更新日:2026年8月10日 (月)

公開日:2026年8月10日 (月)

被保佐人とは?できること、被後見人・被補助人との違いをわかりやすく解説

被保佐人とは?できること、被後見人・被補助人との違いをわかりやすく解説 被保佐人とは?できること、被後見人・被補助人との違いをわかりやすく解説

被保佐人(ひほさにん)とは、認知症や知的障害、精神障害などにより、判断能力が著しく不十分な状態にあるとして、家庭裁判所から保佐開始の審判を受けた方のことを指します。
この記事では、被保佐人の法律上の定義や成年後見制度における基本事項をはじめ、一人でできること(単独で有効な行為)とできないこと(保佐人の同意を要する行為)の境界線について、実務上の観点からわかりやすく解説します。
また、成年被後見人や被補助人との制度的な違い、家庭裁判所での申立て手続きの流れについても網羅的に説明し、制度の全体像や専門家(弁護士・司法書士など)へ相談する際のポイントを理解できるよう構成しています。

被保佐人とは?成年後見制度の基本をわかりやすく解説

被保佐人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力(判断能力)が著しく不十分な方を指す、民法に定められた法律上の概念です。この保佐制度は、判断能力に不安のある方が悪徳商法などの不利益な契約を結んでしまうことを防ぎ、大切な財産を法的に保護する目的で設けられています。
具体的には、家庭裁判所の審判によって保佐人という公式な支援者が選任され、被保佐人が行う重要な法律行為(財産管理など)をサポートします。このように、判断能力が不十分な方を保護・支援する仕組み全体を成年後見制度(法定後見制度)と呼び、保佐はその3つの類型(後見・保佐・補助)のうちの一つです。法律上は、制限行為能力者として扱われます。
つまり、被保佐人という言葉は、家庭裁判所を通じて法的な保護と支援を受けている本人の立場を意味しています。

被保佐人の定義:「判断能力が著しく不十分」な状態

法律上、被保佐人に該当するのは、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分であると認定された方です。判断能力の程度は、成年後見制度における3つの類型(後見・保佐・補助)のどれを適用するかを決定する重要な基準となります。
原因となる精神上の障害には、認知症、知的障害、精神障害(統合失調症など)や高次脳機能障害が含まれる傾向にありますが、特定の診断名があるだけで自動的に被保佐人になるわけではありません。
実務上は、医師の診断書や医学的な鑑定結果なども踏まえ、ご本人の生活状況や判断能力の実質的な程度から、家庭裁判所が個別に総合判断を下します。一般的に保佐の対象となるのは、日常的な事柄や自分の行為の結果はある程度理解できるものの、不動産売買や高額なローン契約といった『重要な財産行為』を単独で行うには不安があるといった状態の方です。

どの程度の判断能力?日常の買い物は可能でも重要な契約は困難なレベル

被保佐人の判断能力の目安を実生活に当てはめると、日用品の買い物など日常生活は一人で送れる傾向にあるが、自身の財産に大きな影響を与える重要な契約行為を単独で判断するのは難しいという状態です。
例えば、スーパーやコンビニで食料品を購入するといった日常的な行為は、原則として問題なくこなすことができます。しかし、不動産の売買契約、高額な借金(借財)、自動車の購入、クレジットカードの新規作成やローン契約といった、リスクを伴う重要な財産行為については、その内容や将来的な影響を十分に理解し、適切に判断することが困難なレベルとみなされます。そのため、被保佐人の財産を保護する観点から、こうした法的に重要な行為を行う際には、原則として家庭裁判所から選任された保佐人の同意を得ることが義務付けられています。

被保佐人が一人でできること・できないことの具体的な境界線

被保佐人は、不利益を被らないよう民法によって、行為能力(単独で完全に有効な法律行為を行う能力)が一部制限されています。
しかし、成年被後見人とは異なり、すべての法律行為が制限されるわけではなく、日常生活に必要な範囲の行為はご自身で単独で行うことが可能です。成年後見制度の理念である自己決定権の尊重と財産の保護(不利益な契約の防止)のバランスを保つことが、被保佐人と保佐人の関係において非常に重要とされています。
ここでは、実務上よく質問される被保佐人が一人でできることと保佐人の同意がなければできないことの法的な境界線について、具体例を交えて解説します。

