更新日:2026年10月29日 (木)
公開日:2026年10月29日 (木)
B型肝炎給付金、特措法改正案が審議入り――対象拡大と期限はどうなる?
サマリー
B型肝炎特措法の改正案が衆院厚労委で審議入り。給付金の対象拡大や請求期限の見通し、申請要件・必要書類を弁護士が解説します。
B型肝炎訴訟の和解に基づき給付金を支給する特別措置法(特措法)の改正案が、国会で本格的な議論の俎上に載りました。
B型肝炎給付金の特措法、改正案が審議入り 衆院厚労委
出典:MEDIFAX web
2026年10月28日に配信された報道によれば、B型肝炎給付金の根拠法である特措法の改正案が衆議院厚生労働委員会で審議入りしたとのことです。現行の特措法は請求期限が定められており、これまでも期限延長や対象拡大のための改正が重ねられてきた経緯があります。今回の改正案の具体的な中身は今後の国会審議で明らかになっていく見通しですが、期限や対象者の範囲に変更が加えられる可能性があるため、該当する方・ご家族は制度の仕組みを改めて確認しておく必要があります。本稿では、B型肝炎給付金制度の基本的な仕組みと、申請にあたっての法的な注意点を解説します。
B型肝炎給付金制度の法的根拠と対象者
B型肝炎給付金は、正式名称を「特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法」(平成23年法律第98号、いわゆる特措法)といい、集団予防接種等の際の注射器の連続使用によってB型肝炎ウイルスに感染したとされる方を対象に、国との和解に基づき給付金を支給する制度です。これは、国家賠償法1条に基づく国の損害賠償責任を前提に、訴訟を経ずに一定の基準で救済を行う政策的な枠組みとして設けられました。
対象となるのは、(1)満7歳になるまでに集団予防接種等を受けたこと、(2)その際の注射器の連続使用があったと推定されること、(3)母子感染など他の感染原因が認められないこと、といった要件を満たす「一次感染者」、およびその配偶者や父母から母子感染した子などの「二次感染者」です。給付金の額は、病態(死亡・肝がん・肝硬変・慢性B型肝炎・無症候性キャリアなど)に応じて50万円から3600万円まで段階的に定められており、請求にあたっては感染の事実や病態を示す医療記録、母子健康手帳などの証拠資料の収集が不可欠です。給付金を受け取るためには、まず国を被告とする民事訴訟を提起し、国との間で和解を成立させる必要がある点が、この制度の大きな特徴です。
請求期限の延長の歴史と今回の改正審議の意味
特措法は制定当初、請求期限を施行日から5年(平成28年1月まで)と定めていましたが、周知不足などを理由にその後数次にわたり延長が行われ、現行法では請求期限は令和9年(2027年)3月末までとされています。今回、衆院厚生労働委員会で審議入りしたとされる改正案は、こうした過去の延長の流れを踏まえたものと位置づけられます。報道の時点では改正の詳細な条文内容までは明らかにされていませんが、請求期限の再延長や、給付対象の範囲・立証方法に関する見直しが議論される可能性があるため、国会審議の行方を継続的に注視する必要があります。
なお、期限延長が行われるたびに、延長前に時効消滅の懸念があった方の権利が実質的に救済されてきた経緯があります。もっとも、民法上の一般的な権利消滅の問題として、既に除斥期間や消滅時効の主張が国側からなされるケースも過去には存在しており、特措法の期限内であっても早期の提訴・手続き着手が望ましいことに変わりはありません。改正の帰趨を待って手続きを先延ばしにすることは、証拠の散逸(カルテの保存期間切れなど)のリスクを高める点にも注意が必要です。
給付金請求の具体的な流れと注意点
B型肝炎給付金を受け取るための手続きは、大きく分けて(1)証拠資料の収集、(2)国を被告とする給付金請求訴訟の提起、(3)国との和解、(4)社会保険診療報酬支払基金への給付金等支給請求、という4段階を経ます。訴訟といっても、要件を満たすことが客観的資料で確認できれば、比較的短期間で和解に至るケースも少なくありません。
もっとも、母子健康手帳が残っていない場合や、幼少期のカルテが破棄されている場合には、感染経路の立証が難航することがあります。このような場合でも、肝炎ウイルス検査の結果や、きょうだいの感染状況、医学的知見に基づく推定などを組み合わせて立証を試みる余地があり、証拠が十分にそろっていないと自己判断で諦める前に、専門家に相談して立証の可能性を検討することが重要です。また、死亡した感染者の相続人が給付金を請求できる場合もあり、請求権者の範囲についても丁寧な確認が求められます。
まとめ
B型肝炎給付金の特措法改正案が衆院厚労委で審議入りしたとの報道は、制度の対象者やご遺族にとって見逃せない動きです。現行の請求期限が迫る中で、改正の内容次第では期限延長や対象拡大がなされる可能性がありますが、それを待つのではなく、今できる証拠収集と手続きの準備を早めに進めておくことが、確実な救済につながります。
ご自身やご家族がB型肝炎給付金の対象となるか分からない、必要な資料が見つからない、特措法改正の動向を踏まえた手続きの進め方を知りたいといったことでお困りの場合は、弁護士法人ネクスパート法律事務所までご相談ください。
コラム監修者
佐藤 塁
所属:代表(東京オフィス)
東京都杉並区出身。明治大学付属中野高校、明治大学法学部を経て、明治大学法科大学院を修了。2011年に新司法試験に合格し、最高裁判所司法研修所を修了(65期)。2012年12月に弁護士登録(東京弁護士会)し、都内の法律事務所での勤務を経て、2016年1月に寺垣俊介とともにネクスパート法律事務所を創業。代表弁護士として一般民事から企業法務まで幅広い分野を手がけるとともに、全国に拠点を持つ事務所の経営にあたる。
早くからテクノロジーと法務の融合に取り組み、2021年にはAIを利用した法律文書作成サービスを開発するLegal AI株式会社の代表取締役に就任(現在は退任)。当時はAI技術が発展途上で技術的な壁に直面したが、この挑戦を通じて「法務業務こそAIの力を借りれば飛躍的に変わる」という確信を得る。以来そのビジョンを持ち続け、生成AIが広く普及した現在は事務所の業務全体でAIの活用を進めている。2026年には日本弁護士連合会「弁護士業務改革シンポジウム」にパネリストとして登壇した。ブロックチェーン・Web3分野の法務や海外法人の設立支援にも取り組み、公益法人主催のセミナー等で講師を務める。
公正取引委員会・中小企業庁「適正取引推進講習会」講師、日本弁護士連合会代議員、東京弁護士会常議員を歴任。弁護士業務のかたわら、2014年に東京青年会議所に入会して以来、10年以上にわたりボランティア活動に取り組む。2017年からは国際的な社会奉仕団体であるライオンズクラブに所属し、2022年には東京数寄屋橋ライオンズクラブ第57代会長を務めた。献血の呼びかけ、障がい者スポーツ大会の支援、保護犬活動のほか、弁護士として小中学生への法教育や薬物乱用防止教育にも携わっている。