配偶者に暴力をふるったり暴言を吐いたりするDVはよく知られていますが、多産DVという言葉はあまり聞き慣れないかもしれません。
この記事では、多産DVとは何か、多産DVが疑われるケースや多産DVがもたらすリスクについて解説します。
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目次
多産DVとは?
多産DVとは、夫が妻に望まない妊娠・出産を繰り返させ、子どもを出産する意思決定を奪い、心身に負担を与えることです。妻が望んでいないのに、頻繁に妊娠・出産を繰り返していれば、多産DVが疑われます。
子どもがたくさんいるのは、家庭円満の象徴のように思われているため、暴力や暴言を吐くDVに比べると発覚が難しい点があります。妻が自ら望んで妊娠・出産をしているのであれば問題ありませんが、そうでなければ多産DVに該当する可能性があります。
多産DVはなぜ起きるのか?
多産DVがなぜ起きるのか、理由は以下の2点が考えられます。
夫が妻を支配したい心理がある
夫が妻を支配したいという心理が、多産DVを引き起こすケースがあります。
妻にとって妊娠・出産は心身ともに負担が伴い、出産後も育児に時間や労力を要します。夫は、妻が子どもを産むことで育児に忙しくなり行動を制限されることを利用し、自分が支配できると考えることがあります。妻が常に妊娠していれば、浮気の心配ないと考える人もいるようです。
このような支配欲求が、多産DVの背景となることがあります。
妻が夫に対して恐怖心を持っている
妻が夫に対して恐怖心を持っている場合も、多産DVが起こり得ます。
日常的に夫から暴力を振るわれたり暴言を吐かれたりしている場合、夫の要求を断ることができず、たとえ気が進まなくても性交渉に応じてしまうことがあります。断れば夫にひどい目にあわされる、自分さえ我慢していれば家庭が平穏でいられるという心理状態に陥ると、夫の支配的な行動に無意識に従うようになってしまいます。
結果として、妻は自分の感情や身体的限界を押し殺し、夫の望むままに子どもを持つ選択を余儀なくされることがあります。
これって普通のこと?多産DVを疑う3つのポイント
「夫に求められたら応じるのは普通のことだ」「夫に悪い気がして拒めない」と感じることはありませんか?もし、そのような思いに負担や違和を感じているなら、それは多産DVの可能性を示唆しているかもしれません。
あなたが今抱えているかもしれない問題を冷静に振り返るためのポイントを紹介します。
産後間もなく性交渉を強制する
産後間もないのに夫から性交渉を強要されている場合は、多産DVの可能性があります。
出産後、女性の体が回復するまでには最短でも1~2か月程度かかるといわれています。そのため産後すぐに性交渉をするのは、女性にとってリスクが高いです。
それを理解せずに性交渉を夫が強制すれば多産DVを疑ったほうがよいでしょう。
夫が短期間に次々出産させる
夫が短期間に次々出産させ、出産のサイクルが早い場合も、多産DVが疑われることがあります。
女性は出産後、体が元の状態にもどるまで最短でも1~2か月程度の時間を要するといわれています。この期間は、十分に体を休めることが重要です。産後の定期健診を受け、経過が順調であることを確認できるまでは、性交渉を控えた方が望ましいとされています。
年子が続き出産サイクルが早いと、夫側がそうした事情を考慮しないで性交渉を強要しているのではないかと疑われます。
妻が希望するのに夫が避妊に協力しない
夫が避妊に協力しない場合、多産DVが疑われる場合があります。
多産DVをする夫は、妻が常に妊娠している状態を望むため、妻が避妊を求めても協力しないケースが見受けられます。
多産DVのリスクは?
