サマリー
実家を相続したものの使い道がなく、空き家のまま放置している方もいるのではないでしょうか。
「空き家を放置すると固定資産税が6倍になる」という話を聞き、将来の税負担に不安を感じることもあるかもしれません。
空き家であっても固定資産税などの税金は毎年発生し、適切な管理を怠ると特例から除外されて税負担が増加するリスクがあります。
この記事では、空き家にかかる税金の仕組みや税額が高くなる理由、利用できる特例制度や負担を抑えるための選択肢について分かりやすく解説します。
結論:空き家の固定資産税は「空き家だから6倍」になるわけではない
空き家であっても、適切に管理されている限り、住宅用地の特例が適用される場合があります。
一方、管理不全空家等や特定空家等について自治体から勧告を受けると、住宅用地特例が解除され、土地の固定資産税が大幅に増える可能性があります。
小規模住宅用地では固定資産税の課税標準が6分の1に軽減されているため、特例が解除されると、単純比較では課税標準が最大6倍になります。
ただし、実際の税額は負担調整措置などにより必ず6倍になるとは限りません。
空き家を所有するとかかる主な税金
居住実態のない空き家であっても、不動産を所有している限り、毎年地方税が課税されます。
対象となる主な税金は「固定資産税」と「都市計画税」の2種類です。
固定資産税と都市計画税の基本的な仕組み
固定資産税は、原則として毎年1月1日時点で、土地や家屋の所有者として固定資産課税台帳に登録されている方に対して課される市町村税(東京23区は都税)です。
税額は、自治体が算定した「固定資産税評価額」を基礎として算出される「課税標準額」に、標準税率である1.4%を乗じて計算されます。
一方、都市計画税は、原則として都市計画法で指定された市街化区域内に不動産を所有している場合にのみ課される税金です。
税率は自治体の条例によって定められており、上限は0.3%とされています。
固定資産税・都市計画税は、自治体が定める納期に、原則として年4回に分けて納付します。
税負担を軽減する「住宅用地の特例」
居住用の建物(住宅)が建っている土地には、税負担を大きく軽減するための「住宅用地に対する課税標準の特例(住宅用地の特例)」が設けられています。
「空き家=固定資産税が6倍」ではありません。
空き家であっても、適切に管理されている限り住宅用地特例が原則として適用されます。
税負担が大きく増えるのは、管理不全空家等や特定空家等として勧告を受け、住宅用地特例が解除された場合などです。
この特例は、人が居住するための土地について税負担を配慮する目的で作られたものですが、適正に管理されている限り、誰も住んでいない空き家が建つ敷地であっても原則として適用されます。
| 区分 | 敷地面積 | 固定資産税の課税標準 | 都市計画税の課税標準 |
|---|---|---|---|
| 小規模住宅用地 | 住宅1戸あたり200㎡以下の部分 | 評価額の 1/6 | 評価額の 1/3 |
| 一般住宅用地 | 200㎡を超える部分(家屋床面積の10倍まで) | 評価額の 1/3 | 評価額の 2/3 |
このように、住宅用地の特例が適用される土地は、固定資産税の課税標準が最大6分の1に軽減されるため、特例が適用されない土地と比べて税負担が低く抑えられています。
空き家の土地にかかる固定資産税の計算例
以下は制度の仕組みを理解するための単純化した計算例です。
例えば、200㎡以下の小規模住宅用地で、住宅用地特例を適用する前の課税標準額を600万円と仮定します。
特例が適用されている状態では、課税標準額が6分の1の100万円に減額されます。
この場合の土地の固定資産税は「100万円×1.4%=1.4万円」となります。
これに対し、特例が適用されない更地などの状態では「600万円×1.4%=8.4万円」となり、特例適用時と比べて固定資産税は単純計算で6倍になります。
※制度を単純化した計算例です。実際の税額は、負担調整措置などによって異なる場合があります。
| 状態 | 課税標準額 | 固定資産税 |
|---|---|---|
| 住宅用地特例あり | 100万円 | 1.4万円 |
| 特例なし | 600万円 | 8.4万円 |
※制度を単純化した計算例です。実際の税額は、負担調整措置などによって異なる場合があります。
空き家の税金(固定資産税)が最大6倍になると言われる理由
空き家を放置していると固定資産税が高くなると言われる背景には、「空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)」に基づく指定制度と、それに伴う税制上の特例除外が関係しています。
管理が不十分な空き家について自治体から勧告を受けると、その敷地に適用されている住宅用地特例が解除される仕組みになっています。
