解決結果のサマリー
※プライバシー保護のため、事例の内容は特定できないよう一部変更し、金額は概数で記載しています。
※解決結果は個別の事案の内容に基づくものであり、同種の結果を保証するものではありません。
事例の概要
ご依頼者のAさんは、女性です。既婚男性Bさんとの関係について、Bさんの妻Cさんの代理人弁護士から突然電話があり、関係の有無を問われたうえで、慰謝料500万円を一括か分割かで支払うよう求められました。書面は届いていません。当事務所は受任後、受任通知で窓口を代理人に一本化し、相手方ご夫婦の別居・離婚の有無とBさん本人への請求の有無を照会。別居に至っており、Bさんからの受領はないとの回答を踏まえ、求償権を放棄する条件で請求額の1割台を提示しました。相手方は請求額に近い額を示して反論し、以後、当事務所は求償権を放棄しない場合と放棄する場合(概ね半額)の二段階提示を維持。相手方が段階的に金額を下げてくる間も提示を動かさず、最終局面で、合意書に接触禁止条項を置かないことを条件に180万円で合意しました。担当は北條さやか弁護士です。
電話で求められた500万円に対し、合意額は180万円(約64%減)。支払いは一括で、受任から締結まで数か月。手続はすべて代理人間の書面のやり取りで進み、訴訟にはなっていません。
ご相談時の課題
表面上の課題
- 書面が届く前に、相手方代理人から電話で500万円を求められた
- 相手方夫婦は別居に至っており、金額が高くなる事情があった
- 相手方は関係が続いていると主張し、悪質性を強調していた
- 500万円という金額が妥当なのか分からなかった
本当の課題は3つ
- 別居事案の水準をどこに置くか——別居に至っている事案は、婚姻関係が継続している事案より慰謝料が高くなる傾向があります。相手方はその点を強調していました。一方で、裁判例の水準を根拠に、請求額との差を示す余地がありました
- 求償権をどう使うか——Aさんが支払った後にBさんへ負担を求める権利(求償権)を放棄するかどうかは、相手方にとっての利益を左右します。相手方が求償権放棄を条件としない意向であれば、放棄しない側の金額で交渉が進むことになります
- 提示を動かさない設計——相手方が段階的に金額を下げてくる場合、こちらも刻んで応じれば落としどころが相手方のペースで決まります。二段階の提示を維持し、動かすタイミングを最後に絞る必要がありました
Aさんはご相談時に「慰謝料請求をされまして、相談させていただきたいです」「500万と高額でしたので、減額できないかご相談させて頂きたいです」と話されていました。
ご依頼中のやりとり——Aさんはどうサービスを使ったか
- 電話で500万円を求められた後、Webフォームから相談し、依頼
弁護士の対応
(1) 受任通知で窓口を一本化し、事実を照会する
受任後、当事務所は受任通知を送り、以後の連絡を当職宛にするよう求めました。続けて、相手方ご夫婦が別居や離婚に至っているか、Bさん本人に慰謝料を請求し受け取っているかを照会。相手方からは、別居に至っていること、Bさんから受領した金銭はないことの回答がありました。
(2) 二段階提示を組み立てる
回答を踏まえ、当事務所は、別居に至っていることを前提に、求償権を放棄する条件で請求額の1割台を提示しました。相手方は、婚姻期間や家庭への影響などを挙げて請求額に近い額を示し、あわせて、求償権放棄を条件としない意向を示しました。当事務所は深く反省し謝罪する意向を伝えたうえで、相手方の提示は裁判例に照らして高額であるとして、求償権を放棄しない場合の額と、放棄する場合はその概ね半額という二段階で提示し直しました。
(3) 相手方が段階的に下げる間も、提示を動かさない
相手方は、段階的に金額を引き下げ、訴訟になれば高額の判決が見込まれるとして、金額の法的根拠を示すよう求める当方の書面にも応じませんでした。当事務所は二段階の提示を維持し、相手方が200万円前後を示した段階でも動かさず、相手方がさらに引き下げて最終提示とした時点で、初めて放棄しない側の額をわずかに引き上げました。
(4) 接触禁止条項を置かないことを条件に、180万円で締結
相手方が最終提示を維持したため、当事務所は、合意書にBさんとの接触禁止条項を置かないことを条件に、相手方の最終提示額である180万円で応じる旨を回答。相手方はこれを受け入れ、接触禁止条項のない合意書案を送付してきました。当事務所は条項を確認して応諾し、双方が記名押印して締結。Aさんは期限内に一括で振り込みました。
ご依頼中のやりとり——Aさんはどうサービスを使ったか
- 照会の結果と二段階提示の方針について説明を受け、金額を確認
- 相手方の提示が変わるたびに報告を受け、提示を動かさない方針を確認
- 接触禁止条項を置かない条件の意味の説明を受けて判断し、締結後は期限内に一括で振り込み
解決結果
ご依頼前、Aさんは電話で告げられた500万円を前に、相手方代理人からの連絡に自分で対応しなければならない状態でした。
解決時には、金額は500万円から180万円へ。二段階提示を維持し、最終局面で接触禁止条項を置かないことと引き換えに合意しました。合意書には、不貞の事実の確認、損害賠償債務としての180万円の一括払い、清算条項が置かれ、求償権の放棄条項も接触禁止条項も含まれていません。Aさんは期限内に振り込んで終結し、受任通知の後、相手方からAさん本人への連絡はなくなりました。受任から締結まで数か月です。
担当弁護士からのコメント(北條さやか弁護士)
別居に至っている事案では、相手方は婚姻関係への影響を強調し、高い金額を示してくることが通常です。それでも、裁判例の水準と請求額の間には差があります。本件では、求償権を放棄しない場合と放棄する場合の二段階で提示を組み立て、相手方が段階的に下げてくる間も動かさず、最後に接触禁止条項を置かないことと金額を交換して合意しました。何を交換材料にし、いつ動くかを決めておくことが、交渉の設計です。
この事例に関するよくある質問
Q1. 相手方夫婦が別居しています。慰謝料は高くなりますか?
別居に至っている事案は、婚姻関係が継続している事案より慰謝料が高くなる傾向があります。ただし、請求額がそのまま認められるわけではなく、裁判例の水準との差を根拠に交渉する余地があります。本事例では、別居中の事案で500万円の請求が180万円での合意となりました。
Q2. 「求償権を放棄しない場合」と「放棄する場合」で金額を分けて提示するのはなぜですか?
求償権は、あなたが支払った後に不倫相手へ負担を求める権利です。放棄すれば相手方の配偶者に請求が及ばないため、相手方にとって利益があります。二段階で提示すれば、相手方がどちらを重視するかによって、金額の落としどころを整理できます。本事例では、相手方が求償権放棄を条件としなかったため、放棄しない側の額で合意しました。
Q3. 相手が少しずつ金額を下げてきます。こちらも応じるべきですか?
事案によりますが、刻んで応じると落としどころが相手方のペースで決まりやすくなります。本事例では、二段階の提示を維持し、相手方が最終提示とした時点で初めて動かしました。どこで動くかは、代理人と相談して決めることをお勧めします。
Q4. 合意書の条項は、金額と引き換えに交渉できますか?
できます。接触禁止や求償権放棄などの条項は、相手方にとっての利益であり、金額と一体で交渉する材料になります。本事例では、接触禁止条項を置かないことを条件に、相手方の最終提示額で応じました。