更新日:2026年7月21日 (火)

公開日:2024年4月24日 (水)

遺言執行者になれる人とは?資格要件と選び方を詳しく解説

遺言執行者になれる人とは?資格要件と選び方を詳しく解説 遺言執行者になれる人とは?資格要件と選び方を詳しく解説

サマリー

遺言書を作成していても、亡くなった後に名義変更や解約手続き、遺贈の実行などを誰が進めるのかが曖昧な場合、実務上、相続手続(金融機関での払戻しや不動産登記など)が進まなくなるケースがあります。こうした事態を防ぐために重要となるのが、遺言執行者です。

遺言書を作成する際、多くの人が「誰に内容を実行してもらうか」という点を見落としがちです。しかし、遺言の内容を具体的に実現する中心的役割を担う遺言執行者の選定は、相続手続の円滑な進行(トラブル防止や手続負担の軽減)に大きく影響する重要なプロセスといえます。

本記事では、民法上のルールに基づき、遺言執行者になれる人(資格要件・欠格事由)を整理するとともに、実務上の選び方や判断基準について、家族・親族と専門家(特に弁護士)を比較しながら詳しく解説します。

さらに、万一に備えて遺言書に盛り込める工夫(予備的指定・複数指定・復任権の活用)や、相続トラブルのリスクを防ぎ、死後に家族を困らせないためのチェックポイントも紹介します。

遺言執行者とは?役割と重要性をわかりやすく解説

遺言執行者は、遺言者が作成した遺言書の内容を具体的に実行し、相続における財産の承継(遺産の移転手続)を前に進めるために選任される個人または法人を指します。

具体的には、預貯金の解約(金融機関での払戻し)や不動産の名義変更(相続登記)、受遺者への引き渡しなど、相続の現場で発生する各種実務を担当します。

遺言の効力は死亡によって発生しますが、相続手続きは自動的に進むものではありません。

相続人が複数いる場合、戸籍の収集や財産調査、金融機関や法務局での手続き、相続人間の調整などについて、誰が主体的に取りまとめるのかが曖昧になりがちです。

遺言執行者は、遺言者の死後に発生する複雑な事務手続きを中心となって進め、相続人が迷うことなく円滑に財産を引き継げるよう導く(相続トラブルの防止にもつながる)重要な役割を担います。

遺言執行者を指定することで、実務上は遺言どおりに進めるための窓口が一本化され、必要な書類収集や説明、期限管理などの手続をスムーズに進めやすくなり、相続人の負担軽減にもつながると考えられます。

遺言執行者の役割や選任方法、報酬の相場については、以下の関連記事で詳しく解説しています。
遺言執行者とは?役割や選任するメリットについて解説

なぜ遺言執行者が必要なのか?相続手続の負担を減らすメリット

遺言書は遺言者の遺志を示すものですが、遺言書があるだけでは、不動産の名義が自動的に書き換わったり、預貯金が払い戻されたりすることはありません。不動産の名義変更(相続登記)や金融機関での払戻しなど、各種の相続手続が別途必要となります。

そのため、これらの手続きを具体的に進める実行役がいなければ、相続手続が停滞するリスクがあります。

相続人が多い、遠方に住んでいる、仕事が忙しい、関係が疎遠といった事情があると、書類のやり取りだけで数か月単位の遅れが生じることも珍しくありません。特に、相続人間の調整が必要な場面や非協力的な相続人がいる場合には、実務上、手続全体が止まりやすい傾向があります。

遺言執行者がいれば、実務の責任者が明確になります。相続財産の管理や遺言執行に必要な権利義務を原則として単独で行使できるため、煩雑な事務作業をスムーズに進めやすくなります。また、相続人が手続の調整役を担う必要がなくなることで心理的負担も軽減され、遺言の内容を予定どおり実現しやすくなると考えられます。

