サマリー
「慰謝料請求の請求書の書き方|記載例と注意点を詳しく解説」について、慰謝料請求や法的リスク、対応時のポイントを弁護士が分かりやすく解説します。
慰謝料請求の請求書の書き方|記載すべき10の項目と記載例
慰謝料請求の請求書には、以下の10の項目を記載しましょう。
- 書面のタイトル
- 不貞行為の事実
- 不貞行為によって精神的苦痛を受けたこと
- 不貞行為が不法行為に該当すること
- 請求する慰謝料の金額
- 振込期限・振込口座
- 要求に従わない場合の措置
- 請求書を作成した日付
- 作成者(請求者)の氏名・住所
- 相手方(被請求者)の氏名・住所
以下で、具体的な記載例も交えて詳しく解説します。
書面のタイトル
書面のタイトルを冒頭に記載しましょう。
タイトルを記載することで、今後の交渉においてどの書面について話しているかが分かりやすくなります。
(記載例)請求書
通知書
不貞行為の事実
不貞行為の事実を記載しましょう。
誰が、誰と、いつ、どのくらい不貞行為をしたのか、具体的に記載することが大切です。
なお、請求書には[不倫]ではなく[不貞行為]と記載しましょう。
(記載例)貴殿は、〇〇○○(以下、「請求者」といいます。)の夫である○○○○が既婚者であることを知りながら、令和○年○月から令和○年○月頃までの間、複数回にわたり不貞行為を行いました。
不貞行為によって精神的苦痛を受けたこと
不貞行為によって精神的苦痛を受けたことを記載しましょう。
不貞慰謝料は、不貞行為によって受けた精神的苦痛を慰謝するための金銭です。そのため、あなたが受けた精神的苦痛の大きさによって、認められる慰謝料の金額が変動します。
精神的苦痛の大きさは客観的に測れませんから、具体的な事実や事情を記載することが大切です。
例えば、以下のような事実や事情を具体的に記載すると良いでしょう。
- 配偶者の不倫によって心身に不調をきたして通院や服薬をしている
- 不貞行為が原因で別居している
- 不倫相手が配偶者に対して執拗にアプローチしていた
(記載例)貴殿の不貞行為により、請求者は多大なる精神的苦痛を受け、精神的に不安定となり、精神科を受診したところ、不貞を原因としたうつ病と診断され通院しております。
不貞行為が不法行為に該当すること
不貞行為が不法行為に該当することを記載しましょう。
不貞行為とは、配偶者以外の人と自由な意思に基づいて性的な関係を持つことで、民法上の不法行為に該当します。
そのため、あなたの平穏な夫婦生活を送る権利を侵害したといえる場合、不貞の当事者は、不貞行為によって生じた損害を賠償しなければなりません(民法第709条、第710条)。
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
引用:民法/e-Gov法令検索
なお、不貞行為にはセックスだけでなく、裸で抱き合う、オーラルセックスなどの性交類似行為も含まれます。
請求の法的根拠を明確に示すことで、不貞相手が自分に責任があることを認めやすくなるでしょう。
(記載例)本件不貞行為は不法行為に該当しますので、貴殿は請求者が受けた精神的苦痛について、その損害を賠償する責任を負います。
請求する慰謝料の金額
請求する慰謝料の金額を記載しましょう。
不貞慰謝料の金額は、法律で定められているわけではありません。不法行為によって損害を受けたあなたが、自由に決められます。
もっとも、不貞慰謝料には過去の裁判例から導き出された相場があり、その相場は50〜300万円程度です。不貞の悪質度や夫婦の離婚・別居の有無、不貞による妊娠の有無など、さまざまな事情を総合的に考慮して決められるため、相場を超える慰謝料が認められた裁判例もあります。
しかし、相場からあまりにかけ離れた慰謝料を請求すると、そもそも交渉のテーブルにすらついてもらえないおそれがあります。慰謝料の金額は、相場を参考に検討することをお勧めします。
(記載例)つきましては、貴殿に対し、慰謝料として金200万円を請求いたします。
不貞慰謝料の相場については「15の判例から見る不倫慰謝料の相場と増額のための3つのポイント」で詳しく解説しています。
振込期限・振込口座
振込期限・振込口座を記載しましょう。
振込期限を記載しても法的効力は発生しないものの、手続きを進める目安となります。一般的に、10日〜2週間程度の期限が設けられることが多いです。
振込により支払いを受ければ不貞相手と直接会わずに済みますし、取引履歴も残せるため、トラブルも防ぎやすくなります。振込手数料は不倫相手の負担とする旨も記載するのも良いでしょう。
(記載例)本請求書到着後2週間以内に、下記口座に振り込む方法によりお支払いください。
○○銀行○○支店
普通口座 口座番号○○○○○○○
口座名義人 ○○ ○○
振込口座を記載することに抵抗がある場合は現金を直接受け取る方法もありますが、銀行振込のように取引履歴が残らないため、領収書を発行することをお勧めします。
要求に従わない場合の措置
要求に従わない場合の措置を記載しましょう。
要求に従わない場合に予定している措置を記載すれば、あなたが本気で請求していることが不貞相手に伝わりやすくなるため、心理的なプレッシャーをかけられます。
期限までに支払いがない場合は、訴訟提起等の法的措置を講じる旨を記載すると良いでしょう。
(記載例)なお、期間内に慰謝料の支払いが確認できない場合は、訴訟提起等の法的措置を講ずることにいたしますので、ご承知おきください。
請求書を作成した日付
請求書を作成した日付を記載しましょう。
作成した日付がなければ、いつ請求したのか客観的に判断できません。
日付を記載することで、どの請求書に対して話しているのかも判別しやすくなります。
作成者(請求者)の氏名・住所
