夫婦関係は、日々のすれ違いや価値観の違い、生活習慣のズレなどでストレスが積み重なっていきます。
些細な不満が限界を超え、「もう一緒にやっていけない」と離婚を決意する瞬間が訪れることもあります。
ここでは、離婚を決意した人のきっかけや心理的な変化、決意後にとる行動、そして離婚すべきかを見極めるためのチェックリストを紹介します。
目次
離婚を決意する瞬間の例
ここでは、実際によく見られる離婚を決意するきっかけについてご紹介します。
夫婦喧嘩をしたとき
どんな夫婦でも喧嘩をすることはあります。
ただ、それが頻繁だったり、同じ内容で何度もぶつかってしまったりすると、「この先うまくやっていけないかもしれない」と感じるようになります。
特に、相手から人格を否定されるような言葉を繰り返し受けると、心に深い傷が残ります。
喧嘩のあとに謝ってくれなかったり、歩み寄る姿勢がなかったりすると、気持ちのすれ違いがどんどん広がってしまうこともあります。
【参考:夫婦喧嘩が原因で離婚はできる?離婚した方がいいケースや後悔しないための方法】
不倫が発覚したとき
パートナーの不倫が明らかになると、信頼関係が一気に崩れます。深いショックや怒りを感じる人も多いでしょう。
一度はやり直そうと努力する人もいますが、相手に反省の様子がなかったり、再び裏切られたりすると、気持ちが離れてしまい、離婚を選択肢として考えるようになります。
【参考:不貞行為に基づく離婚慰謝料の相場の金額はどれぐらい?】
暴力を振るわれたとき
身体的、精神的な暴力は、決して許されることではありません。
暴力を受けた側は恐怖や無力感に苦しみ、精神的に追い詰められてしまいます。
暴力は外からは見えにくい問題ですが、被害を受けている人にとっては切実な問題です。
周囲の支援や専門機関との連携を得ながら、新しい生活へ踏み出す人も少なくありません。
【参考:DV離婚の争点になる事情はどんなことか【弁護士が解説】】
借金が発覚したとき
結婚生活を送るうえで、お金の問題はとても大切です。
もし、パートナーに多額の借金があり、それを隠されていたとしたら、大きな不信感を抱くのは当然のことです。
ギャンブルや浪費癖が原因の場合、今後も繰り返されるのではないかという不安も出てきます。
特に子どもがいる家庭では、「このまま一緒にいて大丈夫なのか」と悩んだ末に離婚を選ぶ人もいます。
子どもが自立したとき
子育てがひと段落し、子どもが巣立ったタイミングで離婚を考えるケースもあります。
いわゆる卒婚に近い感覚で、長年我慢してきた気持ちが「もう役目は終わった」という意識とともに表面化します。
【男女別】離婚を決意する理由
離婚に至る理由は人それぞれですが、実際に家庭裁判所に申し立てられた調停の動機を見てみると、男女で傾向に違いがあることがわかります。
ここでは、令和5年度の司法統計「婚姻関係事件数―申立ての動機別」をもとに、男女別に多い離婚理由をご紹介します。
男性
夫が離婚調停を申し立てた動機として、多い順に並べると以下のとおりです。
- 性格が合わない(9,103人)
- 異性関係(1,817人)
- 浪費する(1,748人)
- 性的不調和(1,592人)
- 暴力を振るう(1,320人)
男性側の申し立てで最も多いのは、性格が合わないことです。
価値観や生活スタイルのズレ、会話の減少、気持ちのすれ違いなど、日常の中で少しずつ積み重なった違和感が、離婚を考えるきっかけになることが多いようです。
次に多かったのが異性関係。妻の不倫などをきっかけに、信頼が崩れて離婚を選ぶ男性も少なくありません。
不倫は夫に原因があると思われがちですが、実際には妻側に問題があるケースも見られます。
そのほかにも、浪費・性的不調和・暴力など、生活面や精神面でのストレスが積み重なった結果として離婚に至るケースが上位を占めています。
女性
妻が離婚調停を申し立てた動機として、多い順に並べると以下のとおりです。
- 性格が合わない(15,835人)
- 暴力を振るう(7,711人)
- 異性関係(5,362人)
- 浪費する(3,550人)
- 性的不調和(2,642人)
女性側で最も多い理由は、性格が合わないです。
価値観のズレやすれ違いが積み重なり、次第に気持ちが離れていくケースが多く見られます。
些細な口論や、気持ちを分かち合えない寂しさが、離婚の決断につながることもあります。
2位は暴力で、身体的な暴力だけでなく、怒鳴る・無視するなどの精神的な暴力も含まれます。我慢を続けた末、心身に限界を感じて離婚を選ぶ人も少なくありません。
異性関係では、夫の不倫により信頼が崩れ、関係修復が難しいと感じた結果、離婚を決意するケースが多く見られます。
浪費や性的不調和といった日常生活に関わる問題も、ストレスが積み重なる要因となります。
女性は子どもや将来の生活も視野に入れ、時間をかけて慎重に判断する傾向があります。
表面上は穏やかでも、長い葛藤の末に出した結論であることが多いのが特徴です。
【参考:相手に非がなくても離婚はできるか?離婚を進めるポイントを解説】
離婚を決意した妻の行動は?
