この記事を読んでいるあなたは、配偶者の不倫相手に対して慰謝料請求することを検討していることと思います。
不倫相手に慰謝料請求するためには、いくつかの条件を満たしている必要があります。
いくらあなたが不倫で傷ついていたとしても、場合によっては慰謝料請求が難しいこともあります。
この記事では、不倫相手に慰謝料請求できる条件についてわかりやすく解説しています。ぜひ参考にしてください。
不倫相手に対して慰謝料請求できる4つの条件
不倫相手に対して慰謝料請求できる条件は、次の4つです。
あなたと配偶者が婚姻関係にある
1つめの条件は、あなたと配偶者が婚姻関係にあることです。
不貞行為当時、あなたと配偶者が法律上結婚していることが必要です。
慰謝料請求時に既に離婚している場合であっても慰謝料請求できます。
恋人関係であるに過ぎない場合は、慰謝料請求は認められません。
ただし、内縁関係にある場合には慰謝料請求が認められる場合があります。
不倫相手があなたの配偶者と自由な意思で肉体関係を持った
2つめの条件は、不倫相手があなたの配偶者と自由な意思で肉体関係を持ったことです。
そもそも不倫慰謝料は、不倫の当事者がした行為について、民法上の不法行為が成立する場合に発生します(民法709条)。
一般に、不倫について不法行為が成立するのは、不貞行為があった場合です。
不貞行為について、最高裁昭和48年11月15日判決は次のとおり示しています。
配偶者のある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいい、相手方の自由な意思にもとづくものであるか否かは問わない。
参照:裁判例結果詳細 | 裁判所 – Courts in Japan
したがって、慰謝料請求をするには、原則、自由な意思で性的関係(肉体関係)を持ったことが必要になります。
ただし、次のようなケースも慰謝料請求が認められる場合があります。
- 肉体関係があったと推測できるケース
- 肉体関係はないが社会的に逸脱した行為により平穏な婚姻生活を侵害したケース
肉体関係があったと推測されるケース
通常、性交渉等は密室で行われるため、性行為や性交類似行為そのものを現認することは難しいでしょう。
したがって、肉体関係があったと推測できる場合も不貞行為があったとされます。
肉体関係はないが社会的に逸脱した行為により平穏な婚姻生活を侵害したケース
肉体関係がなくても、夫婦の平穏な婚姻生活を侵害したと判断されれば、慰謝料請求が認められる場合があります。
肉体関係の有無について、慰謝料請求が認められるケースと認められないケースは次の表のとおりです。
したがって、慰謝料請求するためには、配偶者と不倫相手との間に肉体関係があった場合や上記の表のとおり、慰謝料請求が認められるケースに該当するような行為があったことが必要です。
不貞行為によって婚姻関係が破綻した
3つめの条件は、不貞行為によって婚姻関係が破綻したことです。
慰謝料請求するためには、不貞行為によって平穏な婚姻生活を侵害されたことが必要です。
つまり、不貞行為によって夫婦が離婚に至った、離婚には至らなくても夫婦関係が相当程度悪化した場合に慰謝料請求が認められます。
以前から夫婦関係が破綻していた場合には、不貞行為による権利侵害がないと考えられることから、慰謝料請求が認められません。
何をもって婚姻関係が破綻していたとするかについて明確な基準はなく、以下のような点を含め、あらゆる事情を総合的に考慮して判断します。
- 別居の有無や期間
- 夫婦関係の悪化の程度
- 離婚に向けた準備等
婚姻関係破綻の有無について、慰謝料請求が認められるケースと認められないケースは下表のとおりです。
したがって、慰謝料請求するためには不貞行為によって婚姻関係が破綻したことが必要です。
不倫相手があなたの配偶者が既婚者であると知っていた・知る余地があった
4つめの条件は、不倫相手があなたの配偶者が既婚者であると知っていた・知る余地があったことです。
不法行為が成立するためには、加害者の故意または過失が必要です。
ここでいう故意・過失とは、不貞行為によって婚姻関係が破綻したことに対する故意・過失です。既婚者であると知って不貞関係を持ったなら、当然夫婦の婚姻生活を害することは想像できるでしょうから、故意が成立します。
不倫相手が、あなたの配偶者が既婚者であることを知らなかった場合には、故意がありませんから、不法行為が成立しません。
たとえば、配偶者が不倫相手に対して、独身であると偽って交際していた場合には、慰謝料請求は難しいでしょう。
しかし、不倫相手が不注意で既婚者であることを知らなかった場合、つまり交際中の言動や態度により普通の人なら既婚者であることに気付くような場合には、過失があったとして、慰謝料請求が認められます。
不倫相手の故意・過失について、慰謝料請求が認められるケースと認められないケースは下表のとおりです。
