更新日:2026年11月4日 (水)
公開日:2026年11月4日 (水)
商標権侵害していると警告されてしまったときは?リスクと初期対応をご紹介!
サマリー
商標権侵害が疑われた場合、放置すると差止請求、損害賠償請求、信用回復措置のほか、商標法78条の刑事罰や82条の両罰規定による法人への罰則が科されるおそれがあります。本記事では、警告書が届いた段階での初期対応の重要性、コンセント制度の活用、裁判に移行した場合の裁判例、弁護士に相談するメリットをQ&A形式で解説します。
自社の商品名やパッケージが、他社の商標権を侵害しているかもしれないと不安に思われる経営者や法務担当者の方は少なくありません。万が一、商標権侵害が疑われる場合、どのようなリスクが生じるのでしょうか。本記事では、商標権侵害のリスクや、警告書が届いた際の初期対応の重要性について解説します。
商標権侵害のリスク・ペナルティ
Q.自社で販売している商品の名称が、他社の登録商標に類似しているのではないかと懸念しています。もし商標権侵害を指摘された場合、具体的にどのようなペナルティやリスクが生じるのでしょうか。また、実際に警告書などが届いた際にはどう対応すべきか教えてください。
A.商標権侵害が疑われた場合、放置すると損害賠償請求や刑事罰など、企業にとって非常に重いリスクが生じる可能性があります。しかし、警告書が届いた段階で適切な初期対応を行えば、相対的にダメージを抑えられる傾向にあります。
商標権侵害における法的な根拠と考え方
商標権を侵害した場合、商標法に基づき以下の措置や罰則が科されるおそれがあります。
商標法に基づく3つの回復措置
商標権者から権利侵害が主張された際の回復措置として、主に以下の3つが挙げられます。
- 差止請求(商標法第36条)
対象となる商品の販売停止や、製造したパッケージの廃棄などを求められます。 - 損害賠償請求
侵害によって商標権者が受けた損害の賠償を求められます。損害額の算定は商標法第38条等に基づき行われ、侵害者が譲渡した商品の数量に応じた額が基準となることがあります。また、特許法第105条の規定を準用し(商標法第39条)、相当な損害額が認定される場合もあります。 - 信用回復措置(商標法第39条・特許法第106条準用)
謝罪広告の掲載など、商標権者の業務上の信用を回復するための措置を命じられることがあります。
法人に科される重い刑事罰と両罰規定
商標権侵害には、刑事罰も規定されています。商標法第78条では、商標権を侵害した者に対し「10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方」が科される旨が定められています。さらに、第82条の「両罰規定」により、行為者個人だけでなく法人に対しても非常に重い罰則が科されることが想定されます。
警告書が届いた場合の対応とコンセント制度の活用
商標権侵害が疑われた場合、まずは商標権者から警告書等の通知が届くのが一般的です。警告書の段階では、商品の販売や商品名使用の差止請求が要求されることが多いと考えられます。この段階で対象となるパッケージの廃棄や在庫処分といった初期対応を迅速に行うことで、事態の悪化を防ぎ、ダメージを少なくすることが期待できます。
また、将来的な商標登録も見据える場合、「コンセント制度」の利用も選択肢となります。これは、先行登録商標権者の承諾(コンセント)を得ており、かつ両者の商標間で混同を生ずるおそれがないと認められる場合には、類似する商標でも登録が認められる制度です。抵触リスクを考慮し、相手方との合意形成を目指すことも一つのアプローチとなります。
類似ケースでの注意点(裁判に移行した場合の裁判例)
警告書による交渉で合意に至らなかった場合、裁判へ移行する場合もあります。
実際に商標権侵害が争われた事例として、医薬品の製造販売を行うA社が製品を販売していたのに対し、健康補助食品などを扱うB社が類似する名称を用いたとして争われたケースがあります(平成15年(ワ)11661号商標権侵害差止等請求事件)。
この裁判では、「自社の登録商標と類似する名称を用いて、ダイエット効果を謳う健康補助食品を販売した」として商標権侵害が認められました。その結果、裁判所は侵害側に対し、名称の使用差し止めや謝罪広告の掲載、および約100万円の損害賠償の支払を命じています。
弁護士に相談するメリット
商標権侵害の警告を受けた際、自社の行為が本当に侵害に当たるのか、法的なリスクを正確に評価する必要があります。経験豊富な弁護士がサポートすることで、状況に応じた最適な解決策をご提案します。商標権者との交渉やコンセント制度の活用に向けた対応についても、企業への不利益を最小限に抑えるためのアドバイスが可能です。
まとめ・ご相談はネクスパート法律事務所へ
商標権侵害に関するポイントを整理します。
- 商標権侵害には、差止請求や損害賠償、さらには法人への刑事罰といった重大なリスクが存在します。
- 警告書が届いた段階での迅速な初期対応が、被害拡大を防ぐために重要となります。
- 場合によっては、コンセント制度を利用して商標権者から合意を得る解決方法も検討されます。
ネクスパート法律事務所では、他社からの商標権侵害に関する警告書への対応、商標法に基づくリスク診断、コンセント制度の利用に向けた合意交渉といった企業法務・知的財産関連のご相談を承っております。お気軽にお問い合わせください。
※本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。具体的な対応については弁護士にご相談ください。
コラム監修者
寺垣 俊介
所属:代表(東京オフィス)
広島県広島市出身。修道中学・高校を経て、慶應義塾大学商学部で経営・会計・商取引を学ぶ。その後、青山学院大学法科大学院を修了して2011年に新司法試験に合格し、最高裁判所司法研修所を修了(65期)。2013年1月に第二東京弁護士会に弁護士登録し、都内法律事務所で個人・法人を問わず幅広い分野の相談・交渉に取り組む。
2016年1月に佐藤塁と共にネクスパート法律事務所を創業し、共同代表として、東京オフィスを拠点に、企業のコーポレート法務、M&A・事業承継、薬事・医事法務を中心に取り扱う。商学部で培った経営の視点を生かし、法的な可否にとどまらず、事業への影響や実行可能性まで含めた選択肢を示すことを重視している。
また、一般社団法人薬機法医療法規格協会の代表理事、一般社団法人日本美容サロン協議会の監事、一般社団法人睡眠ヘルスケア協議会の外部有識者(認証評価委員)を務め、医療・美容・ヘルスケア分野の広告規制や業界の自主的なルールづくりにも関わっている。依頼者に最適な見通しと戦略的な解決策を示すことを信条とし、丁寧かつ粘り強い対応で信頼を築いている。