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立退料500万円の支払いによって正当事由ありとされたケース

借家人と所有者の立退交渉が長期間難航していた物件について、事情を知って購入した者が、借家人に対し、立退料の支払いを申し出て退去を求めた事例について、裁判所は、立退料500万円で正当事由ありと判断しました(東京地判平成22年2月24日)。以下、正当事由の判断について見ていきます。
貸主側の事情~建物の明け渡しを求める必要性~
裁判所は、貸主が建物の明け渡しを必要とする事情として、
- 建物の老朽化が進み、物理的損傷も随所にみられること
- 建物の耐震補強工事を実施する必要性があるが、費用として約360万円かかること
- 建物の形式の旧式化、近隣環境との適合性において、近年この種の建物と比較してかなり劣位にあること
- 建物を取り壊して跡地の新築建物に居住する計画があること
等の事情を認定し、明け渡しを求める切実な必要性があるとしました。
借主側の事情~建物に居住を続ける必要性~
これに対して、借主側が建物に居住し続ける必要性として、裁判所は、
- 昭和48年頃から建物を賃借して居住を続けていること
- 現在、病気の妻と建物に同居していること
- 建物の近くに借主が経営している店舗があり、深夜2時まで営業していること
等の事情を認定し、借主にも建物に居住し続ける切実な必要性があるとしました。
立退料の支払いを正当事由の補完要素として立退きを認めた
裁判所は、貸主の明け渡しを求める必要性と借主の居住を続ける必要性の双方を認定した上で、貸主が、借主が立ち退きをあくまで拒み、前借主との立退き交渉が決裂している等の経緯を知ったうえで、土地建物を購入しているという事情を認定し、現在の不動産の市況(賃貸関係)を併せて考慮し、立退料500万円の支払いによって正当事由が備わると判断しました。