ここでは、遺言執行者を指定する代表的なメリットとして、実務上重要な以下の2点を紹介します。

  • 遺言執行者がいれば相続手続において相続人全員の署名捺印が不要になる
  • 遺言執行者でなければ実現が難しい手続がある

遺言執行者がいれば相続手続において相続人全員の署名捺印が不要になる

遺言執行者を指定する最大の事務的なメリットは、相続人全員の署名捺印(同意)を求められないケースが多い点にあります(遺産分割協議が不要となる場面があるため)。

通常、遺言書がない場合は、遺産分割協議書を作成し、相続人全員の印鑑証明書を添えて金融機関や法務局など各機関に提出する必要があります。一方で、遺言執行者が指定されている場合は、遺言執行者の署名捺印を中心として手続を進めやすくなります。

たとえば、遠方に住んでいる親族や長年疎遠になっている相続人がいる場合、全員の書類を回収するだけで数か月を要することも珍しくありません。遺言執行者がいれば、こうした個別の協力に過度に依存することなく、手続を迅速に進めやすくなります。

手続のスピードを重視し、親族間の無用な接触や摩擦を避けたい場合には、遺言執行者の指定は有効と考えられる手段です。

ただし、金融機関や各社の内部運用によっては、追加書類の提出や相続人への確認が求められることもあります。遺言執行者を置けば必ずすべての手続が完了できるわけではありませんが、手続の主導権が明確になるため、結果として手続の停滞リスクを下げられると考えられます。

遺言執行者でなければ実現が難しい手続がある

遺言の内容によっては、民法上、遺言執行者がいないと実現が難しい、または実務上、遺言執行者の関与が前提となる手続があります。

代表例が遺言による認知で、届出などを通じて法的な親子関係を成立させる必要があるため、遺言執行者が実際に動ける体制を整えておくことが重要です。

もう一つの典型例が、遺言による相続廃除や廃除の取消しです。これは家庭裁判所での手続が関係し、当事者間の利害も鋭く対立しやすい領域であるため、実務上は遺言執行者の関与を前提に進められることが多いとされています。

遺言書を通じて認知を行いたい場合や、相続人の廃除といった強い希望がある場合には、遺言執行者が指定されていないと、遺言者の遺志が実現されないまま放置されるリスクがあります。

遺言執行者が指定されていない、または就任できない場合には、利害関係人が家庭裁判所に遺言執行者の選任申立てを行い、執行者を決める流れになります。この手続に時間を要すると、遺言の実現が遅れるほか、遺族の負担も増えることが予想されます。

特定の身分関係の整理を望む場合には、遺言執行者の指定は実務上、重要な要素となります。

遺言執行者になれる人は誰?資格要件と欠格事由(なれない人)をチェック

遺言執行者には特別な資格(国家資格など)は必要ありませんが、誰でもなれるわけではありません。民法では、任務の重要性に鑑み、一定の条件に該当する人を排除する欠格事由が定められています。

まずは、民法上の基本的なルールを正しく理解しておきましょう。

遺言執行者になれない人は2パターンのみ(民法第1009条)


遺言執行者には原則として誰でもなれますが、民法第1009条により、未成年者と破産者は遺言執行者になれないと定められています。

遺言執行には一定の法的判断能力や誠実な財産管理能力が求められるため、社会経験の乏しい未成年者や、自身の財産管理に不安のある破産者は適任ではないと考えられているためです。

未成年者および破産者に該当しなければ、原則として誰でも遺言執行者に就任できます。相続人自身や受遺者、親族、第三者などが候補となり得ます。また、個人だけでなく、弁護士法人などの法人を遺言執行者として指定することも認められています。

資格制限は非常にシンプルですが、財産を託すにふさわしい信頼性や実務対応能力があるかどうかが、実務上の大きな判断ポイントとなります。

形式的な適格性だけでなく、実際に動けるか、説明責任を果たせるか、相続人間の利害調整に対応できるかといった点に焦点を当てることが重要です。

【注意】遺言作成時ではなく、相続開始時の状態で決まる

遺言執行者としての適格性(欠格事由への該当有無)は、遺言書を作成した時点ではなく、遺言者が死亡して相続が開始された時点の状態で判断されます。つまり、遺言作成時に問題がなくても、相続開始時に欠格事由に該当すると遺言執行者に就任することはできません。

