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東京都新宿区にあるバーに対し1100万円の立退料が認められたケース

東京都新宿区にある鉄筋コンクリート造陸屋根地下1階地上3階建の建物。その地下1階部分を月17万8500円で借り、バーを経営してきた借主。しかし、老朽化により建て替えるとして立退きを求められました!裁判所が借主に1100万円の立退料を認めたポイントとは?
裁判所が考慮した事実(東京地判平成21年6月23日)
築約50年の建物は経年劣化が進んでおり、耐震性にも危険がある状態だった
本件建物は、築約50年の建物で、建物が傾き、鉄筋及びコンクリートの劣化があるなど、経年劣化が進んでおり、耐震性にも危険がある状態でした。また、地下1階部分を含め、本件建物の防火設備には問題があり、現に発火事故があったため、防火上の不安もある状態でした。このような建物の老朽化は、貸主による有効な経済的利用を妨げるものとして、貸主側に有利な事情として判断されました。
建物を今後第三者に賃貸することは困難な状況にあった
以上のような本件建物の状態も相まって、貸主が本件建物の建て替え計画を立てる前から、本件建物のテナントは借主だけでした。このように、本件建物を貸主が今後第三者に賃貸することは困難な状況にありました。加えて、借主に対する賃料は近隣の他の建物に比べ非常に安価でした。これらのことから、裁判所は、本件建物の敷地の有効利用という点から、貸主に建替えの利益がある旨の判断をしました。
借主は本件建物のすぐ近くにワインバーの新店舗をオープンさせていた
借主は、本件建物の通りを挟んだ向かいのビルにワインバーをオープンさせたばかりでした。また、借主は、本件建物にあるバーの他、10店舗の飲食店を経営していました。これらのことから、裁判所は、借主の移転は容易で、かつ本件建物のバーが閉店しても新店舗のワインバーによって相当程度の営業は代替されると判断し、借主が本件建物を使用する必要性は、通常よりも低いとの判断をしました。
弁護士が解説する立退料算定のポイント
本件で特徴的なのは、借主側の利益が低いものと判断されてしまった点にあります。バーの向かいに開店した店舗が仮に和食料理店などであれば、判断は異なったかもしれません。裁判所としては、バーもワインバーも洋酒の提供を中心とする飲食店である点に変わりはなく、バーに来ていた客がある程度ワインバーに行く可能性があることを考慮したものと思われます。もしかすると、裁判所の頭の片隅には、借主が建物の状態を考慮してそろそろ移転する必要があると考えていたかもしれない、という考えがあったのかもしれません。
事案としては、特殊ではありますが、このことからわかることは、類似する店舗が近くにある場合には、2つの店舗が別々に存在する意味についても証明する必要がある場合があるということです。