更新日:2022年8月18日 (木)

公開日:2022年8月18日 (木)

遺留分の請求方法|請求が認められるケース、注意点を解説

遺留分の請求方法|請求が認められるケース、注意点を解説 遺留分の請求方法|請求が認められるケース、注意点を解説

サマリー

2019年7月1日以降に開始された相続において、遺贈や贈与によって遺留分を侵害された遺留分権利者は、受遺者や受贈者に対して遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求できます。

2019年7月1日よりも前に相続が開始された場合は、遺留分減殺請求により遺留分侵害額に相当する遺産の返還を請求します。

遺留分侵害額請求・遺留分減殺請求の方法は特に定められていません。

では、遺留分は、具体的にどのように請求すればよいのでしょうか。

この記事では、遺留分侵害額を請求する方法や注意点などについて解説します。

遺留分とは?

遺留分制度は、一定の相続人に対して相続財産のうちの一定割合の承継を保障する制度です。

相続人に留め置かれている相続財産の一定割合を遺留分といいます。

遺留分の基礎となる法定相続分とは?

民法で定められている相続できる割合のことを法定相続分と言います。

次の順位に従って法定相続人が確定します。

  • 常に相続人:配偶者
  • 第一順位:子(直系卑属)
  • 第二順位:父母・祖父母(直系尊属)
  • 第三順位:兄弟姉妹

法定相続分は、法定相続人の組み合わせによって次のとおり決まります。

縦列と横列の相続人の組み合わせ・交わる箇所で割合を確認しましょう。

配偶者 子 直系尊属 兄弟姉妹
配偶者 2分の1 3分の2 4分の3
子 2分の1
直系尊属 3分の1
兄弟姉妹 4分の1

遺留分権利者と遺留分割合

遺留分権利者

民法は、遺留分権利者について、兄弟姉妹以外の法定相続人と規定し、以下の者に遺留分を認めています。

  • 配偶者:被相続人の妻又は夫
  • 直系卑属:被相続人の子・孫(代襲相続が生じている場合は更に下の世代)
  • 直系尊属:被相続人の父母・祖父母

ただし、これらのうち相続放棄をした者は、相続人ではなくなるので、遺留分権利者としての資格を失います(次順位相続人が遺留分権を取得します)。

遺留分割合

遺留分割合は次の2つに分けられます。

  • 総体的遺留分:相続財産全体に対する遺留分の割合
  • 個別的遺留分:総体的遺留分に対する各遺留分権利者の取得割合

総体的遺留分の割合は次のとおりです。

  • 直系尊属だけが相続人の場合:相続財産の3分の1
  • それ以外の場合:相続財産の2分の1

個別的遺留分の割合は、次のとおり算出します。

個別的遺留分=総体的遺留分×法定相続分の割合

まとめると次のとおりとなります。

相続人 総体的遺留分 個別的遺留分
配偶者 子 直系尊属 兄弟姉妹
配偶者のみ 2分の1 2分の1 - - -
配偶者と子 2分の1 4分の1 4分の1 - -
配偶者と父母 2分の1 6分の2 - 6分の1 -
配偶者と兄弟姉妹 2分の1 8分の3 - - -
子のみ 2分の1 - 2分の1 - -
直系尊属のみ 3分の1 - - 3分の1 -
兄弟姉妹のみ ― - - - -

遺留分を請求する方法とは?

ここでは、遺留分を請求する方法を解説します。

遺留分の請求先

遺留分を請求する相手方は、遺留分を侵害する遺贈・贈与を受けた受遺者・受贈者です。

相手方が複数ある場合は、次の順序とします。

  • 遺贈と贈与がある場合:受遺者⇒受贈者
  • 遺贈が複数ある場合:各受遺者が受けた利益の額の割合に応じて受遺者が負担
  • 贈与を複数ある場合:贈与が同時なら贈与の目的物の価額の割合で按分(異時なら日付の新しい贈与の受贈者から順次負担)

