁第二小法廷昭和33年4月11日判決)。原則として、内縁も法律婚に準じた扱いがなされるため、内縁の場合もお互いに貞操義務を負うと考えられています。

ただし、慰謝料請求が認められるためには、①内縁関係にあること、②不貞行為、③浮気相手の故意過失(内縁関係にあることを認識又は認識し得たこと)を証明しなければなりません。

事実婚でも慰謝料等の法的保護を受けるには|内縁の成立要件

慰謝料等の法的保護を受けるには、内縁が成立している必要があります。
内縁の成立要件として、以下の2つが挙げられます。

  • お互いに婚姻の意思を持っている
  • 共同生活をしている

以下で、詳しく解説します。

お互いに婚姻の意思を持っている

内縁が成立するためには、お互いに婚姻の意思を持っている必要があります。

内縁とは、婚姻届は出していないが、実質的に婚姻関係にある夫婦と同様の生活を送っている関係です。当事者間に婚姻の意思がない場合は、内縁は成立しません

ただ親密に交際しているだけでは足りず、夫婦共同生活と認められるような関係を成立させようとする合意が必要です。

共同生活をしている

内縁が成立するためには、婚姻の意思に基づいて共同生活をしている必要があります。

婚姻の意思を持っているカップルが同居し、生計を同一にしている状態が数年(一般的には3年以上)続いていれば、共同生活をしていると認められやすい傾向にあります。

なお、別居している場合でも、正当な理由(単身赴任や病気療養等)があり、かつお互いに婚姻の意思を持って協力・扶助する関係が数年続いているのであれば、共同生活をしていると認められる可能性があります。

ただ同居しているだけでは足りず、婚姻の意思に基づく共同生活が必要です。

事実婚で浮気相手に慰謝料請求するなら収集すべき証拠

内縁のパートナーの浮気相手に慰謝料請求するなら収集すべき主な証拠として、以下の2つが挙げられます。

  • 事実婚の関係を証明できるもの
  • 浮気の事実を証明できるもの

以下で、詳しく解説します。

事実婚の関係を証明できるもの

内縁のパートナーの浮気相手に慰謝料請求するなら、内縁関係を証明できるものを収集しましょう。

パートナーと内縁関係にあることを立証できない場合は、慰謝料請求が認められない可能性が高いためです。

内縁関係を証明する証拠としては、以下のようなものが挙げられます。

  • [未届の妻(夫)]の記載がある住民票
  • 内縁の夫(妻)の被扶養者となっている健康保険証
  • 結婚式や披露宴をしたことがわかるもの

法律婚の場合は戸籍を確認すれば婚姻関係にあることが一目瞭然ですが、内縁関係にあることを証明するのは容易ではありません。
有力な証拠・資料を提示して立証する必要があるため、内縁関係を証明できるものを収集しておきましょう。

浮気の事実を証明できるもの

浮気相手に慰謝料請求するなら、浮気の事実を証明できるものを収集しましょう。

浮気の証拠がない場合は、慰謝料請求が認められない可能性が高いためです。

交渉段階では証拠の提示は必須ではありませんが、証拠もないのに浮気相手が浮気を認めるとは考えにくいです。浮気相手に「肉体関係はなかった」と主張された場合、あなたが立証できなければ、慰謝料の獲得は難しいでしょう。
裁判となった場合、裁判所は、当事者双方の主張とそれを裏付ける証拠から判断するため、有力な証拠がなければ慰謝料請求が認められない可能性が高いです。

浮気の有力な証拠として、主に以下のようなものが挙げられます。

  • 肉体関係があったことを匂わせるLINEやメッセージのやり取り
  • 行為中や下着姿で2人きりでいることがわかる写真・動画
  • ラブホテルに出入りする写真・動画
  • 車内で行為に及んでいることがわかるドライブレコーダーの音声・映像
  • ラブホテルの領収書

浮気は密室で行われるケースが多いため、証拠を入手するのは容易ではありません。直接的な証拠でない場合も、複数を組み合わせることで浮気の事実を立証できる可能性があるため、些細な証拠でも保存しておきましょう。
浮気の証拠について、詳しくは「浮気の証拠になるもの13選と自力で証拠を集めるポイント・注意点」をご参照ください。

事実婚で浮気相手への慰謝料請求が認められたケース

内縁で浮気相手への慰謝料請求が認められたケースとして、3つの裁判例を紹介します。

東京地裁平成23年1月25日判決|慰謝料250万円

内縁の夫の不貞行為により、内縁関係が破壊されたと主張して、内縁の夫と浮気相手に対し、慰謝料の支払いを求めた事案です。

XとY1は、Xがルームシェアを提案したことから同居を開始しました。同居初日から寝室を共にして性交渉をするようになり、別居するまで寝室を共にしていました。家賃や光熱費、食費等はルームシェアのため折半していましたが、家事は主にXが行なっていました。

