更新日:2024年4月30日 (火)

公開日:2023年8月2日 (水)

撮影罪とは?条文・構成要件や時効・罰則をわかりやすく解説

撮影罪とは?条文・構成要件や時効・罰則をわかりやすく解説 撮影罪とは?条文・構成要件や時効・罰則をわかりやすく解説

サマリー

2023年7月に「性的姿態撮影等処罰法」が施行され、いわゆる「撮影罪」が新設されました。従来の迷惑防止条例等と比べて何が変わり、どのような行為が処罰の対象となるのか、正確な内容を知りたい方も多いのではないでしょうか。撮影罪は盗撮行為そのものだけでなく、画像の提供や保管なども幅広く処罰対象として規定されています。この記事では、撮影罪の概要や条文上の構成要件、罰則・公訴時効、具体的な該当ケースや逮捕後の刑事手続きの流れについて分かりやすく解説します。

撮影罪(性的姿態等撮影罪)とは|制定の背景と条文・構成要件

2023年7月13日に施行された「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律(性的姿態撮影等処罰法)」により、いわゆる「撮影罪(性的姿態等撮影罪)」が新設されました。

従来、盗撮行為は各都道府県の迷惑防止条例や児童ポルノ禁止法によって取り締まられていました。しかし、迷惑防止条例は自治体ごとに処罰対象や要件に差異があり、航空機内など管轄が曖昧な場所での対応に課題がありました。また、児童ポルノ禁止法は18歳未満のみを対象としているため、法的な隙間を埋め、全国一律で厳格に取り締まることを目的に本法が制定されました。

撮影罪の条文と処罰対象となる行為類型

性的姿態撮影等処罰法第2条では、正当な理由がない撮影行為や、相手の同意が困難な状態に乗じた撮影行為などが処罰対象として規定されています。

条文上、撮影罪が成立する主な行為類型は以下の4つに分類されます。なお、これらの行為は未遂であっても処罰の対象となります。

  • 正当な理由がないのに、ひそかに性的姿態等を撮影する行為
  • 暴行・脅迫、アルコールや薬物の影響、睡眠などで同意しない意思の形成・表明が困難な状態にさせ、またはその状態に乗じて撮影する行為
  • 性的な行為ではないと誤信させたり、特定の者以外は閲覧しないと誤信させたりして撮影する行為
  • 正当な理由がないのに、16歳未満の者を対象として撮影する行為(13歳以上16歳未満の場合は行為者が5歳以上年長である場合)

「性的姿態等」の定義と具体例

本罪における「性的姿態等」とは、性器・肛門やその周辺部、臀部、胸部といった性的な部位、および通常衣服で覆われている下着のうち性的な部位を覆っている部分を指します。また、わいせつな行為や性交等が行われている間の姿態も含まれます。

具体例としては、駅のエスカレーターや電車内でのスカート内盗撮、商業施設等のトイレや更衣室に小型カメラを設置して行う盗撮、泥酔して意識が朦朧としている相手の下着姿を無断で撮影する行為などが挙げられます。

「正当な理由」が認められるケース

ひそかな撮影や16歳未満の者を対象とする撮影であっても、社会通念上正当な業務や目的によるものであれば「正当な理由」があると判断され、犯罪は成立しません。

法務省の資料等では、正当な理由の例として、医師が救急搬送された意識不明の患者を医療上のルールに従って撮影する場合、保護者が成長記録として自宅の庭で水遊びをする子どもの姿を撮影する場合、地域行事の子ども相撲大会の取組を撮影する場合などが挙げられています。

撮影罪の罰則・公訴時効と撮影以外の処罰対象行為

性的姿態撮影等処罰法では、盗撮行為そのものだけでなく、撮影された画像や映像の流通・拡散を防止するため、提供や保管などの関連行為に対しても厳格な罰則が定められています。

撮影罪の法定刑と公訴時効

撮影罪(性的姿態等撮影罪)の法定刑は、「3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金」です。未遂行為についても処罰の対象とされています。

公訴時効については、犯罪行為が終わった時から進行し、期間は3年と定められています。

撮影罪の公訴時効は3年であり、行為終了時から起算されます。

撮影行為以外で処罰の対象となる行為と罰則

性的姿態撮影等処罰法では、盗撮画像等を取り扱う以下の行為についても個別の罪として規定されています。

罪名 対象行為の概要 法定刑
提供罪(特定・少数) 性的影像記録を特定の少数の者に提供する行為 3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金
提供罪(不特定・多数/公然陳列) 不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列する行為 5年以下の拘禁刑又は500万円以下の罰金
保管罪 第三者への提供や公然陳列の目的で性的影像記録を保管する行為 2年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金
送信罪 不特定又は多数の者に向けて性的姿態等の影像を送信する行為 5年以下の拘禁刑又は500万円以下の罰金
記録罪 送信罪に該当する行為により送信された影像を情を知って記録する行為 3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金

