解決結果のサマリー
※プライバシー保護のため、事例の内容は特定できないよう一部変更し、金額は概数で記載しています。
※解決結果は個別の事案の内容に基づくものであり、同種の結果を保証するものではありません。
事例の概要
ご依頼者のAさんは、20代の独身男性です。仕事を通じて知り合った女性Bさんと交際していたところ、Bさんの婚約者であるCさんの弁護士から、婚約関係を侵害する不法行為にあたるとして、慰謝料150万円に弁護士費用相当額を加えた165万円を求める通知が届きました。不倫(既婚者との関係)ではなく、婚約者のいる相手との交際を理由とする請求です。当事務所は受任後、Aさんが当初Bさんの婚約を知らなかったこと、知った後も関係が解消に向かうと理解していたことなど、婚約の事実を知っていたかどうか(故意・過失の有無)を争点として事実を主張し、Aさんが支払った後にBさんへ負担を求める求償権を行使しないことを条件に、相手方が示した額の半額にあたる65万円で合意。相手方の合意書案には接触に関する条項がなかったため、依頼者保護の観点から接触禁止条項を当方から加えるよう求め、締結に至りました。担当は北條さやか弁護士です。
請求165万円に対し、合意額は65万円(約6割減)。支払いは一括で、すでに履行を終えています。手続はすべて代理人限りの書面交渉で進み、訴訟にはなっていません。
ご相談時の課題
表面上の課題
- 相手方に弁護士が付き、婚約関係の侵害を理由に165万円の請求が届いた
- 相手は既婚者ではなく婚約者のいる相手であり、慰謝料を払う必要があるのか分からなかった
- 交際当初は、相手に婚約者がいることを知らなかった
- 請求には弁護士費用相当額まで含まれていた
本当の課題は3つ
- 婚約関係の侵害で慰謝料が生じるかの整理——既婚者との不貞だけでなく、婚約関係を侵害した場合にも損害賠償が問題になり得ます。まず、本件でどこまで責任が生じ得るのかを整理する必要がありました
- 婚約を知っていたかどうか(故意・過失)——婚約関係の侵害で責任が生じるには、婚約の事実を知っていたか、知り得たことが前提になります。Aさんがいつ、どのように婚約を知ったのかが、最大の争点でした
- 共同責任者との負担の整理——Bさんもまた責任を負い得る立場です。求償権をどう扱うかが、金額と一体の論点でした
ご依頼中のやりとり——Aさんはどうサービスを使ったか
- 請求が届いた段階で相談・依頼し、以後の相手方対応はすべて事務所へ
弁護士の対応
(1) 婚約の認識を争点に、事実を主張する
受任後、当事務所は、Aさんが交際当初はBさんの婚約を知らなかったこと、知った後も関係が解消に向かうと理解していたことなど、婚約の事実の認識に関わる事実を整理して主張し、ごく低額の解決金を提示しました。相手方は、Aさんが婚約を知り得た事情を挙げて反論し、請求額から一定程度下げた額を示してきました(交渉途中の金額は概数です)。
(2) 反論を続けつつ、Bさんへの請求の有無を照会する
当事務所は、相手方の主張に対して事実関係を反論するとともに、CさんがBさんにも請求しているかを照会しました。そのうえで、Aさんが支払った後にBさんへ負担を求める求償権を行使しないことを前提に、一定額までなら応じる旨を提示しました。
(3) 求償権不行使を条件に、相手方が「半額」を示す
相手方は、反論はあるとしつつも解決を優先し、求償権を行使しないことを前提とするなら、それまで示していた額の半額にあたる65万円で応じる旨を示してきました。当事務所はAさんの意向を確認のうえ、これを受け入れました。
(4) 接触禁止条項を当方から加えて締結
相手方が作成した合意書案には、接触に関する条項が置かれていませんでした。当事務所は依頼者保護の観点から、相互に接触しない条項を加えるよう要請。相手方はこれに応じ、条項を盛り込んだ合意書で締結に至りました。支払う側であっても、自分を守る条項を求めることはできます。
ご依頼中のやりとり——Aさんはどうサービスを使ったか
- 交際の経緯と、婚約をいつ・どのように知ったのかを整理して共有し、主張の土台に
- 求償権を行使しない条件の意味の説明を受け、提示方針を確認
- 相手方の提示と、接触禁止条項を加える方針について説明を受けて判断
解決結果
ご依頼前、Aさんは「不倫ではないのに慰謝料を請求された」という戸惑いと、165万円という金額への不安を抱えていました。
解決時には、金額は165万円から65万円へ。婚約を知っていたかどうかを争点に事実を主張し、求償権を行使しないことを条件に、相手方が示した額の半額で合意した結果です。合意書には、相手方の当初案にはなかった相互の接触禁止条項を当方から加え、清算条項で紛争を終結させました。支払いは一括で、すでに履行を終えています。相手方本人とAさんが直接やり取りする場面はありませんでした。
担当弁護士からのコメント(北條さやか弁護士)
「相手は既婚者ではないのに、慰謝料を請求された」というご相談があります。婚約関係を侵害した場合にも損害賠償が問題になり得ますが、その前提は、婚約の事実を知っていたか、知り得たことです。本件では、いつ・どのように婚約を知ったのかを争点に事実を主張し、求償権を行使しないことを条件に、相手方の提示額の半額で解決しました。不倫と似た請求でも、争点は異なります。まずは、責任が生じ得る範囲の整理からご相談ください。
この事例に関するよくある質問
Q1. 相手は既婚者ではなく婚約者がいるだけです。それでも慰謝料を払うのですか?
婚約関係を侵害した場合にも、損害賠償が問題になり得ます。ただし、その前提として、婚約の事実を知っていたか、知り得たことが必要です。本事例では、この点を争点に事実を主張し、165万円の請求が65万円での合意となりました。結果は事案によって異なります。
Q2. 交際当初は婚約を知りませんでした。責任はありますか?
婚約の事実を知らず、知り得なかった期間については、責任が生じないと主張できる余地があります。いつ・どのように知ったのか、知った後にどう対応したのかが重要です。本事例でも、これらの事実を整理して主張しました。
Q3. 慰謝料を払ったら、交際相手にも負担してもらえますか?
共同で責任を負う者の一方が支払った場合、他方へ負担を求める求償権が問題になります。本事例では、求償権を行使しないことを条件に金額を引き下げる形で合意しました。求償権の扱いは、金額と一体で交渉できます。
Q4. 支払う側なのに、こちらから条項を追加できるのですか?
はい。合意書の条項は双方が交渉するものであり、支払う側であっても自分を守る条項を求めることができます。本事例では、相手方の合意書案に接触に関する条項がなかったため、当方から相互の接触禁止条項を加えました。