50代は、子育てがひと段落し、自分や配偶者の老後を考え始める時期です。
ライフステージの変化に伴い、これまでの我慢が限界に達したり、新しい人生を歩みたいと考えたりするのは不思議ではありません。
しかし、50代で離婚し、一人で生活していくのは決して簡単なことではありません。準備を怠ると、経済面や生活面で後悔をする可能性があります。
ここでは、50代で離婚を考える理由やメリット、必要な準備、生活費の目安について詳しく解説します。
目次
50代で離婚するよくある理由
50代で離婚を検討する場合、どのような理由が多いのでしょうか。ここでは、50代で離婚する理由でよくあるものを紹介します。
夫婦関係の冷え込み
50代は、子育てが終わり、夫婦だけの時間が増える時期です。
しかし、その過程で会話が減り、共に過ごすことに違和感を覚えるケースも少なくありません。
価値観の違いやすれ違いが長年積み重なり、夫婦関係が形骸化することもあります。
特に、共通の趣味や目標がないと、夫婦の結びつきが薄れ、離婚に至ることもあります。
「性格の不一致で離婚が成立するケースと慰謝料の相場」の記事も参考にしてみてください。
不倫・浮気の発覚
50代の離婚理由として、不倫や浮気が発覚するケースも少なくありません。
夫婦関係が長くなると、お互いへの関心が薄れ、刺激を求めて外に目を向ける人もいます。
スマートフォンやSNSの普及により、浮気が発覚しやすくなっているのも一因です。
不倫が原因で信頼関係が完全に崩れた場合、「この先一緒にいる意味がない」と考え、離婚を決断することがあります。
「不貞行為に基づく離婚慰謝料の相場の金額はどれぐらい?」の記事も参考にしてください。
モラハラやDV
結婚生活の中で、精神的・肉体的な暴力(モラハラやDV)に悩む人も少なくありません。
長年我慢を重ねてきた結果、耐えられなくなり、離婚を決断することがあります。
モラハラの場合、長期にわたり精神的なダメージを受けることが多く、50代を迎える頃には心理的負担が限界に達していることもあります。
子どもの独立をきっかけに、離婚を決意するのは不思議ではありません。
「精神的DVとは|相談先や該当する行為のチェックリスト」の記事も参考にしてください。
定年後の生活に耐えられない
配偶者が定年退職を迎えると、これまで以上に一緒に過ごす時間が増えます。生活スタイルの変化に適応できなければ、ストレスを感じるでしょう。
仕事中心だった配偶者が家にいる時間が増えることで、価値観や生活習慣の違いが顕著になり、離婚を考える原因になることもあります。
介護問題を避けたい
50代は、親の介護が現実的な問題として浮上する時期でもあります。
配偶者の親の介護負担を一方が担う状況になったり、自身の老後の介護に対する不安が高まったりすることで、離婚を考えるケースもあります。
特に、介護の負担が偏ることで精神的・身体的な負担が大きくなり、それを回避するために離婚という選択肢が検討されることがあります。
50代で離婚するデメリット
経済的な不安が大きい
50代で離婚すると、その後の生活費をすべて自分で負担する必要があり、経済的な不安が大きくなります。
特に、専業主婦やパート勤務の人は収入が限られているため、離婚後の生活設計が重要です。
離婚時に財産分与があっても、住宅ローンや生活費を考慮すると十分とは言えません。
離婚後の生活資金をどのように確保するかが課題となります。
再就職がやや難しい
50代で離婚し、再就職を目指す場合、年齢の影響で選択肢が限られることがあります。
職歴やスキル不足が原因で正社員としての採用が難しく、パートや派遣などの非正規雇用に頼ることになるケースも少なくありません。
加えて、体力の衰えや新しい環境への適応も課題となり、安定した収入を得るまでに時間がかかることが予想されます。
孤独感や不安感がある
50代で離婚すると、それまで築いてきた家庭の安心感がなくなり、孤独を感じることがあります。
長年結婚生活を続けてきた人ほど、急な環境の変化に適応するのが難しく、精神的な不安を抱えるかもしれません。
周囲で相談できる人が限られ、気持ちを共有することが難しいこともありますが、新たな人間関係を築くために、地域のコミュニティや趣味の活動に参加することが有効です。
子どもと疎遠になる可能性がある
子どもが成人している場合、関係が離婚前と変わるかもしれません。
親の離婚に対して複雑な感情を抱く子どもも多く、場合によっては距離を置かれることもあります。