作成者(請求者)の氏名・住所を記載しましょう。
誰が請求しているのか明確にできます。
不貞相手が「慰謝料の支払いについて交渉したい」と思っても、住所の記載がなければ書面の送付先がわからないため、そのまま放置されることも考えられます。
請求者であるあなたの氏名・住所を必ず記載しましょう。
相手方(被請求者)の氏名・住所
相手方(被請求者)の氏名・住所を記載しましょう。
誰に対して請求しているのか明確にできます。
被請求者が特定されていない請求書を送付しても、支払いを受けるのは難しいです。
被請求者である不倫相手の氏名・住所を必ず記載しましょう。
なお、被請求者の敬称は[様]ではなく、[殿]とすることが多いです。
慰謝料請求の請求書を作成する際の留意点
慰謝料請求の請求書を作成する際は、以下の3点に留意しましょう。
- 事実を正確に記載する
- 不当な要求はしない
- 感情的な文言は避ける
以下で、詳しく解説します。
事実を正確に記載する
事実を正確に記載しましょう。
事実とは異なる内容を記載したり、事実を大げさに表現したりすると、あなたが不利な状況に立たされるおそれがあります。
請求書の作成する際は、請求の根拠となる不貞行為の事実を正確に記載することが大切です。
不当な要求はしない
不当な要求はしないようにしましょう。
相場からかけ離れた慰謝料を請求したり、引越や退職などを求めたりすると、要求に応えられないことを理由に請求を無視されるおそれがあります。
交渉をスムーズに進めるためにも、不当な要求を盛り込むことはやめましょう。
感情的な文言は避ける
感情的な文言は避けましょう。
脅迫や誹謗中傷と受け取られかねない言葉を記載すると、あなたが法的な責任を問われるおそれがあります。
「慰謝料を支払わなければ、不倫の事実を会社や家族に言いふらす」などの脅迫と受け取れるような表現や、相手の人格を否定するような文言は記載してはいけません。
慰謝料請求の請求書を送る際は内容証明郵便がお勧め
慰謝料請求の請求書を送る際は、内容証明郵便の利用をお勧めします。
内容証明郵便を利用する主なメリットは、以下の3つです。
- 書面の内容と送付の事実を証明できる
- 不貞相手に心理的なプレッシャーを与えられる
- 時効の完成を猶予できる
以下で、詳しく解説します。
書面の内容と送付の事実を証明できる
書面の内容と送付の事実を証明できます。
内容証明郵便とは、いつ、誰が、誰に、どのような内容の書面を送ったかを、日本郵便株式会社が証明するサービスです。
内容証明郵便を利用すれば書面の内容と送付の事実を証明できるため、「そんな手紙は受け取っていない」「そのような内容は記載されていなかった」などと反論される事態を防げます。
不貞相手に心理的プレッシャーを与えられる
不貞相手に心理的なプレッシャーを与えられます。
内容証明郵便を普段目することはあまりないでしょう。見慣れない形式の書面が届けば「無視したらまずいのではないか」との心理的な圧力がかかるでしょうから、何らかのリアクションを得られる可能性が高まります。
時効の完成を6か月間猶予できる
時効の完成を6か月間猶予できます。
不貞行為に基づく慰謝料請求権は、以下の期間が経過すると、時効により消滅します。
- 被害者が不貞の事実と不貞相手を知った時から3年
- 不貞行為の時から20年
時効が迫っている場合、内容証明郵便を送付することで、時効を6か月延長できます。
ただし、裁判外における時効の中断が利用できるのは1度のみのため、慎重に行う必要があります。
慰謝料請求権の消滅時効については「不倫慰謝料請求権には時効がある?慰謝料請求権の時効制度を徹底解説」で詳しく解説しています。
補足|送付先は相手方の自宅にする
請求書の送付先は、相手方の自宅にするのが原則です。
不貞相手の勤務先に送付して不貞の事実が職場の人に知れ渡った場合、あなたが名誉毀損で訴えられるおそれがあります。
不貞相手の住所がわからないとしても、安易に不貞相手の勤務先に送付するのは推奨できません。
不貞相手の住所がわからない場合の対処法は「内容証明は勤務先に送付してもいい?住所がわからない場合の対処法」をご参照ください。
慰謝料請求書テンプレート|内容証明郵便を利用する場合の記載例
内容証明郵便を利用する場合の請求書のテンプレートを紹介しますので、作成する際の参考にしてください。

なお、内容証明郵便には字数や行数に制限があります。日本郵便株式会社のウェブサイトにて書き方のルールなどを確認してから作成してください。
参照:内容証明 ご利用の条件等 – 日本郵便
まとめ
慰謝料請求の請求書を作成する際は、感情的な表現は避け、事実を正確に記載することが大切です。
必要な項目が記載できるか、脅迫や名誉毀損と捉えられかねない文言を記載していないか、落ち着いて確認しましょう。
ご自身での対応に不安を覚えたら、弁護士への相談も検討してみてください。
弁護士に依頼すれば、慰謝料請求書の作成だけでなく、解決までのすべての交渉・手続きを任せられます。あなたにかかる精神的・時間的な負担を最小限に抑えつつ、適正な慰謝料を獲得できる可能性が高まります。
慰謝料請求を弁護士に依頼したいとお考えなら、ぜひネクスパート法律事務所にご相談ください。
ネクスパート法律事務所は、リモートでのご相談にも対応しております。事務所に足を運ぶのが難しい方も、ぜひお気軽にお問い合わせください。
コラム監修者
SHIZU ISHIDA
所属:東京オフィス
広島県広島市出身。青山学院大学心理学科、東海大学法科大学院卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、刑事、民事、法人案件等幅広い分野の専門知識を習得。弁護士登録10年目にしてネクスパート法律事務所に入所し、現在は主に離婚事件に注力している。