更新日:2026年8月28日 (金)

公開日:2026年8月28日 (金)

性犯罪の時効は何年?2023年改正後の公訴時効を罪名別一覧で解説

性犯罪の時効は何年?2023年改正後の公訴時効を罪名別一覧で解説 性犯罪の時効は何年?2023年改正後の公訴時効を罪名別一覧で解説

サマリー

2023年7月の刑法改正により、不同意性交等罪や不同意わいせつ罪などの性犯罪について、公訴時効の期間が延長されました。

例えば、

不同意性交等罪の公訴時効は10年 → 15年
不同意わいせつ罪は7年 → 12年

へと見直されており、改正時点でまだ公訴時効が完成していない事件には、原則として延長後の時効期間が適用されます。

そのため、「何年も前の出来事だから、もう時効になっているだろう」と考えていても、実際には公訴時効が完成しておらず、警察の捜査や逮捕・起訴の対象となる可能性があります。

性犯罪の疑いで警察から事情聴取や出頭を求められている場合や、過去の行為について不安を抱えている場合には、「時効だから問題ない」と自己判断するのではなく、現在の法制度を正しく理解したうえで適切に対応することが大切です。

2023年刑法改正のポイント!性犯罪の時効はこう変わった

2023年7月13日に施行された刑法改正などにより、性犯罪に関する規定は大きく見直されました。

従来の強制性交等罪・強制わいせつ罪は、それぞれ不同意性交等罪・不同意わいせつ罪へ改められ、成立要件が見直されたほか、公訴時効についても延長されています。

また、18歳未満の被害者を対象とする一定の性犯罪では、公訴時効期間に被害者が18歳に達するまでの期間を加算する特例も新設されました。

そのため、事件から相当期間が経過していても、公訴時効が完成していない限り、警察による捜査や検察官による起訴が行われる可能性があります。

ここでは、2023年改正によって変わった公訴時効制度のポイントを解説します。

主要な性犯罪の公訴時効が延長された

2023年の法改正では、不同意性交等罪や不同意わいせつ罪など、主要な性犯罪の公訴時効が延長されました。

公訴時効とは、犯罪行為が終了してから一定期間が経過すると、検察官が起訴できなくなる制度です。

改正前は、旧強制性交等罪の公訴時効は10年、旧強制わいせつ罪は7年でした。

しかし、改正後は、不同意性交等罪は15年、不同意わいせつ罪は12年へと延長されています。

この改正により、被害者が精神的な負担などからすぐに被害申告できなかった場合でも、刑事責任を追及できる期間が長くなりました。

一方で、加害者側からみると、事件から長期間が経過していても、公訴時効が完成していなければ捜査や起訴の対象となる可能性があるため注意が必要です。

18歳未満の被害者については時効期間を加算する特例が新設された

2023年の法改正では、18歳未満の被害者に対する一定の性犯罪について、公訴時効期間に、被害者が18歳に達するまでの期間を加算する特例が新設されました。

例えば、10歳の子どもに対する不同意性交等罪では、18歳になるまでの8年間が公訴時効期間に加算されます。

不同意性交等罪の公訴時効は15年であるため、この場合、公訴時効が完成するのは原則として被害者が33歳になる頃です。

この特例は、未成年の被害者が加害者との関係性や精神的な影響などから、直ちに被害を申告することが難しいケースが少なくないことを踏まえ、被害者保護を強化する目的で設けられました。

そのため、事件からかなりの年月が経過していても、公訴時効が完成していなければ捜査や起訴が行われる可能性があります。

【罪名別】主な性犯罪の公訴時効一覧

性犯罪の公訴時効は、犯罪の種類によって異なります。

主な性犯罪の公訴時効は、次のとおりです。

罪名 公訴時効
不同意性交等罪 15年
不同意わいせつ罪 12年
不同意性交等致傷罪 20年
不同意性交等致死罪 30年
監護者性交等罪 15年
監護者わいせつ罪 12年
性的姿態等撮影罪(撮影罪) 3年

