和解離婚とは、離婚裁判の途中で夫婦が話し合い、裁判所での和解によって成立する離婚の形態です。

協議離婚とは異なり、裁判の過程で合意するため、判決より柔軟に条件を決められる一方で、一度成立すると撤回が難しい点に注意が必要です。

和解離婚離婚の和解は意味が異なるため、誤解しないよう理解しておくことが重要です。

ここでは、和解離婚の流れや必要な手続き、離婚届の書き方、デメリットについて詳しく解説します。

和解離婚とは

和解離婚とは、離婚裁判の途中で夫婦が話し合い、裁判所の和解手続きで成立する離婚の方法です。

離婚訴訟が進む中で、裁判官が和解を提案し、夫婦双方が合意すれば、判決を待たずに離婚が確定するのが特徴です。

和解離婚を選択することで、判決よりも柔軟に財産分与や養育費、慰謝料などの条件を決めやすく、訴訟の長期化を防ぐメリットがあります。

一方で、一度和解が成立すると撤回ができないため、慎重に検討しなければなりません。

加えて、裁判を続けたほうが、慰謝料の増額や財産分与の公平な決定につながる可能性があります。

そのため、和解に応じるべきかどうかは慎重に判断しなければなりません。

協議離婚や認諾離婚との違い

和解離婚と混同しやすいもので、協議離婚と認諾離婚がありますので、それぞれについて説明します。

協議離婚

協議離婚とは、夫婦が話し合いによって離婚に合意し、市区町村役場に離婚届を提出することで成立する離婚の方法です。

日本では最も一般的な離婚の形態であり、裁判所を介さずに手続きを進められるため、時間や費用の負担が少なく済むのが特徴です。

双方が合意していなければ成立しないのも大きな特徴の一つです。

財産分与や親権なども夫婦で決めますが、口約束で決めると、後に、言った・言わないの争いが生じることもあります。

協議離婚とは|協議離婚の進め方や流れ・決めること」の記事も参考にしてください。

認諾離婚

認諾離婚とは、離婚訴訟において被告(訴えられた側)が原告(訴えた側)の請求を全面的に受け入れ、裁判所がそれを認めることで成立する離婚です。

認諾とは、裁判で相手方の主張をそのまま認める行為を指し、争わずに離婚を成立させる場合に用いられます。

通常、離婚裁判は長期間かかることが多いですが、認諾離婚では判決を待たずに手続きを終えられるため、裁判の早期解決につながるというメリットがあります。

ただし、離婚条件(慰謝料や財産分与、親権など)についても相手の主張をそのまま受け入れる形になるため、不利な条件で離婚するリスクもあります。

和解離婚と”離婚の和解“は意味が違うので注意

和解離婚離婚の和解は似た表現ですが、意味が大きく異なるため混同しないよう注意しましょう。

離婚の和解は、夫婦間の話し合いによって離婚するかどうかを決める行為を指し、必ずしも裁判を伴うものではありません。

離婚の和解に該当するケースの例を紹介します。

  • 夫婦で話し合いをして、最終的に離婚することで合意した
  • 夫婦で話し合いをして、離婚せずに関係を修復することになった

このように、和解離婚は裁判上の和解による離婚であり、離婚の和解は夫婦間の自主的な話し合いによる解決を指すため、誤解しないよう注意しましょう。

和解離婚の流れ

和解離婚は、離婚裁判の中で成立するものです。離婚問題に関しては、いきなり裁判になることはなく、まず離婚協議や調停を行います。

ここでは、離婚協議の始まりから和解離婚成立までの流れを説明します。

①離婚協議・離婚調停を行う

夫婦が離婚を考えた場合、まずは話し合い(協議離婚)を試みるのが一般的です。

離婚協議で合意できない場合、家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。

調停では調停委員が間に入り、双方の意見を調整しますが、合意に至らなければ調停不成立となり、離婚裁判へ進むことになります。

原則として、調停が不成立になってからでないと、離婚裁判を起こすことはできません。

②離婚裁判が始まる

調停が不成立の場合、離婚を求める側(原告)が地方裁判所に離婚訴訟を提起します。

訴訟では夫婦の一方が離婚を拒否していても、裁判官が法的に離婚が認められるかを判断します。

裁判では、証拠や証言を基に主張を展開し、財産分与・養育費・慰謝料などの争点を決めることになります。

離婚裁判で負ける理由と離婚できる確率|負けた場合離婚できない?」の記事もご覧ください。

③裁判官から和解案が出される

訴訟が進む中で、裁判官が「このまま判決を待つより、和解したほうが良い」と判断すると、和解案を提示することがあります。

双方が和解に前向きであれば、離婚の条件について裁判所を交えた協議が行われ、最終的な合意に至れば和解調書が作成されます。

和解案には、財産分与・養育費・慰謝料などの取り決めが含まれます。

④和解離婚の手続きをする

和解が成立すると、裁判所が和解調書を作成し、和解離婚が確定します。

この和解調書は判決と同じ効力を持ちます。

その後、夫婦は市区町村役場に離婚届を提出し、戸籍上の離婚手続きを完了させます。

和解成立から10日以内に届出をしないと、過料(罰金)が科される可能性があるため注意が必要です。

⑤離婚後の各種手続きを行う

離婚が成立した後は、戸籍や住民票の変更、氏名の変更(旧姓に戻す場合)、財産分与の手続きなどを進める必要があります。

養育費や慰謝料の支払いが遅れた場合に備え、必要に応じて強制執行の準備をしておくことも大切です。

公正証書を作成しておくと、支払いトラブルを防ぎやすくなります。

和解離婚の離婚届の書き方