送信罪については、不正に送信された影像であることを知りながらさらに不特定または多数の者へ転送・送信する行為も処罰の対象に含まれます。

複写物の没収および画像データの消去・廃棄に関する規定

従来の刑法上の没収規定では、有体物の原本に限られるなどの制約があり、不起訴となった場合や第三者が所持する複写物への対応が困難なケースがありました。

性的姿態撮影等処罰法では、撮影罪や記録罪によって生じた画像・動画の複写物についても明文で没収が可能と規定されています。

さらに、押収物に記録された画像データ等について、検察官による消去や廃棄を行う行政措置の規定も整備され、被害拡大を防止するための実効的な枠組みが設けられています。

アスリートや航空機内など具体的なケースにおける該当性

性的姿態撮影等処罰法が施行されたことにより、これまで取り締まりが難しかった場面や、処罰の可否が議論されていた行為についても法的な位置づけが明確化されました。ここでは、具体的にどのようなケースで撮影罪が成立するのかを解説します。

競技中のアスリートを撮影する行為

近年、スポーツ競技中の女性アスリートなどを性的な意図で撮影する行為が社会的な問題として取り上げられています。しかし、競技中のユニフォーム姿そのものを撮影する行為は、通常の応援・報道目的の撮影と性的意図を持った撮影との外形的な線引きが困難であることなどから、原則として撮影罪の直接の処罰対象からは除外されています。

もっとも、競技会場の更衣室やトイレといった本来衣服を脱ぐ場所での撮影行為や、赤外線カメラなどを用いてユニフォームの下を透過して撮影する行為については、性的姿態等を対象とした違法な撮影として撮影罪の処罰対象となります。

航空機内で客室乗務員を盗撮する行為

従来の法規制では、航空機内で客室乗務員を盗撮する行為に対して各都道府県の迷惑防止条例が適用されていました。しかし、飛行中の航空機内では行為が発生した瞬間にどの都道府県の上空を通過していたのかを厳密に特定することが困難であり、管轄の問題から処罰できないケースが生じる懸念がありました。

性的姿態撮影等処罰法は国全体の法律であるため、発生場所や飛行上空の自治体を問わず一律に取り締まりが可能です。

したがって、機内で客室乗務員の下着や性的な部位などをひそかに撮影した場合には、場所の特定を巡る問題が生じることなく、撮影罪が成立することになります。

着衣の全身撮影や執拗な撮影行為における判断基準

街頭や公共の場所で服を着ている人物の全身を無断で撮影した場合、性的な部位や下着そのものを撮影したわけではないため、通常は撮影罪の構成要件には該当しないと考えられます。

ただし、着衣の上からであっても胸部や臀部などの特定の部位に執拗にカメラを向けたり、著しく羞恥心を覚えさせるような方法で撮影を行ったりした場合には、各都道府県が定める迷惑防止条例違反(卑猥な言動など)に問われる可能性があります。

撮影罪等の疑いで逮捕された場合の刑事手続きの流れ

性的姿態撮影等処罰法に違反した疑いで逮捕された場合、刑事訴訟法に定められた厳格な時間制限のもとで手続きが進められます。捜査機関による身柄拘束や取り調べは一定の期限に従って進行します。

逮捕から検察官送致・勾留決定まで(最大72時間)

警察に逮捕されると、警察署の留置施設などに身柄が留置され、事件に関する取り調べが行われます。警察は逮捕から48時間以内に、事件記録や証拠とともに被疑者の身柄を検察官へ送致(送検)しなければなりません。

送致を受けた検察官は、引き続いて身柄拘束を行う必要があるかを検討し、24時間以内に裁判官へ勾留請求を行うか、あるいは釈放するかを決定します。逮捕から勾留決定までの最長72時間は、原則として家族などの一般面会が認められないケースが多く見られます。

勾留期間(最大20日間)と起訴・不起訴の判断

裁判官が勾留を認めた場合、勾留決定の日から原則として10日間の身柄拘束が続きます。捜査に時間を要するなどやむを得ない事由があるときは、さらに最長10日間の勾留延長が認められることがあります。

