令和7年12月23日、消費者庁は某プロ野球球団が申請した確約計画を認定しました。
本件は、有料会員制ファンクラブの入会特典として、選手の直筆サイン入りボールが必ず提供されるかのような表示をしていた事案です。実際には、サインボールが提供されるのは入会者の一部に限られていました。
この表示は、景品表示法第5条第2号(有利誤認表示)に違反する疑いがあるとされました。確約手続は、違反の有無を認定せずに事業者が自主的に是正措置を講じる制度です。
本記事では、事案の概要、確約手続の仕組み、企業が注意すべきポイントを解説します。
事案の概要
ここでは、消費者庁が問題とした表示について説明します。
問題となった表示
当該球団は、令和7年1月17日付けのダイレクトメールで、有料会員制ファンクラブへの入会を勧誘しました。
ダイレクトメールには、次の内容が記載されていました。
- 有料会員への入会で折りたたみシートクッションまたはマルチパスケースの特典を提供
- 「さらに選手の直筆サイン入りボールをランダムでお渡しします」という記載
- 球場外周のファンクラブブースでダイレクトメールを提示すれば受け取れるという案内
これらの表示から、入会者全員が直筆サインボールを受け取れると読み取れる内容でした。
実際の取引条件
しかし、実際には直筆サインボールが提供されるのは、入会者の一部に限られていました。
表示と実際の取引条件に乖離があったため、景品表示法第5条第2号の有利誤認表示に該当する疑いがあるとされました。
景品表示法における「確約手続」とは
ここでは、本件で用いられた確約手続の制度について説明します。
確約手続の概要
確約手続は、景品表示法に違反する疑いのある行為について、事業者が自主的に是正措置を講じる制度です。
消費者庁は、違反被疑行為があると判断した場合、事業者に通知します。通知を受けた事業者は、60日以内に是正措置計画(確約計画)を提出できます。
消費者庁が確約計画を認定すると、措置命令や課徴金納付命令は行われません。
確約計画の認定要件
確約計画が認定されるには、次の2つの要件を満たす必要があります。
- 措置内容の十分性
違反被疑行為とその影響を是正するために十分な内容であること - 措置実施の確実性
措置が確実に実施されると見込まれること
措置命令との違い
確約手続には、次の特徴があります。
- 違反の有無は認定されない
- 事業者が自主的に是正措置を講じる
- 計画が履行されない場合は認定が取り消され、措置命令の対象となりうる
認定された確約計画の内容
認定された確約計画には、次の措置が含まれています。
- 取締役会決議
違反被疑行為を行っていないことの確認と、同様の行為を行わない旨を決議 - 消費者への周知
違反被疑行為の内容を一般消費者に周知 - 再発防止措置
同種の行為が再び行われることを防止するための各種措置 - 年会費の一部返金
ダイレクトメールを受領し入会した消費者に対する返金 - 履行状況の報告
上記措置の履行状況を消費者庁に報告
消費者庁は、これらの措置が措置内容の十分性と措置実施の確実性の両方を満たすと判断し、確約計画を認定しました。
企業が注意すべきポイント
ここでは、本件から企業が学ぶべき点を説明します。
「必ずもらえる」と誤解される表示に注意
本件では、特典が一部の会員にのみ提供されるにもかかわらず、全員に提供されるかのような表示をしたことが問題となりました。
キャンペーンや特典を告知する際は、条件や制限を明確に表示する必要があります。
景品表示法の有利誤認表示に注意
有利誤認表示とは、商品やサービスの価格その他の取引条件について、実際よりも著しく有利であると消費者に誤認させる表示です。
具体的には、次のような表示が該当しえます。
- 実際には付与されない特典が付与されるかのような表示
- 一部の顧客にのみ適用される条件を全員に適用されるかのような表示
- 期間限定でないのに期間限定と表示する場合
確約手続の活用
確約手続は、違反の認定を受けずに自主的に是正できる点で、企業にとってメリットがあります。
ただし、消費者への周知や返金など、措置命令と同等以上の対応が求められる場合もあります。
違反被疑行為の通知を受けた場合は、速やかに弁護士に相談し、確約計画の作成を検討することが重要です。
まとめ
本件は、ファンクラブ入会特典の表示が景品表示法に違反する疑いがあるとされた事案です。
当該球団は確約手続を利用し、消費者への周知や年会費の一部返金を含む確約計画を提出しました。消費者庁はこの計画を認定し、措置命令は行われていません。
キャンペーンや特典の表示においては、消費者が誤解しないよう、条件や制限を明確に示すことが求められます。
景品表示法に関するご相談は、当事務所までお問い合わせください。