遺留分の請求方法

遺留分の請求方法は、次のとおりです。

内容証明郵便

遺留分侵害額請求権の行使は意思表示で足りるため口頭でも可能です。

しかし、消滅時効の関係から、遺留分侵害額請求の意思表示をいつ行ったのか明確にする必要があります。

よって、配達証明付きの内容証明郵便の送付により行うことが好ましいとされています。

遺留分侵害額請求調停

相手方が遺留分侵害額請求に応じない場合、家庭裁判所の遺留分侵害額請求調停を利用できます。

ただし、家庭裁判所の調停を申し立てただけでは相手方に対する意思表示とはなりません。

調停の申立てとは別の書面をもって意思表示を行う必要があります(例 内容証明郵便の送付)。

遺留分侵害額請求訴訟

遺留分侵害額請求調停を行っても解決することができず、不調となった場合に、遺留分侵害額請求訴訟を提起できます。

遺留分侵害額請求訴訟の提起は、当然に遺留分侵害額請求権の行使となります。

遺留分を請求する権利の行使期間

遺留分権利者は、次のとおり1年ないし10年の期間制限内に、遺留分侵害額請求権を行使(意思表示をする)しなければなりません。

相続開始及び贈与・遺贈があったことを知った時から1年

遺留分侵害額請求の時効は、次の2点を知ったときから1年で消滅します。

  • 相続の開始
  • 遺留分を侵害する贈与・遺贈があった

相続開始から10年間

消滅時効とは別に、相続開始の時から10年経過で権利行使できなくなります。

相続開始をしたことや、遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知らなくても、被相続人が亡くなってから10年が経過すると、権利行使ができません。

遺留分の請求が認められるケース

ここでは、遺留分の請求が認められる具体例を解説します。

遺言により遺産の全部又は大部分を特定の人物に遺贈した場合

例えば、遺言者の全ての財産を長男に相続させる旨の遺言書がある場合、長男に対し、侵害の限度で遺留分侵害額請求権を行使できます。受遺者が相続人以外の第三者である場合も同様です。

なお、遺留分を侵害する内容でも、遺言書自体が無効になるわけではありません。

相続人以外への生前贈与があった場合

相続人以外の第三者に対する生前贈与は、原則として相続開始前の1年間に限り、遺留分侵害額請求の対象となります。

ただし、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知っていた場合は、相続開始の1年以上前になされた生前贈与も、遺留分侵害額請求の対象となります。

相続人への生前贈与があった場合

次のためになされた相続人への生前贈与は、相続開始前10年間に行われた贈与に限り、遺留分侵害額請求の対象となります。

  • 婚姻
  • 養子縁組
  • 生計の資本

ただし、当事者双方が、遺留分権利者に損害を加えることを知っていた場合は、相続開始前10年より前に行われた贈与も、遺留分侵害額請求の対象となります。

遺留分の請求上の注意点

ここでは、遺留分の請求上の注意点を解説します。

被相続人が2019年6月31日以前に亡くなった場合

2018年7月、相続に関する民法の規定を改正する法律が成立しました。成立した改正相続法(民法)により、従来の遺留分減殺請求が遺留分侵害額請求へと変更されました。

遺留分侵害額請求は、2019年7月1日以降に開始された相続について適用されます。これ以前開始された相続については、改正前の民法の規定が適用されます。

すなわち、2019年7月1日より前に開始された相続については、遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)によって遺留分権を行使しなければなりません。

家庭裁判所の調停も、2019年7月1日より前に被相続人が亡くなった場合は、遺留分減殺による物件返還請求等の調停を利用しなければなりません。

遺留分侵害額請求と遺留分減殺請求の違い

遺留分侵害額請求と遺留分減殺請求の違いは、次のとおりです。

遺留分侵害額請求権 遺留分減殺請求権
発生する権利 金銭債権 現物返還請求権

(物権的権利)

包括遺贈・特定遺贈が対象の場合 無効にはならない。金銭請求ができる。 遺留分減殺請求権を行使した場合、侵害の限度で所有権の移転等が発生する。
不動産・不可分債権が基礎財産の場合 金銭請求ができる。 共有・準共有となる。
行使期間 ①相続開始及び贈与・遺贈があったことを知った時から1年

②相続開始から10年間

なし
対象行為 相続人

①10年以内の特別受益

②害意のある贈与

相続人

①特別受益全部

②害意のある贈与

相続人以外

①1年以内の贈与

②害意のある贈与

相続人以外

①1年以内の贈与

②害意のある贈与

金銭解決する場合の金額 相続時の価格 口頭弁論終結時の価格
管轄 ①原告の住所地(金銭債権としての義務履行地)

②被相続人の普通裁判籍

③被告の普通裁判籍

①被相続人の普通裁判籍

②被告の普通裁判籍

まとめ

いかがでしたでしょうか。

遺留分・法定相続分の違いや遺留分の請求方法や注意点を説明しました。

遺留分を請求する場合、相手方との間で深刻なトラブルになるケースが多いです。調停や訴訟に発展することもあるため、早めに弁護士に依頼すると良いでしょう。

遺留分を侵害されたか分からない、遺留分を請求したいけどどうすれば良いか分からない方は、お気軽に当事務所にご相談ください。

コラム監修者

Shunsuke Teragaki

Shunsuke Teragaki

所属:代表(東京オフィス)

広島県広島市出身。修道高校、慶應義塾大学商学部、青山学院大学法科大学院を卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、個人・法人問わず幅広い分野の相談・交渉に取り組む。ネクスパート法律事務所の代表弁護士として、依頼者に最適な見通しと戦略的な解決策を示すことを信条とし、丁寧かつ粘り強い対応で信頼を築いている。

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