医療広告をチェックする手順

広告代理店のお仕事で、クリニックや歯医者さんのLPやSNS広告をチェックしなければならないことがあると思います。

医療広告では、医療法と、景品表示法を意識することになります。間違えやすいところですが、医療広告では薬機法は基本的に関係ないです。

さて、医療法と景表法と言っても、どのように見ていけばいいか、分からないと思います。

そこで今日は、弁護士がどのようにチェックしているのか、解説いたします。

本解説は、保険診療ではなく自費診療の広告を前提としています。

目次

広告チェックのポイント

ポイントは、「上から下まで2回見る」ことです。

1回目・・・医療法のいわゆる限定解除」の要件を満たすかどうかをチェックします。

2回目・・・医療法の禁止される広告に該当しないか、景表法の優良誤認表示有利誤認表示に該当しないか、をチェックします。

1回目

医療法について、厚生労働省が「医療広告ガイドライン」というのを出して解説してくれています。しかし、読んでもいまいち分からないという方が多いのではないでしょうか。

分かりづらい理由は、広告可能事項」「限定解除」「広告可能事項以外の広告」「禁止される広告」などが、複雑に入り組んでいるからです。

一応説明しますと、医療広告については、いわゆる「広告可能事項」以外の広告が禁止されています。ただし、患者が自ら求めて入手する情報については、「限定解除」の要件を満たした場合、広告可能事項以外の広告で、かつ、禁止される広告以外のものが可能となります。

すでに分かりにくいと思いますが、端的に言うと、

「限定解除」の要件を満たせば、「禁止される広告」以外の広告が可能、ということです。

したがって、まず「限定解除」の要件を満たすかチェックしなければなりません。

「限定解除」の要件とは?

  1.  患者が自ら選んでアクセスしてくるサイトであること
  2.  問い合わせ先等の明記
  3.  通常必要となる費用の明記(自由診療の場合)
  4.  リスクと副作用の明記(自由診療の場合)

ここで、LPなどのwebサイトについては、①②は当然満たすものと思われます。

バナー広告や、電車内やテレビで見かける広告は①を満たさないので、限定解除ができません。その場合は、「広告可能事項」の広告しかできなくなります。

SNSは、どちらの場合もあると思います。Instagramやtwitterの場合はバナーなどと同じで自動的に表示されるので①の要件を満たしにくく、逆にYouTubeであれば、患者さんが自ら選んでアクセスしてくる、ということも多いかと思います。(但し、ステマや、タイトルで広告である旨が標記されてないと①の要件を満たさないと思われます。)

③の費用の明記は多くのLPでは守られていると思います。

逆に、YouTubeなどは守られていないこともあると思いますので注意が必要です。

④のリスクと副作用の明記は忘れがちです。

いわゆるビフォアアフター写真を掲載する場合にリスクと副作用の明記が必要であるということは良く知られていますが、そもそも自由診療で広告可能事項以外も広告したいというときには、リスクと副作用の明記が必須になります。

そこで、LPやSNSをチェックする際は、まず①~④の要件を満たすか、ということで1回チェックする、という作業が必要になります。

これを満たした場合は、次のチェックに移ります。

2回目

2回目は内容をしっかり見ていくことになります。

医療法上の「禁止される広告」に該当しないか、また、景表法の「優良誤認表示」「有利誤認表示」に該当しないかをチェックしましょう。

禁止される広告とは?

  1.  虚偽広告
  2.  比較優良広告
  3.  誇大広告
  4.  公序良俗に反する内容の広告
  5.  患者その他の者の主観又は伝聞に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談の広告
  6.  治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等の広告
  7.  品位を損ねる内容の広告

優良誤認表示とは?

事業者が、自己の供給する商品・サービスの取引において、その品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、

(1)実際のものよりも著しく優良であると示すもの

(2)事実に相違して競争関係にある事業者に係るものよりも著しく優良であると示すもの

であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示

有利誤認表示とは?

事業者が、自己の供給する商品・サービスの取引において、価格その他の取引条件について、一般消費者に対し、

(1)実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるもの

(2)競争事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるもの

であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示

なんとなくお分かりかと思いますが、医療法の禁止される広告は、景表法の優良誤認表示と有利誤認と、重複するところが大いにあります。

要は、虚偽や誇大な広告はNGです。

禁止される広告については、常識的な判断で見ていただければだいたい分かりますが、微妙なものなどはこちらをご参照ください。

当事務所では、LPやSNSの広告チェック業務や、チェックする担当者の教育や社内のナレッジを蓄積するためのコンサルティング業務も行っております。
ぜひこの機会に顧問契約のご検討をいただけましたら幸いです。

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代表弁護士 寺垣 俊介
(第二東京弁護士会)

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