解決結果のサマリー
請求された方の解決事例
実質負担を約9割圧縮(和解額200万円)
※プライバシー保護のため、事例の内容は特定できないよう一部変更し、金額は概数で記載しています。
※解決結果は個別の事案の内容に基づくものであり、同種の結果を保証するものではありません。
事例の概要
ご依頼者のAさんは、既婚女性です。仕事を通じて知り合った既婚男性Bさんと親密な関係になり、Bさんの妻Cさんから慰謝料300万円を請求されました。Cさんの手元には探偵の調査報告書があり、交渉が決裂すると、探偵費用や弁護士費用を上乗せした約430万円の損害賠償訴訟を起こされます。当事務所は、Cさんの暴行を理由とする220万円の反訴と、賠償の大半をBさんに負担させる求償の設計で応じました。ご依頼から約10か月で成立した和解は、名目200万円(頭金50万円+月5万円の分割)。ただし、うち150万円はBさんが月5万円ずつ負担する求償合意を整えたため、Aさんの実質負担は50万円——訴訟での請求額から約9割の圧縮です。あわせて相互の接触禁止条項により、Cさんが職場に押しかけるような事態も法的に禁じられました。ご本人の出廷は0回。担当は北條さやか弁護士です。
慰謝料を「請求された側」でありながら、相手方の暴行への反訴と、相手男性への求償という2つの反撃を組み合わせて構図を変えた——被請求側の選択肢の広さを示す事例です。
ご相談時の課題
表面上の課題
ある日、Bさんの妻CさんがAさんの目の前に現れ、慰謝料300万円の支払いと念書を要求してきました。「書かなければ裁判にする」。Cさんは探偵の調査報告書と写真の存在も告げていました。Aさんはその日のうちに当事務所へ相談し、ご依頼に至ります。相手方にも弁護士がつき、交渉が決裂した後は、慰謝料300万円に探偵の調査費用約90万円と弁護士費用を上乗せした約430万円の訴訟を起こされました。
本当の課題:Aさん自身も、二重に追い詰められていた
事情を伺うと、この事案は「請求されている側が一方的に責められて終わる」構図ではありませんでした。
第一に、相手男性Bさんのつきまといです。Aさんは関係を清算しようとしていましたが、Bさんから自宅を突き止められ、近所やスーパーで待ち伏せされ、車に手紙を挟まれ、思い詰めた言動で不安に陥れられていました。「終わりにしたい」と告げるために一度だけ会った場面を、探偵に撮影されてもいました。
第二に、Cさんによる実力行使です。Cさんは以前からAさんの勤務先に押しかけ、職場で水をかける、髪をつかんで引き回すといった暴行に及んでいました(水をかけた事実は、後に相手方側も書面で認めています)。職場に居づらくなるという現実の不利益も既に生じていました。
「きっぱり拒絶しきれなかった自分が悪い」——ご相談の文面には自責の言葉が並んでいましたが、法的に見れば、Aさんは請求される立場であると同時に、暴行とつきまといの被害者でもあったのです。整理すると、課題は次の4つでした。
- 探偵の報告書という強い証拠がある中で、金額をどこまで適正化できるか
- 一括で大金を用意できない中での支払い方法の設計
- Cさんの暴行・職場来訪と、Bさんのつきまといから生活の平穏を取り戻すこと
- 責任の大半を負うべきは誰なのか——Bさんの負担をどう実現するか
この解決のポイント
- 念書を迫られた「その日のうち」に相談から依頼まで完了したこと。最も危険な初動の局面で、書いてはいけない書面に署名する前に窓口を切り替えられました
弁護士の対応
(1) 念書は書かず、その日のうちに窓口を切り替えた
Cさんに念書を迫られたその日、Aさんは署名せずに当事務所へ相談し、即日ご依頼いただきました。この判断が最初の分かれ道です。感情が最も激しい局面で本人が書いた念書は、金額も条件も相手の言い値で固定されてしまいます。受任後は連絡窓口を弁護士に一本化し、あわせて相手方に勤務先への来訪を止めるよう正式に申し入れました。
