ドバイ法人税をQ&A方式で弁護士が解説

この記事では、ドバイ法人ついて弁護士がQ&A方式で解説します。

Q1 : ドバイに法人税は存在しますか?

A1 : ドバイにはこれまで法人税制度は存在しませんでしたが、2023年6月1日よりUAE法人税制度が導入されました。

Q2 : UAE法人税は誰に適用されますか?

A2 : UAE法人税は、UAEで設立された法人及びUAEで実質的に管理・支配されている外国法人に適用されます。また、UAE法人税は、UAEで個人事業を行う自然人に対しても適用されるため注意する必要があります。(詳しくはQ9参照)
ただし、当面の間は、中小企業向け特例によって法人税の免税措置を受けることが可能です
(詳しくはQ11参照)

Q3 : フリーゾーンに設立された会社にもUAE法人税は適用されますか。

A3 : フリーゾーンに設立された会社にもUAE法人税は適用されます。ただし、Qualifying Free Zone Personというカテゴリに該当する会社については、一定の売り上げについては法人税が0%となります(詳しくはQ10参照)。

Q4 : UAE法人税の税率について教えてください。

A4 : 純利益のうち、AED375,000(約1,500万円)までは0%の税率が、AED375,000を超える部分については9%の税率が課されます。

Q5 : 法人税に関して、会社として実施しなければならないことはありますか。

A5 : 法人税登録(Corporate Tax Registration)をFederal Tax Authorityとの関係で実施しなければなりません。

Q6 : 法人税登録の期限や罰則はありますか。

A6 : 法人税登録は、法人設立から3ヶ月以内に実施する必要があります。これを怠った場合、AED10,000 (約40万円)の罰金が課される場合があります。

Q7 : 課税所得の計算はどのように行われますか。

Q7 : 課税期間の課税所得は、法人税法および関連する施行令に規定された特定の項目の調整を行った後の、会計上の純利益(または損失)によって計算されます。

会計上の当期純利益(または損失)は、国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards:IFRS)に従って作成された財務諸表に報告された金額となります。

会計上の純利益(または損失)に対する調整は、以下の項目について行う必要があります。

  • 未実現損益(実現主義の適用に関する選択に従う)
  • 適格配当やキャピタルゲインなどの非課税所得
  • 適格グループ内の譲渡により生じた損益
  • 法人税法第27条に基づく適格事業再編取引から生じる譲渡損益
  • 法人税法上認められない控除
  • 関連当事者および関連者との取引
  • 関連条件を満たすグループ内での欠損金の譲渡
  • インセンティブまたは税額軽減
  • 大臣が指定するその他の調整

Q8 : 課税期間はどのように決定されますか。

A8 : 法人税は年単位で課税されるため、「課税期間」を特定する必要があります。課税期間は、財務諸表の作成に使用される会計年度であり、通常グレゴリオ暦年(すなわち1月1日から12月31日まで)となりますが、異なる期間を設定することも可能です。

Q9 : 自然人に対してUAE法人税はどのような場合に適用されますか。

A9:自然人は、法人税法および2023年閣議決定第49号で定義されたUAEにおける「事業」または「事業活動」に基づく年間売上高がAED1,000,000 (約4千万円)を超える場合、UAE法人税の課税対象となります。

「事業」または「事業活動」には、以下の売上は含まれません。

  • 雇用収入
  • 個人投資所得
  • 不動産投資収入

自然人の課税対象所得は、UAEで行う事業または事業活動から得られるすべての所得となります。自然人がUAEで行う事業または事業活動に関連する限りにおいて、UAE国外で得た所得も含まれます。

Q10 : Qualifying Free Zone Personに該当する場合、法人税の負担が軽くなる場合があると聞きました。どのような会社がQualifying Free Zone Personに該当するのでしょうか。

A9:以下の条件を全て満たす場合は、Qualifying Free Zone Personとして適格活動(Qualifying Activities)およびフリーゾーン企業との取引により発生する課税所得の税率が0%となります。

(a) フリーゾーンにおいて十分な実質を維持すること

(b) 適格所得(Qualifying Income)を得ていること

(c) 通常のUAE法人税の適用を選択していないこと

(d) 独立企業間原則および移転価格税制並びにそれらの文書化要件を遵守すること

(e) 監査済みの財務諸表を作成し、維持すること

ただし、(b)の条件を満たすことが難しいため、日系のフリーゾーン企業がQualifying Free Zone Personにカテゴライズすることは容易ではありません。

(b)の要件を満たすためには、非課税基準額要件(de minimis requirements)を充足する必要があります。具体的には、適格活動(Qualifying Activities)以外の活動から発生する売上が総売上の5%またはAED5,000,000(約2億円)のいずれか低い方を上回ってはならないものと規定されます。

適格活動(Qualifying Activities)は以下のとおり定義されます。

(a) 商品または材料の製造

(b) 商品または原材料の加工

(c) 株式その他の有価証券の保有

(d) 船舶の所有、管理及び運航

(e) 再保険業務であって、当該国の所轄庁の規制監督を受けるもの。

(f) 国の管轄当局の規制監督を受ける資金管理サービス。

(g) 国の所轄当局の規制監督を受ける資産および投資管理サービス。

(h) 関連当事者に対する本部サービス。

(i) 関連当事者に対する財務および融資サービス。

(j) エンジンおよび回転部品を含む航空機の融資およびリース。

(k) 指定地区内または指定地区から、販売または再販を目的として、当該商品または 原材料もしくはその一部を再販または加工もしくは変更する顧客に対する、商品または原材料の流通。

(l) 物流サービス。

(m) 本条第(a)項から第(l)項までに掲げる活動に付随する活動。

一般論に、ドバイ移住した日本人が従事する事業は、上記の適格活動に該当しないため、非課税基準要件を充足することが難しく、Qualifying Free Zone Personとして税優遇を受けることは困難です。

Q11 : 当面の間は、中小企業についてはUAE法人税の免税措置があると聞きました。どのような制度なのでしょうか。

A11 : 関連する課税期間の売上がAED 3,000,000 (約1億2千万円)以下の企業は、2026年12月31日以前に終了する課税期間までの課税期間について中小企業免税(Small Business Relief)を選択できます。中小企業免税を選択した場合、課税期間中に課税所得がないものとして取り扱われます。中小企業免税の選択は、関連する課税期間の法人税申告において実施する必要があります。なお、一度でも課税期間の売上がAED 3,000,000を超えてしまった場合、中小企業免税を選択することはできなくなります。

Q12 : 法人税申告の関係で、財務諸表を作成・保管する必要はありますか。

A12 : 法人税申告の関係で、財務諸表を作成・保管する必要があります。保管期間は、課税期間終了後7年間となります。

Q13 : 法人税申告の関係で、監査済み財務諸表を作成・保管する必要はありますか。

A13 : 以下の会社を除いて、監査済み財務諸表の作成義務はありません。

  • 課税期間中の売上がAED5,000万(約20億円)を超える会社
  • Qualifying Free Zone Person
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