遺言執行者の任務は遺言者の死亡後に発生するため、その任務を開始する時点で必要な能力を備えているかどうかが重要とされています。

たとえば、遺言書を作成した時点では15歳であっても、遺言者が亡くなった時に18歳に達していれば問題なく遺言執行者に就任できます。逆に、遺言書作成時には問題がなかった場合でも、相続開始時に破産者となっていると、欠格事由に該当するため遺言執行者になることはできません。

将来の状況を完全に予測することは難しいため、予備の候補者(予備的指定)をあらかじめ定めておくといったリスク管理が重要です。

認知症の人や病気で動けない人はなれる?資格と実務能力の違い

認知症で判断能力が低下している人や、病気で身動きがとりにくい人は、法律上の欠格事由には該当しないものの、実務の遂行には大きなリスクが伴います。

相続手続では、書類の収集、金融機関や役所とのやり取り、相続人への通知や説明など、継続的な事務作業が必要となり、その遂行には明確な意思表示や署名が不可欠です。

認知症で判断能力が低下している場合や、病気や高齢で外出が難しい場合には、事務作業を進めることが難しくなり、実務が止まるおそれがあります。

この場合には、家庭裁判所による遺言執行者の解任手続(解任申立て)が必要となるため、新たな執行者を選び直すまでに多大な時間と費用がかかる可能性があります。

遺言執行者は、法的資格だけでなく、最後まで任務を完遂できる実務能力を基準に選ぶことが重要です。実務能力に不安がある場合は、弁護士などの専門家を指定する、または家族を指定したうえで復任を許すなど、手続が停滞しにくい設計にしておくことが現実的と考えられます。

遺言執行者の選び方|「誰がなれるか」よりも「誰なら確実にやり遂げられるか」で判断する

法律上の適格性を満たしていても、相続手続は戸籍収集、財産調査、各種名義変更(相続登記)、相続人間の利害調整など多岐にわたります。途中で手続が止まると家族の負担が大きくなるおそれがあるため、遺言執行者を選任する際は、「最後まで完遂できるか」という観点を最優先に考えることが重要です。

遺言執行者の選任で失敗しやすいのは、「信頼できる人だから」という理由だけで決めてしまうことです。相続手続は信頼関係だけで進むものではなく、期限管理や段取り、対外折衝、説明責任といった実務対応能力が求められます。

確実にやり遂げられるかどうかの主な判断基準として、実務上は以下の3つが挙げられます。

  • 十分な時間を確保できること
  • 事務処理を継続的に行えること
  • 相続人全員に対して公平かつ適切に情報共有できること

特に情報共有の偏りは、相続人間に疑念や不満を生みやすく、相続トラブルの火種となるおそれがあります。

さらに、相続人間に対立がある可能性や、遺留分の問題が生じるか、財産が複数の金融機関や不動産にまたがるかといった相続手続の難易度も、あらかじめ見立てておく必要があります。相続の難易度が高い場合には、最初から中立的な第三者や専門家を遺言執行者として選任するほうが、結果として相続手続がスムーズに進みやすい傾向があります。

家族・親族を遺言執行者に選ぶメリット・デメリットと判断ポイント

家族・親族を遺言執行者にすると柔軟に動ける一方で、感情面や公平性をめぐる問題(相続トラブル)が生じやすい面もあります。

選ぶ際は、財産状況をどこまで把握しているかだけでなく、他の相続人との関係性、説明の丁寧さ、ストレス耐性といった実務以外の適性(対人調整能力)も確認しておくことが重要です。

また、家族を遺言執行者に選ぶ場合でも、すべてを自力で抱え込む必要はありません。戸籍収集や相続登記、税務申告などは部分的に専門家へ依頼し、遺言執行者は全体管理(進行管理や意思決定)に徹する設計が、実務上の現実的な落としどころとなるでしょう。

