更新日:2026年3月12日 (木)
公開日:2022年1月6日 (木)
離婚慰謝料の相場はいくら?原因別の目安や請求手順を解説
サマリー
配偶者の不貞行為やDV、モラハラなどが原因で離婚を検討する際、相手に対してどれくらいの慰謝料を請求できるのか気になる方も多いのではないでしょうか。
離婚慰謝料は法律上の不法行為に基づいて請求されるものであり、離婚に至った原因や婚姻期間などの個別事情によって金額の目安が異なります。
また、請求にあたっては客観的な証拠を揃えることも大切です。
この記事では、離婚慰謝料が発生する主な原因や原因別の一般的な相場、金額を左右する要因、請求に必要な証拠や手続きの流れを分かりやすく解説します。
離婚慰謝料が発生する主な原因と認められにくいケース

離婚における慰謝料は、民法709条に定められた不法行為に基づく損害賠償請求として位置づけられています。
相手方の違法な行為によって精神的苦痛を受けた場合に認められるものであり、単に離婚すること自体に対する対価ではありません。
そのため、慰謝料を請求するには相手方に法律上の不法行為が存在し、それを客観的に証明できることが前提となります。
離婚慰謝料の請求が認められる主な原因
実務上、離婚慰謝料の請求が認められやすい代表的な原因としては「不貞行為」「DV・モラハラ」「悪意の遺棄」の3つが挙げられます。
不貞行為とは、配偶者以外の第三者と自由な意思に基づいて肉体関係を持つ行為を指します。婚姻生活の平和を侵害する不法行為にあたるため、配偶者だけでなく不貞相手に対しても請求が可能です。
DV・モラハラは、身体的な暴力にとどまらず、暴言や過度な束縛、長期間の無視といった精神的な嫌がらせも含まれます。
夫婦間の協力・扶助義務に反し、婚姻関係を破綻に至らせる重大な事由と評価されます。
悪意の遺棄とは、正当な理由がないにもかかわらず同居や扶助の義務を放棄する行為です。
生活費を渡さない、一方的に家を出て別居を開始する、配偶者を不当に家から追い出す行為などが該当します。
離婚慰謝料の請求が認められにくいケース
一方、婚姻関係に問題が生じて離婚に至った場合でも、法律上の不法行為と認められず慰謝料請求が困難なケースもあります。
性格の不一致は離婚原因として多く見られますが、それ自体は違法な不法行為とはみなされないため、基本的に慰謝料の請求は認められません。
すでに夫婦関係が破綻した後に発生した不貞行為も、請求が認められにくい傾向にあります。
行為の時点で守るべき婚姻生活の平穏が存在しなかったと判断され、損害賠償が否定されるか大幅に減額される可能性が高くなります。
また、夫婦双方に同程度の離婚原因(双方の不貞行為など)がある場合は、責任が相殺されるなどして慰謝料請求が認められないことがあります。
【原因別】離婚慰謝料の一般的な相場目安
離婚慰謝料は法律で一律の金額が定められているわけではなく、不法行為の内容や婚姻関係への影響度合いによって金額の目安が異なります。
離婚慰謝料の金額は、有責行為の悪質性や別居・離婚に至ったかどうかの経緯によって大きく変動します。
不貞行為(浮気・不倫)の相場目安
配偶者の不貞行為によって慰謝料を請求する場合、その不貞が原因で夫婦関係が破綻し離婚に至ったかどうかで相場が大きく分かれます。
不貞行為が原因で離婚に至った場合の一般的な相場は100万円〜300万円程度とされています。
一方で、不貞行為はあったものの離婚には至らなかった場合は、夫婦関係の破綻という重大な結果までは生じていないと判断されやすく、相場は50万円〜150万円程度にとどまる傾向があります。
DV・モラハラの相場目安
家庭内暴力(DV)やモラルハラスメント(精神的暴力)による慰謝料は、被害の内容や負わされた損害の深刻さによって金額に幅が見られます。
暴言や無視などのモラハラ(精神的DV)の場合、一般的な相場は50万円〜200万円程度とされています。
モラハラは身体的な傷痕が残りにくいため、被害の継続性や精神的損害の程度を立証できるかどうかが判断を左右します。
一方、身体的DVにおいて骨折や内臓損傷といった重篤な外傷を負わされた場合や、刃物・鈍器の使用、生命に関わる窒息行為などの極めて危険な行為があった場合には、相場が300万円〜500万円以上となるケースもあります。
悪意の遺棄の相場目安
正当な理由なく同居・協力・扶助義務を放棄する「悪意の遺棄」による慰謝料は、一般的に50万円〜200万円程度が目安とされています。
生活費を長期間にわたり一切渡さない行為や、一方的な家出による別居、配偶者を家から無理やり追い出す行為などが該当します。
遺棄されていた期間の長さや、それによって受けた経済的・精神的困窮の度合いが考慮されます。
| 離婚原因 | 主な状況・被害内容 | 慰謝料の一般的な相場目安 |