【できないこと】保佐人の同意がなければできない10の法律行為(民法第13条)

被保佐人が単独で行うことができず、事前に保佐人の同意を必要とする重要な法律行為は、民法第13条第1項により以下の10項目が具体的に定められています。
これらの行為を保佐人の同意を得ずに被保佐人が単独で行ってしまった場合、原則として後から契約を取り消すことが可能です。

①元本を領収し、またはこれを利用すること(預金の引き出し、貸付金の回収など)
②借金(借財)をすること、または保証人になること
③不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること(不動産の売買や抵当権の設定など)
④訴訟行為をすること(民事訴訟の提起など)
⑤贈与、和解、または仲裁合意をすること
⑥相続の承認、相続放棄、または遺産分割協議をすること
⑦贈与の申込みを拒絶すること、遺贈を放棄すること、負担付贈与の申込みを承諾すること、または負担付遺贈を承認すること
⑧新築、改築、増築、または大修繕をすること
⑨一定の期間(山林は10年、その他の土地は5年、建物は3年など)を超える賃貸借契約をすること
⑩上記に掲げる行為を、制限行為能力者(未成年者など)の法定代理人としてすること

なお、自身の財産を誰に譲るかという遺言書の作成については、事理弁識能力がある限り本人の最終意思として最大限尊重される性質(身分行為)であるため、保佐人の同意は不要とされています。

【できること】日用品の購入など日常生活に関わる行為は単独で可能

前述の通り、被保佐人はすべての法律行為において保佐人の同意が必要となるわけではありません。民法第13条第1項で規定された10項目の重要な財産行為(および家庭裁判所の審判で追加された特定の行為)以外は、原則として単独で有効に行うことができます。
特に日用品の購入その他日常生活に関する行為については、保佐人の同意は不要です。スーパーやコンビニでの食料品の購入、衣料品の購入、公共交通機関の利用などがこれに該当します。
また、結婚(婚姻)や離婚、養子縁組といった家族関係に影響を及ぼす身分行為についても、本人にその意味を理解できる能力(意思能力)がある限り、極めて個人的な決定として本人の意思が尊重されるため、保佐人の同意なく単独で行うことが認められています。

保佐人の同意なく契約してしまった場合は「取消権」で行使可能

保佐人の事前の同意が必要と法律で定められている重要な契約を、被保佐人が同意を得ずに単独で行ってしまった場合、本人または保佐人は、後からその契約を取り消すことができます。この法的な権利を取消権(とりけしけん)と呼びます。取消権を行使すると、その契約は、初めから無効であったもの(遡及的無効)として法的に扱われ、支払った代金の返還請求などが可能となり、被保佐人が悪徳商法などの不利益な契約から保護されます。
ただし、保佐人が契約内容を確認し、本人にとって有益であると判断して後から認めること(追認:ついにん)をした場合、その契約はさかのぼって有効なものとして確定します。
また、被保佐人が自分は行為能力者である(保佐人はついていない)と相手方を意図的にだますような行為(民法第21条に定める詐術(さじゅつ))を用いた場合には、相手方の保護が優先され、例外的に取消権を行使できなくなる可能性があるため実務上は注意が必要です。

被保佐人・成年被後見人・被補助人の違い

法定後見制度(成年後見制度)には、ご本人の判断能力の程度に応じて「後見(こうけん)」「保佐(ほさ)」「補助(ほじょ)」という3つの類型が用意されています。
被保佐人は、この中間に位置する類型です。
これら3つの類型は、ご本人が必要とする支援のレベルや、家庭裁判所から支援者に与えられる法的な権限(同意権・取消権・代理権)の範囲が大きく異なります。
どの制度を利用するのが最適かは、ご本人の現在の判断能力や生活状況、抱えている課題に合わせて慎重に判断する必要があるため、それぞれの制度の違いを正しく把握しておくことが非常に重要です。

判断能力の程度で区分される3つの類型

成年後見制度の3類型は、実務上、医師の診断等を踏まえたご本人の判断能力の程度によって以下のように厳密に区分されます。

後見(成年被後見人)

