更新日:2026年6月9日 (火)
公開日:2026年6月9日 (火)
夫が男性と浮気した場合も不貞行為になる?慰謝料請求は認められる?
サマリー
夫が男性と性的な関係を持ったことが発覚したら、相手が女性の場合よりも精神的なダメージを受けるかもしれません。男性と性的な関係を持った夫を受け入れられない、相手の男性に慰謝料を請求したい等と考えることもあるでしょう。
夫が、配偶者であるあなた以外の女性と肉体関係を持てば不貞行為となりますが、男性と性的な関係を持った場合はどうなるのでしょうか。
この記事では、夫が男性と性的な関係を持った場合も不貞行為になるのか、慰謝料請求は認められるのか、詳しく解説します。
夫が男性と浮気した場合も不貞行為になる?
夫が男性と性的な関係を持った場合も、不貞行為に該当する可能性があります。
同性間の浮気も、平和な夫婦共同生活を送る権利や利益を侵害する行為となりえるためです。
従来の裁判実務では、同性間の関係は不貞行為にあたらないとの考えが有力でした。
不貞とは、配偶者以外の者と肉体関係を結ぶことを意味します。これを定義した最高裁判決では、配偶者以外の者を異性に限定していなかったものの、学説では異性間の性的関係に限定して解釈されていました。当時は、性的指向やジェンダーアイデンティティに関する知識や理解が社会に十分浸透しておらず、同性愛は本人の努力や医学的措置で矯正可能と考えられていたことも理由の一つでしょう。
しかし、性的マイノリティへの理解が進むにつれて、裁判所の考え方にも変化が表れています。近年では、不貞行為には必ずしも性行為の存在が不可欠ではなく、夫婦共同生活を破壊し得るような性交類似行為が存在すれば、不貞行為に該当することを前提として、同性同士の間で性行為あるいはその類似行為が行われた結果として、婚姻共同生活の平穏が害される事態もまた想定されると判断した裁判例があります(東京地裁令和3年2月16日判決)。
夫が男性と性交類似行為をしたことで、夫婦共同生活の平穏が侵害された場合は、性行為の存在がなくても不貞行為にあたる可能性があります。
夫が男性と浮気したら慰謝料請求は認められる?
夫が男性と性的な関係を持った場合も、慰謝料請求が認められる可能性があります。
同性間でも、夫婦共同生活を破壊し得るような性的類似行為があれば不法行為にあたると判断され得るためです。
同性間の不貞行為に基づく慰謝料請求が認められた裁判例を2つ紹介します。
慰謝料120万円|横浜地裁小田原支部令和4年4月26日判決
原告である夫が、被告である女性が原告の妻と性的関係にあったとして、被告に対し、不法行為に基づく慰謝料の支払いを求めた事案です。
YとAは、XとAが婚姻する前に交際しており、婚姻後も頻繁にLINEでのメッセージのやり取りを行っていました。Yは、多くて月に1回の頻度でAと会い、陰部を指や口で触れたり、陰部を重ね合わせたりする等の性交類似行為をしていました。
裁判所は、XとAが婚姻関係にあったにもかかわらずYがAとの間で性交類似行為を行ったことは、XとAの婚姻共同生活の平穏を侵害するもので不法行為にあたると判断し、Yに対し、慰謝料120万円の支払いを命じました。
なお、この事案では、Yの不法行為と相当因果関係のある損害として、弁護士費用12万円の支払いも命じています。
慰謝料120万円|東京地裁令和3年8月10日判決
原告である夫が、被告である女性が原告の妻と不貞行為を行ったとして、被告に対し、慰謝料等の支払いを求めた事案です。
YとAは、同一のアルバイト先に勤務していたことをきっかけに知り合い、XとAが婚姻した後から頻繁に連絡を取り合うようになりました。YとAは、1〜2週間に一度、週末にホテルで8時間程度滞在するようになり、それはXとAが別居するまで続きました。
Xは、Aが婚姻後頻繁に出掛けるようになり、当時乳児だった子どもを自宅に置いて出かけたことを不審に思っていたところ、Aの所持品からYとAがキスや抱擁をしている動画や「愛してます。」等と記載された手紙を発見し、探偵事務所にYとAの行動調査を依頼しています。
裁判所は、以下の事情等からYの不貞行為によりXに生じた精神的苦痛は相当大きいと判断し、Yに対し、慰謝料120万円の支払いを命じました。
- XとAは特段問題なく婚姻関係を継続していたが、XがYとAの不貞関係を知った後にAが子どもを連れて転居したことで別居が開始された
- Aが離婚調停を申し立てた
- YとAの不貞関係の態様や継続期間(約2年)
なお、この事案では、Yの不貞行為と相当因果関係のある損害として、弁護士費用12万円、探偵の調査費用12万円の支払いも命じています。
夫と男性との浮気で慰謝料請求を考えるなら弁護士に相談すべき理由
同性間の不貞行為に基づく慰謝料請求を考えるなら、弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士への相談を勧める主な理由は、以下の2つです。
- 同性間の不貞行為は証明の難易度が高い
- 慰謝料を獲得するには法的な主張の組み立てがカギになる
以下で、詳しく紹介します。
同性間の不貞行為は証明の難易度が高い
同性間の不貞行為は、証明の難易度が高いです。
異性間であれば不貞行為の証拠となり得るものでも、同性間だと証拠として認められない可能性があります。
例えば、異性間では以下のような証拠を組み合わせることで、不貞行為を立証できる可能性があるでしょう。
- 手を繋いで歩いていることがわかる写真や動画
- 同室に2人きりで宿泊したことがわかるもの
- 相手の自宅に何度も出入りしていることがわかるもの
しかし、同性間だと「親しい友人だから」という理由で退けられる可能性があります。
不貞行為に基づく慰謝料請求が認められるためには、不貞行為の存在を立証する必要があるため、有力な証拠を確保できるかどうかが重要です。
同性間の不貞行為を立証するのは簡単ではないため、慰謝料請求を考えるなら弁護士への相談を積極的に検討してみてください。
慰謝料を獲得するには法的な主張の組み立てがカギになる
慰謝料を獲得するには法的な主張の組み立てがカギになります。
同性同士の性的な行為は不貞行為にはあたらないと判断された裁判例(名古屋地裁昭和47年2月29日判決)があり、長らくその立場が取られてきました。
3章で紹介したように、同性間でも不貞行為にあたるとして慰謝料請求を認めた下級審判決が出てきたものの、数としてはまだ少ないです。
参考にする裁判例が少ないため、不貞行為として認められない場合に備えて夫婦共同生活の平和を侵害する行為としての慰謝料を予備的に請求する等、主張の組み立てには法的な知識が不可欠です。
同性間の不貞行為に基づく慰謝料請求を考えるなら、弁護士のサポートを得ることをお勧めします。
まとめ
同性間の性的な行為が不貞行為にあたるとして慰謝料請求が認められた裁判例が出現したため、夫が男性と性的な関係を持てば法的な責任を問える可能性があります。
しかし、同性間でも不貞行為にあたると判断した裁判例はまだ少ないため、慰謝料を獲得するには法的な主張を組み立てられかが重要なポイントとなるでしょう。
同性間の不貞行為に基づく慰謝料請求を考えるなら、弁護士への相談を積極的に検討することをお勧めします。
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コラム監修者
SHIZU ISHIDA
所属:東京オフィス
広島県広島市出身。青山学院大学心理学科、東海大学法科大学院卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、刑事、民事、法人案件等幅広い分野の専門知識を習得。弁護士登録10年目にしてネクスパート法律事務所に入所し、現在は主に離婚事件に注力している。