- Home
- 立退料1000万円未満, 飲食店
- 東京都世田谷・クレープ屋に対し約524万円の立退料が認められたケース
東京都世田谷・クレープ屋に対し約524万円の立退料が認められたケース

東京都世田谷区にある2階建て木造家屋。その1階部分の一部を月3万5000円で借り、クレープ屋を経営してきた借主。しかし、老朽化により建て替えるとして立退きを求められました!裁判所が借主に523万7000円の立退料を認めたポイントとは?
裁判所が考慮した事実(東京地判平成21年5月26日)
貸主の建て替え計画は具体的で裁判所もその点を考慮
本件建物は、築45年以上が経過し、全般的に老朽化している状況でした。また、貸主は、高齢で、明け渡しを求める半年前に、それまで行ってきた菓子雑貨小売業を畳んでいました。このような状況の中、貸主は、本件建物を取壊し、3階建ての店舗兼住宅を新築する計画を立てていました。裁判所は、これらのことから、貸主が本件建物を建て替えるために借主を立ち退かせる必要性がある旨の判断をしました。
クレープ屋の性質上移転が困難だった。
借主のクレープ屋は、通行人にクレープを販売するもので、1階での営業が不可欠でした。また、借主のクレープ屋の営業上、大きなスペースを使用する必要はなく、1階部分に小さなスペースのみを借り受けることは非常に困難でした。
これらのことから、裁判所は、借主が本件建物を使用する必要性が非常に大きい旨の判断をしました。
改修工事の実施等、賃借の経緯からしても移転は困難だった
借主は、本件建物の1階部分のうち、5.4平方メートルだけしか借りていませんでした。これに対して、本件建物の延べ面積は55.36平方メートルでした。そのため、借主が本件建物を借り受けるに際し、1階部分に改修工事を加え、改修工事にかかる費用を借主が負担する形で、本件建物の賃貸借関係がスタートしていました。裁判所は、このような事情からも、借主が本件建物を使用する必要性が大きい旨の判断をしています。
弁護士が解説する立退料算定のポイント
本件で特徴的なのは、借主側の利益が非常に高いことです。立退料の算定にあたり、裁判所は、借家権価格が約140万円としたのに対し、移転費用は約347万円とし、本件における立退料の多くの部分が移転費用であることが分かります。そして、借主が本件建物を借り受けるに際して要した費用全額が移転費用として認められています。このような判断に至った理由としては、借主の店舗の移転が非常に困難で、移転する場合には、開店する際と同じくらいの障害があるといえるからです。
このことからわかることは、店舗の業態や契約に際する特殊事情からして、移転が困難であればあるほど、立退料の算定の際に考慮される移転費用が高額になるということです。