|---|---|---|
| 不貞行為(離婚に至った場合) | 浮気・不倫が原因で婚姻関係が破綻し離婚 | 100万円〜300万円程度 |
| 不貞行為(離婚に至らない場合) | 浮気・不倫はあったが婚姻関係は継続 | 50万円〜150万円程度 |
| モラハラ(精神的DV) | 暴言、人格否定、激しい束縛、無視など | 50万円〜200万円程度 |
| 重度の身体的DV | 骨折や重篤な外傷、凶器の使用、生命の危機など | 300万円〜500万円以上 |
| 悪意の遺棄 | 生活費の不払い、一方的な別居、追い出しなど | 50万円〜200万円程度 |
離婚慰謝料の金額が増減する要因と相手の年収の影響
離婚慰謝料の金額は一律に決まるものではなく、個別の夫婦関係や有責行為の態様など、さまざまな事情を総合的に考慮して判断されます。

慰謝料の増額・減額を左右する主な要因
慰謝料の金額に影響を与える代表的な要素の一つが婚姻期間の長さです。婚姻期間が長いほど、不法行為によって侵害された共同生活の利益が大きいと評価され、慰謝料が増額される傾向があります。
特に20年以上の長期にわたる婚姻関係では高額になりやすい一方、婚姻期間が数か月から1年程度と短い場合は減額される傾向が見られます。
不貞行為をはじめとする有責行為の悪質性や期間も重要な判断材料です。
例えば、不貞行為の期間が10年など長期間に及ぶ場合や、不倫相手が出産に至ったようなケースでは、精神的苦痛が大きいと評価されて増額の要因になります。
一方で、行為の期間が極めて短い場合や回数が少ない場合は、減額方向に働くことがあります。
さらに、行為が発覚した後の加害者側の態度も考慮されます。
謝罪がなく反省の姿勢が見られない場合には悪質性が高いと判断されて増額される可能性があり、逆に真摯に謝罪して反省の態度を示している場合には減額の要素として考慮される傾向があります。
| 判断要素 | 増額傾向となる事情 | 減額傾向となる事情 |
|---|---|---|
| 婚姻期間 | 20年以上の長期婚姻など | 数か月から1年程度の短い期間 |
| 行為の悪質性・期間 | 長期間に及ぶ不貞、相手方の出産など | 期間が極めて短い、回数が少ないなど |
| 反省の有無 | 謝罪がなく反省の態度が見られない | 真摯な謝罪や反省の態度がある |
相手の年収や支払能力が与える影響
離婚慰謝料の金額は、相手の年収や経済力によって一義的に定まるものではありません。
金額決定の根本的な基準となるのは、相手の不法行為によって被った精神的苦痛の深刻さや、婚姻共同生活が受けた損害の程度です。
そのため、相手が高所得や富裕層であっても、精神的苦痛の程度が通常と変わらなければ、相場を大きく超えて増額されることは原則としてありません。
ただし、交渉や裁判の実務においては、相手の支払能力が間接的な要因として影響することがあります。
相手の資力に見合わない高額な請求を行っても、現実的に支払いが不可能であれば合意に至らず、回収が困難になる場合があるためです。
実際の請求手続きでは、相手の支払い能力も考慮に入れながら、現実的に回収可能な金額での合意を目指す視点が大切になります。
慰謝料請求を適切に進めるために必要な客観的証拠
離婚慰謝料の請求を法的に成立させ、適切な金額を目指すためには、相手方の不法行為を裏付ける客観的な証拠が不可欠です。
相手が事実関係を争ってきた場合でも、第三者から見て事実が確認できる証拠があるかどうかが重要な判断材料となります。
不貞行為を立証するための証拠と収集時の注意点
不貞行為(不倫・浮気)を理由として慰謝料を請求する場合、単に親密な関係であることだけでなく、自由な意思に基づく肉体関係があったことを客観的に示す証拠が求められます。
- ラブホテルへの出入りが確認できる写真や動画
- 肉体関係があったことを示す、または匂わせるメッセージの履歴(LINEやメールなど)
- 不貞行為を自白した音声データ、念書、誓約書
- 宿泊を裏付けるホテルの領収書やクレジットカードの利用明細
- 探偵事務所による調査報告書(日時や場所、出入りの様子が詳細に記録されたもの)
単に二人で食事やデートをしている写真や、「好き」「愛している」といった好意を伝えるメッセージだけでは、肉体関係の存在を単独で証明することは難しい傾向にあります。
証拠を収集する際は、盗聴や不法侵入などの違法な手段を用いると、裁判で証拠として採用されないリスクがあるため注意が必要です。
DV・モラハラを立証するための証拠
DVやモラハラは密室で行われることが多く、外見からわかりにくい精神的苦痛も含まれるため、行為の悪質性や継続性、および被害の深刻さを裏付ける記録を残すことが重要です。
