2022年から、NFTの取引が日本でもさかんに行われるようになってきました。日本発のNFTプロジェクトが世界最大のマーケットプレイスOpenSea(オープンシー)で世界ランキング1位となったことでも話題となりました。
これからもますます盛んになりそうなNFTの売買ですが、NFTによっては、買ったときから数十倍となることも珍しくありません。
これらの場合に、NFT取引で得た利益は確定申告などをしなければならないのでしょうか?
このコラムでは、NFT売買と税金について弁護士が解説します。
NFT売買にかかる税金は?
NFTを用いた取引を行った場合の課税関係については、国税庁の見解が示されています。これによると、
NFTが暗号資産などの財産的価値を有する資産と交換できるかどうかで所得税の課税対象となるかどうかが決まります。
- 暗号資産などの財産的価値を有する資産と交換できる場合
⇒当該NFT取引で得た利益は所得税の課税対象となる。
- 暗号資産などの財産的価値を有する資産と交換できないNFTを用いた取引
⇒所得税の課税対象とならない。
NFT売買で所得税の課税対象となる場合の所得区分
所得税の課税隊となる場合、どのような所得区分になるでしょうか。所得区分とは、所得の性格によって、税法上、10種類に区分されたものをいいます。
NFT取引の関係では、現状、主に次のいずれかに区分されます。
- 事業所得
- 給与所得
- 雑所得
- 譲渡所得
役務提供などにより、NFTを取得した場合
エンジニアとしてシステム構築を手伝ってNFTをもらうなど、役務提供の対価としてNFTを取得した場合は、その役務提供の仕方によって、事業所得、給与所得または雑所得に区分され、所得税の課税対象となります。
このうち、臨時的もしくは偶発的にNFTを取得した場合は、一時所得に区分され、それ以外の場合には、雑所得に区分されます。
NFTを売買した場合
- 取得したNFTを売却し、売却時に値上がりしていた場合(譲渡所得の基因となる資産に該当する場合)
⇒値上がり益(キャピタル・ゲイン)を得ていることになるので、譲渡所得に区分される。
たとえば、1ETH(時価は30万円とします)でNFTを購入したとしましょう。
そしてこのNFTが2ETHに値上がりしたので、売却した場合(1ETHの時価30万円のままとします)、1ETH(30万円)の利益を得たものと考えます。
- NFTの売買を営利目的で継続的に行っている場合
⇒譲渡所得ではなく、雑所得または事業所得に区分される。
- 譲渡したNFTが、譲渡所得の基因となる資産に該当しない場合
⇒雑所得(規模等によっては事業所得)に区分される。
出品者としてNFTの販売した場合
OpenSeaなどのマーケットプレイスでは、NFTを販売した場合、NFTを購入したユーザーが二次流通を行った際にも、予め決められた割合のロイヤリティ報酬が出品者であるクリエイターに支払われます。
このロイヤリティ収入も利益ですので、二次流通の都度、利益が出ているものと認識されます。
このNFTの販売によって得た所得の所得区分は、クリエイター業務を事業として行っているかによって雑所得または事業所得等になります。
NFT売買の所得区分と所得金額の計算方法
計算方法は、以下のとおりです。
事業所得:収入金額-必要経費
給与所得:収入金額-給与所得控除額=給与所得の金額
雑所得:雑所得の収入金額-必要経費
譲渡所得:分離課税の場合、総収入金額-(取得費+譲渡費用)
たとえば、1ETH(時価は30万円とします)でNFTを購入したとしましょう。
そしてこの1ETHを時価10万円の時点で購入していた場合、支払いに用したETHの値上がり益(20万円)を利益として計上します。
「NFTの購入価格(時価)−支払いに使用した通貨の取得価格」となりますので、「30万円−10万円」の20万円を利益として認識することになります。
なお、この場合は暗号資産取引における支払いにあたるため、所得区分は原則として雑所得になると考えられます。

NFTに関する税務上の規制はまだ固まっていないものも多く、複雑な取引で取引量も膨大なので、確定申告等は専門家に相談することをお勧めします。