ステマ規制「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」

2023年3月28日、消費者庁より、いわゆるステルスマーケティング(以下「ステマ」という。)が景品表示法で規制されることになりました。

以下、その概要について順を追って解説いたします。

目次

従来の景品表示法の規制の範囲

景品表示法5条により、従来、以下の3類型の表示が規制をされていましたが、この中にはステマ規制は盛り込まれていませんでした。

 1号:優良誤認表示・・・取引内容が著しく優良であると誤認

 2号:有利誤認表示・・・取引条件が著しく有利であると誤認

 3号:内閣総理大臣が指定する表示・・・おとり広告や原産国等の表示

ステマ規制の新設

2023年3月28日、上記の5条3号で内閣総理大臣が指定する表示の中に、新たにステマ規制が盛り込まれることになりました。

それが、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」と言います(令和5年内閣府告示第19号)。

この「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」とは事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であるにもかかわらず、事業者の表示であることを明瞭にしないことなどにより、一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難となる表示とされています。

要は、広告主の広告であるにも関わらず、そのことを明瞭にしないことにより、消費者が広告であるかどうかを判別することが困難な表示であるということです。

SNS投稿の留意点

インフルエンサー、アフィエイターその他一般の消費者(以下「インフルエンサー等」と言います。)の投稿について、リアルな口コミであれば規制の対象とはなりません。

もっとも、インフルエンサー等の投稿でも、広告主が投稿内容の決定に関与したと認められる場合、つまり、インフルエンサー等の自主的な意思による投稿内容ではない場合にはステマ規制の対象となります。

逆に言えば、投稿するしないの自由、投稿内容の自由がインフルエンサー等の自主的な意思に委ねられているのであれば、ステマ規制の対象にはならないと言えます。

この点について、消費者庁は、「事業者が表示内容の決定に関与したと認められる、つまり、客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と認められない場合」には、事業者の表示に該当する(ステマ規制の対象になる。)としています。

事業者の従業員や子会社の従業員などが投稿する場合のほか、以下のような事例がステマ規制の対象になるとされています。

(i) 広告主がインフルエンサー等に対して当該インフルエンサー等のSNS上や口コミサイト上等に自らの商品又は役務に係る表示をさせる場合。

(ⅱ) ECサイトに出店する広告主が、いわゆるブローカーや自らの商品の購入者に依頼して、購入した商品について、当該ECサイトのレビューを通じて表示させる場合。

(ⅲ) 広告主がアフィリエイトプログラムを用いた表示を行う際に、アフィリエイターに委託して、自らの商品又は役務について表示させる場合。

(ⅳ) 広告主が他の事業者に依頼して、プラットフォーム上の口コミ投稿を通じて、自らの競合事業者の商品又は役務について、自らの商品又は役務と比較した、低い評価を表示させる場合。

特筆すべきは(ⅱ)の後半、ECサイトの購入者へのレビュー依頼もステマ規制の対象になりえるとされています。レビューを書く書かない、悪い口コミを書く自由も担保されている場合には対象にはならいものと思われますが、例えば、星4以上をつけてくれた購入者には何かサービス、等の場合には対象になるでしょう。

また、(ⅳ)について、競合他社への低評価の口コミもステマ規制の対象になるとのことです。これについては景品表示法で規制されるまでもなく、刑法の営業妨害罪や信用棄損罪に該当する可能性もあるので当然NGです。

ステマ規制の対象になる場合は、広告であることを明瞭にすれば問題ないということになります。

インフルエンサー等の場合は、基本的には「広告」、「宣伝」、「プロモーション」、「PR」といった表示をすればOKとされています。

ギフティングの留意点

いわゆるギフティングがステマ規制の対象になるかどうか、という点についても消費者庁から見解が示され、以下のような場合にはステマ規制の対象になるとされています。

事業者が第三者に対してSNSを通じた表示を行うことを依頼しつつ、自らの商品又は役務について表示してもらうことを目的に、当該商品又は役務を無償で提供し、その提供を受けた当該第三者が当該事業者の方針や内容に沿った表示を行うなど、客観的な状況に基づき、当該表示内容が当該第三者の自主的な意思によるものとは認められない場合。

整理すると、以下の場合はステマ規制の対象になるということになります。

  • 広告主側からインフルエンサーにSNS投稿の依頼があること
  • 広告主が広告する目的で行っていること
  • インフルエンサー等が、結果として、広告主の意向に沿った投稿をしたこと
  • 客観的な状況からして、インフルエンサーの自主的な意思による投稿とは認められないこと

逆にいえば、広告主が広告する目的をもってギフティングする場合でも、インフルエンサー等にSNS投稿の依頼をせず、また投稿内容について一切関与せず、自主的な意思に任せてしまえばステマ規制の対象にはならないと解する余地があります。

ステマ規制の対象となる場合には、こちらに関しても「広告」、「宣伝」、「プロモーション」、「PR」といった表示をすればOKですので、投稿依頼をする際には必ずこのような表示をしてもらうようにしましょう。

ステマ規制の対象とならない例

ステルスマーケティングに関する検討会報告書において、以下のような例が、ステマ規制の対象にはならないとされています。一部分かりやすい表現に言い換えています。

  • インフルエンサー等が、自らの自主的な意思に基づき特定の事業者の商品または役務について行う表示を行う場合
  •  アフィリエイターの表示であっても、事業者とアフィリエイターとの間で当該表示に係る情報のやり取りが直接または間接的に一切行われていないなど、アフィリエイトプログラムを利用した広告主による広告とは認められない実態にある場合
  •  ECサイトにおける出店者の商品の購入者が、自らの自主的な意思に基づきECサイトにおいてレビュー機能により当該事業者の商品等の表示を行う場合
  •  ECサイトの出店者が購入者に対しレビュー機能によるレビュー投稿に対する謝礼として次回割引クーポン等を配布する場合であっても、購入者との間で表示内容について一切の情報のやり取りが行われておらず、購入者が自らの自主的な意思に基づき投稿したと客観的に認められる場合
  •  インフルエンサー等が自らの自主的な意思に基づき広告主のSNS上のキャンペーンや懸賞に応募するための表示を行う場合
  • 広告主が自社のウェブサイトにおいて、インフルエンサー等の投稿を恣意的に抽出せず、また、インフルエンサー等の投稿内容に変更を加えることなくそのまま引用する場合
  •  広告主が不特定の者に対して、自らのサンプル商品や役務のお試し券の配布を行った結果、これらを受けた当該不特定の者が行う表示が第三者の自主的な意思による表示と客観的に認められる場合。
  •  広告主から、表示内容を決定できる程度の関係性にないインフルエンサー等に対し、表示を目的とした無償提供ではなく、単なるプレゼントとして商品等の贈呈を行った結果、当該インフルエンサー等が自主的な意思に基づいて表示を行ったと客観的に認められる場合

ステマ規制に違反した場合の措置

景品表示法7条により、ステマ規制に違反した場合、内閣総理大臣より措置命令を受ける可能性があります。

措置命令の内容は、違反行為の差し止めや公示その他必要な事項となります。

なお、課徴金については、優良誤認表示及び有利誤認表示のみが対象であり、ステマ規制違反については課されることはありません(景品表示法8条)。

措置命令に従わなかった場合は罰則があり、2年以下の懲役または300万円以下の罰金のいずれかまたは併科となります。

終わりに

インフルエンサーマーケティングやアフィリエイト広告に関しては、ステマ規制のみならず、薬機法、医療法、金商法など特別法の規制も問題となることは多くあります。

ネクスパート法律事務所ではこのような広告法務について専門チームで対応させていただいています。

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