更新日:2026年11月2日 (月)
公開日:2026年11月2日 (月)
改正公益通報者保護法が12月から施行!実際何が変わる?企業がとるべき対応とは
サマリー
2026年(令和8年)12月1日より、企業のコンプライアンス体制に大きな影響を与える「公益通報者保護法」の改正が施行されます。新たにフリーランスが保護対象に加わるなど、実務に直結する変更が多数盛り込まれました。これに違反した場合の罰則として、新たに企業への刑事罰が拡充されました。企業の経営者・法務担当者の方々がいま知っておくべきポイントをお伝えします。
この記事のポイント
- 2026年(令和8年)12月1日施行の改正により、現在業務を受託しているフリーランスだけでなく、委託が終了してから1年以内のフリーランスも、不利益取扱い禁止の保護対象に加わります。
- 常時使用する労働者数が301名以上の事業者は、行政からの勧告に従わない場合などに刑事罰(30万円以下の罰金など)の対象となり、立入検査の権限も新設されました。
- 通報から1年以内に行われた解雇や懲戒は「公益通報を理由としてされたもの」と推定され、裁判などで争われる場合には、事業者側が「公益通報を理由として行われたものではない」ことを客観的な証拠で立証する必要があります。
- 通報を妨げる合意や通報者探しも禁止されます。企業は内部通報規程や運用フローを見直し、管理職を含めた社内全体に周知・教育していく対応が求められます。
パワハラ・セクハラ、データの改ざんなど、企業不祥事が社会問題として目を向けられるなか、組織内の不正を早期に発見して自浄作用を働かせる「内部通報制度」の重要性が高まっています。一方で、「通報すると不利益を受けるのでは」と懸念する声も少なくありません。
2026年(令和8年)12月1日より、企業のコンプライアンス体制に大きな影響を与える「公益通報者保護法」の改正が施行されます。新たにフリーランスが保護対象に加わるなど、実務に直結する変更が多数盛り込まれました。
これに違反した場合の罰則として、新たに企業への刑事罰が拡充されました。企業の経営者・法務担当者の方々がいま知っておくべきポイントをお伝えします。
そもそも公益通報者保護法とは?
公益通報者保護法とは、いわゆる内部告発(公益通報)を行った労働者を、解雇や減給などの不利益な取扱いから保護するための法律です。この法律は、労働者が事業者内部の法令違反行為を安心して通報できる環境を整えることで、国民の生命や身体、財産などの利益を守り、企業によるコンプライアンス(法令順守)経営を支援することを目的とするものです。
同法では、どのような通報が保護の対象となるかや、事業者がとるべき内部通報対応体制の整備についても定められています。近年、企業の不祥事が社会問題となるなか、被害を未然に防ぎ、自浄作用を働かせるための有意義な制度として機能してきました。適切な内部通報窓口を設けることは、企業が社会的信用を維持するうえで不可欠な取り組みとされています。
2025年(令和7年)改正の4つの重要ポイント
2026年(令和8年)12月1日に施行される公益通報者保護法の改正では、これまでの保護の枠組みがさらに強化されます。企業の実務に大きな影響を与える主な改正ポイントは以下の4点です。
- 公益通報者の範囲拡大(フリーランスの追加)
- 体制整備義務違反に対する罰則の新設と立入検査
- 不利益な取扱いの抑止・救済の強化(立証責任の転換)
- 通報の阻害行為および特定行為の禁止
それぞれの詳細について整理します。
ポイント1|公益通報者の範囲拡大(フリーランスの追加)
改正前の公益通報者保護法においては、保護の対象となるのは主に労働者や退職者、役員とされていましたが、今回の改正により、フリーランスも新たに公益通報者として不利益取扱い禁止の保護対象に加えられます(2条、5条)。
また、現在業務を受託しているフリーランスだけでなく、委託が終了してから1年以内のフリーランスも対象となります。これにより、雇用契約によらない多様な働き方をする人々も、不利益を被ることなく法令違反を通報できる扱いとなります。フリーランスを活用することも増えてきた昨今、企業側は、自社の従業員だけでなく、外部の委託先も通報制度の対象になり得ることを認識しておく必要があります。
ポイント2|体制整備義務違反に対する罰則の新設と立入検査
公益通報に適切に対応するため、事業者は内部通報窓口を整備するなどの体制整備が求められています。改正法では、常時使用する労働者数(=アルバイトやパート、派遣社員等の非正規社員も含め、雇用形態を問わず継続して使用している労働者の数)が301名以上の事業者に対して、行政からの勧告に従わない場合などに刑事罰(30万円以下の罰金など)が新設されました(15条の2、21条、23条)。