ここでは、家族や親族を遺言執行者に選ぶメリット・デメリットを整理しますので、判断の参考にしてください。

メリット|事情に詳しく、専門家報酬を抑えられる

家族を遺言執行者に選ぶメリットとして、信頼関係に基づく安心感と費用の抑制が挙げられます。

家族や親族は、財産の所在や家族関係、これまでの経緯を把握していることが多く、意思決定が迅速になりやすい傾向があります。連絡も取りやすく、細かな確認を積み重ねながら相続手続をスムーズに前へ進めやすくなります。

また、専門家に遺言執行を依頼する場合の報酬を抑えられる点もメリットです。親族間であれば無償、あるいは数万円程度の謝礼で引き受けてもらえるケースもあり、相続財産を残しやすくなる傾向があります。相続人が少なく、財産構成もシンプルで、かつ家族関係が円満な場合には、有力な選択肢となるでしょう。

ただし、費用の抑制を優先しすぎると、手続の遅れやミスによって別のコストが発生するおそれがあります。必要な部分だけをスポットで専門家に依頼するなど、費用と確実性のバランスを取ることが、実務上は失敗を防ぐポイントとなります。

デメリット|特定の相続人に負担が集中し、不満が生じやすい

親族を遺言執行者に選ぶと、一部の相続人に過度な負担と責任が集中しやすくなるため、相続トラブルの火種となるリスクがあります。

遺言執行者は、戸籍や残高証明の取得、財産目録の作成、金融機関や各機関とのやり取りなど、想像以上に作業量が多くなる傾向があります。家族の中の一人に負担が集中すると、時間的にも精神的にも消耗するおそれがあります。

また、他の相続人から見ると、遺言執行者は財産情報に先に触れる立場になります。そのため、たとえ誠実に対応していても、「情報が出てこない」「自分に不利に進めているのではないか」と疑念を持たれやすい構造があります。

たとえば、長男が遺言執行者となり誠実に相続手続を進めていても、次男から「情報が出てこない」「自分に有利になるように進めているのではないか」などと疑われ、兄弟関係が悪化するケースもみられます。

目先の報酬節約を優先するあまり、家族関係に悪影響を及ぼすことがあれば、本来の目的から外れてしまう可能性があります。また、相続人間の関係が良好でない場合ほど、遺言執行者が板挟みになり、説明や調整が難航しやすい傾向があります。

公平感を保つためにも、最初から情報開示の方針や報告のタイミングを決めておくなど、運用ルールを意識することが重要です。

ケース別の注意点|海外在住の親族や法人を指定する場合

海外在住の親族を遺言執行者に指定すると、郵送の遅れや時差、本人確認手続、来日が必要となる場面などにより、手続が長期化するおそれがあるため、実務上は慎重な検討が必要です。

日本の金融機関は海外送金への対応が厳しい傾向にあり、また本人確認のためのサイン証明の取得など、実務上のハードルが高いことが理由です。

たとえば、海外にいる遺言執行者が預金を解約しようとしても、銀行が国内口座への振込みしか認めないケースもみられます。

担当者の死亡リスクを避けたい場合は、弁護士法人など法人格を持つ組織を指名することで、一定の永続性が期待できます。一方で、担当者変更のリスクや、意思決定フローが複雑になることで手続のスピードが低下する点には注意が必要です。

いずれの場合も、連絡体制、対応可能な時間帯、費用体系、追加費用が発生する条件などを事前に確認し、遺言で役割や権限を明確にしておくことで、トラブルを防ぎやすくなります。

遺言執行者を専門家に依頼する場合の費用相場と報酬の目安

遺言執行者を外部の専門家に依頼する際に最も気になるのは、費用の問題でしょう。

弁護士、司法書士、信託銀行では、それぞれ報酬体系や対応できる業務範囲(代理交渉の可否など)が異なります。自分のケースではどこに依頼するのが適しているのか、費用相場とあわせて判断しておきましょう。

不動産が多く、家族間に大きな対立がない場合は司法書士が適していると考えられますが、相続人間で紛争が生じた場合には、代理交渉などの対応ができない場面があります。一方で、弁護士であれば、最初から最後まで法的リスクを見据えた一貫したサポートが可能とされています。

