サマリー
「離婚したくない!離婚調停を申し立てられた際の適切な対応は?」について、手続きの流れや実務上のポイント、注意点を弁護士が分かりやすく解説します。
離婚をしたくないのに、ある日突然、配偶者から離婚調停(実務上は夫婦関係調整調停といいます)を申し立てられたら、どう対処すべきでしょうか。この記事では、離婚を望まない方が調停を申し立てられた際に、離婚を回避するためにとるべき適切な対応について解説します。
離婚したくないのに調停を申し立てられたらすべきことは?
意思に反して離婚調停を申し立てられ、家庭裁判所から書類が届いた場合、最初にすべきことは同封されている離婚調停申立書の内容を把握することです。
離婚調停申立書の内容を正確に把握する
まずは、裁判所を通じて相手から届いた申立書の内容を隅々まで正確に読み込みましょう。申立書には、相手の申立ての動機(なぜ離婚を望むのか)や、希望する離婚条件(財産分与、親権、養育費、慰謝料、面会交流など)が記載されています。申立書の内容を正確に把握することは、相手がこれまで抱えてきた不満や、離婚を決意するに至った真の理由を理解するための第一歩です。夫婦間の多くの問題は、感情のすれ違いや不満の蓄積が原因です。家事・育児に協力してくれないという具体的な不満が記載されていれば、相手はそれが婚姻関係の破綻を招いた原因だと主張していることになります。こうした課題を特定できれば、あなた側も関係修復に向けた具体的な改善策を提案できます。
例えば、家事・育児の分担を見直す具体的な計画を提示するなどです。申立書を分析する作業は、漠然とした夫婦間の対立を解決可能な具体的な問題へと変え、夫婦関係修復の糸口を見出す上で不可欠なプロセスです。
冷静で論理的な答弁書を作成する
申立書の内容を理解したら、自身の主張をまとめた答弁書(家庭裁判所によっては表題が意見書や事情説明書などとされる場合もあります)を作成します。この書面は、第1回調停期日が始まる前に、調停委員へ自身の言い分を伝え、適切な心証形成を促すための重要なツールとなります。書面を作成する際に注意すべき点は、感情的にならず、客観的な事実に基づいて簡潔に記載することです。相手を非難したり、感情的な罵倒を繰り返したりする書面は、調停委員に悪印象を与えかねません。家事事件手続法における調停はあくまで話し合いの場であり、目的は当事者双方の歩み寄りによる合意形成です。そのため、調停委員に対して問題解決に真摯に向き合う姿勢を示せば、中立な立場からの建設的なあっせんを引き出しやすくなる傾向があります。
時系列に沿って事実を述べ、離婚したくない意思や、関係修復に向けた具体的な考えを論理的に書面に記せば、問題解決に真剣に取り組む人物であると示せます。この初期段階で調停委員に良い心証を持ってもらうことは、その後の調停手続きを円滑に進めるための土台となります。
離婚したくない場合に調停で離婚を回避するための心構えは?
離婚調停において、離婚したくないという固い意思を、いかに調停委員や相手方へ説得力をもって伝えるかが結果を左右します。調停委員に理解を示してもらうためにできることや、当日の心構えについて解説します。
調停期日には原則として出席する
指定された調停期日には、やむを得ない事情がある場合を除いて出席するようにしましょう。調停への出席は、相手や調停委員に対し、話し合いに真剣に向き合っているという誠意を示す基本的な行動です。無断で欠席した場合、話し合う意思がないと判断されて調停不成立となり、その後相手から離婚裁判(訴訟)を起こされるリスクが高まります。どうしても都合がつかない場合は、事前に必ず家庭裁判所へ連絡し、正当な欠席理由を伝えて期日変更申請などの手続きを行いましょう。
相手を責めずに自分ができる改善策を具体的に提案する
調停の場では、むやみに相手の非を指摘するのではなく、自身の気持ちや関係修復のためにできる努力を冷静に説明しましょう。相手を非難する言動は、話し合いを感情的な対立へと導き、調停委員に婚姻関係がすでに破綻しており修復不可能だという印象を与えかねません。相手が離婚を望む理由を真摯に受け止め、問題を解決するためにどのような努力をするかを具体的に伝える姿勢が調停委員の理解を呼び、円満な解決へ繋がりやすくなります。
事実に基づいた客観的な主張をする
調停の場では単なる感情的な訴えだけでなく、客観的な事実を具体的に述べることが大切です。例えば、いつ、どこで、何が起こったのかを時系列で明確に伝え、必要に応じて事実関係を裏付ける証拠(医師の診断書やメール・LINEの履歴など)を提出します。 客観的な情報提示は主張の正当性を高め、調停委員が事案を正確に把握し、適切な解決案を探るための基盤となります。
離婚したくない気持ちを調停で賢く伝える方法は?
