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東京人形町・帯地卸売業の店舗兼住宅の立退きに対し370万円の立退料が認められたケース

東京都中央区の日本橋人形町にある3階建ての店舗兼住宅。これを月12万円で借り、1階部分を帯地卸売業の店舗、2~3階部分を住居として使用してきた借主。しかし、契約は終了したものとして立退きを求められた!裁判所が借主に370万円の立退料を認めたポイントは?
裁判所が考慮した事実(東京地判平成21年6月30日)
貸主は本件建物を店舗兼住宅として使用する予定であった
貸主は、本件建物とは別の土地建物を近隣に所有し、そこで暮らしつつゆかた卸売業を営んできましたが、その営業の資金繰りが悪化したため、同土地建物を手放すことになりました。その結果、月25万円で建物を借り、住居兼建物として使用する状況となりました。
ただ、貸主は、視力障害のため片目の視力を失っており、脳こうそくも見つかっていたことから、リフォームの必要がありましたが、賃貸物件ではそれが困難でした。そこで、本件建物を使用することに決めました。
裁判所は、以上のことから、貸主が本件建物を使用する必要性が高い旨の判断をしました。とはいえ、貸主は少し離れた場所にも土地建物を所有しており、本件建物を使用する利益は、住み慣れた場所に住み続けたいという心理的な部分が大きいというのに過ぎないという判断もしました。
借主は本件建物を生活の基盤としつつ店舗を経営してきた
借主は、元貸主(元貸主の相続により賃借人が貸主になった)から誘われ、店舗を本件建物に移動自他の地、40年近く本件建物を店舗及び住居として使用し続けてきました。
そのため、裁判所は、借主が本件建物を使用する必要性も貸主に劣らない旨の判断をしました。しかし、借主の営業が苦しくなってきていることによる移転の困難の主張に対しては、本来営業努力により克服すべき問題である旨の判断がされました。
弁護士が解説する立退料算定のポイント
本件で特徴的なのは、本件建物が築50年以上も経過しているにもかかわらず、老朽化の議論がされていない点にあります。
というのも、貸主が本件建物をそのまま使用しようと考えていたからでした。そのため、貸主側の利益も、立退きの議論でよく用いられる建て替えの必要性という観点からではなく、自己使用の必要性という観点から検討が加えられています。
このような判断は、立退料の算定の議論は、貸主側の利益と借主側の利益が天秤に乗せられて判断されることを明確にするものであるといえます。