「特定空家等」と「管理不全空家等」の指定リスク
空家法では、倒壊の危険がある建物や衛生上有害となるおそれがある建物を「特定空家」として定めています。
さらに2023年の法改正により、放置すれば特定空家になるおそれがある状態の建物も「管理不全空家」として新たに規定されました。
自治体は現地調査などを経て所有者へ改善の「指導」を行い、改善が見られない場合にはより重い「勧告」を出します。
自治体から勧告を受けると住宅用地の特例が解除され、固定資産税の優遇措置を受けられなくなります。
| 区分 | 状態の目安 | 勧告を受けた場合の影響 |
|---|---|---|
| 特定空家 | 倒壊の危険、著しい衛生上の有害性、景観の著しい損壊など | 住宅用地特例の解除(固定資産税増額)、命令・過料・行政代執行の可能性 |
| 管理不全空家 | 窓ガラスの破損や雑草の繁茂など、放置すると特定空家になるおそれがある状態 | 住宅用地特例の解除(固定資産税増額) |
特例解除により税負担が最大6倍になる仕組み
住宅用地の特例が適用されている場合、200平方メートル以下の小規模住宅用地であれば課税標準額が6分の1に減額されています。
しかし、勧告を受けて特例から除外されると、課税標準額が減額前の状態(本来の評価額を基礎とする計算)に戻ります。
この特例適用時と除外後を比較すると課税標準が6倍となるため、「税金が最大6倍になる」と言われています。
実際の税額計算では負担調整措置などが適用されるケースがあるため必ずしも税額がそのまま6倍になるとは限りませんが、従前と比べて税負担が大幅に増加する可能性があります。
空き家の売却や解体時に知っておきたい税金の特例制度
相続した空き家を売却したり解体したりする際には、税負担を大幅に軽減できる制度が存在する一方で、手続きの順序や時期を誤ると想定外の税金が発生することもあります。
相続空き家の3,000万円特別控除(譲渡所得の特例)
相続によって取得した空き家やその敷地を売却した場合、一定の要件を満たすと、譲渡所得から最高3,000万円(家屋・敷地を取得した相続人が3人以上の場合は最高2,000万円)を控除できる特例制度(被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例)が設けられています。
この特例を利用することで、不動産売却によって生じる譲渡所得に対する税負担を大幅に抑えられる可能性があります。
特例の適用を受けるためには、主に以下のような要件を満たす必要があります。
要件は多岐にわたるため、売却前に条件に合致しているか確認することが大切です。
| 主な要件項目 | 内容・基準 |
|---|---|
| 建築時期 | 昭和56年(1981年)5月31日以前に建築された家屋(旧耐震基準)であること |
| 建物の形態 | 区分所有建物(マンション等)ではない一戸建てであること |
| 利用状況 | 相続開始直前まで被相続人が居住し、相続から売却まで事業・貸付・居住の用に供されていないこと |
| 売却時の状態 | 現行の耐震基準に適合させた家屋と敷地の売却、または家屋を取り壊した後の更地の売却であること(一定の要件を満たせば、譲渡後に耐震改修または取壊しを行う場合も対象) |
| 譲渡対価 | 売却代金が1億円以下であること |
| 適用期限 | 相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること |
※上記は主な要件であり、実際の適用にはその他にも要件があります。
解体や売却を決める前に、特例の適用要件を確認することが重要です。
空き家を解体して更地にする際の税務上の注意点
空き家の管理負担を減らすため、あるいは売却しやすくするために建物を解体して更地にする選択肢もあります。
ただし、建物を解体すると土地に適用されていた住宅用地の特例が受けられなくなります。
住宅用地特例の適用については、原則として毎年1月1日時点の土地・建物の現況が基準となります。
そのため、年末までに建物を解体して年をまたぐと、翌年度から住宅用地特例が適用されなくなり、土地の固定資産税負担が増加する可能性があります。
一方で、売却を目的として建物を解体した場合、その解体費用は売却時の譲渡所得の計算において「譲渡費用」として差し引くことができる場合があります。
解体を実施する時期や売却スケジュールの進め方については、事前の綿密な計画が重要となります。
空き家の税負担やトラブルを防ぐための主な選択肢
空き家を所有し続ける場合、放置によって管理不全空家や特定空家に指定される事態を避けることが重要です。
税負担の増加や近隣トラブルを防ぐためには、状況に応じた対策を検討する必要があります。
定期的な管理と修繕による現状維持