以下では、それぞれの犯罪について解説します。

不同意性交等罪(旧 強制性交等罪):公訴時効15年

不同意性交等罪は、相手が同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難な状態にあることに乗じて、性交、肛門性交、口腔性交などを行った場合に成立する犯罪です。

2023年の法改正により、公訴時効は10年から15年へ延長されました。

公訴時効は、原則として犯罪行為が終了した時から進行します。
そのため、事件から15年が経過していない限り、起訴される可能性があります。

なお、被害者が18歳未満である一定の事件では、18歳に達するまでの期間を公訴時効に加算する特例が適用されます。

不同意性交等罪については、以下の記事も合わせてご参照ください。
不同意性交等罪と示談・不起訴の可能性|初動対応と弁護の重要性

不同意わいせつ罪(旧 強制わいせつ罪):公訴時効12年

不同意わいせつ罪は、相手が同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難な状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした場合に成立します。

2023年の法改正により、公訴時効は7年から12年へ延長されました。

暴行や脅迫だけでなく、飲酒や薬物、恐怖や心理的支配などによって自由な意思決定が困難な状態を利用した場合も処罰対象となります。

不同意わいせつ罪については、以下の記事も合わせてご参照ください。
不同意わいせつ罪とは|改正の概要や該当する行為をわかりやすく解説

不同意性交等致傷罪:公訴時効20年

不同意性交等罪に当たる行為によって被害者が負傷した場合には、不同意性交等致傷罪が成立します。

公訴時効は20年です。
重大な傷害結果を伴う犯罪であるため、公訴時効も長く設定されています。

不同意性交等致傷罪については、以下の記事も合わせてご参照ください。
不同意性交等致傷罪とは|成立要件・逮捕後の流れ・弁護活動を解説

不同意性交等致死罪:公訴時効30年

不同意性交等行為によって被害者が死亡した場合には、不同意性交等致死罪が成立します。

公訴時効は30年です。
事件から長期間が経過していても、公訴時効が完成していない限り、捜査や起訴の対象となる可能性があります。

監護者性交等罪:公訴時効15年

監護者がその立場による影響力を利用して18歳未満の者に性交等を行った場合には、監護者性交等罪が成立します。

公訴時効は15年です。
被害者が18歳未満である場合には、公訴時効期間に18歳までの期間を加算する特例が適用されます。

監護者わいせつ罪:公訴時効12年

監護者としての立場や影響力を利用して18歳未満の者にわいせつな行為を行った場合には、監護者わいせつ罪が成立します。

公訴時効は12年です。
監護者との力関係を利用した悪質性が高い犯罪として処罰されます。

監護者性交等罪・監護者わいせつ罪については、以下の記事も合わせてご参照ください。
監護者わいせつ罪・監護者性交等罪とは|有罪になった事例や不起訴率

性的姿態等撮影罪(撮影罪):公訴時効3年

性的姿態等撮影罪(いわゆる撮影罪)は、性的な部位や下着などを同意なく撮影する行為を処罰する犯罪です。

撮影行為の公訴時効は3年です。

また、盗撮事件では、事案によっては各都道府県の迷惑防止条例違反が適用されることもあります。

迷惑防止条例違反の公訴時効は条例や適用される罰則によって異なりますが、多くの自治体では3年とされています。

撮影罪については、以下の記事も合わせてご参照ください。
撮影罪とは|条文・構成要件・時効などをわかりやすく解説!