親権を持たない側は子どもと会う機会が減るため、自然と関係が希薄になることもあります。
子どもとの関係を良好に保つためには、離婚後も積極的に連絡を取り、関係を維持することが大切です。
50代の離婚で必要な準備
50代での離婚を後悔のないものにするためには、事前の準備が大切です。ここでは、50代の離婚で必要な準備を解説します。
仕事に就く・転職をする
離婚後の生活を安定させるには、収入の確保が不可欠です。
専業主婦だった場合は、まずパートや派遣などの仕事から始めるのも選択肢の一つです。
すでに働いている人でも、収入が低い場合は転職を視野に入れることが重要です。
ハローワークや転職エージェントを活用し、自分のスキルや経験に合った職を探しましょう。
資格取得やスキルアップを図ることで、より良い条件の仕事に就く可能性も高まります。
どこに住むかを決める
離婚後の生活設計を考える上で、住む場所の選択は重要です。
持ち家がある場合、財産分与の対象となるため、売却するのか、どちらかが住み続けるのかを決めなければなりません。
賃貸に移る場合は、家賃を抑えられる地域を選ぶことも大切です。
実家に戻る選択肢もありますが、家族との関係や生活環境を考慮する必要があります。
生活費の見直しと併せて、無理のない住居計画を立てることが求められます。
頼れる親族や知人を探しておく
離婚後は精神的・経済的な負担が増すため、頼れる人を確保しておくことが大切です。
親族や友人、地域の支援団体など、困ったときに相談できる相手を見つけておくと、孤立を防ぐことができます。
一人で全てを抱え込まず、信頼できる人に相談しながら生活の基盤を整えていくことで、離婚後の不安を軽減できます。
適切な離婚条件で合意する
離婚する際は、財産分与や年金分割、慰謝料、養育費など、さまざまな条件を明確にしておく必要があります。
感情的になると、不利な条件で合意してしまう可能性もあるため、冷静に交渉を進めることが重要です。
特に、将来の生活に影響を与える年金分割や財産分与については、専門家に相談するのも有効です。
公正証書を作成し、法的に有効な形で合意しておくことで、後のトラブルを防ぐことができます。
離婚時の条件に関しては「離婚の際に決めるべき7つの項目と東京の弁護士相談先一覧」も参考にしてください。
50代で離婚したらいくら必要?
50代で離婚を考える際に、最も気になるのが離婚後の生活費です。
一人暮らしをする場合、どのくらいの収入や貯蓄が必要なのかを把握し、無理のない生活設計を立てることが重要です。
ここでは、単身世帯の平均生活費や年金受給額をもとに、離婚後に必要なお金の目安を解説します。
単身世帯では平均約17万円必要
総務省の家計調査年報(家計収支編)2023年(令和5年)によると、単身世帯(平均58.2歳)の1か月あたりの消費支出は、平均167,620円という結果が出ています。
離婚後に一人暮らしをする場合、毎月17万円程度の生活費が必要になると想定し、収入や支出のバランスを考えた生活設計を行うことが大切です。
定年後にもらえる年金は4~9万円が目安
厚生労働省の、令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況によると、年金の平均受給額は以下のようになります。
- 国民年金のみ:約5.6万円
- 国民年金+厚生年金:約14.6万円
ただし、これは長年会社員として厚生年金に加入していた場合の平均額です。
専業主婦やパート勤務が長かった人は、離婚分割(離婚時に婚姻期間中の厚生年金の納付記録を夫婦で分け合う制度)を受けても受給額が低くなる可能性があります。
実際に年金分割を利用した場合、専業主婦だった人の受給額は約4.2万円~9.1万円となるケースが多く、生活費をまかなうには十分とは言えません。
先ほど説明した通り、一人暮らしの生活費は月17万円ほどかかるため、年金だけでは不足する可能性が高く、不足分をどう補うかが重要です。
「離婚時に年金分割しないとどうなる?損をしないためにできることは?」の記事も参考にしてください。
50代貯金なし・専業主婦が離婚しても生活していく方法
ここまで、50代で離婚後にかかる生活費や必要な収入について説明してきました。
貯金や仕事がないと、離婚後の生活が不安に思えるかもしれません。
しかし、事前の準備をしっかり行えば、貯金や仕事がなくても生活を立て直すことは可能です。
ここでは、50代で貯金なし・職なしの状態でも、離婚後に生活していくために必要な準備について解説します。