専門家に遺言執行を依頼する場合の費用は、定額型と遺産総額に応じた料率型が採用されるケースが多いです。目安としては、遺産総額の一定割合(おおむね1〜3%程度)を基準とする報酬設計が多く見られます。

ただし、実際の費用は相続手続きの難易度によって大きく変動します。不動産が複数ある、金融機関口座が多数ある、相続人が多い、遺留分をめぐる対立が予想されるといった事情があるほど、調査・説明・(弁護士の場合は)交渉にかかるコストが増える傾向にあります。

見積もりを比較する際は、以下の事項を事前に確認することが重要です。

  • 最低報酬の有無
  • 料率の計算基礎(遺産総額か特定財産か)
  • 実費(戸籍取得費・郵送費等)の扱い
  • 追加費用が発生する条件

最初に条件を具体化しておくことで、後からの不信感や費用トラブルを防ぎやすくなります。

遺言執行者の報酬や費用内訳については、以下の関連記事で詳しく解説しています。
遺言執行者に弁護士を指定するメリットと遺言執行費用・報酬の相場

なぜ弁護士が有力な選択肢なのか?遺言執行者に弁護士を選ぶ理由と5つのメリット

遺言執行者は事務処理だけでなく、相続人間の利害対立の調整や法的リスクのコントロールも求められます。紛争可能性がある相続ほど、弁護士を選ぶ合理性が高くなる傾向があります。

弁護士を遺言執行者に指定する具体的なメリットとして、実務上は以下の5つが挙げられます。

  • 相続人間の感情的な対立を中立な立場で防ぎやすい
  • 遺留分のトラブルや法的な紛争解決を任せやすい
  • 煩雑な事務手続から遺族の負担を軽減し、早期の財産取得につながりやすい
  • 相続税申告や不動産登記までワンストップで対応しやすい
  • 信託銀行に依頼する場合と比較して費用を抑えられるケースがある

以下でそれぞれ詳しく紹介します。

メリット①|相続人間の感情的な対立を中立な立場で防ぎやすい

相続では、過去の介護負担や家族内の力関係など、遺言書に明記されない事情が対立の原因となることがあります。家族が遺言執行者である場合、その背景と結びつけて受け止められやすく、説明が疑念に変わることがあります。

弁護士が窓口になることで、利害当事者ではない第三者として、客観的に相続手続を進めやすくなります。

情報開示の範囲やタイミングを整え、記録(書面や対応履歴)を残しながら説明することで、相続人の納得感を形成しやすくなります。

また、相続人同士が直接やり取りしない構造を構築できるため、言い合いが増幅して関係が悪化するリスクを下げやすくなります。感情の衝突を抑えること自体が、結果として円滑な相続手続きにつながる場面も少なくありません。

メリット②|遺留分のトラブルや法的な紛争解決を任せやすい

特定の人に多く財産を残す遺言内容の場合、遺留分が問題となりやすい傾向があります。たとえ合理的な理由があったとしても、他の相続人にとっては不公平に感じられやすいためです。

弁護士を遺言執行者に指定しておくことで、遺留分侵害額請求のリスクを見越した事前の説明、問題点の整理、消滅時効(権利を知った時から1年)等の法的な期限管理に的確に対応できます。相続人の疑問に対しても、法律に基づいた説明が可能となるため、憶測が広がりにくくなります。

万一、交渉や手続が必要になった場合も、同じ窓口で継続的に対応できる点が強みといえます。紛争になってから新たに代理人を探すよりも、初めからリスクを織り込んだ体制を整えておくほうが、実務上は安心につながりやすいと考えられます。

遺留分については、以下の関連記事で詳しく解説しています。
【相続】遺留分とは?弁護士がわかりやすく解説!

