離婚慰謝料は、夫婦間の話し合いで合意できれば請求ができますが、話し合いがうまくいかなければ裁判(訴訟)で請求できる場合があります。
この記事では、訴訟により離婚慰謝料を請求したいと考えた際の方法と、離婚慰謝料請求が認められるケースと認められにくいケースについて解説します。
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目次
離婚慰謝料を裁判で請求したい場合、どうすればよいか?
訴訟により離婚慰謝料を請求したい場合、次にあげる3つの方法があります。
それぞれ解説します。
離婚請求と併せて家庭裁判所に提起する
最初から離婚請求と併せて離婚慰謝料を請求する方法です。
家庭裁判所は、 慰謝料請求については管轄を有していませんが、離婚訴訟に係る請求の原因である事実によって発生した慰謝料請求については、人事訴訟と併合して審理できます。(人事訴訟法17条1項)。
そのため、離婚請求の訴訟を提起する際、離婚慰謝料の請求を一つの訴えとして家庭裁判所に提起できます。
離婚訴訟の流れについては、「離婚裁判(離婚訴訟)の流れと平均期間 」を参考にしてください。
離婚の裁判が係属している場合に別訴として家庭裁判所に提起する
離婚訴訟が係属している場合、別訴として家庭裁判所に提起する方法です。
すでに離婚訴訟が進んでいて、離婚慰謝料請求をしたい場合には別途訴訟を提起できます。
離婚訴訟に係る請求の原因である事実によって発生した慰謝料請求については、前項で説明したケースのほか、人事訴訟が係属する家庭裁判所にも提起できるからです(人事訴訟法17条2項)。
例えば、離婚訴訟を先行して提起し、その後に慰謝料請求訴訟を提起したり、反訴として慰謝料請求をしたりする場合などです。
この場合、家庭裁判所は、原則として2つの事件を併合して審理しなければなりませんが、審理の状況によっては分離することもあります。
離婚後に地方裁判所または簡易裁判所に裁判を提起する
離婚後に地方裁判所または簡易裁判所に訴訟を提起する方法です。
離婚慰謝料は、不法行為に基づく損害賠償請求なので、通常の民事事件として、地方裁判所(訴額が140万円以下の場合は簡易裁判所)が管轄となります。
もちろん、離婚前でも地方裁判所または簡易裁判所に慰謝料請求訴訟を提起できますし、離婚訴訟が係属している場合は、その家庭裁判所に移送して一緒に審理してもらえる場合もあります。
例えば離婚時は相手に慰謝料を請求するつもりがなかったけれど、離婚後に慰謝料をもらうべきだったと考え直した際などでも、訴訟が提起できます。
ただし、離婚成立から3年が経過してしまうと時効となり訴訟の提起ができなくなります。
離婚慰謝料が裁判で認められるケースは?
裁判所に離婚慰謝料の請求を認めてもらう前提として、相手に有責行為があることと、それを証明する証拠が求められます。
具体的に慰謝料の支払いが認められる可能性が高いケースを紹介します。
相手が不貞行為をした場合
相手が不貞行為をした場合、離婚慰謝料の請求が認められる可能性があります。
不貞行為とは、配偶者のある者が自由な意思に基づいて配偶者以外の者と肉体関係を持つことです。
不貞行為による離婚慰謝料の相場は、50万円から300万円ほどといわれています。金額の幅があるのは、不貞行為の期間や回数、婚姻期間の長さ、子どもの有無などで判断されるためです。
相手の不貞行為が原因で慰謝料請求をする場合は、証拠をできるだけ多く集めておきましょう。
相手が身体的・精神的・経済的DVをした場合
相手が身体的・精神的・経済的DVをした場合、離婚慰謝料の請求が認められる可能性があります。
相手が暴力をふるうといった行為はもちろんのこと、人格を否定するような発言をする、人前で暴言を吐く、適切な生活費を渡さないのもDVに該当します。
DVによる慰謝料の相場は、50万円から250万円ほどといわれています。DVの内容がひどかったり期間が長かったりすると、高額になるケースがあります。
身体的・精神的・経済的DVが原因で慰謝料請求をする場合も証拠が必要となるので、DVによって負った傷の写真や暴言を吐いている際の録音データなどを確保しましょう。
相手が正当な理由なく別居した場合
相手が正当な理由なく家を出て別居した場合、離婚慰謝料の請求が認められる可能性があります。
不倫相手と一緒に住むため勝手に家を出てしまったり、黙って実家に帰ってそのまま帰ってこなかったりするケースです。
夫婦は共同で協力し合って生活をしなければならないと民法で定められています。これができない場合は、悪意の遺棄とみなされる可能性があります。
慰謝料の相場は、数十万円から100万円前後といわれています。
生活費をもらっていないことを証明できる証拠などが必要になる場合があります。
離婚慰謝料が裁判(訴訟)で認められにくいケースは?