離婚後に必要な生活費を試算する
離婚後の生活を安定させるためには、毎月の生活費を把握することが重要です。
家賃や食費、水道光熱費、医療費などの固定費を洗い出し、最低限必要な金額を算出しましょう。
単身世帯の生活費は約17万円が目安とされていますが、地域や生活スタイルによって変動します。
余裕のある生活を送るためには、収入を確保する方法も併せて考える必要があります。
財産分与・年金分割を最大限利用する
貯金や収入がない場合、離婚時に得られるお金が重要です。
財産分与とは、夫婦で築いた財産を公平に分ける仕組みです。
預貯金や不動産、退職金などが対象となるため、しっかりと確認しましょう。
年金分割を活用することで、将来受け取る年金額を増やすことができます。
特に専業主婦の場合、夫の厚生年金の一部を受け取れる可能性があるため、手続きを忘れずに行うことが大切です。
「熟年離婚の財産分与で気を付けること|持ち家や年金の分割方法とは」も参考にしてください。
家賃を抑える・実家で暮らす
生活費の中で大きな割合を占めるのが家賃です。できるだけ家賃の安い物件を探したり、実家に戻ったりすることを検討しましょう。
公営住宅やシェアハウスなどの低コストな住居も視野に入れることで、無理のない生活設計が可能になります。
実家に戻る場合は、家族との関係性を考慮し、円満に生活できるかを確認しておいた方がいいでしょう。
仕事を確保する
安定した収入を得るためには、離婚前後で仕事を探すことが不可欠です。
未経験でも始めやすいパートや派遣からスタートし、スキルを身につけながら正社員を目指す方法もあります。
資格を取得して専門職に就くことで、収入アップが期待できます。ハローワークや転職支援サービスを活用し、自分に合った働き方を見つけましょう。
公的支援制度を利用する
必要に応じて公的支援制度も活用しましょう。特に、収入が不安定な場合や、貯蓄が少ない場合は、利用できる制度を確認することが大切です。
以下、代表的な公的支援制度とその概要です。
制度名 | 概要 |
生活保護 | 最低限の生活費を支給 |
住宅扶助(生活保護の一部) | 家賃を補助 |
児童扶養手当 | シングルマザー・シングルファーザーに支給 |
就労支援制度 | 職業訓練や再就職支援を提供し、安定した収入を確保するサポート |
ひとり親家庭医療費助成 | 医療費の自己負担額を軽減 |
住居確保給付金 | 失業や収入減少により家賃の支払いが困難な人への家賃補助 |
母子・父子寡婦福祉資金貸付 | ひとり親家庭向けの低金利貸付制度 |
これらの制度を適切に利用すれば、経済的な負担を軽減しながら生活を再建することが可能です。
まずは自治体の窓口や福祉事務所で、自分が対象となる支援があるか確認してみましょう。
50代の離婚でよくある質問
50代女性が離婚して一人暮らしになった場合の生活費は?
総務省の家計調査年報(家計収支編)2023年(令和5年)によると、50代の単身世帯の平均生活費は約17万円とされています。
ただし、住む地域やライフスタイルによって変動します。家賃を抑えたり、節約を意識したりすることで負担を軽減できます。
毎月17万円以上を得るための方法について、しっかり検討しましょう。
50代の離婚で人生をやり直しできる?
50代での離婚は決して遅すぎるわけではありません。
新しい仕事に挑戦したり、趣味や人間関係を広げたりすることで、新たな人生を楽しむことができます。
経済面の不安はあるものの、計画的に準備を進めれば、充実した生活を送ることが可能です。
前向きな気持ちを持ち、自分らしい人生を歩んでいくことが大切です。
50代女性の離婚後の生活は?
離婚後の生活は、経済面と精神面の両方に変化が生じます。
収入源の確保や住居の選定が重要となる一方で、自由な時間が増え、自分のために生きる選択肢も広がります。
孤独を感じることもありますが、新しい交友関係を築いたり、趣味を楽しんだりすることで充実した生活を送ることができます。
まとめ
50代はライフステージの変化に伴い、離婚を考える人が増える時期です。
とはいえ、離婚後は一人で生活していく必要があり、特に経済面の準備が欠かせません。
そのため、離婚前に仕事や住居の確保、財産分与・年金分割の確認など、しっかりと準備を進めることが重要です。
離婚条件で揉めた場合は、専門家に相談することでスムーズな解決につながります。
将来の生活を見据え、自分にとって最良の選択をすることが大切です。