更新日:2025年3月25日 (火)

公開日:2025年3月25日 (火)

当て逃げをされたら?初動対応や損害賠償請求を弁護士が解説

当て逃げをされたら?初動対応や損害賠償請求を弁護士が解説 当て逃げをされたら?初動対応や損害賠償請求を弁護士が解説

サマリー

車を運転している際や駐車中に当て逃げ被害に遭うと、突然の出来事にどのように対応すればよいのか分からず、困惑してしまう方も多いのではないでしょうか。加害者が現場から立ち去ってしまった場合でも、警察への速やかな通報や証拠収集などの初動対応を適切に行うことがその後の対応において大切です。この記事では、当て逃げ被害に遭った直後に取るべき具体的な手順や加害者が負う法的責任、加害者の特定有無に応じた損害賠償請求や保険の利用方法について詳しく解説します。

当て逃げとは?被害直後に行うべき4つの対応

当て逃げとは、車両の運転中に他人の車や物に衝突・接触したにもかかわらず、道路交通法で定められた危険防止措置や警察への報告などの義務を果たさずに現場から立ち去る行為を指します。

当て逃げ被害に遭った場合、加害者を特定し適切に損害の填補を受けるためには、事故直後の冷静かつ迅速な対応が重要です。ここでは、被害に気付いた直後に行うべき4つの初動対応について解説します。

1. 警察への速やかな通報と交通事故証明書の取得

当て逃げ被害に遭ったときは、速やかに警察へ通報して事故の届出を行う必要があります。

警察へ届出をすることで実況見分や捜査が行われ、後日「交通事故証明書」の発行が可能になります。この証明書は、加害者が判明した際の損害賠償請求や、被害者自身の保険を利用する際の手続きに不可欠な書類です。

2. 加害車両の特定につながる証拠収集

警察の捜査と並行して、ご自身でも可能な範囲で加害車両に関する情報を記録し、証拠を保全しておくことが大切です。

  • 加害車両の車種・色・ナンバーのメモや写真撮影
  • ドライブレコーダー映像の確認と上書き防止のためのデータ保存
  • 事故現場の状況や車両の損傷箇所の写真撮影

ドライブレコーダーの映像は時間の経過によって上書きされてしまうおそれがあるため、早めにデータを抜き出して保存しておくことが推奨されます。

3. 怪我がある場合の受診と人身事故への切り替え

乗車中に当て逃げ被害に遭い、身体に痛みや違和感がある場合は、放置せずに医療機関を受診して診断書を取得することが重要です。

医師の診断書を警察署へ提出することで、物損事故から人身事故(ひき逃げ事件)へと捜査の扱いを切り替えてもらえる場合があります。人身事故として処理されることで、怪我と事故との因果関係を明確にし、治療費や慰謝料などの請求を進めやすくなります。

4. 自身の加入する保険会社への連絡

事故発生後は、被害者自身が加入している自動車保険の保険会社にも速やかに連絡を入れましょう。

加害者からの賠償を待たずに車両の修理を先行させたい場合、ご自身の車両保険の利用を検討することになります。ただし、契約タイプ(いわゆるエコノミー型など)によっては当て逃げ事故が補償の対象外となるケースもあるため、補償内容を事前に確認しておく必要があります。

当て逃げをした加害者が負う3つの法的責任

交通事故を起こして現場から逃走した場合、加害者には「刑事責任」「行政責任」「民事責任」という3つの法的責任が発生します。物損事故にとどまる当て逃げであっても、法的な義務を怠って立ち去る行為には厳しい処分や賠償責任が科されます。

1. 刑事責任|道路交通法違反や救護義務違反に対する罰則

車をぶつけたにもかかわらずその場から立ち去る行為は、道路交通法に定められた危険防止等措置義務違反や警察への報告義務違反に該当し、刑事罰の対象となります。

さらに、相手が負傷しているにもかかわらず逃走した場合は「ひき逃げ」として扱われます。救護義務違反を伴う負傷事故の場合は5年以下の懲役または50万円以下の罰金、死亡事故に至った場合は10年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。

2. 行政責任|運転免許の違反点数加算と免許停止処分

刑事罰とは別に、公安委員会による運転免許の行政処分も行われます。物損事故の当て逃げでは、事故自体の原因に応じた安全運転義務違反(2点)に加え、危険防止等措置義務違反(5点)の違反点数が付加されます。