メリット③|煩雑な事務手続から遺族の負担を軽減し、早期の財産取得につながりやすい

相続手続は、戸籍の取り寄せだけでも本籍地が複数にわたることがあり、想像以上に時間がかかる場合があります。さらに、財産調査、残高証明の取得、財産目録の作成、金融機関ごとの書式対応など、細かな実務が積み重なります。

弁護士を遺言執行者に指定することで、全体の段取りを組み、必要書類を揃え、手続を一括して進めやすくなります。相続人が遠方に居住している場合や多忙な場合でも、連絡と書類の返送を中心に進められる体制を構築しやすくなります。

結果として、受遺者や相続人が財産を受け取れる時期が早まる傾向があります。相続においては、手続のスピードは単なる利便性にとどまらず、不信感の発生を抑える重要な要素となり得ます。

大切な人を亡くした後の遺族の心理的負担を軽減できる点でも、一定の価値があるといえるでしょう。

メリット④|相続税申告や不動産登記までワンストップで対応しやすい

相続は法律問題だけでなく、税務や登記の問題が密接に関係するため、専門家同士の連携体制がスムーズな解決の鍵となります。

税務は税理士、登記は司法書士が中心となる専門領域であるためです。

弁護士を遺言執行者に指定することで、必要に応じて税理士や司法書士と連携しやすく、窓口を一本化しやすいメリットがあります。相続人が複数の専門家に同じ説明を繰り返す負担が軽減され、情報の食い違いも生じにくくなります。

相続は分野横断の手続きであるため、専門家間の連携の質が手続のスムーズさに大きく影響します。最初に司令塔となる存在を置くことで、手戻りや手続漏れのリスクを下げやすくなります。

メリット⑤|信託銀行に依頼する場合と比較して費用を抑えられることがある

信託銀行に依頼する場合と比較して、弁護士に遺言執行者を依頼したほうが、最終的なコストが低くなるケースもみられます。

信託銀行は100万円単位の最低報酬を設定しているケースが多く、さらに実際の登記手続きなどについては別途司法書士への外注費が発生する構造となっているためです。

弁護士は、案件の難易度や作業量に応じて見積もりが柔軟になりやすく、必要な業務範囲を切り分けた提案がなされることがあります。実務をどこまで含めるかによって費用は変わるため、比較の前提条件を揃えることが重要です。

比較する際は、最低報酬、料率、実費、追加費用の発生条件、途中で紛争化した場合の対応範囲を確認しましょう。費用の安さだけでなく、どの業務が含まれているかを確認することが、結果として安心感の差につながります。

もしもに備える!遺言書作成のテクニックと実務上のポイント

遺言書は、作成してから数十年が経過することも珍しくなく、その間に家族関係や財産状況が変化するケースは少なくありません。そのため、遺言執行者を指定するだけでは十分とはいえず、就任できない場合に備えたバックアップ設計(リスク対策)が重要です。

ここでは、遺言者の遺志が適切に実行されるようにするための備えとして、実務上よく用いられる遺言書作成のテクニックを紹介します。

予備的遺言(補充的指定)で遺言執行者の死亡・就任不能リスクに備える

遺言執行者が遺言者より先に亡くなるリスクや、辞退・欠格などにより就任できない事態に備え、予備の遺言執行者を指定しておく方法です。

一人しか指定していない場合、その人が就任できなくなると遺言執行者が不在となり、改めて家庭裁判所での選任手続が必要となるため、手間や費用が生じます。

書き方の方向性としては、第一候補が死亡、辞退、欠格などにより就任できない場合に備え、次順位の者を遺言執行者として指定する形で明確にしておきます。

具体的な記載例は、以下のとおりです。

遺言執行者としてAを指名する。Aが就任できない場合には、弁護士Bを予備的遺言執行者として指定する。

就任不能となる事由の範囲を広めに設定しておくと、想定外の事態にも対応しやすくなります。

予備的指定は、遺言書を適切に実行するための備えとして盛り込まれることが多い実務上の工夫です。このような備えをしておくことで、手続の停滞リスクを下げることにつながり、実務上も優先度の高い条項といえます。

複数の遺言執行者を指定し、役割分担を行う方法

複数の遺言執行者を指定し、それぞれの専門分野や強みに応じて役割を分担する方法です。

複数の遺言執行者で手続を分担することで、各人の強みを活かした円滑な遺言執行が期待できるためです。

たとえば、不動産の名義変更(相続登記)を得意とする人、金融資産の手続を丁寧に進められる人、相続人への連絡調整を担える人など、役割ごとに分担すると負担が偏りにくくなります。