精神上の障害により、事理を弁識する能力(判断能力)を「常に欠く」状態の人。日常生活の買い物や金銭管理なども自分一人で行うことが難しく、常に全面的な支援が必要なケースが想定される。

保佐(被保佐人)

精神上の障害により、判断能力が「著しく不十分」な状態の人。日常的な買い物などは単独で可能だが、不動産売買やローン契約といった重要な財産行為を行うには不安があり、支援を要する状態。

保佐(被保佐人)

精神上の障害により、判断能力が「不十分」な状態の人。重要な契約行為もある程度自身でできるかもしれないが、一部の特定の法律行為について不安があるため、念のため支援を受けた方が良いとされる状態。

これらはすべて、成人(または未成年者であっても将来の準備として)を対象とした制度であり、親権を補うための未成年後見制度とは明確に異なる仕組みです。

支援者に与えられる法的な権限(同意権・取消権・代理権)の範囲

それぞれの類型において、支援者(後見人・保佐人・補助人)に与えられる法的な権限の範囲は、本人の保護の必要性に応じて以下のように異なります。

成年後見人の権限

日用品の購入など日常生活に関する行為を除き、本人が行った法律行為をすべて取り消すことができる広範な取消権を持つ。また、財産管理に関する法律行為全般において、包括的に本人に代わって契約等を行う法定代理権を有する(成年被後見人には同意権という概念はありません)。

保佐人の権限

民法第13条第1項で定められた10項目の重要な法律行為に対する同意権および取消権を持つのが基本。本人に代わって契約を行う代理権については当然には付与されず、別途家庭裁判所へ代理権付与の審判を申し立て、ご本人の同意を得た上で、特定の法律行為(例:預貯金の解約手続きなど)についてのみ個別に付与される。

補助人の権限

当然に付与される権限はありません。家庭裁判所への同意権付与の審判または代理権付与の審判の申立てにより、特定の法律行為についてのみ同意権(および取消権)や代理権がオーダーメイドで付与されます。なお、補助制度の利用や権限付与のすべてにおいて、ご本人の同意が必須となります。

特定の職業や資格に関する制限(欠格条項)の有無

かつては、成年被後見人や被保佐人になると、医師、弁護士、公務員、会社の取締役(役員)など、特定の職業に就くことができない、または資格を失うといった一律の欠格条項(欠格事由)が法律で定められていました。
しかし、2019年(令和元年)の法改正により、こうした画一的な人権制限は見直されました。現在では、成年被後見人や被保佐人であることを理由に一律で資格を剥奪される規定は原則として撤廃され、代わりに心身の故障等により、その業務を適正に行うことができるかどうかを個別に審査する規定へと移行しています。
したがって、現在では、被保佐人になったことそのものを理由とする職業や資格の制限は、実務上ほとんど無くなっています。

家庭裁判所で行う保佐開始の審判申立て手続きの流れ

被保佐人として適切な法的保護を受けるためには、管轄の家庭裁判所に対して保佐開始の審判を申し立てる必要があります。
この法的手続きは、ご本人の判断能力に関する医学的な調査(鑑定)や、親族の同意・意向照会など慎重な審理を含むため、申立てから審判が確定するまでに通常1〜2か月程度の一定の期間を要する傾向にあります。
申立てにあたっては、法律で定められた要件を満たし、正確に書類を収集・作成することが求められます。ここでは、家庭裁判所における手続きの基本的な流れについて解説します。

手続きの第一歩は家庭裁判所への申立てから

保佐制度の利用を開始するための第一歩は、本人(対象者)の住民票上の住所地を管轄する家庭裁判所へ保佐開始の審判を申し立てることです。申立てが受理されると、家庭裁判所の調査官が、申立人、保佐人候補者、そして本人と面談を行い、生活状況や制度利用の必要性を調査します。
また、提出された医師の診断書だけでは判断能力の程度が明確でない場合などには、さらに詳細な医学的見地を求めるため、医師による鑑定が実施されることがあります(実務上、事案によっては鑑定が省略されるケースもあります)。これらの厳格な審理を経て、家庭裁判所が保佐開始の要件を満たしていると判断した場合に、正式に保佐開始の審判が下され、保佐人が選任されます。