対象となる事業者に対しては、新たに立入検査の権限が設けられ、検査を拒否した場合などにも刑事罰の規定が加えられています(16条、21条、23条)。
企業には、これまで以上に実効性のある体制整備が強く求められることになります。名ばかりの窓口設置ではなく、適切に機能する運用フローを構築することが不可欠です。
ポイント3|不利益な取扱いの抑止・救済の強化(立証責任の転換)
公益通報を理由とした通報者への不利益な取扱いを防ぐための規定も大幅に強化されました。公益通報を理由として解雇や懲戒を行った者に対して、新たに刑事罰(6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金)が科されることになります。法人に対しても、3,000万円以下の罰金刑の定めが置かれました(21条、23条)。
実務において大きな変更点となるのが立証責任の転換です。通報から1年以内に行われた解雇や懲戒は、「公益通報を理由としてされたもの」と推定される規定が加えられました(3条)。万が一、その解雇や懲戒について裁判などで争われる場合には、事業者側が「公益通報を理由として行われたものではない」ことを客観的な証拠で立証する必要があります。これにより、通報者への懲戒などにあたっては一層の注意が求められるといえます。
ポイント4|通報の阻害行為および特定行為の禁止
公益通報制度を形骸化させるような行為に対する規制も明確化されました。「公益通報をしない」という旨の合意を従業員などと交わすなど、通報を妨げる行為が禁止されます。仮にそのような誓約や合意を取り交わしたとしても無効となります(11条の2)。
あわせて、正当な理由なく公益通報者を特定しようとする行為(いわゆる通報者探し)も禁止されました(11条の3)。通報者の匿名性を確実に保護し、心理的なハードルを下げるための有意義な規定と考えられます。
企業実務への影響ととるべき対応
今回の改正を踏まえ、企業は早急な体制の点検と整備を進める必要があります。特に常時使用する労働者数が301名以上の事業者においては、体制整備義務違反による刑事罰や立入検査が新設されたため、既存の内部通報規程や運用フローが適法な状態にあるかを見直すことが急務となります。
フリーランスへの業務委託が多い企業は、フリーランスも保護対象となることを念頭に置き、社外のパートナーに対しても通報窓口を周知するなどの対応が検討されます。
通報後1年以内の解雇や懲戒に対する立証責任の転換が導入されたことで、人事処分の正当性を客観的な証拠をもって示せるようにしておく必要性が高まりました。通報者の不利益取扱いや通報者探しが厳格に禁止・処罰されることを、管理職を含めた社内全体に周知・教育していく対応が求められます。
まとめ・ご相談はネクスパート法律事務所へ
2025年(令和7年)改正の公益通報者保護法について整理します。
- フリーランスおよび委託終了後1年以内のフリーランスが保護対象に
- 常時使用する労働者数301名以上の企業では、体制整備義務に関する行政の勧告に従わない場合などの刑事罰や立入検査が新設
- 通報を理由とする解雇・懲戒への刑事罰新設とともに、通報後1年以内の解雇などにおける立証責任が企業側に転換
- 通報を阻害する合意や、正当な理由のない通報者特定行為が禁止に
ネクスパート法律事務所では、内部通報規程やコンプライアンス規程の作成・レビューを含む、幅広い法務相談を承っています。
ぜひお気軽にお問い合わせください。
※本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。具体的な対応については弁護士にご相談ください。
コラム監修者
寺垣 俊介
所属:代表(東京オフィス)
広島県広島市出身。修道中学・高校を経て、慶應義塾大学商学部で経営・会計・商取引を学ぶ。その後、青山学院大学法科大学院を修了して2011年に新司法試験に合格し、最高裁判所司法研修所を修了(65期)。2013年1月に第二東京弁護士会に弁護士登録し、都内法律事務所で個人・法人を問わず幅広い分野の相談・交渉に取り組む。
2016年1月に佐藤塁と共にネクスパート法律事務所を創業し、共同代表として、東京オフィスを拠点に、企業のコーポレート法務、M&A・事業承継、薬事・医事法務を中心に取り扱う。商学部で培った経営の視点を生かし、法的な可否にとどまらず、事業への影響や実行可能性まで含めた選択肢を示すことを重視している。
また、一般社団法人薬機法医療法規格協会の代表理事、一般社団法人日本美容サロン協議会の監事、一般社団法人睡眠ヘルスケア協議会の外部有識者(認証評価委員)を務め、医療・美容・ヘルスケア分野の広告規制や業界の自主的なルールづくりにも関わっている。依頼者に最適な見通しと戦略的な解決策を示すことを信条とし、丁寧かつ粘り強い対応で信頼を築いている。