(2) 交渉——減額の根拠と「求償」というカード
交渉段階で当事務所が示した主張は3つです。①Cさん夫婦は離婚しておらず、婚姻関係が続く事案で300万円は裁判例に照らして過大であること。②Cさんの勤務先来訪により、Aさんは職場での立場という形で既に事実上の制裁を受けていること。③関係を主導し、別れを告げても待ち伏せを続けたBさんの責任こそ大きいこと。
そのうえで、求償権を交渉の軸に据えました。不倫の慰謝料は交際相手と配偶者が連帯して負う債務であり、支払った側は相手に負担分を請求(求償)できます。当方は「Bさんの負担割合は8〜9割」と正面から主張し、「Cさんが高額請求を維持するなら、支払った慰謝料はBさんに求償する——つまりCさん夫婦の家計から出ていくことになる」という構造を示しながら、求償権の放棄と引き換えに約30万円、続いて約50万円での解決を提案しました。Cさん側は300万円から200万円まで下げたものの折り合わず、交渉は決裂。約430万円の訴訟となりました。
(3) 訴訟での二正面作戦①——相手男性への「訴訟告知」
訴訟が始まると、当事務所はまずBさんに対する訴訟告知を行いました。訴訟告知とは、裁判の結果に利害関係を持つ第三者に訴訟の存在を公式に知らせる手続です。これにより、後にBさんへ求償を求める際、「自分は関係ない」という逃げ道を塞ぐ布石を打ちました。判決や和解で支払いが決まってから求償の準備を始めるのではなく、訴訟の入口の段階で出口(求償)の設計を済ませておく——これが実質負担を圧縮する鍵になります。
(4) 二正面作戦②——妻の暴行を理由とする反訴
続いて、Cさんの暴行——勤務先で水をかけた行為(相手方側も認めた事実)と、髪をつかんで引き回した行為——を理由に、慰謝料等220万円の反訴を提起しました。慰謝料請求の事件では、請求された側が防戦一方になりがちです。しかし相手方に違法な実力行使があれば、それは独立した不法行為であり、正面から賠償を求めることができます。反訴によって「一方的に責められる構図」は消え、和解のテーブルでは互いに譲るべきものがある状態になりました。
(5) 和解の設計——名目は相手の希望、実質はこちらの希望
和解条項の案は当事務所が起案し、ほぼそのままの内容で成立しました。設計のポイントは4つあります。
第一に、金額の名目と実質の切り分けです。和解額は200万円——交渉段階でCさん側が求めていた金額です。しかしBさんが150万円を負担する求償合意を並行して整えたことで、Aさんの実質負担は50万円——交渉段階で当方が提示していた水準に収まりました。相手の面目と依頼者の実利を両立させる着地です。
第二に、分割払いの設計。頭金50万円のほかは月5万円ずつとし、滞納が一定額に達した場合のみ残額を一括請求できる条項(期限の利益喪失条項)を許容範囲に整えました。そしてBさんからの求償金も月5万円ずつ入るため、頭金以降の月々の負担は実質的に打ち消されます。
第三に、相互の接触禁止条項。「電話、訪問等方法の如何を問わず、今後一切接触しない」ことを双方が誓約する内容で、職場への来訪や待ち伏せというこの事案の苦しみの核心に、法的な区切りをつけました。
第四に、反訴の放棄と清算条項。反訴は交渉上の役割を果たしたところで放棄し、双方の債権債務をすべて清算して紛争全体を終結させました。
(6) 遠方の裁判所でも、本人は一度も出廷せず
裁判所はAさんの住む遠方にありましたが、当事務所は書面と電話会議で全期日に対応し、和解成立の期日も出頭したのは代理人だけでした。Aさんは仕事と生活を続けながら、約10か月の訴訟を乗り切っています。
ご依頼中のやりとり——Aさんはどうサービスを使ったか
- 交渉も訴訟も、やり取りは書面・FAX・電話で完結。訴訟に移行した際も、委任状などの書類を返送するだけで同じ弁護士がそのまま対応しました
