OTC医薬品の広告表示について

目次

OTC医薬品とは

OTCは英語の「Over The Counter」の頭文字をとったもので、意味はカウンター越しに薬を販売すること、つまり処方箋によることなく薬局やドラッグストアで購入することができる医薬品を指します。

OTC医薬品の広告規制の必要性

OTC医薬品は、処方箋により購入することのできる医薬品と比べ、誰でも手軽に購入することができるという特色があります。

そのため、OTC医薬品を販売する側としては、いかに購入客の目に留まるか、魅力的に見えるか、といった視点から広告を作成しますが、そこには「医薬品」特有の問題があります。

たとえば、医薬品の承認過程で、花粉症に効くかどうかの証明がされていない医薬品にもかかわらず、「花粉症に効く」との表示があれば、購入客は実際には花粉症に効くか分からない医薬品を間違って購入することになりかねません。

自分の体調に対し自分で薬を選んで治療するというセルフメディケーションの推進のためには、購入者に適切に情報が伝わる必要があり、医薬品が身体に直接影響を与えることに照らせば、その情報は極めて重要です。

そこで、OTC医薬品については、医薬品に関する広告規制に加え、独自の広告規制が設けられています。

OTC医薬品の広告表示の落とし穴

医療用と同じ成分を含有したOTC医薬品について

OTC医薬品の中には、従来医療用として使用されていた成分をOTC医薬品に含有させた「スイッチ成分配合のOTC医薬品」が存在します。

このような医薬品については、販売側としては、医療用成分を含んでいるとの特徴を大々的に主張したいところではありますが、「OTC医薬品等の適正広告ガイドライン(2019年版)」では、次のような表現は禁止されています。理由は、スイッチ成分であることと効果は直接結びつくものではないと考えられているからです。

  • 「スイッチOTCだから効く」
  • 「医療用と同じ成分だから効く」

また、医療用成分と同じであること以上に、医師からの処方薬と同一であるとの誤解を与えかねない表現も同様に禁止されています。

  • 「お医者さんで使っている」
  • 「病院で使われている」

スイッチ成分配合のOTC医薬品を販売する場合に、上記ガイドラインで認められている表現としては次のとおりです。

  •  スイッチOTC
  •  スイッチOTC医薬品
  •  医療用と同じ成分を始めて配合(※発売後3年以内に限って可能。)
  •  医療用成分を配合しました

このように、スイッチ成分配合のOTC医薬品を販売する場合には、上記の可能な表現をもとに、他の特徴を踏まえて広告表現を考える必要があります。

CGやアニメーション等を使用した表現について

OTC医薬品については、効果を視覚的にアピールするため、CGやアニメーション、写真等を使用して広告が行われることが多くあります。

このような表現方法をとる場合においても、広告を見た人に誤解を与えることのないよう、上記ガイドラインでは、次のとおりルールが定められています。

  1. テレビ等動画広告における個々のCG・アニメーション等のイメージ表現の映像中、画面の見やすい場所に「模式図」又は「イメージ図」の文言を静止した明確な文字で1秒以上表現する。
    また、紙面等においても明確な文字で記載すること。
  2. 患部や疾病の原因・要素・症状が完全に消失するかのような保証的表現は行わない。
  3. 当該製品の認められた効能効果を逸脱したり、虚偽・誇大な表現は行わない。
  4. 患部・粘膜等の表現で、視聴者が極めて不快に感じる表現は行わない。

具体的には、殺菌作用や抗炎症作用を表現する場合には、病原菌や炎症部分が完全に画面から消えてしまうような表現は避け、2割程度を残すような表現にしなければなりません。

白衣スタイルでの広告について

 OTC医薬品の広告として、人物を登場させて製品の説明をさせたり、イメージキャラクターとしてタレントを起用するケースがよくみられます。

 しかしながら、白衣や医療関係者をイメージさせるようなコスチュームでの出演には注意が必要です。

 上記ガイドラインでは、「医薬関係者又は医薬開発者以外の者とを問わず、医師、薬剤師、看護師等のスタイル(服装等)の人が、広告中に登場すること自体は直ちに医薬関係者の推薦に該当するわけではないが、医師等のスタイルの人が広告することは医薬関係者の推せんに該当する。」とされており、広告に出演する人物が医師等のコスチュームを着用して医薬品の広告をすることは禁止されています。

 これは、医師等のコスチュームを着用した人物による広告は、見る人によっては医師等からの推薦という裏付けがあるように誤認されやすく、一般的に「医師等の推薦があるものは効果が期待できるに違いない」との認識に結びつきやすいからです。

 人物を登場させる広告を作成するにあたっては、服装やセットにも注意する必要があります。

「疲れに効く」との広告について

 ドラッグストア等では「疲れに効く」と広告する製品を多く見かけますが、この「疲れ」についての広告に関しても注意が必要です。

 上記ガイドラインでは、「肉体疲労時の影響補給」、「肉体疲労時のビタミン○○補給」、「肉体疲労」等を効能効果として認められている滋養強壮保健薬(OTC 医薬品)、ビタミン含有保健剤(指定医薬部外品)、ビタミンを含有する保健薬(指定医薬部外品)、生薬を主たる有効成分とする保健薬(指定医薬部外品)等で「疲れ」について表現することは認められるものの、以下の点に留意することとされています。

  1. 「肉体的疲労」ではなく、「精神的疲労」と表現することは、効能効果の範囲を逸脱するので認められません。
  2. 「疲労の回復・予防」の効能効果にて承認を得た製品を除き、「疲れに負けない〇〇〇(製品名)」、「疲れスッキリ」のような、明らかな「疲労回復」、「疲労予防」を表現することは、効能効果の範囲を逸脱するので認められません。
  3. 「疲れ」につけられる形容詞として、重要度を示す「ひどい」、「重度の」等の表現は認められません。

日々頑張る人たちにとって人気なのが「疲労回復」に関する製品ですが、その広告表現については製品自体の効能効果を逸脱しないかといった視点が必要になります。

広告チェックの重要性

OTC医薬品は、セルフメディケーションの普及にはなくてはならないものであり、人々の関心も強いだけに、上記のとおり細かな規制が課されています。

様々な規制があるのは事実ですが、人の購買意欲を刺激するような表現とガイドライン違反にならない表現は、必ずしも両立しないわけではありません。

ネクスパート法律事務所では、様々な規制のもとで最適な表現を目指してアドバイスをさせていただいております。

広告表現にご不安があれば、お気軽にお問い合わせください。

目次
閉じる