多産DVがもたらすリスクは以下の3点です。
妻の心身への負担が大きくなる
多産DVは、妻の心身に大きな負担を与えるでしょう。
医療の発展により出産に伴うリスクは軽減されていますが、女性の体に大きな負担を与えます。出産後は育児による睡眠不足や精神的な負担が加わり、体調不良に悩む方も少なくありません。このような負担が短期間で繰り返されることで、健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
経済的に余裕がなくなる
経済的な余裕がなくなります。
子育てはお金がかかりますので、子どもの数が多くなれば当然出費が増えます。育児と仕事の両立が難しく、夫の収入に頼るしかない場合には、経済的な不安が一層増大します。お金の心配をしながら生活を送らなければならない上、子どもの将来の教育費や生活費の不安が積み重なることで、精神的にも負担がかかります。
離婚がしづらくなる
離婚がしづらくなります。
夫に不満があり、子どもが自立したら離婚しようと考えても、子どもが多ければ、そのタイミングが先延ばしになります。その間、子育てに追われる妻は社会に出て仕事のキャリアを積むことができないため、経済的な事情で離婚を断念せざるを得ないケースも生じます。
多産DVを避ける対処法は?
多産DVを避けるには、以下2つの対処法が考えられます。
夫と話し合う
夫と話し合い、出産をしたくない旨を伝えましょう。多産DVは夫が無意識のうちに行っているケースもあります。そのような場合は、夫がしていることが多産DVにあたると率直に伝えて気付きを促したほうがいいかもしれません。
夫にバレないように避妊する
夫にバレないように避妊をしましょう。女性側が避妊をするには以下の手段があります。
- ピルを飲む
- 不妊手術を受ける
- 子宮内避妊用具(IUD)や子宮内避妊システム(IUS)を装着する
- 緊急避妊薬を飲む
いずれの方法も女性の体に負担を与え副作用もあるため、専門医と相談しながらリスクについて十分に理解した上で行いましょう。
多産DVは誰に相談すればいいか?
多産DVに関して誰かに相談したい場合は、以下の3つを検討しましょう。
DV相談ナビ
どこに相談すればいいかわからない場合は、国が運営しているDV相談ナビに電話をしてみましょう。全国共通の電話番号(#8008)にかけると、居住地から近い配偶者暴力相談支援センターにつながります。配偶者暴力相談支援センターでは、配偶者からの暴力全般に関する相談を受け付け、さまざまなアドバイスが受けられます。
参考:配偶者暴力相談支援センター | 内閣府男女共同参画局 (gender.go.jp)
かかりつけの産婦人科医
自分の置かれている状況が多産DVにあたるかどうか判断できない場合は、かかりつけの産婦人科医に相談をしてみましょう。かかりつけの産婦人科医であれば、あなたの体の状態を把握していますし、主治医として、これ以上出産をすれば体に負担がかかる旨を夫に対して説明してくれるかもしれません。
医学的な知識で的確なアドバイスが得られる点が安心です。
多産DVで離婚を考えているなら弁護士に相談を
多産DVで離婚を考えているなら、弁護士に相談をしましょう。
夫と話し合いをしても解決しなかったり、専門家や専門医の力を借りても夫が聞く耳を持たなかったりすれば、離婚を選択肢にいれたほうがよいです。
多産DVが疑われるケースでは、離婚成立までの手続きがスムーズに進まない可能性があります。子どもが多い場合には、親権や養育費・面会交流の問題が絡むため、当事者同士で話し合いを進めることが困難な場合も多いです。少しでも不安があるなら、早い段階で離婚問題に強い弁護士に依頼をして、手続きを進めていきましょう。
子どもがいてもいなくても離婚後は厳しい生活を強いられるものです。多くの子どもを一人で育てるとなると、相当の覚悟が必要です。弁護士であれば、離婚後の生活を見据えた適切なアドバイスができます。
まとめ
多産DVは比較的最近できた言葉ですので、初めて聞いた人もいらっしゃると思います。単に子どもの人数だけで判断するのは適切ではありませんが、あなたが望まない妊娠・出産を繰り返しているのであれば、多産DVを疑って解決方法を探ったほうがいいかもしれません。
多産DVを行う夫との離婚を考えるのであれば、迷わずに弁護士に相談をしてください。ネクスパート法律事務所には、離婚案件全般に強い弁護士が在籍しています。お子様連れでも安心してご相談いただける環境を整えております。
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