法改正前の事件にも影響は?時効延長の適用関係

2023年7月13日に施行された刑法・刑事訴訟法の改正では、性犯罪の公訴時効が見直されました。

この改正は、改正後に発生した事件だけでなく、一定の条件を満たす改正前の事件にも適用されます。

そのため、過去の事件について時効が成立しているかどうかは、改正法の適用関係を踏まえて判断する必要があります。

時効が完成していない事件には改正後の時効期間が適用される

改正法施行時点で公訴時効がまだ完成していない事件については、延長後の新しい公訴時効期間が適用されます。

例えば、2017年に発生した旧強制わいせつ罪に当たる事件は、旧法では公訴時効は7年であり、2024年に時効が完成する予定でした。

しかし、改正法施行時点ではまだ時効が完成していなかったため、改正後の不同意わいせつ罪の公訴時効である12年が適用され、時効完成時期は2029年へ延長されます。

このように、改正時点で公訴時効が完成していない事件については、事件発生が改正前であっても、改正後の時効期間が適用されます。

すでに時効が完成していた事件には適用されない

一方で、改正法の施行前に公訴時効がすでに完成していた事件については、延長後の時効期間は適用されません。

例えば、2015年に発生した旧強制わいせつ罪に当たる事件は、旧法上の公訴時効7年が経過した2022年に時効が完成しています。

このような事件については、2023年の法改正によって再び起訴できるようになることはありません。

性犯罪の時効はいつからカウントされる?|起算点の考え方

公訴時効がいつ完成するかを判断するためには、時効の起算点や、時効期間が加算・停止される場合について理解しておくことが重要です。

原則として犯罪行為が終了した時から時効が進行する

公訴時効は、原則として犯罪行為が終了した時から進行します。

例えば、一度だけ不同意わいせつ行為が行われた場合には、その行為が終了した時点が起算点となります。

また、同じ被害者に対して一連の犯罪行為が継続して行われた事案では、最後の犯罪行為が終了した時点を基準として時効が進行する場合もあります。

そのため、最初の行為から長い年月が経過していても、公訴時効が完成していないケースもあります。

一定の場合には時効期間が加算・停止されることがある

公訴時効は、一定の場合には通常どおり進行しません。

例えば、犯人が国外にいる期間などについては、公訴時効の進行が停止する場合があります。

また、2023年の法改正では、被害者が18歳未満である一定の性犯罪について、公訴時効期間に、被害者が18歳に達するまでの期間に相当する年数を加算する制度が新設されました。

例えば、10歳の被害者に対する不同意性交等罪であれば、18歳に達するまでの8年間が公訴時効期間に加算されます。

そのため、公訴時効15年と合わせて実質23年間公訴を提起できる可能性があります。

この制度は、未成年の被害者が精神的負担などから直ちに被害申告することが難しい場合があることを踏まえ、被害者保護を強化する目的で設けられたものです。

刑事事件だけでは終わらない|時効成立後も民事責任を負う可能性がある

公訴時効が完成すると、原則として検察官はその事件について起訴できなくなります。

しかし、公訴時効が成立したからといって、すべての法的責任がなくなるわけではありません。

性犯罪では、被害者から慰謝料などの損害賠償を請求される可能性があり、刑事上の公訴時効とは別に、民事上の消滅時効が問題となります。

そのため、「刑事事件としては時効だから安心」と考えるのは適切ではありません。

損害賠償請求権には刑事とは別の時効がある

性犯罪による慰謝料などの請求は、不法行為に基づく損害賠償請求として扱われます。

人の生命または身体を害する不法行為による損害賠償請求権は、原則として被害者またはその法定代理人が損害および加害者を知った時から5年間行使しない場合には、時効によって消滅します。

また、加害者を知らない場合であっても、不法行為の時から20年間が経過すると請求権は消滅します。

そのため、刑事事件として公訴時効が成立していても、民事上の時効が完成していなければ、慰謝料などを請求される可能性があります。

公訴時効が成立しても民事上の責任を問われるケースがある

刑事事件の公訴時効と、民事上の損害賠償請求権の消滅時効は、それぞれ異なる制度です。

そのため、公訴時効の成立によって刑事責任を問われなくなったとしても、民事上の時効が完成していなければ、被害者から慰謝料請求を受ける可能性があります。

また、示談が成立していない場合には、民事訴訟を提起されることも考えられます。

刑事事件として処罰されないからといって、法的な問題が完全に解決したとは限らない点に注意が必要です。

性犯罪の時効に関するよくある質問(FAQ)

ここでは、性犯罪の時効についてよくある質問にお答えします。

2023年の法改正で、どの性犯罪の公訴時効が延長されたのですか?

