更新日:2025年11月26日 (水)
公開日:2022年12月29日 (木)
交通事故の示談交渉で加害者側の弁護士が出てくる理由と対処法
サマリー
交通事故の示談交渉中に加害者側から突然弁護士が選任された旨の連絡が届くと、「なぜ弁護士が出てきたのか」「不利な状況になってしまうのではないか」と不安に感じる方も少なくありません。加害者側が弁護士を立てる背景には、意見の対立による交渉の難航や損害賠償額の大きさなど、さまざまな理由が存在します。この記事では、加害者側の弁護士が介入する主な理由や想定される状況、被害者側が不利益を避けるために知っておきたい対処のポイントを分かりやすく解説します。
交通事故の示談交渉で加害者側の弁護士が出てくる主な理由
交通事故の示談交渉を進めている最中に加害者側から弁護士が就いた旨を伝えられると、不安に感じる方も少なくありません。加害者側が弁護士を選任する背景には、交渉の進行状況や事故の規模に応じた主に7つの理由が考えられます。
1. 意見の対立などにより交渉が膠着している
過失割合や損害額について双方の主張が平行線をたどり、話し合いが進まなくなっているケースです。加害者側としては、法的な代理人を立てることで停滞した交渉を前に進め、早期の解決を図る狙いがあります。
2. 保険会社での対応が困難と判断された
交渉を進めるにあたって法的な見解の説明が必要になった場合や、当事者間の対話が難航している場合など、保険会社の担当者レベルでの対応に限界があると判断された際に弁護士へ引き継がれることがあります。
3. 裁判への移行が想定される
事故態様の争いが大きく、示談による合意形成が困難で裁判に発展する可能性が高い場合です。将来の訴訟を見据えて早期から弁護士を関与させるほか、加害者側から債務不存在確認訴訟などを提起する準備として依頼されるケースもあります。
4. 損害賠償金の総額が高額化する見込みがある
死亡事故や重度の後遺障害が残る事故では、損害賠償金の総額が数千万円から数億円規模に達することもあります。過失割合がわずかに異なるだけでも賠償金額に数百万円以上の差が生じるため、慎重を期して弁護士を立てる傾向が見られます。
5. 加害者が刑事処分の対象となっている
重大な過失や法令違反により、加害者が起訴や刑事罰の対象となる可能性があるケースです。示談の成否が起訴・不起訴の判断や量刑に考慮される場合があるため、刑事手続きへの対応も含めて弁護士に依頼することがあります。
6. 加害者が任意保険に加入していない
加害者が任意保険に未加入の場合、示談代行サービスが利用できないため、加害者本人が示談交渉を行わなければなりません。自身での交渉手続きや法律知識に不安を感じ、弁護士に対応を委任する場合があります。
7. 被害者側の請求内容に疑義が生じている
通院期間の妥当性や症状の申告内容などについて、保険会社や加害者側が慎重な確認を要すると判断した場合です。事実関係や医学的・法的な妥当性を精査するために弁護士が選任されることがあります。
加害者側に弁護士がついた場合に想定される状況
交渉窓口が加害者側弁護士へ一本化される
加害者側が弁護士を選任すると、被害者宛てに「受任通知」と呼ばれる書面が送付されるのが一般的です。受任通知が届いた時点から、加害者本人や保険会社の担当者と直接やり取りを行うことは原則としてできなくなります。
これ以降の示談交渉や各種書類のやり取り、損害賠償請求に関する協議は、すべて代理人となった弁護士を通じて進める形へと切り替わります。加害者本人に直接連絡を取ろうとしても応じてもらえないため、被害者自身が相手方弁護士と直接向き合わなければならない状況が生じます。
知識や交渉力の差によって主導権を握られる懸念
加害者側の弁護士は、交通事故に関する法令や過去の裁判例、実務上の損害賠償算定基準に精通しています。そのため、被害者の方がご自身だけで対応する場合、法律知識や交渉経験の差から、相手方のペースで協議が進んでしまう懸念があります。
被害者側にも事故の状況や怪我の程度に関する正当な言い分があるものの、法的な根拠や客観的な証拠に基づいて適切に反論できなければ、その主張を示談条件に反映させることが難しくなるケースも考えられます。
相手方の弁護士から提示される過失割合や損害額の根拠を正確に見極められないまま応対を続けると、妥当な水準からかけ離れた条件であっても疑問に気付けないまま示談が進んでしまう恐れがあります。
法律の知識を持つ弁護士を相手にご自身だけで交渉を続けると、知らず知らずのうちに不利な条件で合意してしまうリスクが懸念されます。
加害者側の弁護士から連絡が届いた際に留意すべきポイント
加害者側から弁護士が選任された旨の通知が届くと、これまでのやり取りとの違いに戸惑いを覚える場面も少なくありません。不本意な条件で合意してしまう事態を防ぐためには、相手方への対応においていくつかの重要な点に留意しておく必要があります。
提示された示談案を安易に受け入れず内容を精査する
相手方の弁護士から示談案や免責証書などが送付されてきた場合でも、内容を十分に確認しないまま安易にサインや押印をしてはいけません。
