解決結果のサマリー
※プライバシー保護のため、事例の内容は特定できないよう一部変更し、金額は概数で記載しています。
※解決結果は個別の事案の内容に基づくものであり、同種の結果を保証するものではありません。
事例の概要
ご依頼者のAさんは、20代の会社員女性です。仕事を通じて知り合った既婚男性Bさんと数か月の関係があり、関係が終わった後に、Bさんの妻Cさんの代理人弁護士から勤務先に連絡があり、続いて慰謝料200万円を求める内容証明が届きました。当事務所は受任後、謝罪の意向を伝えるとともに相手方ご夫婦の別居・離婚の有無とBさん本人への請求の有無を照会。別居中でBさんへの請求はないとの回答を踏まえ、求償権を放棄する条件で50万円を提示しました。相手方は、今後離婚に至る可能性があるため求償権を放棄する形での解決は望まないとして、150万円・求償権放棄なしを提示。当事務所は金額を受け入れる代わりに、Aさんの支払能力に合わせて頭金と月々の分割を提案し、相手方が求めた公正証書の作成を含めて合意しました。担当は北條さやか弁護士です。
請求200万円に対し、合意額は150万円。支払いは頭金を置いたうえで月々一定額の分割で1年半ほどとし、現在も履行を続けています。手続はすべて代理人間の書面のやり取りで進み、公正証書の作成には双方の代理人が公証役場に出向いたため、Aさん本人が出向く必要はありませんでした。
ご相談時の課題
表面上の課題
- 相手方に弁護士が付き、勤務先への連絡の後に200万円の内容証明が届いた
- 相手方夫婦は別居に至っており、金額が高くなる事情があった
- 20代の会社員で、一括で払える金額ではなかった
- 弁護士費用も含め、支払い方法そのものが課題だった
本当の課題は3つ
- 求償権放棄が通る事案かどうか——求償権放棄を条件に金額を下げる提案は、相手方が配偶者への請求を避けたい場合に効きます。一方で、相手方が離婚を見据えている場合、配偶者に請求が及ぶことを気にしないため、この提案は通りにくくなります
- 支払能力に合わせた分割の設計——月々確実に払える額を確保しなければ、合意しても履行が滞ります。頭金と月額、期間をどう組み合わせるかが、金額そのものと同じくらい重要でした
- 公正証書の扱い——分割払いでは、相手方が履行の担保として公正証書を求めることがあります。作成する場合、期限の利益喪失条項の内容や清算条項の書き方まで、条項の攻防が続きます
Aさんはご相談時に「通知書は昨日受け取った」「彼とは連絡を取っていない」「弁護士介入希望」と話されていました。
ご依頼中のやりとり——Aさんはどうサービスを使ったか
弁護士の対応
(1) 前提事実を照会し、求償権放棄を条件に提示する
受任後、当事務所は謝罪の意向を伝えるとともに、相手方ご夫婦が別居や離婚に至っているか、Bさん本人に慰謝料を請求しているかを照会しました。相手方からは、現在別居中で、Bさんへの請求は現時点ではしていないとの回答がありました。これを踏まえ、当事務所は求償権を放棄して50万円を提示しました。
(2) 求償権放棄が「通らない」事案だと分かる
相手方は、別居を解消する予定はなく、離婚も検討しているため、今後離婚に至る可能性があり、求償権を放棄した形での解決は望まないと回答。少なくとも200万円の請求権があるとしつつ、早期解決のため150万円・求償権放棄なしを提示しました。求償権放棄を交換材料にする提案は、相手方が配偶者への請求を避けたい場合に効きますが、離婚を見据えている相手方には効きにくい——その構造が、書面で明確になった場面です。
(3) 金額を受け入れ、分割の形を組み立てる
当事務所は、150万円を受け入れる代わりに、一括での支払いは難しいとして、頭金を置いたうえで残額を月々の分割とする案を提示しました。相手方は、分割自体には応じる意向を示しつつ、期間が長いため月額の増額か頭金の増額を求め、あわせて公正証書での作成を希望。当事務所は月額を引き上げた案を再提示し、相手方がこれを応諾しました。20代の収入で確実に払い続けられる額を、頭金と月額と期間の組み合わせで確保した形です。
