更新日:2023年8月18日 (金)
公開日:2023年8月18日 (金)
交通事故加害者の通院費は誰が払う?請求できる費用を解説
サマリー
交通事故で自身が加害者側となってしまった場合でも、事故によって怪我を負い、入院や通院が必要になることがあります。治療費や通院費が全額自己負担になるのか、相手方や自身の保険に請求できるのか不安に思う方も少なくありません。加害者側であっても、過失割合や加入保険の内容によっては費用の補填を受けられる場合があります。この記事では、交通事故加害者の治療費・通院費の請求先や利用できる各種保険制度、過失割合に応じた取り扱いについて解説します。
交通事故の加害者が怪我をした場合、治療費・通院費は誰に請求できる?
交通事故で過失割合が大きいとされる加害者側であっても、自身が負傷した場合は治療費や通院費などの請求を検討できる制度や保険が存在します。
相手方の自賠責保険への請求
自賠責保険は自動車事故による被害者の救済を目的とした制度であり、法律上は過失の大小に関わらず負傷した当事者が補償の対象となります。
そのため、自身の過失割合が100%未満であれば、相手方が加入する自賠責保険に対して治療費や通院費、休業損害などの損害賠償を請求することが可能です。傷害による損害の上限額は被害者1名につき120万円までと定められています。
ただし、過失割合が7割以上の場合は「重過失減額」が適用され、受け取れる保険金額が一定割合減額される仕組みになっています。
| 過失割合 | 傷害案件の減額割合 | 後遺障害・死亡案件の減額割合 |
|---|---|---|
| 7割未満 | 減額なし | 減額なし |
| 7割以上8割未満 | 2割減額 | 2割減額 |
| 8割以上9割未満 | 2割減額 | 3割減額 |
| 9割以上10割未満 | 2割減額 | 5割減額 |
| 10割(100%) | 支払対象外(無責) | 支払対象外(無責) |
なお、傷害案件において重過失減額が適用された結果、損害額が20万円を下回る場合でも、減額後の支払額は20万円(損害額が20万円未満の場合はその実額)とされています。
自身が加入する人身傷害補償保険の利用
ご自身やご家族が加入している自動車保険に「人身傷害補償保険」が付帯されている場合、こちらの保険金請求を行う方法もあります。
人身傷害補償保険は、過失割合に関わらず契約の約款に基づいて実際の損害額(治療費、休業損害、精神的苦痛に対する補償など)が支払われる保険です。
加害者側であっても契約内容に応じた補償を受けられるため、自己負担を抑えて通院を継続するための有効な手段となります。
健康保険や労災保険の適用関係
交通事故による怪我の治療であっても、公的医療保険(健康保険など)を利用して受診することが認められています。ただし、事故による診療で健康保険証を使用する際には、保険者への「第三者行為による傷病届」の提出が必要です。
また、事故が勤務中や通勤途中に発生したものである場合は、労災保険(業務災害または通勤災害)の適用対象となります。
労災保険の療養(補償)等給付は療養にかかる費用が原則として全額支給され、自賠責保険のような重過失減額の適用もありません。なお、労災保険の給付を受けられる事案では、基本的に健康保険は併用できず労災保険が優先されます。
加害者の過失割合が10割(10対0)の場合の治療費・慰謝料の扱い
交通事故における過失割合が加害者側10対被害者側0(いわゆる10対0)と判断された場合、事故発生の全責任が加害者側にあることになります。
相手方に過失が一切認められないため、民事上の損害賠償責任を相手方に追及することはできません。したがって、ご自身が事故によって怪我を負った場合であっても、相手方に対して治療費や通院交通費、慰謝料などを請求することは法的に認められないのが原則です。
また、相手方が加入している自賠責保険についても「相手方に過失がない(無責)」という扱いになるため、自賠責保険から治療関係費や慰謝料などの支払いを受けることはできません。
10対0の事故で利用を検討できる保険や制度
相手方への損害賠償請求や相手方自賠責保険の利用ができない場合でも、ご自身が加入している任意保険や公的制度を活用することで、治療費等の負担を軽減できる可能性があります。
まず、ご自身やご家族が加入している自動車保険に「人身傷害補償保険」が付帯されているか確認することが重要です。人身傷害補償保険は、過失割合に関わらず契約の約款に基づいて実際の損害額(治療費や休業損害、慰謝料など)が支払われる設計となっていることが一般的です。