加害者側の弁護士は依頼者である加害者の利益を守る立場から交渉を行うため、提示された損害賠償額や過失割合が被害者にとって適切な水準であるとは限らない点に注意が必要です。
「弁護士が作成した書類だから問題ないだろう」と考えて合意してしまうと、本来請求できたはずの損害が漏れていても後から撤回することは原則として困難になります。提示された金額の内訳や過失割合の根拠などを細部まで精査することが大切です。
感情的な反論を避け客観的な事実に基づいて冷静に対応する
弁護士からの連絡に対して怒りや焦りを感じることもあるかもしれませんが、感情的に反論したり過度に強い言葉を使ったりすることは得策ではありません。
感情的な対応を続けてしまうと、相手方から「話し合いによる円滑な合意が困難である」と判断され、債務不存在確認訴訟などの法的手続きに移行する契機を与えてしまう可能性も考えられます。
加害者側の弁護士は法的な論理や証拠を基に主張を組み立ててくるため、被害者側としても事故状況の記録や治療費の明細といった客観的な事実関係を整理し、落ち着いて対応を進めることが求められます。
被害者側も弁護士への相談・依頼を検討するメリット

加害者側に弁護士がついた場合、被害者側も弁護士への相談や依頼を検討することで、交渉面や精神面での不利益を回避しやすくなります。弁護士同士で話し合いを進めることにより、さまざまなメリットが期待できます。
法的根拠に基づき対等な立場で交渉を進めやすくなる
法律知識を持つ加害者側の弁護士に対し、ご自身だけで対応を続けると、相手の法的な主張に対して適切な反論を行うことが難しくなりがちです。
被害者側も弁護士を立てることで、過去の判例や法的根拠に基づいた主張を展開できるようになります。対等な立場で示談交渉を進められるため、相手方のペースに巻き込まれるのを防ぎやすくなります。
相手方弁護士との直接交渉を避けられ精神的・時間的負担が軽減する
加害者側の弁護士と直接やり取りを行うことは、法的な駆け引きや連絡対応へのプレッシャーから、大きな精神的ストレスを伴うことがあります。
弁護士に依頼すれば交渉の窓口をすべて任せられるため、相手方弁護士と直接話す必要がなくなります。連絡対応に割く時間や労力を大幅に削減でき、怪我の治療や日常生活への復帰に専念しやすくなります。
適切な損害賠償額の算定と弁護士費用特約の活用
加害者側から提示された賠償案が適切な水準であるかを被害者自身で判断することは容易ではありません。弁護士に依頼することで、事故の態様や損害の実態に応じた適正な賠償額を算定・精査してもらえます。
ご自身やご家族が加入している自動車保険等に「弁護士費用特約」が付帯されていれば、限度額の範囲内で弁護士費用を保険から賄える場合があります。費用の自己負担を抑えて依頼できる可能性があるため、事前に保険の加入状況を確認しておくと安心です。
まとめ:冷静な対応と弁護士への相談
交通事故の示談交渉において、加害者側に弁護士がついたという通知を受けると、今後の進め方について大きな不安を抱くことも考えられます。しかし、相手方に弁護士が介入したからといって、直ちに被害者側が不利になると決まっているわけではありません。
まずは慌てずに、相手方の主張内容やこれまでの交渉の経緯など、現在の状況を客観的に整理することが大切です。加害者側がどのような意図や法的根拠からその条件を提示しているのかを冷静に見極める姿勢が求められます。
相手方が法的な根拠をもとに交渉を進めてくる以上、提示された示談案を安易に受け入れず、慎重に確認を行うことが重要です。
状況の整理と慎重な見極め
事故直後からの通院記録や休業損害に関する資料、事故態様を示す証拠などを再度確認し、ご自身の言い分を裏付ける要素を整理しておくことが、今後の対応における土台となります。
加害者側の弁護士から連絡が届いた段階で、ご自身だけで対抗しようと無理を重ねてしまうと、思わぬ不利益を被る懸念もあります。法的な論点や妥当な損害賠償額の基準については、高度な知識が求められる場面が多いためです。
不安がある場合の弁護士への相談
提示された金額や条件に納得がいかない場合や、相手方弁護士との直接のやり取りに少しでも不安を感じる場合は、弁護士への相談を検討してみるのも有効な選択肢です。
ご自身やご家族が加入している自動車保険などに弁護士費用特約が付帯されていれば、費用負担を抑えながら相談や依頼を行えるケースもあります。まずは保険の契約内容を確認してみるとよいでしょう。
適正な損害賠償を受けるためには、感情的にならず冷静な判断を維持し、状況に応じて弁護士の助言を受けながら手続きを進めていくことが大切です。
コラム監修者
JUNICHI TASHIRO
所属:福岡オフィス 支店長
福岡県北九州市出身。小倉高校、岡山大学法学部、神戸大学法科大学院を卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、個人・法人問わず幅広い分野の相談・交渉に取り組む。ネクスパート法律事務所福岡オフィス所長として、依頼者にとって何が大事かを第一に考え、スピード感をもって解決することを信条とし、どこの事務所よりもネクスパート法律事務所に依頼したいと思ってもらえるよう日夜奮闘中。