ただ単に離婚したくないと意地になって繰り返すだけでは、調停委員の十分な理解は得られません。なぜ離婚したくないのか、その真意や理由を論理的に伝える必要があります。純粋に夫婦関係を修復したいと思っているケースと、離婚条件に納得できないため離婚を拒否しているケースにわけて解説します。
夫婦関係を修復したいと思っている場合
夫婦関係を修復したいと思っている場合は、修復を望む具体的な理由を調停委員に積極的に伝えましょう。具体的には、まだ相手に愛情があることや、両親が揃っていることが子の福祉(子どもの健全な成長と利益)に繋がるといった理由が挙げられます。それに加えて、なぜ関係修復が可能だと考えているのか、具体的な根拠を示すことも重要です。
例えば、相手の不満を解消するために今後どのように行動を改善していくのか、現実的かつ具体的な計画を伝えます。反省の意を言葉だけでなく実際の行動で示せば、調停委員に対し、この夫婦関係にはまだ修復の余地があるという良い心証を与えられる可能性があります。
離婚条件に納得できない場合
離婚自体には応じる余地があるものの離婚条件に納得できない場合は、相手の提示した条件がなぜ不当であるか、論理的な説明に焦点を当てましょう。単なる感情論や自分本位の経済的事情だけで離婚を拒否しているとみなされると、話し合いを長引かせているだけだというネガティブな印象を与えるリスクがあるためです。
例えば、相手が提示した養育費の金額が裁判所の公表する算定表から逸脱している事実や、財産分与の提案が実務上の相場からかけ離れている点などを客観的に指摘します。拒否の姿勢が正当な理由に基づくものだと論理的に示せば、不当な条件のままで離婚を成立させるべきではないと調停委員に理解してもらえる可能性が高まります。
無断で離婚届を提出されるおそれがある場合は離婚届不受理申出制度の活用を!
別居中の相手などが無断で離婚届を提出するおそれがある場合は、万一に備えて、市区町村の役所に離婚届不受理申出書を提出しておきましょう。役所の戸籍窓口では形式的な要件が整っているかを確認するのみであり、離婚届が提出された際に、当事者双方へ個別に真の離婚意思があるかどうかを確認することはありません。そのため、もし相手があなたの署名を偽造して勝手に離婚届を提出した場合でも、書類上の不備がなければそのまま受理されてしまうリスクがあります。離婚届は一度受理されてしまうと、その離婚を無効にするために家庭裁判所で協議離婚無効確認調停や人事訴訟を起こさなければならず、取り消しまでに多大な時間と精神的労力を費やすことになります。事前に離婚届不受理申出書を提出しておけば、本人が窓口で取り下げない限り同意のない協議離婚は成立しません(調停・審判・訴訟などの公的手続きで離婚が成立した場合を除きます)。
離婚したくない人が調停対応で弁護士を頼るべき理由は?
離婚調停は弁護士をつけずに自分一人で進めることも制度上は可能ですが、どうしても離婚を回避したいと願うのであれば、専門家である弁護士に頼ることを強くおすすめします。法律の専門家である弁護士に依頼することで、複雑な調停手続きを法的観点から有利に進められる可能性があるためです。
調停を有利に進めるための法的サポートが受けられる
弁護士であれば、調停を少しでも有利に進めるための的確な法的サポートを提供できます。依頼者の主張を法的な根拠に基づいて論理的に整理し、説得力のある書面や言葉で調停委員に伝達します。婚姻関係が破綻していない客観的証拠や、相手方に不貞行為やDVなどの有責性があることを証明する証拠の集め方について専門的な助言を行い、有責配偶者からの身勝手な離婚請求を退けるための強力な防波堤となります。
精神的負担が大幅に軽減される傾向がある
実務上、弁護士は代理人として調停期日に同席できるため、相手方や調停委員と対峙する依頼者の精神的負担は大幅に軽減される傾向にあります。相手からの予期せぬ主張や調停委員からの提案に対しても、その場で直ちに法的な見解を踏まえた適切な反論や対応をとることができます。これにより、知識不足から不利な条件を安易に受け入れてしまう事態を防ぎ、正当な利益と権利を守れる可能性が高まります。
まとめ
裁判所から離婚調停を申し立てられたからといって、その時点で直ちに離婚が確定したわけでは決してありません。離婚したくないという強い意思を持ち、法律に基づいた適切な対応をとることで、離婚を回避し、夫婦関係を再び修復できる可能性は残されています。調停という困難な局面に一人で立ち向かうのではなく、専門知識を持つ弁護士への相談や依頼をぜひ検討してください。ネクスパート法律事務所には、家事事件や複雑な離婚案件を多数手掛けてきた経験豊富な弁護士が在籍しております。離婚をしたくないのに相手に調停を申し立てられ、不安を抱えている方は、個別事情に応じた最善の解決策をご提案いたしますので、ぜひ一度当事務所までご相談ください。
コラム監修者
SHIZU ISHIDA
所属:東京オフィス
広島県広島市出身。青山学院大学心理学科、東海大学法科大学院卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、刑事、民事、法人案件等幅広い分野の専門知識を習得。弁護士登録10年目にしてネクスパート法律事務所に入所し、現在は主に離婚事件に注力している。