したがって、慰謝料請求するためには、不倫相手に故意・過失があることが必要です。
不倫相手に対する慰謝料請求が難しい4つのケース
不倫相手に対する慰謝料請求が難しいケースとして、次の3つのケースが挙げられます。
不貞の事実を知った時・不倫相手を知った時から3年以上経過している
不貞の事実を知った時・不倫相手を知った時から3年以上経過しているケースでは、慰謝料請求が難しいでしょう。
不倫の慰謝料請求の時効は次の2つに分けられます
- 損害及び加害者を知った時から3年
- 不法行為があった時から20年
損害及び加害者を知った時から3年
損害及び加害者を知った時から3年です。
損害を知った時とは、あなたが不貞行為があったことを知った時です。
加害者を知った時とは、加害者の氏名及び住所を知った時です。
不法行為があった時から20年
不法行為があった時から20年です。
不法行為があった時とは、不貞行為があった時です。
あなたが不貞行為があったことを知らなくても、時効の更新や完成猶予がない限り慰謝料請求の権利が消滅します。
したがって、あなたが不貞の事実を知った時・不倫相手を知った時から3年以上経っている場合や不貞行為があったときから20年以上経っている場合には慰謝料請求の権利は時効にかかっています。
慰謝料請求の権利が時効にかかってしまっても、請求すること自体は問題ありません。
相手が任意で支払ってくれることもあるでしょう。
ですが、慰謝料請求を検討している場合には、早めに行動することをおすすめします。
慰謝料の時効および時効の起算点については、「不貞行為の慰謝料請求はいつまで?起算点や時効が近い時の対処法 」の記事をご参照ください。
不倫相手の氏名・住所がわからない
不倫相手の氏名・住所がわからないケースでは、慰謝料請求が難しいでしょう。
不倫相手に対して慰謝料請求するためには不倫相手の氏名・住所の特定をする必要があります。
不倫相手に慰謝料請求する場合、まずは何らかの書面で請求することが多いですから、そのためには住所が判明している必要があります。
直接交渉する場合であっても、少なくとも連絡先が判明している必要があります。
訴訟を提起する場合、訴状には相手方の氏名・住所を記載する必要がありますし(民事訴訟法133条)、訴状を郵送するためには住所が判明している必要があります。
したがって、不倫相手の氏名・住所がわからない場合には、まずはそれらを特定する必要があります。
自分で調べる方法としては次のようなものが挙げられます。
- ネットで不倫相手の名前を検索する
- SNSで不倫相手のアカウントを探す
- 配偶者のスマートフォンを調べる
- 配偶者に直接聞く
自力で特定することが難しい場合には、探偵や弁護士に依頼することで特定できる可能性が高くなるでしょう。
不倫を立証する十分な証拠がない
不倫を立証する十分な証拠がないケースでは、慰謝料請求が難しいでしょう。
証拠がなくても慰謝料請求すること自体は可能です。
証拠がなくても、不倫相手が不倫の事実を認め、慰謝料の支払いに応じてくれるケースもあります。しかし、証拠がないまま不倫相手を問い詰めた場合、言い逃れをされたり、不貞行為そのものを否定されたりするケースもあります。
不貞行為を立証する証拠となるものには、主に次のようなものが挙げられます。
- ラブホテルや不倫相手の自宅に出入りしている写真や動画
- メールやLINEでのやり取りの履歴
- ドライブレコーダーの会話記録
- ラブホテルに宿泊した際の領収書やクレジットカードの明細
- 片方の不貞行為を認める発言
- 探偵の調査報告書
したがって、不倫を立証する証拠が十分でない場合には、まずは証拠を集めましょう。
証拠集めの方法や注意点について、詳しくは「浮気の証拠になるもの13選と自力で証拠を集めるポイント・注意点」の記事をご参照ください。
配偶者からすでに十分な慰謝料を受け取っている
配偶者からすでに十分な慰謝料を受け取っているケースでは、慰謝料請求が難しいでしょう。
不倫慰謝料は配偶者と不倫相手の双方に請求できますが、既に配偶者から不倫慰謝料として十分な額を受け取っている場合に、さらに不倫相手に慰謝料請求しても認められません。
例えば、不倫慰謝料として200万円が適正な慰謝料額であったとします。
配偶者から100万円の慰謝料を受け取った場合には、不倫相手に残りの100万円の慰謝料請求ができます。
しかし、既に配偶者から200万円の慰謝料を受け取っている場合には、不倫相手への慰謝料請求は認められません。
したがって、配偶者からすでに十分な慰謝料を受け取っているケースでは、さらに不倫相手に対して慰謝料請求することは難しいでしょう。
不倫の慰謝料請求できる条件についてよくある疑問を解決!Q&A5選
不倫の慰謝料請求できる条件についてよくある疑問に関してお答えしています。
離婚をしなくても不倫相手に対して慰謝料請求できる?