次に、和解離婚の離婚届の書き方を説明します。

和解離婚の場合も、協議離婚と同じ離婚届を使用しますが、記入方法や添付書類に違いがあるので注意しましょう。

通常と同じ離婚届を用意する

和解離婚でも、使用する離婚届は協議離婚の場合と同じです。

市区町村役場で入手できるほか、自治体によっては公式サイトでダウンロード可能です。

離婚届に記入する

離婚届を入手したら、実際に記入をします。通常の協議離婚とは記入の仕方が違う部分がありますので、以下の点に注意してください。

【離婚の種類は”裁判“にチェック】
・和解離婚は裁判所の関与がある離婚のため、協議ではなく、裁判にチェックを入れます。

【証人欄は不要】
・裁判所の判断で離婚が成立するため、第三者の証人は不要とされます。

【”裁判・調停等の別“の記入】
・○年○月○日 ○○家庭裁判所 和解成立と記載。
・記載例:2025年3月10日 東京家庭裁判所 和解成立

【和解調書謄本を添付】
・和解離婚では「和解調書謄本」の提出が必須 です。提出しないと離婚届が受理されません。

和解成立から10日以内に離婚届を提出する

和解離婚の場合、離婚成立(和解成立日)から10日以内に離婚届を提出しなければなりません。

期限を過ぎた場合、過料を科される可能性があるので注意しましょう。

以下、市役所に離婚届を提出する際に必要な持ち物です。

  • 離婚届
  • 和解調書謄本
  • 本人確認書類
  • 印鑑(念のため)

離婚届の提出と同時&同日にできる10個の手続きを解説」の記事も参考にしてください。

和解離婚のデメリット

協議離婚より手間がかかる

和解離婚は、協議離婚のように夫婦だけの話し合いで成立するわけではなく、離婚調停や裁判を経たうえで、裁判所で和解が成立する必要があります。

そのため、協議離婚よりも手続きが複雑で時間がかかります。

弁護士費用や裁判費用などの経済的負担も発生し、精神的な負担も大きくなる可能性があります。

特に、離婚条件について争いがある場合、和解に至るまでに何度も裁判所に足を運ぶ必要があるため、手続きの負担は大きくなります。

一方的に和解を撤回できない

和解離婚が成立すると、その内容は和解調書に記録され、確定判決と同じ法的効力を持ちます。

そのため、一度成立した和解を当事者の一方が一方的に撤回することはできません。

たとえ後から条件を見直したくなったとしても、基本的に変更することは難しく、やり直しがきかない点に注意が必要です。

和解する前に、本当にその条件で問題ないか、十分に検討しましょう。

離婚条件が不利になる可能性がある

和解離婚では、離婚条件について夫婦間で合意することが前提となるため、交渉力の差によって一方が不利な条件で和解してしまう可能性があります。

特に、財産分与や養育費、慰謝料などが、裁判で争った場合よりも低くなることがあります。

他にも、早く裁判を終わらせたいという思いから、不本意な条件を受け入れてしまうケースも考えられます。

和解する前に、条件が適切かどうかを慎重に確認し、不利な内容で合意しないように注意しましょう。

強制執行が難しくなるケースがある

和解離婚で決めた養育費や慰謝料の支払いが滞った場合、強制執行が難しくなることがあります。

判決離婚であれば、裁判所の判決があるため、未払いが発生した際にすぐに差し押さえの手続きを進めることができます。

しかし、和解離婚では、和解調書に強制執行認諾条項が含まれていないと、支払いの強制執行ができない可能性が高くなります。

そのため、和解時には強制執行が可能な条項を盛り込むことが重要です。

強制執行については「養育費の強制執行とは|デメリットとお金がとれない場合の対処法」の記事もご覧ください。

裁判を続けた方がいい場合もある

和解離婚は、裁判の途中で和解して離婚を成立させる方法ですが、場合によっては裁判を続けた方が有利な結果を得られることがあります。

例えば、相手の不貞行為やDVが原因で離婚を求めている場合、裁判を続けて判決を得た方が、高額な慰謝料を請求できる可能性が高まります。

他にも、相手が和解条件として不利な提案をしている場合、安易に妥協せず、判決まで争った方が望ましい場合もあります。

和解するかどうかは、弁護士と相談しながら慎重に判断しましょう。

和解離婚に関するよくある質問

和解離婚の離婚日(離婚成立日)は?

和解離婚の離婚成立日は、裁判所で和解が成立した日です。これは、和解調書が作成された日を指し、通常の協議離婚のように離婚届を提出した日ではありません。

ただし、戸籍上の離婚日として記録されるのは、離婚届を提出し、役所に受理された日となります。

離婚裁判の和解案を拒否したら?

裁判官から和解案が提示されても、当事者のいずれかが納得できなければ拒否することができます。

和解案を拒否すると、裁判は継続され、最終的に判決が下されることになります。

和解案よりも有利な条件を得られる可能性もありますが、裁判が長引くことで精神的・経済的負担が増える点には注意しましょう。

まとめ

和解離婚とは、離婚裁判の途中で夫婦が話し合い、裁判所での和解手続きを経て成立する離婚の方法です。

協議離婚と違い、裁判所の関与があるため、離婚条件を柔軟に決めやすいメリットがあります。

しかし、一度和解が成立すると撤回ができず、条件によっては強制執行が難しくなるケースもあるため、慎重な判断が必要です。

裁判を続けたほうが有利な判決を得られる可能性もあります。

和解離婚の流れや離婚届の書き方、デメリットについて正しく理解し、適切な判断をするためにも、事前に弁護士に相談することが重要です。