将来的に自身や親族が利用する可能性がある場合は、建物の劣化を防ぐための定期的な維持管理が欠かせません。
室内の通風や換気、通水を行うほか、庭木の剪定や雑草の除草、外壁・屋根の破損確認などを計画的に実施することが求められます。
遠方に住んでいるなど自力での管理が難しいときは、民間の空き家管理代行サービスの利用や、近隣のシルバー人材センターへの作業委託なども選択肢となります。
賃貸・売却や自治体の空き家バンクの活用
自ら使用する見込みがない不動産については、第三者への賃貸や売却を検討することで維持費や固定資産税の負担を軽減できる可能性があります。
一般的な不動産市場での流通が難しい物件であっても、各自治体が運営する「空き家バンク」に登録することで、移住希望者やDIY需要のある購入者・借主が見つかるケースがあります
。自治体によっては改修費用に対する補助金制度が用意されていることもあります。
遺産分割が未完了の場合における税負担の注意点
遺産分割が成立するまで、相続財産は原則として相続人の共有に属します。
地方税法第10条の2などの規定上、共有状態の不動産にかかる固定資産税は、相続人(共有者)全員が連帯して納付する義務(連帯納税義務)を負うとされています。
自治体からは、共有者のうち代表者として届け出られた者などに納税通知書が送付されることがありますが、通知の受取人と実際に固定資産税を最終的に負担すべき者の関係は別問題です。
代表者が全額を立て替えた後に他の共有者へ精算を求めてトラブルになる事例も少なくありません。
将来の紛争や税負担をめぐる混乱を防ぐためにも、早期に遺産分割協議を進め、所有権の帰属を明確にしておくことが望まれます。
空き家の税金や相続トラブルに関する専門家への相談
空き家に関する悩みは、固定資産税や譲渡所得税などの税金面だけでなく、登記手続き、売却活動、相続人間での意見の不一致など多岐にわたります。
抱えている課題の性質に応じて、適切な相談先を選ぶことが大切です。
相談内容に応じた主な相談先
固定資産税の課税状況や自治体独自の補助金制度などを確認したい場合は、物件が所在する自治体の税務窓口や空き家対策担当窓口が一次的な相談先となります。
具体的な税額の計算や、売却時の3,000万円特別控除の申告手続きといった個別具体的な税務相談については、税理士に相談することが推奨されます。
また、相続した建物の名義変更(相続登記)の手続きは司法書士が対応します。
物件の売却査定や活用方法の検討、解体業者の手配などは不動産業者が窓口となります。
| 相談窓口・資格者 | 主な相談内容・対応業務 |
|---|---|
| 自治体窓口 | 固定資産税の課税内容確認、空き家バンクや解体補助金の案内 |
| 税理士 | 譲渡所得税・相続税の試算、各種特例適用の申告手続き |
| 司法書士 | 相続登記(所有権移転登記)、不動産登記簿の調査 |
| 不動産業者 | 空き家の売却査定、賃貸や解体の相談、買い手探し |
| 弁護士 | 遺産分割協議の代理・調停、共有名義トラブルの法的手続き |
共有名義や遺産分割協議のトラブルは弁護士へ
空き家を複数の相続人で共有している場合や、遺産分割協議がまとまっていない場合、税金の負担割合や建物の処分方法を巡って親族間で意見が対立することがあります。
相続人間の話し合いが進まない場合や、音信不通の相続人がいて手続きを進められないような状況では、遺産分割調停や共有物分割請求などの法的手続きを見据え、弁護士への相談が選択肢となります。
共有関係や権利関係の対立を放置すると、将来的に相続人が増えて問題がさらに複雑化する恐れがあるため、早い段階で方針を整理することが望まれます。
まとめ
空き家をそのまま放置していると、管理不全空家や特定空家に指定されて住宅用地特例が解除され、土地の固定資産税の負担が大きく増加する可能性があります。
将来的に活用する予定がない場合は、維持管理の継続だけでなく、売却や解体、各種特例の活用を含めて早めに対策を検討することが重要です。
弁護士は遺産分割協議の代理や他の相続人との交渉、遺産分割調停への対応のほか、共有不動産の処分方針の検討や共有物分割請求などの法的手続きをサポートします。
相続した空き家の遺産分割が進まない場合や共有名義人同士での方針決定が難しい場合は、弁護士法人ネクスパート法律事務所へ一度ご相談ください。
コラム監修者
RUI SATO
所属:代表(東京オフィス)
明治大学付属中野高校卒業、明治大学法学部・法科大学院修了。2012年弁護士登録(東京弁護士会)、2016年ネクスパート法律事務所を創設。一般民事・企業法務に加え、ブロックチェーン分野にも注力し、海外法人設立支援業務などにも取り組む。AIを活用した弁護士業務の改善・事業開発に取り組み、一般社団法人 イノベーション法務支援機構代表理事就任。公正取引委員会・中小企業庁講師、日弁連代議員、東京弁護士会常議員等を歴任。