- 期日はすべて弁護士が対応し、Aさんは結果と次の方針の報告を受けて、金額や条件の局面ごとに意向を確認されながら進む形。法廷に立つことも、CさんやBさんと顔を合わせることも一度もありませんでした
- 終結後は、毎月の振込と入金の確認だけ。相手方から連絡は来ていません
解決結果
訴訟での請求は約430万円+遅延損害金。和解での支払額は200万円に収まりましたが、この事案の本当の結果はその先にあります。当事務所はBさんとの間で、200万円のうち150万円(負担割合75%)をBさんが負担し、月5万円ずつAさんに支払うという求償の合意書を整えました。Aさんの実質負担は50万円——請求額から約9割の圧縮であり、しかも交渉段階で当方が提示していた金額と同水準です。
支払い方法も生活実態に合わせて設計しました。頭金50万円のほかは月5万円の分割払いとし、その一方でBさんから毎月5万円が入ってくるため、月々の収支は実質的に相殺されます。
さらに和解条項には「今後一切接触しない」という相互の接触禁止を入れました。勤務先への来訪や待ち伏せに苦しんできたAさんにとって、この条項は金額と同じくらい重要な成果です。反訴(220万円)は、これらの条件を引き出す役割を果たしたうえで、和解の中で取り下げる形で収めました。ご依頼から約10か月、Aさんは一度も法廷に立つことなく、すべてが終わりました。
- 和解の際は、分割払いの条件、滞納した場合の条項の意味、Bさんからの求償金の仕組みまで説明を受け、納得したうえで成立
担当弁護士からのコメント(北條さやか弁護士)
慰謝料を請求された女性のご相談では、「自分が悪いのだから仕方ない」と自分を責めて、言われるままの条件をのもうとしている方が少なくありません。しかし本件のように、相手方の暴行やつきまといなど、あなた自身が被害者である事情が埋もれていることは珍しくないのです。誰がどれだけの責任を負うべきかを整理し、求償や反訴といった道具で構図を変えれば、結果は大きく動きます。念書へのサインを求められても、その場では書かず、まず現状のままご相談ください。
この事例に関するよくある質問
Q1. 不倫相手の配偶者が職場に押しかけてきました。念書を書けと言われたら、書くしかないのでしょうか?
その場で書いてはいけません。感情が最も激しい局面で書いた念書は、金額も条件も相手の言い分で固定され、後から覆すことが難しくなります。また、職場への押しかけや暴行など相手方の行き過ぎた行為は、慰謝料の減額事情や反訴の材料になり得ます。本事例では、念書を書かずに即日弁護士へ依頼したことが、その後の交渉の土台になりました。
Q2. 慰謝料を支払ったら、相手の男性(女性)にも負担してもらうことはできますか?
できます。不倫の慰謝料は交際相手と配偶者が連帯して負う債務のため、支払った側は相手に負担分を請求(求償)できます。負担割合は関係の主導性などの事情で変わり、本事例では相手男性が4分の3にあたる150万円を負担する合意を成立させ、依頼者の実質負担を50万円に抑えました。訴訟の早い段階で訴訟告知などの布石を打っておくことが重要です。
Q3. 請求された金額を一括で支払えません。分割にしてもらえるのでしょうか?
分割払いでの和解は実務上広く行われています。本事例では頭金50万円のほかは月5万円の分割とし、生活を維持しながら支払える設計にしました。分割和解には通常、滞納が一定額に達すると残額を一括請求できる条項(期限の利益喪失条項)が付くため、無理のない金額に設定することが重要です。
Q4. 相手の配偶者から暴力や待ち伏せを受けています。請求されている側でも、やり返す手段はありますか?
あります。暴行や執拗な押しかけは、慰謝料問題とは別個の不法行為です。本事例では、勤務先での暴行を理由に220万円の反訴を提起し、和解では「今後一切接触しない」という相互の接触禁止条項を勝ち取りました。刑事上の被害届という選択肢もあります。「請求された側だから我慢するしかない」ということはありません。