更新日:2025年3月19日 (水)
公開日:2025年3月19日 (水)
過失割合のゴネ得とは?理不尽な主張への対処法を解説
サマリー
交通事故の示談交渉において、相手方が合理的な理由なく自己に有利な過失割合を主張し続け、話し合いが進まずに精神的な負担を感じている方もいるのではないでしょうか。
相手の理不尽な主張に応じてしまうと、過失相殺により受け取れる損害賠償金が大きく減額されてしまうおそれがあります。
この記事では、過失割合が賠償額に与える影響や、相手にいわゆる「ゴネ得」をさせないための具体的な対処法、適正な過失割合を導くための算定手順などをわかりやすく解説します。
過失割合における「ゴネ得」とは?相手が主張を譲らない理由

過失割合における「ゴネ得」の概要
過失割合とは、発生した交通事故に対する当事者双方の責任や不注意の度合いを割合として表したものです。
一般的に、事故の原因が一方のみにあるケースを除き、双方に一定の過失が認められることが多くあります。
交通事故の実務において「ゴネ得」と呼ばれる状態は、合理的な理由や客観的な根拠がないにもかかわらず、自己に有利な過失割合を頑なに主張し続ける行為を指します。
自らの主張を一方的に押し通して示談交渉を引き延ばし、相手方が根負けして譲歩した結果として、本来の基準よりも有利な過失割合で合意を取り付け、不当に利益を得ようとするケースが該当します。
相手方が過失割合の主張を譲らない背景
示談交渉は当事者双方の合意によって成立する法的な手続きです。
そのため、どちらか一方が過失割合に同意しない限り、示談書を交わすことができず、交渉は停滞し続けることになります。
交渉が長期化すると、事故対応に追われる被害者側には多大な時間的・精神的なストレスが蓄積していきます。
その結果、「早くトラブルを終わらせたい」「少しの譲歩なら仕方がない」と考え、相手の主張を受け入れてしまう心理に陥りがちです。
理不尽な主張を繰り返す相手方は、そうした被害者側の精神的な疲弊を見越し、あえて合意を引き延ばして譲歩を引き出そうとしている場合があります。
相手が折れるのを待つ姿勢を崩さないのは、こうした交渉上の狙いがあるためと考えられます。
相手方のペースに流されて安易に合意してしまうと、本来認められるべき損害賠償額から大幅に減額されてしまうおそれがあるため注意が必要です。
過失割合によって賠償金はどう変わる?過失相殺の仕組み
交通事故における過失相殺とは、被害者側にも不注意や落ち度(過失)があった場合に、公平の観点からその過失割合に応じて損害賠償額を減額する制度です。
過失相殺は、損害賠償金の一部だけでなく、原則として請求可能な損害項目全体に対して一律に適用されます。
過失相殺の対象となる主な損害項目は以下のとおりです。
- 積極損害:治療費、入院費、通院交通費、付添看護費、葬儀費用など
- 消極損害:事故がなければ得られたはずの休業損害や逸失利益
- 慰謝料:傷害慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料
このようにすべての賠償項目から過失分が差し引かれるため、過失割合がわずか1割変わるだけでも、最終的に受け取れる金額に大きな差が生じます。
損害総額1,000万円の場合の受取額シミュレーション
過失割合の違いによって受け取れる金額がどのように変化するのか、損害賠償の総額が1,000万円となった場合を例に確認してみましょう。
| 過失割合(加害者:被害者) | 被害者の過失による減額分 | 最終的な受取額 |
|---|---|---|
| 90%:10%(9対1) | 100万円(1,000万円×10%) | 900万円 |
| 80%:20%(8対2) | 200万円(1,000万円×20%) | 800万円 |
| 60%:40%(6対4) | 400万円(1,000万円×40%) | 600万円 |
たとえば、本来は「9対1」が妥当な事故であるにもかかわらず、相手方の主張に押されて「8対2」で合意してしまうと、受け取れる金額は100万円減少します。
さらに「6対4」まで譲歩した場合には、300万円もの減額が生じることになります。
過失割合のわずかな譲歩が賠償金の受取額を大きく減らす要因となるため、適正な過失割合を把握することが極めて重要です。
過失割合でゴネ得させないための4つのポイント

相手方が一方的な主張を続けて過失割合に納得できない場合、被害者側としても適切な対処法を知っておくことが欠かせません。理不尽な主張に対抗し、適正な過失割合で示談を進めるための主なポイントは以下の4つです。
1. 相手の主張する過失割合の根拠の提示を求める
相手方が自己に有利な過失割合を主張してくる場合、まずはその割合を導き出した具体的な理由や根拠の提示を求めましょう。
どのような事故態様を前提とし、どの過去の裁判例や基準に基づいて算定しているのかを明確にしてもらう必要があります。
やみくもに言い分をぶつけ合うだけでは交渉が進みません。相手方の主張の根拠を正確に把握することで、どの点に事実誤認や無理があるのかを特定し、適切な反論を組み立てやすくなります。
2. 事故状況を裏付ける客観的証拠を集める
過失割合で揉める原因の多くは、信号の色や進入時の速度、一時停止の有無など、事故当時の状況に関する双方の認識の食い違いにあります。
事故当時は動転して記憶が曖昧になることもあるため、主観的な言い分だけでなく客観的な証拠を集めることが重要です。
具体的には、警察が現場の状況を詳細に記録した実況見分調書のほか、車両のドライブレコーダー映像、周辺の防犯カメラ映像、第三者の目撃証言などが有効な証拠となります。
これらを揃えて提示することで、事実に基づいた交渉を進められます。
3. 感情的にならず冷静かつ合理的に主張を組み立てる