2023年の刑法改正では、主要な性犯罪の公訴時効が見直されました。

例えば、不同意性交等罪(旧強制性交等罪)の公訴時効は10年から15年へ、不同意わいせつ罪(旧強制わいせつ罪)は7年から12年へ延長されています。

また、被害者が18歳未満である一定の性犯罪では、18歳に達するまで公訴時効の進行が停止する特例も新設されました。

何年も前の事件でも、今から捜査される可能性はありますか?

あります。
2023年7月13日の改正法施行時点で公訴時効が完成していなかった事件については、延長後の公訴時効が適用されます。

そのため、過去に起きた事件であっても、公訴時効が完成していなければ、捜査が開始され、起訴される可能性があります。

時効が成立しているかどうかは、罪名や犯行時期、被害者の年齢などによって異なるため、自己判断は避けるべきでしょう。

被害者が後から被害届を提出した場合でも起訴されることはありますか?

はい、公訴時効が完成していなければ、被害届や告訴が後日提出された場合でも、捜査が開始され、起訴される可能性があります。

性犯罪では、被害者が精神的な負担などから被害申告までに長い時間を要するケースも少なくありません。

そのため、事件から相当期間が経過していても、公訴時効が成立していなければ刑事手続が進む可能性があります。

まとめ

2023年の刑法改正により、主要な性犯罪の公訴時効は延長されました。

現在では、不同意性交等罪の公訴時効は15年、不同意わいせつ罪は12年となっており、被害者が18歳未満である一定の事件では、18歳に達するまで公訴時効の進行が停止する特例も設けられています。

また、改正法は施行時点で公訴時効が完成していなかった事件にも適用されるため、過去の事件であっても、時効が成立していなければ捜査や起訴の対象となる可能性があります。

さらに、公訴時効が成立した場合でも、民事上の損害賠償請求を受ける可能性があるため、「刑事の時効=すべての責任がなくなる」というわけではありません。

性犯罪の時効は、罪名や犯行時期、法改正の適用関係、被害者の年齢などによって判断が異なります。

警察から連絡を受けた場合や、過去の事件について不安を抱えている場合には、自己判断せず、できるだけ早い段階で刑事事件に詳しい弁護士へ相談することが重要です。

ネクスパート法律事務所では、刑事事件に強い弁護士が多数在籍しています。
初回相談は、30分無料です。
ぜひ一度ご相談ください。

コラム監修者

Shunsuke Teragaki

Shunsuke Teragaki

所属:代表(東京オフィス)

広島県広島市出身。修道中学・高校を経て、慶應義塾大学商学部で経営・会計・商取引を学ぶ。その後、青山学院大学法科大学院を修了して2011年に新司法試験に合格し、最高裁判所司法研修所を修了(65期)。2013年1月に第二東京弁護士会に弁護士登録し、都内法律事務所で個人・法人を問わず幅広い分野の相談・交渉に取り組む。

2016年1月に佐藤塁と共にネクスパート法律事務所を創業し、共同代表として、東京オフィスを拠点に、企業のコーポレート法務、M&A・事業承継、薬事・医事法務を中心に取り扱う。商学部で培った経営の視点を生かし、法的な可否にとどまらず、事業への影響や実行可能性まで含めた選択肢を示すことを重視している。

また、一般社団法人薬機法医療法規格協会の代表理事、一般社団法人日本美容サロン協議会の監事、一般社団法人睡眠ヘルスケア協議会の外部有識者(認証評価委員)を務め、医療・美容・ヘルスケア分野の広告規制や業界の自主的なルールづくりにも関わっている。依頼者に最適な見通しと戦略的な解決策を示すことを信条とし、丁寧かつ粘り強い対応で信頼を築いている。

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