ここでは、妻が離婚を意識し始めたときに見られる行動でよくあるものを紹介します。
会話が減る・怒らなくなる
以前は些細なことで口論になっていたのに、最近は無反応に。そんな変化は、夫婦関係に対する関心が薄れている兆しです。
離婚を考える妻は、感情をぶつけるよりも距離を置くようになり、会話を避けたり、目を合わせなくなったりするなど、接触そのものを減らす傾向があります。
怒らなくなったからといって関係が良好とは限らず、むしろ感情を閉ざしている状態といえます。
仕事をはじめる・転職する
専業主婦だった妻が働き始める、あるいは長年の勤務先を辞めて転職活動を始めるのも、離婚後の生活を見据えた動きと考えられます。
経済的な自立は離婚後の生活に直結するため、安定収入の確保やスキル習得を通じて、将来への準備を進めている可能性があります。
子どもとの関係性を強める一方、家族での旅行やイベントには消極的になる
親権を見据えて子どもとの関わりを強めるケースもあります。
学校行事や習いごとへの参加、家庭内での会話やふれあいを増やすなど、母子の絆を意識的に深める行動が見られます。
一方で、家族旅行や誕生日などのイベントには消極的になりがちです。これは、夫との関係を家族単位で継続する意識が薄れていることの表れとも言えます。
離婚を決意した夫の行動は?
妻が離婚を意識したときは、準備を進めながらも感情を表に出さない傾向がありますが、夫の場合は行動面に変化が出やすいといわれます。
ここでは、夫が離婚を考え始めた際に見られがちな行動を紹介します。
家にいる時間が減る
以前は家で過ごすことが多かった夫が、急に外出を優先するようになるのは、家庭から距離を置こうとしている表れです。
仕事や趣味、飲み会などを理由に帰宅を遅らせることが増え、家庭に居場所を感じなくなっている可能性があります。
スマホの扱いが不自然になる
スマホを手放さない、通知をオフにする、操作時間が増えるなどの変化は、夫の関心が別の女性に向いていることを表しているかもしれません。
すべてが浮気とは限りませんが、家庭への愛情や安らぎが薄れているサインと考えられます。
すでに浮気をしている可能性もあるため、妻は夫の行動に注意を払う必要があります。
妻への態度が変わる
言い争いすら起きなくなり、会話も最低限に。無関心な態度が増えた場合、夫はすでに夫婦関係の継続に意味を見いだせなくなっていることがあります。
スキンシップや家族としての関わりを避けるようになっていれば、離婚への意思が固まりつつある状態といえるでしょう。
【参考:妻にうんざり…離婚すべき?嫁といるとストレスな人の対処法】
離婚を考えるためのセルフチェックリスト
下記は、離婚を考えるためのセルフチェックリストです。
何個以上当てはまったら離婚すべき、などは一概に言えませんが、多くあてはまる場合は、夫婦関係は崩れてきているといえるでしょう。
チェック項目 | 解説 |
パートナーへの愛情が感じられない | 完全に気持ちが冷めている場合、一時的な感情ではなく関係の終わりが近づいている可能性があります。 |
相手への信頼が持てない | 嘘や裏切りが繰り返され、信頼が築けていないなら、修復は困難かもしれません。 |
会話が続かない・価値観が合わない | 会話がすれ違いがちで、考え方に大きな隔たりがあると、日常的なストレスが増していきます。 |
夫婦関係による強いストレスがある | 心身の不調や生活の質の低下が続くなら、環境を見直す必要があるかもしれません。 |
子どもに悪影響が出ていると感じる | 夫婦の不和が子どもの情緒や日常に悪影響を及ぼしているなら、早めの対応が必要です。 |