人身傷害補償保険の対象外である場合や補償上限を超える場合は、国民健康保険や健康保険などの公的医療保険を利用して自己負担割合を抑えながら通院することが選択肢となります。交通事故による診療で健康保険等を使用する際は、保険者への届出(第三者行為による傷病届など)が必要となる点に留意しましょう。
なお、勤務中や通勤途中に発生した交通事故である場合には、労災保険(業務災害または通勤災害)の給付対象となることがあります。労災保険の療養(補償)給付は過失割合にかかわらず利用できるため、勤務先や労働基準監督署への確認が役立ちます。
交通事故加害者が怪我の治療費や通院について弁護士に相談するメリット
交通事故で加害者側となった場合でも、自身が怪我を負った際には治療費の支払いや今後の示談交渉など、多くの課題に対処する必要があります。
法律の専門家である弁護士に相談・依頼することで、制度の適切な利用や相手方との交渉において様々なサポートを受けられる可能性があります。
状況に応じた保険の選択や請求手続きに関する助言
加害者が怪我をした場合に利用できる保険には、相手方の自賠責保険や自身の人身傷害補償保険、健康保険、労災保険など複数の選択肢が存在します。
事故の状況や過失の程度によって、どの保険を優先して請求手続きを進めるべきかは異なります。弁護士に相談することで、手続きの流れや制度の併用関係について一般的な法的助言を受けることができます。
示談交渉の代理による負担の軽減
任意保険に加入していない場合や保険会社の示談代行サービスが利用できない状況では、加害者自身が被害者側とのやり取りや示談交渉を直接行わなければなりません。
弁護士に示談交渉の代理を依頼すれば、相手方との直接のやり取りを任せることが可能となり、怪我の治療に専念しやすい環境を整えられます。
客観的証拠に基づいた適正な過失割合の主張
交通事故における過失割合は、受け取れる保険金の額や相手方に支払うべき損害賠償額に直接影響を与える重要な要素です。
当事者同士の話し合いでは過失割合について意見が対立することもありますが、弁護士は刑事記録や実況見分調書などの客観的資料を取り寄せて分析を行います。
過去の裁判例や事故態様の詳細を踏まえて法的に適正な過失割合を導き出し、不当に重い責任を負わされることを防ぐための交渉が期待できます。
まとめ:加害者側の通院費や過失割合に不安があるときは弁護士へ相談
怪我をした際は放置せず適切な治療と手続きを
交通事故で加害者側の立場になった場合でも、自身が負傷しているときは我慢や自己判断をせず、早期に医療機関を受診して適切な診察と治療を受けることが重要です。相手方への対応を優先するあまり受診が遅れると、健康面のリスクがあるだけでなく、事故と怪我との因果関係の確認が難しくなる恐れもあります。
治療費や通院費の負担を軽減するためには、過失割合や事故の状況に応じて、相手方の自賠責保険、自身が加入する人身傷害補償保険、健康保険の第三者行為届、あるいは労災保険などから利用可能な制度を確認し、必要な申請手続きを速やかに行うことが求められます。
過失割合の争いや任意保険未加入の場合は専門家への相談も
一方で、事故態様や過失割合をめぐって相手方と意見が食い違っているケースや、ご自身が任意保険に未加入で示談交渉を自ら進めなければならないケースでは、対応に大きな負担を感じる場面も少なくありません。
過失割合がどのように認定されるかは、最終的な自己負担額や相手方への賠償額に大きく関わる重要な要素です。主張すべき事実がある場合や、提示された割合に疑問があるときは、実況見分調書などの客観的資料を踏まえた慎重な判断が必要となります。
事故後の対応や利用すべき保険制度の選択、過失割合の妥当性に不安がある場合は、交通事故の法務を取り扱う弁護士への相談を検討してみるのもひとつの選択肢です。
法的な観点から状況を整理し、客観的な見通しや助言を得ることで、適正な手続きと納得のいく解決に向けた方針を立てやすくなります。
コラム監修者
JUNICHI TASHIRO
所属:福岡オフィス 支店長
福岡県北九州市出身。小倉高校、岡山大学法学部、神戸大学法科大学院を卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、個人・法人問わず幅広い分野の相談・交渉に取り組む。ネクスパート法律事務所福岡オフィス所長として、依頼者にとって何が大事かを第一に考え、スピード感をもって解決することを信条とし、どこの事務所よりもネクスパート法律事務所に依頼したいと思ってもらえるよう日夜奮闘中。