前歴がないドライバーであっても、合計の違反点数が6点に達すると30日間の免許停止処分の対象となります。なお、負傷者が生じたひき逃げの場合には基礎点数に加えて35点などの高い付加点数が加算され、免許取消処分を受けることになります。

3. 民事責任|修理費用や治療費などの損害賠償義務

民事上の責任として、加害者は被害者に生じた損害を金銭で賠償する義務を負います。物損事故においては、損傷した車両の修理費用や代車費用、積載物の損害などが賠償の対象です。

被害者が怪我をしていた場合には、治療費や通院交通費、休業損害、入通院慰謝料なども加害者側へ請求できます。

加害者は刑事罰や免許の行政処分を受けるだけでなく、被害者に対して発生した損害を賠償する義務を負い続けます。

責任の種類 主な内容 科される処分・義務の例
刑事責任 道路交通法上の義務違反に対する刑罰 報告義務違反・危険防止措置義務違反による懲役や罰金
行政責任 運転免許に対する行政処分 違反点数の加算による免許停止処分や免許取消処分
民事責任 被害者への金銭的な損害賠償 車両修理費・代車費用・治療費・慰謝料などの支払い

加害者が特定できた場合の損害賠償請求の流れ

警察の捜査やドライブレコーダーの映像などによって当て逃げをした加害者が特定された場合、被害者は加害者に対して生じた損害の賠償を請求する手続きを進めることになります。

加害者が特定できた際の大まかな損害賠償請求の手順は以下のとおりです。

  1. 加害者が加入している任意保険の有無や契約内容を確認する
  2. 相手方の保険会社(または加害者本人)と示談交渉を行う
  3. 提示された損害賠償金額や過失割合などの条件を精査する
  4. 示談書(免責証書)を取り交わし、賠償金の支払いを受ける

加害者の保険加入状況の確認と示談交渉

加害者が判明した後にまず行うべきことは、加害者が自動車保険(任意保険)に加入しているかどうかの確認です。保険に加入している場合は、通常その保険会社の担当者が窓口となって示談交渉が進められます。

交渉では、相手方保険会社から車両の修理費用や代車費用、怪我がある場合の治療費や慰謝料などの示談金が提示されます。提示された金額や条件が妥当であるかどうかを十分に確認し、納得できない点がある場合は再交渉を行うことが大切です。

示談成立と賠償金の受け取り

提示された金額や過失割合などの示談条件について双方が合意に至った場合、示談が成立となります。合意内容を書面化した示談書(免責証書)が作成され、双方が署名・捺印を行います。

示談書を取り交わした後、取り決めた期日までに指定した銀行口座へ賠償金が振り込まれるのが一般的な流れです。

加害者が任意保険に未加入(無保険)の場合の対応と注意点

加害者が任意保険に加入していない場合は、相手方の保険会社を介さず、加害者本人と直接損害賠償の交渉を行わなければなりません。

無保険の加害者は十分な支払い能力を備えていないケースも多く、賠償金の支払いが滞ったり、低額な示談や長期の分割払いを提案されたりするリスクがあります。

本人との直接交渉が難航する場合や資力に不安がある場合には、分割払いの合意内容を公正証書にしておくなど、慎重な対応が求められます。

当て逃げ加害者が見つからない場合の対処法

当て逃げは相手が現場から立ち去ってしまうため、警察の捜査を経ても加害者が特定できないケースがあります。加害者が特定できない場合、相手方に直接損害賠償を請求することは難しくなるため、被害者自身で損害を補填する手段を検討することが必要です。

自身の自動車保険(車両保険・人身傷害保険等)の利用

破損した車両の修理費用については、被害者自身が加入している自動車保険の「車両保険」を利用して対応することが一般的です。ただし、契約内容が「一般型(一般条件)」ではなく、いわゆるエコノミー型(限定型)である場合、当て逃げ事故は補償対象外となる契約も存在するため、事前に契約内容を確認する必要があります。

また、事故によって被害者が怪我を負った場合(ひき逃げを含む人身事故の場合)には、「人身傷害補償保険」や「搭乗者傷害保険」を利用することで、治療費や休業損害などの補償を受けられることがあります。これらの特約の適用可否や等級への影響についても、加入先の保険会社に相談して確認するとよいでしょう。

人身被害における政府保障事業の活用

当て逃げにより身体に怪我を負い、加害者が不明のままとなっている場合、国の制度である「政府保障事業(自動車損害賠償保障法に基づく制度)」を利用できる場合があります。これは、ひき逃げ事故や無保険車による事故の被害者を救済するため、自賠責保険の支払基準に準じた損害の補填を行う仕組みです。