離婚後の生活設計がある程度できている | 住まいや収入、サポート制度などの見通しが立っていれば、離婚後の現実的な選択肢になります。 |
関係修復の可能性が見えない | 話し合い、カウンセリング、冷却期間などを試しても効果がなければ、選択を迫られる段階です。 |
子どもがいる夫婦が離婚を決意したときに考えること
夫婦にとって離婚は大きな決断ですが、子どもがいる場合はさらに慎重な判断が求められます。
離婚は夫婦の問題だけでなく、子どもの生活や心理にも大きな影響を与えるからです。
ここでは、離婚を決意したときに考えるべきポイントを解説します。
子どものケア
最優先すべきは子どものケアです。夫婦間にどんな問題があったとしても、子どもに罪はありません。
両親の不仲を見てきた子どもは不安や自責の念を抱えやすくなります。
カウンセリングや保育・教育の専門家と連携しながら、子どもが安心して過ごせる環境を整えることが大切です。
親権
次に考えたいのが、親権の問題です。
子どもと一緒に暮らす親をどちらにするかは、夫婦の話し合いをもとに慎重に判断します。
加えて、親権を持たない親とも面会交流を通じて関係を維持できるように、ルールを話し合っておく必要があります。
【参考:親権者とは|親権者になれる人や意味をわかりやすく解説】
養育費
そして忘れてはならないのが、養育費です。
離れて暮らす親も、経済的な責任を持つことは子どもの権利を守る意味でも欠かせません。
取り決めは口約束ではなく、可能であれば公正証書や離婚協議書で明文化しておくと安心です。
【参考:法定養育費とは|民法改正で養育費の取り決めが不要に?】
離婚の決意に関するよくある質問
不倫がきっかけで離婚を決意するケースはある?
非常に多いです。不倫は信頼関係を根底から揺るがす行為であり、裏切られた側にとっては大きな精神的ダメージとなります。
特に複数回の不倫や、反省のない態度が重なると、離婚という選択に至ることが多いです。
不倫が原因の場合は慰謝料請求が認められるケースもあるため、法的な準備も視野に入れるとよいでしょう。
離婚の意思が固い夫を説得する方法は?
一度離婚を決意した男性は、感情よりも理論的に気持ちを整理している場合が多く、感情論では説得が難しいこともあります。
その場合は、「なぜ離婚したいのか・関係を修復する可能性が残っていないのか」を冷静に聞き出すことが第一歩です。
夫婦カウンセリングや第三者を交えた対話を通して、互いの理解を深め直す努力も有効です。
離婚を決意した女性の心理は?
女性が離婚を決意するのは、感情が一気に高ぶった瞬間ではなく、「もう無理だ」と静かに確信する過程を経ていることが多いです。
つまり、我慢の積み重ねの末に決断しています。
そのため、一度決めたら覆ることは少なく、すでに次の生活の準備を進めているケースもあります。
まとめ
離婚を決意するタイミングは、喧嘩が多いときや不倫を発覚したときが多いです。
司法統計でも、離婚を決意した理由は、男女ともに、性格が合わない、と異性関係が最も多かったです。
妻が離婚を覚悟すると、静かに離婚の準備を始めるのに対し、夫の場合は外出が多くなったり、スマホを頻繁にいじったりなど、意識が外に向くことが多くなります。
こうした変化に気づいたとき、離婚すべきかどうかを冷静に見極めることが大切です。
感情的に判断せず、今後の生活や子どもの影響も含めて考えたうえで、後悔のない選択をしましょう。
必要に応じて、弁護士や第三者の助言や法的なサポートを受けることも有効です。