- 医師の診断書や通院履歴(怪我の治療や、精神科・心療内科でのうつ病などの診断)
- 暴言や威圧的な態度、暴力の様子を記録した録音・録画データ
- 被害を受けた日時、場所、具体的な言動を詳細に書き留めた日記やメモ
- 警察や女性センター、精神保健福祉センターなどの公的機関への相談履歴
- 家族や友人など、DVやモラハラを目撃した第三者による陳述書や証言
特に医師の診断書や継続的な日記・メモ、相談機関の履歴などは、被害の経緯や心身への影響を示す重要な補強材料として扱われます。
離婚慰謝料を請求する3つの手順(協議・調停・裁判)
離婚慰謝料の請求は、原則として「協議(当事者間の話し合い)」「調停」「裁判(訴訟)」という3つの段階を経て進められます。
いきなり裁判を起こすのではなく、まずは話し合いから始めるのが一般的な流れです。
1. 協議による請求(話し合い・内容証明郵便)
協議は、夫婦間で直接話し合って慰謝料の支払いや金額について合意を目指す手続きです。
双方が合意できれば、裁判所を通さずに迅速な解決を図ることができます。
相手と直接話すことが難しい場合や感情的な対立が予想される場合は、内容証明郵便を利用して慰謝料請求書を送付する方法があります。
請求書には、不法行為の具体的な事実、請求金額、2週間から1か月程度の支払期限などを明記します。
また、弁護士を代理人に立てて相手方と交渉を進めることも可能です。
2. 調停による請求(家庭裁判所での話し合い)
協議で合意に至らない場合や相手が話し合いに応じない場合は、家庭裁判所に離婚調停(夫婦関係調整調停)を申し立てます。
調停では、中立的な立場の調停委員が双方の言い分を交互に聞き取りながら合意を目指します。
相手と直接顔を合わせずに話し合いを進められるため、感情的な対立を抑えやすいという特徴があります。
離婚に至った経緯を順序立てて説明し、手元にある客観的な証拠を提示することが、調停委員に状況を正しく把握してもらうためのポイントとなります。
3. 裁判(離婚訴訟)による請求
調停でも合意ができず不成立となった場合は、最終手段として家庭裁判所に離婚訴訟(裁判)を提起します。
裁判では裁判官が双方の主張と証拠を精査し、法律に基づいて慰謝料の支払義務や金額について判決を下します。
訴訟手続きは、一般的に以下のような流れで進みます。
- 訴状の作成
- 裁判所への訴状の提出
- 相手方への訴状の送達
- 第1回口頭弁論期日の指定
- 複数回の口頭弁論(主張と立証の実施)
- 判決(または和解成立)
判決を待たずに、審理の途中で裁判官の仲介により双方が合意(和解)して解決に至るケースも少なくありません。
なお、弁護士に訴訟対応を依頼する場合、着手金や報酬金、実費などを合わせて総額80万〜100万円程度を要することがあります。
離婚慰謝料の請求に関する弁護士への相談
離婚慰謝料の請求を検討する際、相手方の不法行為を裏付ける客観的な証拠が揃っているか不安に感じる方も少なくありません。
特にモラハラやDVといった行為は目に見える形での立証が難しいケースもあり、証拠の収集や整理に悩む場面が生じやすいといえます。
手持ちの証拠の有効性判断と適正額の把握
法律の専門家である弁護士に相談することで、現在手元にある記録や資料が法的な証拠としてどの程度の証明力を持つのか、客観的な判断を受けることが可能です。
また、離婚慰謝料は個別の婚姻期間や悪質性の程度などによって相場が変動するため、類似の裁判例や実務の傾向を踏まえた適正な請求額の目安を把握することにもつながります。
法的に有効な証拠の有無や適正な相場をあらかじめ確認しておくことが、納得のいく解決に向けた重要な基盤となります。
状況に応じた適切な解決方法の選択
慰謝料請求の手続きには協議・調停・裁判といった複数の段階があり、相手方の態度や合意の見込みによって選択すべき適切な手段は異なります。
相手方と直接顔を合わせて話し合うことが精神的に困難な場合や、当事者同士では感情的な対立が生じて協議が進まない場合には、弁護士に代理人としての交渉を依頼する方法も考えられます。
自身の置かれた状況や相手の対応に応じて、どの手続きを進めるのが現実的かを冷静に見極めながら、適切な解決方法を選択していくことが大切です。
コラム監修者
RUI SATO
所属:代表(東京オフィス)
明治大学付属中野高校卒業、明治大学法学部・法科大学院修了。2012年弁護士登録(東京弁護士会)、2016年ネクスパート法律事務所を創設。一般民事・企業法務に加え、ブロックチェーン分野にも注力し、海外法人設立支援業務などにも取り組む。AIを活用した弁護士業務の改善・事業開発に取り組み、一般社団法人 イノベーション法務支援機構代表理事就任。公正取引委員会・中小企業庁講師、日弁連代議員、東京弁護士会常議員等を歴任。