政府保障事業は、健康保険や労災保険などの給付を受けてもなお損害が埋まらない場合に、その不足分を補填する制度です。なお、対象となるのは身体の負傷や死亡に関する人身被害に限られ、車両の修理費用などの物損損害は対象外となります。

政府保障事業への請求手続きは、全国の損害保険会社(共済を除く)の窓口で受け付けを行っています。必要書類や請求手順については、各損害保険会社の窓口に問い合わせることで確認できます。

当て逃げ被害の示談交渉における弁護士への相談

当て逃げ事故の加害者が特定できた場合でも、その後の損害賠償請求や示談交渉が円滑に進むとは限りません。相手方とのやり取りにおいて不安や疑問が生じた際は、弁護士への相談を検討するのも一つの方法です。

提示された示談条件や賠償金額の妥当性の確認

加害者側の保険会社から示談金や過失割合などの条件が提示された際、その金額や内容が事故の損害状況に見合っているかを被害者自身で客観的に判断することは容易ではありません。

修理費用や評価損、怪我を負った場合の慰謝料などの算定基準は複数存在します。提示された内容が法的に妥当なものかどうかについて、示談書を取り交わす前に弁護士に確認してもらうことで、納得感を持った対応につながります。

交渉窓口の依頼による負担の軽減

当て逃げをした加害者やその保険会社と直接やり取りを続けることは、被害者にとって時間的にも精神的にも大きな負担となりがちです。加害者が無保険の場合などは、連絡や支払いの滞りによるストレスがさらに増すことも考えられます。

弁護士に代理人としての交渉を依頼することで、相手方との窓口を一本化でき、直接やり取りをする負担を軽減することが期待できます。

弁護士費用特約の活用

弁護士への相談や依頼を検討する際には、ご自身やご家族が加入している自動車保険や火災保険などに「弁護士費用特約」が付帯されているか確認してみるとよいでしょう。

弁護士費用特約を利用できれば、一定の限度額まで相談料や着手金、報酬金などの費用が保険金から支払われるため、自己負担を抑えて弁護士のサポートを受けられる場合があります。

当て逃げ被害に関する示談交渉や手続きの進め方に不安がある場合は、まずは一度法律相談などを利用し、今後の見通しや選択肢についてアドバイスを受けてみることをおすすめします。

まとめ

当て逃げ被害に遭った際は、警察への速やかな届出やドライブレコーダーなどの証拠保全を行うことが重要です。

加害者が特定できた場合は示談交渉を通じて損害賠償を請求し、特定できない場合でも自身の保険や政府保障事業の活用を検討できます。

示談金の妥当性や相手方との交渉に不安がある場合は、弁護士への相談も視野に入れながら適切に対応を進めましょう。

コラム監修者

JUNICHI TASHIRO

JUNICHI TASHIRO

所属:福岡オフィス 支店長

福岡県北九州市出身。小倉高校、岡山大学法学部、神戸大学法科大学院を卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、個人・法人問わず幅広い分野の相談・交渉に取り組む。ネクスパート法律事務所福岡オフィス所長として、依頼者にとって何が大事かを第一に考え、スピード感をもって解決することを信条とし、どこの事務所よりもネクスパート法律事務所に依頼したいと思ってもらえるよう日夜奮闘中。

弁護士詳細を見る

関連記事を見る

交通事故の示談交渉で加害者側の弁護士が出てくる理由と対処法

2022.12.29

示談交渉

交通事故の示談交渉で加害者側の弁護士が出てくる理由と対処法

交通事故の示談書が届く期間は?到着が遅れる原因と対処法を解説

2022.12.28

示談交渉

交通事故

交通事故の示談書が届く期間は?到着が遅れる原因と対処法を解説

交通事故の通院はいつまで?頻度・回数と慰謝料の関係を解説

2022.12.07

むちうち

交通事故の通院はいつまで?頻度・回数と慰謝料の関係を解説

交通事故で治療費打ち切りと言われたら?理由と対処法を解説

2026.09.02

交通事故

交通事故で治療費打ち切りと言われたら?理由と対処法を解説

後遺障害で非該当…異議申し立ての成功率は?認定を目指すポイント

2026.09.01

交通事故

後遺症

後遺障害で非該当…異議申し立ての成功率は?認定を目指すポイント

PREV
NEXT