申立てができる人の範囲と準備すべき必要書類一覧

保佐開始の審判を申し立てることができる(申立権者)のは、民法等の法律によって定められた以下の人に限られます。

  • 本人
  • 配偶者
  • 四親等内の親族(子、孫、親、兄弟姉妹、甥姪など)
  • 検察官
  • 市区町村長(※身寄りがない、または親族が申し立てを行えない場合など、福祉の観点から首長が行うケース)

申立て手続きの際には、家庭裁判所ごとに指定された書式に基づき、主に以下の書類を準備する必要があります。

  • 申立書および申立事情説明書
  • 本人に関する資料(戸籍謄本、住民票、財産目録、収支状況報告書など)
  • 成年後見制度用の医師の診断書(および診断書付票)
  • 保佐人候補者に関する資料(住民票や経歴書など)
  • 本人がすでに成年後見制度を利用していないことを証明する「登記されていないことの証明書」(※法務局で取得)

これらの必要書類一式を揃え、所定の収入印紙や連絡用の郵便切手(予納郵券)とともに家庭裁判所に提出して手続きを開始します。

被保佐人に関するよくある質問

被保佐人や保佐制度について、実務上よく寄せられる疑問や不安に対する回答をまとめました。制度の利用手続きを検討される際の参考にしてください。

被保佐人になった事実は戸籍に記載されますか?

いいえ、現在では被保佐人になった事実が戸籍(身分証明書など)に記載されることは一切ありません。かつての準禁治産制度の時代には戸籍に記載されていましたが、2000年(平成12年)の成年後見制度施行に伴い、プライバシー保護の観点から戸籍への記載は廃止されました。現在、被保佐人であるという法的情報は成年後見登記制度という専門の仕組みによって管理されています。この登記情報は東京法務局で全国一元管理されており、登記事項証明書(証明書)を請求できるのは、本人や保佐人、配偶者、四親等内の親族などの限られた関係者に厳格に制限されているため、第三者に知られるリスクは極めて低くなっています。

家族や親族以外に、弁護士などの専門家も保佐人になれますか?

はい、なれます。むしろ実務上の傾向として、専門家が選ばれるケースが主流となっています。保佐人には、ご本人の家族や親族が候補者となることも可能ですが、裁判所の判断により、弁護士、司法書士、社会福祉士といった法律や福祉の専門職(第三者後見人)が選任されるケースが非常に多くなっています。また、社会福祉協議会やNPO法人といった法人が保佐人になることも可能です。
特に、親族間で財産管理についての意見の対立がある場合、管理すべき財産が多額・複雑である場合、または適任な親族がいない場合には、財産保護の確実性を担保するため、家庭裁判所の裁量によって中立的な立場の専門家が選任される傾向にあります。

被保佐人になると選挙権などの権利は失われますか?

いいえ、被保佐人になっても選挙権(投票する権利)を失うことは一切ありません。成年後見制度を利用することと、国民の重要な権利である選挙権は全く別の問題です。過去の公職選挙法において、選挙権が制限されていた時期があったのは成年被後見人のみであり、被保佐人や被補助人については制度の開始当初から一度も選挙権が制限されたことはありません。(※なお、成年被後見人の選挙権制限についても、2013年(平成25年)の法改正により違憲として撤廃されており、現在ではすべての類型において選挙権が保障されています。)

まとめ

被保佐人とは、認知症や精神上の障害により判断能力が著しく不十分な方が、悪質な業者による不利益な契約から保護され、住み慣れた地域で安心して生活を送るために設けられた法的な保護の枠組みです。
家庭裁判所から選任された保佐人の支援(同意権・取消権など)を受けることで、不動産売買や預貯金の管理といった重要な財産行為を安全に行うことが可能になります。
また、被保佐人ご本人やその扶養家族は、市区町村長の認定を受けるなどの一定の要件を満たすことで、所得税や住民税の計算において、障害者控除の対象となり、税制上の負担が軽減される可能性があります。
保佐制度の利用や家庭裁判所への申立てには、事前の書類収集や法的な判断など複雑な手続きを伴う実務上のハードルがあります。ご家族の財産保護や制度利用に不安を感じた際は、自己判断を避け、成年後見制度に精通した弁護士や司法書士、またはお住まいの地域の地域包括支援センターなど、専門の機関へお早めに相談されることをおすすめします。

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