離婚慰謝料が裁判(訴訟)で認められにくいケースは以下の3つです。それぞれ解説します。
性格の不一致の場合
性格の不一致を原因に離婚をした場合、離婚慰謝料が認められる可能性が低いです。
慰謝料は離婚そのものや離婚原因たる個々の有責行為によって被った精神的損害に対して支払われる金銭なので、精神的苦痛を負う原因となった有責事由がなければいけません。
性格の不一致は、夫婦のどちらかに婚姻生活を破綻させた原因があったとは言い難く、離婚慰謝料が認められるのは難しいです。
相手の親族と不仲だった場合
相手の親族との不仲を原因に離婚した場合、離婚慰謝料は認められにくいです。
例えば、配偶者の両親に嫌がらせをされ、それが嫌だったために離婚したケースです。
ただし過去には、同居していた夫の両親からのいじめによって受けた精神的苦痛に対して慰謝料請求を認めた判例があります(盛岡地裁遠野支部昭和52年1月26日)。この事例では、単に配偶者の両親との関係が悪かったという理由だけでなく、人格を否定されたり雑巾を投げつけられるなどの暴力があったりしていじめの程度がひどかったこと、配偶者が両親のいじめを止めることをせず容認してことが、慰謝料請求を認める決め手となったようです。
健康上の問題があった場合
相手に健康上の問題があるというだけでは、離婚慰謝料が認められにくいです。
病気になってしまったことは、相手に責任があることではないからです。
健康上の問題のみで慰謝料請求するのは難しいですが、それによって暴力をふるうようになったり、不貞行為をしたりして婚姻生活を続けるのが困難となった場合は、慰謝料請求が可能なケースもあります。
離婚慰謝料を裁判で請求したいなら、弁護士に相談を!
訴訟による離婚慰謝料の請求を考えたら、弁護士に相談することをおすすめします。
訴訟で離婚慰謝料を認められるには、さまざまな条件が必要となります。訴訟を提起するための手続きが複雑なだけでなく、離婚慰謝料が認められるために有効な証拠をそろえたりするなど、一人で手続きを進め離婚慰謝料を勝ち取るのは難しい側面があります。
離婚案件を多数手がけている弁護士であれば、納得できる慰謝料を得るためのノウハウがありますので、ぜひ弁護士に相談をしましょう。
まとめ
離婚慰謝料を請求するのは、簡単なことではありません。特に訴訟を提起しようと考えている方は、相手との話し合いが上手く進まなかったため、訴訟を起こそうと決心された経緯があるのではないでしょうか。
裁判所に離婚慰謝料請求を認めてもらうためには、離婚に至った経緯や離婚の原因がどこにあったかなどの事情を正しく主張し、それを裏付ける証拠を提出するなど、手続きに時間と手間がかかります。
納得できる結果を得るためには、孤軍奮闘するのではなく早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談するのはハードルが高い、お金の心配があると躊躇される方がいらっしゃいますが、訴訟にかける手間が軽減でき、さらに納得できる結果が得られるのであれば、多少のお金をかける価値はあると思います。
ネクスパート法律事務所には、離婚案件を多数手がけている弁護士が在籍しています。離婚慰謝料を訴訟で請求したいと考えていらっしゃる方は、ぜひ一度ご相談ください。