具体的な記載例は、以下のとおりです。

長男を身分行為(認知など)の担当に、弁護士を財産の手続の担当に指定する。

この際、意見対立によって手続が停滞しないよう、「過半数で決定する」または「各自が単独で権限を行使できる」旨を遺言書に明記しておくことが重要です。

誰が何を担当し、どの範囲を単独で決定できるのか、意見が分かれた場合にどのように意思決定するのかを、遺言書で可能な限り明確にしておくことで、実務上の混乱を防ぎやすくなります。

遺言執行者の復任権を活用し、実務を専門家に委ねる方法

遺言執行者として信頼できる親族を指定しつつ、実務の代行を専門家に委ねるために復任権を活用する方法です。

家族や親族を遺言執行者に指定した場合、故人の意向や家庭事情を踏まえた判断がしやすい一方で、書類収集や各機関対応の負担は重くなります。復任を前提とすることで、家族は全体管理と意思確認に集中し、実務は専門家が担う体制を構築しやすくなります。

遺言書に「遺言執行者はその任務を第三者に委託できる」といった条項を設けておくことで、遺言執行者が親族であっても、実際の銀行手続や登記は弁護士などの専門家が復代理人として対応できるようになり、結果として負担の軽減につながります。

なお、遺言書では、復任を認めるか、その範囲、費用を誰がどの財産から負担するかについて、あらかじめ整理しておくことが重要です。後から相続人間で「勝手に専門家に依頼した」といった不満が生じないよう、方針を明確にしておくことがポイントです。

死後に家族を困らせないための最終チェックリスト(遺言・相続対策の最終確認ポイント)

遺言執行者の選定と遺言書の工夫に加え、相続手続の実務が停滞しないよう、事前に情報や手続の流れを整理しておくことが重要です。遺言書の作成方法(公正証書遺言か自筆証書遺言かといった形式)、保管方法、情報共有の観点から最終確認を行いましょう。

死後に家族を困らせないための最終チェックリストを紹介しますので、相続対策の最終確認として参考にしてください。

まとめ: 最適な遺言執行者の選定が円満な相続手続への第一歩

遺言執行者は原則として誰でもなれますが、相続の現場で重要となるのは、最後まで適切に執行できるかどうか(履行可能性)です。家族・専門家それぞれの特性を踏まえ、遺志が適切に実現される体制(実務運用体制)を整えることが重要です。

相続人が多い、財産関係が複雑、利害対立が生じる可能性があるといったケースでは、最初から中立な第三者や弁護士を選任することで、時間的負担や心理的ストレス、紛争コストを抑えやすくなる傾向があります。家族を指定する場合でも、予備的指定や復任権の活用により、手続が停滞しにくい体制を構築することが重要です。

遺言書は「作成して終わり」ではなく、「実現可能な設計」として初めて実務上の価値が生じます。遺言執行者の選定とバックアップ設計の工夫により、遺志を適切に形にするための準備を進めましょう。

遺言書の作成段階から弁護士が関与することで、トラブルの芽を早期に把握し、故人の遺志を適切に実現しやすくなると考えられます。まずは一度、相続実務に詳しい弁護士へ相談することも検討するとよいでしょう。

ネクスパート法律事務所では、初回30分無料相談を実施しています。リモート相談にも対応していますので、遺言についてお悩みの場合は、お気軽にお問い合わせください。

コラム監修者

Shunsuke Teragaki

Shunsuke Teragaki

所属:代表(東京オフィス)

広島県広島市出身。修道高校、慶應義塾大学商学部、青山学院大学法科大学院を卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、個人・法人問わず幅広い分野の相談・交渉に取り組む。ネクスパート法律事務所の代表弁護士として、依頼者に最適な見通しと戦略的な解決策を示すことを信条とし、丁寧かつ粘り強い対応で信頼を築いている。

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