(4) 公正証書の条項を詰め、代理人が公証役場へ
相手方から公正証書の案が届き、支払いを1回でも怠れば残額を一括で支払う期限の利益喪失条項と遅延損害金、接触禁止、強制執行の承諾が置かれていました。当事務所は、期限の利益喪失の要件を「2回以上怠り、かつ未払額が一定額に達したとき」に緩和する案と、一定期間内に公正証書ができなければ合意を無効とする条項を提案。相手方は期限の利益喪失を「1回でも」に戻し、清算条項を完済を条件とする形に修正しました。公証人からも、強制執行の要件を明確にするため不払いの回数を明記することが望ましいとの助言があり、最終的に「1回でも」で確定しています。当事務所はAさんに委任状と印鑑証明書を郵送で用意してもらい、双方の代理人が公証役場に出向いて公正証書を作成しました。分割案の応諾から作成まで1か月あまりです。
この解決のポイント
- 公正証書の条項を詰め、代理人が公証役場に出向くことで、本人の負担を最小限にしたこと
ご依頼中のやりとり——Aさんはどうサービスを使ったか
- 受任後、相手方からの連絡はすべて事務所へ
- 照会の結果と、求償権放棄を条件とする提示について説明を受けて確認
- 相手方の回答を受け、月々払える額と頭金の目安を率直に共有して分割案の土台に
- 公正証書の条項の意味と手続の説明を受け、委任状・印鑑証明書を郵送で用意。締結後は月々の分割を継続中
解決結果
ご依頼前、Aさんは200万円という金額と、20代の収入で一括では払えないという現実の間で、見通しが立たない状態でした。
解決時には、金額は200万円から150万円へ。支払いは頭金を置き、以後は月々一定額の分割で1年半ほどとし、Aさんは現在も無理のない範囲で履行を続けています。合意は公正証書で作成され、支払いを怠った場合の期限の利益喪失と遅延損害金、相手方とその家族への接触禁止、完済を条件とする清算条項が置かれました。公正証書の作成には双方の代理人が公証役場に出向き、Aさんは委任状と印鑑証明書を郵送で用意するだけで済んでいます。
担当弁護士からのコメント(北條さやか弁護士)
求償権を放棄する代わりに金額を下げる提案は、相手方が配偶者への請求を避けたい場合に効きます。しかし、相手方が離婚を見据えている場合には、配偶者に請求が及ぶことを気にしないため、この提案は通りにくくなります。本件では、相手方の回答からその構造を見極め、金額を受け入れる代わりに、支払能力に合わせた分割を組み立てました。公正証書の作成では、期限の利益喪失の要件や清算条項の書き方まで条項の攻防が続きます。分割払いは、金額と同じくらい設計が結果を左右します。
この事例に関するよくある質問
Q1. 求償権を放棄すれば金額が下がると聞きました。必ずそうなりますか?
必ずではありません。求償権放棄は、相手方が配偶者への請求を避けたい場合に交換材料になります。相手方が離婚を見据えている場合には、配偶者に請求が及ぶことを気にしないため、通りにくくなります。本事例では、相手方が今後の離婚の可能性を理由に求償権放棄なしの150万円を提示し、当方はこれを受け入れて分割の設計に切り替えました。
Q2. 分割払いにすると、公正証書を作らなければなりませんか?
相手方が履行の担保として公正証書を求めることがあります。作成する場合、期限の利益喪失条項や遅延損害金、強制執行の承諾などが置かれるのが通常です。本事例では、相手方の求めで公正証書を作成し、条項の内容は代理人間で詰めました。
Q3. 公正証書を作るとき、本人が公証役場に行く必要がありますか?
代理人が出向く形にできます。本事例では、依頼者は委任状と印鑑証明書を郵送で用意し、双方の代理人が公証役場に出向いて作成しました。
Q4. 20代で収入が少なくても、解決できますか?
支払能力は、支払い方法を決めるうえで重要な事情です。月々確実に払える額を確認し、頭金と月額、期間を組み合わせることで、相手方が受け入れる分割にまとめられることがあります。本事例では、頭金を置いたうえで月々一定額の分割で1年半ほどとし、150万円で合意しました。