逮捕からの拘束期間を含めると、起訴前の身柄拘束は合計で最大23日間に及ぶ可能性があります。一方で、逃亡や証拠隠滅の恐れがないと判断された場合は、身柄拘束を受けずに日常生活を送りながら呼び出しに応じて取り調べを受ける在宅捜査となることもあります。

検察官は、勾留期間が満了するまでに集まった証拠をもとに、事件を裁判にかけるか(起訴)、裁判を行わずに終了させるか(不起訴)を判断します。

不起訴処分となった場合はその時点で手続きが終了し、前科が付くこともありません。

公判手続き・略式手続と判決

検察官が事件を起訴する場合、公判請求(正式な刑事裁判)を行うか、簡易的な略式手続を選択するかに分かれます。略式手続は、100万円以下の罰金または科料に相当する事件で、本人が同意した場合に書面審理のみで刑を言い渡す手続きです。

公判請求された場合は、公開の法廷で刑事裁判が開かれ、被告人の有罪・無罪や量刑が審理されます。裁判官による判決言い渡しを経て、控訴や上告がなければ判決が確定します。

手続きの段階 期間・時間制限の目安 主な内容
警察での捜査・送致 逮捕から48時間以内 警察による取り調べ、検察官への送致手続き
検察官による勾留請求 送致から24時間以内 検察官の取り調べ、裁判官への勾留請求または釈放の判断
勾留(身柄拘束) 原則10日間(延長時最大20日間) 留置施設での身柄拘束、実況見分や追加の取り調べ
終局処分の決定 勾留満了まで 検察官による起訴(公判請求・略式命令請求)または不起訴の判断
裁判・判決 起訴から約1か月〜数か月 公判手続きでの審理、判決の言い渡し

撮影罪に関する事件や不安が生じた際の弁護士への相談

性的姿態撮影等処罰法に抵触する疑いを持たれたり刑事手続きの対象となったりした場合には、法律の専門家である弁護士の助言やサポートを受けることが重要です。

取り調べへの対応と権利保護のための助言

捜査機関による取り調べでは、本人の供述内容が供述調書として記録され、その後の刑事手続きにおいて重要な証拠として扱われます。事実と異なる内容や意図しないニュアンスで調書が作成されることを防ぐため、内容の確認や署名押印の判断について適切な助言を受けることが大切です。

不当な取り調べに対して冷静に対処し、憲法や刑事訴訟法で保障された黙秘権などの権利を適切に行使するためにも、早い段階で法律知識に基づいたサポートを受けることが防御活動につながります。

被害者との示談交渉や早期の身柄解放に向けた活動

盗撮などの性犯罪事件では、被害者のプライバシー保護や心情への配慮から、捜査機関が加害者側に被害者の連絡先を直接開示することは通常ありません。そのため、被害者への謝罪や被害弁償の申し入れを行う際は、弁護士を通じて示談交渉を進めるのが一般的です。

また、逮捕・勾留による身柄拘束が長期化すると、就労や就学などの社会生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。逃亡や証拠隠滅の恐れがないことを客観的に示し、裁判官に対して意見書を提出するなど、早期の身柄解放を目指した活動を行うことも重要となります。

刑事手続きへの不安や疑問を早期に相談する意義

性的姿態撮影等処罰法に基づく捜査は迅速かつ厳格に進められることが多く、手続き全体の流れや処分の見通しが分からないままでは、精神的な負担も大きくなります。

刑事手続きには各段階で厳格な時間制限が設けられているため、できる限り早い段階で相談し、状況に応じた適切な対応策を検討することが重要です。

警察から出頭要請を受けた場合や、家族が身柄を拘束された場合など、手続きや今後の生活に疑問や不安が生じた際には、弁護士への相談を検討するとよいでしょう。

まとめ

性的姿態撮影等処罰法の施行により、盗撮行為そのものだけでなく、影像の提供や保管、送信といった行為についても全国一律で厳格な処罰が定められました。

逮捕や捜査の対象となった場合、刑事手続きは厳格な時間制限のもとで進行します。事実関係の整理や権利の保護、被害者対応などを適切に行うためにも、疑問や不安がある場合は早めに弁護士へ相談することを検討してみてください。

コラム監修者

KACHI SHOGO

KACHI SHOGO

所属:北九州オフィス

徳島県徳島市出身。東北大学法学部を卒業後、社会人を経て、早稲田大学大学院法務研究科に入学。 司法試験合格後、日本司法支援センター(法テラス)の常勤弁護士として、北海道から九州まで全国を飛び回る。 父親になったこと等を契機に法テラスを退職。 その後、縁があってネクスパート法律事務所北九州オフィスで勤務することになる。

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