Xが妊娠したことをきっかけに、Y1はXに対して結婚を申し入れましたが、Xは経済的な理由から中絶しています。これにより、Y1はXとの結婚は難しいのではないかと考えるようになり、Y2と不貞行為を開始しました。不貞関係となった約1ヶ月後にY2の妊娠が判明し、Y1とY2が入籍・出産しています。

裁判所は、以下の事実から、不貞行為の時点でXとY1 は内縁関係にあったと認めています。

  • XとY1の内縁関係は約8年に及んでいる
  • Xは、将来的にY1との婚姻や2人の間の子どもの出産を前提として、それに向けての条件整備をY1に求めており、事実上の婚姻関係を継続する意思を有していた

裁判所は、Y1がXに対する貞操義務に反して、Y2も、Y1とXの関係を知りながら性的交渉を持ち、その結果XとY1の内縁関係が破綻したと判断し、Y1とY2に対して、慰謝料250万円の支払いを命じました。

東京地裁平成22年10月28日判決|慰謝料100万円

約20年にわたって重複的内縁関係にあった内縁の妻が不貞行為を行い、別居状態になったことにより内縁関係が破綻したとして、内縁の妻と浮気相手に対し、慰謝料の支払いを求めた事案です。

裁判所は、以下の事実から、不貞行為の時点でXとY1は内縁関係にあったと認めています。

  • 昭和60年ころから平成19年3月頃まで内縁関係が継続していた
  • 平成19年5月以降も、XとY1は度々別荘に滞在しており性交渉もあった
  • 平成19年9月24日の話し合いをもって両者の仲は決裂し、内縁関係が破綻するに至った

Y2は、XとY1が重複的内縁関係にあることを知らなったと主張しましたが、裁判所は、Y1の周囲にはXとの関係を示すものが多数存在したことから、不貞行為当時、Y2はXとY1の関係を認識していたと判断しました。

この事例で裁判所は、Y1とY2に対し、慰謝料100万円の支払いを命じています。

東京地裁平成22年2月25日判決|慰謝料150万円

不貞行為により内縁関係を破綻させたとして、浮気相手に対し、慰謝料の支払いを求めた事案です。

XとAは同居していましたが、Xは、Aの職場での立場や2人の年齢差を考慮して入籍は求めませんでした。

裁判所は、以下の事実から、XとAは不貞行為の時点で内縁関係にあったと認めています。

  • XがAの求めに応じて、Aの転勤に伴い転居をしてまで同棲生活を継続している
  • XとAは共同でマンションを購入するなど、夫婦共有財産となるべき資産を形成している

裁判所は、YとAが不貞関係となった時点で内縁関係が完全に破綻していたとも断定できず、XとAとの内縁関係の破綻には、YがAと不貞関係になったことが原因になったと判断し、Yに対し、慰謝料150万円の支払いを命じています。

なお、この事案では、相当因果関係を有する損害として、弁護士費用15万円の支払いも命じています。

事実婚で浮気相手への慰謝料請求が認められなかったケース

一方で、浮気相手が内縁関係について認識しておらず、認識していなかったことに過失もなかったとして、浮気相手への慰謝料請求が認められなかった裁判例を紹介します。

内縁関係にあった女性の浮気相手に対し、慰謝料の支払いを求めた事案です(東京地裁平成29 年8月2日判決)。

XとAは大学在学中に交際を開始し、卒業後アパートで同棲を始め、生活費を分担していました。同棲期間のうちの約6年間は、XはAを社会保険において被扶養配偶者としています。

裁判所は、以下のような事実から、YがXとAの関係を正しく認識していなかったことに過失を認めることはできないと判断し、Yに不法行為が成立することはないとして、Xの請求を棄却しています。

  • 平成25年頃に準備をした婚姻届の用紙を完成させず、婚姻の届出をしなかった
  • 不貞行為開始時点でも、入籍や結婚式について何ら具体的には決定されていなかった
  • Yは、Aから「Xは同居人のようなもの」と説明されており、XとAが婚姻を想定した関係にあると認識していなかった
  • 不貞行為時点で、XとAの関係は相当形骸化したものになっていた

まとめ

内縁でも法律婚に準じた扱いがなされるため、内縁のパートナーが他の人と肉体関係を持った場合は不貞行為となり、浮気相手に対して慰謝料を請求できます。

ただし、パートナーと内縁関係にあることを証明するのは容易ではありません
浮気の証拠の収集と並行して、内縁関係にあることを示す証拠や資料も収集しておきましょう。

「内縁関係の立証はできそうだけど、自分で慰謝料請求をするのは不安」などの悩みを抱えているなら、ぜひネクスパート法律事務所にご相談ください。

豊富な経験と解決ノウハウを有する弁護士があなたの状況をお伺いし、適切な解決策をアドバイスいたします。
初回相談は30分無料です。お問い合わせはLINE・メールで24時間受け付けておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。

検索

最近の記事

ご相談は無料です。
まずはお気軽にご相談ください。
  • 相談無料
  • 相手に合わせなくてOK
  • 全国対応
0120-1313-22
平日9:00-21:00 対応
メール・LINEにて
24時間受付中
PAGE TOP