理不尽な主張を繰り返されると強いストレスを感じますが、感情的になって反論することは得策ではありません。
相手方が交渉を引き延ばして譲歩を狙っている場合、感情的な反応を示すことで話し合いがさらに長期化するおそれもあります。
相手方の言動に振り回されず、収集した証拠や一般的な過失割合の基準に沿って、淡々と合理的な事実を主張していく冷静な姿勢を保つことが大切です。
4. 納得するまでは安易に示談に応じない
示談交渉が難航すると、精神的な疲労から「早く終わらせたい」「少しなら譲歩してもいいかもしれない」と考えてしまいがちです。
示談は一度成立してしまうと、原則として後から内容を変更したりやり直したりすることはできません。
提示された過失割合に疑問や納得できない点がある場合は、安易に合意書への署名・捺印をせず、十分な検討を行うことが重要です。
過失割合の適正な算定手順と考慮すべき修正要素
過失割合は、事故の当事者が感覚や主観で勝手に決めるものではありません。過去の膨大な裁判例の蓄積などをもとに、一定の算定基準と手順に沿って客観的に判断されるのが一般的です。
相手方の理不尽な主張に対して適正な過失割合を導き出すためには、算定の全体的な流れと、過失の割合を左右する「修正要素」の仕組みを正しく把握しておくことが役立ちます。
適正な過失割合を算定する基本的な流れ
過失割合の算定は、主に次のような手順に沿って段階的に進められます。
- 事故状況の客観的な事実関係を把握・確認する
- 事故の類型に該当する過去の裁判例や参考文献(別冊判例タイムズ等)から「基本過失割合」を選択する
- 現場の道路状況や当事者の運転態様などの個別事情に応じた「修正要素」を適用して調整する
- 当事者双方による交渉や話し合いを通じて過失割合を確定する
まずは当事者間で事故の状況認識にずれがないかを検証し、類似する事故類型を文献等から特定して基本となる割合を定めます。
そのうえで、個別の事故ごとに異なる特殊な事情を加減していくのが適正な算定の流れです。
過失割合の調整に用いられる主な修正要素
基本過失割合が選択された後、実際の事故現場の状況や双方の運転行為の内容に応じて、割合が5〜20%程度加算または減算されることがあります。これを修正要素と呼びます。
具体的には、以下のような事情が修正要素として考慮される代表例です。
- 周囲の状況:夜間、見通しのきく交差点、幹線道路などの道路環境
- 車両の特性:大型車と普通車・二輪車との事故など
- 当事者の属性:歩行者が幼児・児童・高齢者・身体障がい者である場合(交通弱者保護)
- 運転態様の過失:酒気帯び運転・居眠り運転・無免許運転・著しい速度超過などの著しい過失または重過失
相手方が主張する過失割合では、ご自身側に有利な修正要素が反映されていなかったり、相手方の過失が過小評価されていたりするケースが少なくありません。
提示された割合に疑問がある場合は、どのような基本類型が選ばれ、どの修正要素が適用されているのかを細かく確認し、見落とされている要素がないか精査することが重要です。
過失割合の交渉が難航したときは弁護士への相談を検討
交通事故の過失割合について相手方が理不尽な主張を譲らず、示談交渉が平行線をたどっている場合は、弁護士への相談を検討することが有効な選択肢となります。
法的根拠に基づいた対等な示談交渉が可能になる
相手方が合理的な理由のない主張を繰り返している場合でも、弁護士が介入することで、過去の裁判例や収集した客観的証拠に基づいた法的主張を展開できます。
示談交渉の経験が豊富な保険会社の担当者に対しても、法的な根拠をもとに対等な立場で議論を進められるため、相手方の根拠のない主張を退けやすくなります。
相手方とのやり取りを任せることで精神的負担を軽減できる
主張が対立して示談交渉が長引くと、相手方や保険会社とのやり取り自体が大きな精神的ストレスとなり、日常生活や怪我の治療にも悪影響を及ぼしかねません。
弁護士に依頼した場合は示談交渉の窓口を一本化できるため、相手方と直接連絡を取る必要がなくなり、治療や生活の立て直しに専念できる環境を整えられます。
裁判所基準(弁護士基準)による賠償金算定が期待できる
損害賠償金の算定基準には、自賠責基準、任意保険基準、裁判所基準(弁護士基準)の3種類があり、どの基準を用いるかによって金額の目安が異なります。
| 算定基準 | 特徴・概要 |
|---|---|
| 自賠責基準 | 自動車損害賠償保障法に基づく強制保険の基準。
被害者に対する最低限の補償を目的とする。 |
| 任意保険基準 | 加害者側の任意保険会社が独自に設けている内規基準。
各保険会社により異なり非公開。 |
| 裁判所基準(弁護士基準) | 過去の裁判例の積み重ねに基づいて設定された基準。
裁判や弁護士による示談交渉で用いられる。 |
加害者側の保険会社から提示される賠償額は任意保険基準に基づくことが多いですが、弁護士が交渉にあたることで、過去の裁判例に沿った裁判所基準での請求が可能になります。
適切な過失割合の算定と裁判所基準での請求を組み合わせることで、適正な損害賠償金の確保が期待できます。
相手方が過失割合について譲らず示談が進まないときや、提示された過失割合に納得がいかないときは、安易に合意せず弁護士への相談を検討してみるとよいでしょう。
コラム監修者
Shunsuke Teragaki
所属:代表(東京オフィス)
広島県広島市出身。修道高校、慶應義塾大学商学部、青山学院大学法科大学院を卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、個人・法人問わず幅広い分野の相談・交渉に取り組む。ネクスパート法律事務所の代表弁護士として、依頼者に最適な見通しと戦略的な解決策を示すことを信条とし、丁寧かつ粘り強い対応で信頼を築いている。