離婚しなくても、不倫相手に慰謝料請求ができます。
不倫慰謝料は、不貞行為によって被害者が精神的苦痛を受けたことを理由に請求できるものです。そのため、離婚は、慰謝料請求するための条件ではありません。
したがって、離婚する・しないにかかわらず、慰謝料請求ができます。
離婚しない場合の慰謝料相場は50〜100万円程度です。
離婚した場合の慰謝料相場は200〜300万円程度ですから、離婚しない場合は、離婚した場合と比較して、慰謝料額が低い傾向にあります。
離婚せずに慰謝料請求を検討している場合には、「離婚しないで浮気相手に慰謝料請求できる?慰謝料相場や請求方法 」の記事をご参照ください。
離婚した後でも不倫相手に対して慰謝料請求できる?
離婚した後でも、時効が成立していなければ、慰謝料請求ができます。
ただし、不倫が離婚の直接の原因でないと判断された場合には、慰謝料請求が認められない可能性が高いでしょう。
お金がなくて支払えないと言ってくるが慰謝料請求できる?
お金がなくて支払えないと言ってくる場合であっても慰謝料請求自体は可能です。
慰謝料の支払い義務があるにもかかわらず、収入や資産がないことを理由に慰謝料の支払いを免れることは許されません。
しかし、相手の収入や資産が少ない場合には、現実的な回収見込みを考えると、ある程度金額面や支払方法の面で譲歩するのが無難でしょう。
たとえば、一括での支払いが難しいような場合には、分割払いでの支払いを提案するのもひとつの方法です。
相手の支払い能力を考えれば、分割払いに応じる方が現実的に慰謝料を受け取れる可能性が高い場合も多々あります。
ただし、分割払いには支払いが滞りやすいというデメリットもあります。
分割払いにする場合には、支払いが滞った場合にすぐ強制執行の手続きを取れるように、強制執行認諾文言付き公正証書を作成するのがおすすめです。
不倫相手が複数いたら全員に対して慰謝料請求できる?
不倫相手が複数いる場合には、全員に対して慰謝料請求が可能です。
誰に対して慰謝料請求するのかは、あなたが決められます。
例えば、配偶者に不倫相手が2人いた場合には、どちらか1人に対して慰謝料請求してもよいですし、全員に対して慰謝料請求してもよいです。
詳しくは、「配偶者に複数の不倫相手がいた!全員に対して慰謝料請求できる?」の記事をご参照ください。
弁護士をつけずに自分ひとりで慰謝料請求できる?
弁護士をつけずにご自身で慰謝料請求すること自体は可能です。
ですが、適正な慰謝料を獲得するには、交渉力が必要になります。
相手が交渉に応じない場合や、相手が弁護士を立ててきた場合に、あなたひとりで対応するのは難しいでしょう。
問題をきちんと解決したい場合には、弁護士に依頼するのがおすすめです。
まとめ
不倫相手に対して慰謝料請求できる条件について解説しました。
あなたの状況がこれらの条件に当てはまるか不安である場合には、一度弁護士に相談することをおすすめします。
これらの条件に当てはまるかどうかは、具体的な状況によって変わりますから、専門的な判断をしてもらうことがおすすめです。弁護士に依頼することで、あなたのご事情をしっかりと聞き、適切なアドバイスをしてくれるでしょう。
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