妻に家計の管理を任せていたのに浪費していたことが分かった場合、離婚の理由として認められるのでしょうか?
この記事では、妻がお金を使いすぎるのを理由に離婚が認められるのかどうかについて解説します。
併せて妻の借金は夫に支払い義務があるのかどうか、またお金を使いすぎた妻に対して慰謝料請求は可能なのかについても解説しますので、ご参考になさってください。
ネクスパート法律事務所が
問題解決に向けて全力でサポートいたします
目次
妻がお金を使いすぎるのを理由に離婚はできるか?
妻に対してお金を使いすぎるのを理由に離婚したいと申し出て、妻が合意すれば離婚は成立します。
どのような理由であっても、夫婦が合意すれば離婚は成立するからです。
問題となるのは妻が離婚に応じない場合で、その場合は法定離婚事由が必要となります。
民法では以下の5つを法定離婚事由としています。
- 配偶者に不貞な行為があったとき
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき
- 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
妻がお金を使いすぎるのを理由に離婚をしたい場合は、妻の浪費癖が婚姻を継続し難い重大な事由に当たるかどうかがポイントとなります。
お金の使いすぎを理由として妻との離婚が認められた事例
過去には、お金の使いすぎを理由として妻との離婚が認められた裁判例があります。
以下で2つ紹介します。
夫が妻の度重なる浪費が原因で離婚を求めた事例
妻が夫に無断でクレジットカードの買い物やローンの借り入れをして浪費を繰り返し、返済できなくなり夫に支払いを求めたことについて、裁判所は、婚姻を継続し難い重大な事由にあたるとしています(東京地判平成12年9月26日)。
妻は、夫が生活費を渡さないなどの経済的虐待や酒に酔って暴力をふるうなどの素行の悪さが原因だったと反論しつつも、一度は返済できないほどの負債を抱えたにもかかわらず、夫のクレジットカードを利用して、生活費だけでなくいわゆるぜいたく品をデパートで購入し続けたことは適切さに欠けた行動だと裁判所は判断しました。
裁判所は、妻だけに責任を押し付けてはいないものの、妻の金銭感覚や浪費癖は婚姻を継続し難い重大な事由だとし、離婚を認めています。
夫の給料から無断で浪費していた妻との離婚を認めた事例
妻は夫に無断で不要な衣類や時計、貴金属類を割賦で購入し、支払いが終わらないうちにこれらのものを質に入れて現金を手に入れさらに浪費する生活を繰り返していました。
これを夫にとがめられ二度と浪費しないと誓ったにもかかわらず、同じように浪費を重ね、そのたびに夫に対して反省の態度を示すものの、生活態度は改善されませんでした。
挙句の果てには、夫から生活費をもらっているのに自宅の冷蔵庫やステレオを質入れするまでになり、裁判所は、これらの行為について、もはや婚姻を継続するのは難しいと判断しました(東京家審昭和41年4月26日)。
散財を繰り返す妻との離婚を認めた事例
元来派手好きな性格の妻が散財し、家電やスーツを質入れして生活を凌ごうとし、生活態度の改善を望む夫と何度も話し合ったものの、妻は贅沢な買い物をやめられませんでした。
こうした妻の態度から、婚姻を継続するのは難しいと裁判所は判断しました(東京地裁昭和39年10月7日)。
お金を使いすぎる妻と離婚をするためにすべきことは?
お金を使いすぎる妻と離婚するために、夫がすべきことは以下の2点となります。
お金を使いすぎている証拠を集める
妻がお金を使いすぎている証拠を集めましょう。
具体的には、以下のものが該当します。
- 妻が買い物をした際に受け取ったレシート
- クレジットカードの引き落とし明細書
- 借入金を証明する契約書
- 妻が購入したブランド品などの写真
妻に対して生活費やその他の金銭を渡している場合は、毎月いくら渡しているか、その都度メモにして残しておきましょう。そうすれば妻が、生活費が足りなかったから仕方なく借り入れしたという言い訳をした際に、有効な証拠となります。
夫の貯金を使い込んでいないか確認する
夫の貯金を妻が使い込んでいないか、確認をしましょう。
頻繁に通帳記入をするのはもちろんのこと、最近ではアプリで簡単に残高を調べられるので活用しましょう。
金融機関によっては、キャッシュカードから引き出しされた場合、指定のメールに通知がいく設定にできるので、こうしたシステムを積極的に利用しましょう。
妻に借金があった場合、夫に支払い義務はあるか?
妻がした借金について、夫が返済義務を負うことは原則ありません。
ただし、以下に該当する場合は、例外的に夫も返済義務を負います。
- 夫が、妻の借金の保証人・連帯保証人になっている
- 当該債務が日常家事債務にあたると判断された場合
日常家事債務とは、夫婦の共同生活(日常生活)に必要な範囲で負担する債務のことです。
日常家事債務と判断されうる費目として、家賃や水道光熱費、生活必需品の購入費、子どもの養育費などが挙げられますが、具体的に何が日常家事の範囲とされるかについては、その夫婦の社会的地位・職業・資産・収入や、夫婦が生活する地域の慣習等で異なるため、一概には言えません。
日常家事債務に該当すると、夫婦双方に連帯責任が生じます(民法761条)。
お金を使いすぎる妻と離婚する際に慰謝料請求ができるか?
妻の浪費や借金が原因で離婚に至った事例で、慰謝料が認められた判例があります。
パチンコに依存していた妻は、夫の財布からお金を抜き取ってパチンコを繰り返し、消費者金融で借金をしていました。夫は何度も妻に対して反省を求め、その都度妻はパチンコをやめると言うもの、やめることができませんでした。
裁判所は、そうした妻の態度が夫を精神的に追い詰めたとして、慰謝料100万円の支払いを命じました(東京地判平成22年5月19日)。
妻がお金を使いすぎて共有財産が減少した場合は財産分与で調整できるか?
浪費の規模が大きく、その支出に合理性がない場合は、財産分与で調整できることがあります。
妻の浪費が原因で共有財産が目減りしたことが明らかな場合には、これを主張・立証して妻への分与額や分与割合を減らせる(支出を持ち戻す)可能性があります。
なお、夫婦の一方の浪費によって支出された金額を持ち戻して財産分与を認めた判例は、極めて少ないです。
例えば妻が衣類や装飾品の購入に多額のお金を費やしていても、夫婦の経済レベル等によっては、浪費とは一概に言えないこともあるからです。
財産分与において浪費分の持ち戻しを求める場合には、家計を破綻させるほどの非常識な出費であることを主張立証する必要があり、とてもハードルの高いものと考えられています。
まとめ
家計を妻に任せている男性は少なくないと思います。しっかりと家計を管理してくれていると思っていたら、渡した給料で妻がギャンブルや買い物を繰り返していたとなると、ショックは隠せないでしょう。
それによって、貯蓄がゼロになり借金をしていたとなれば大問題です。浪費癖がある妻は、ギャンブル依存症、買い物依存症といった病気である可能性もありますので、まずは夫婦間でしっかりと話し合いをして、妻にしかるべき治療を受けさせなければいけないケースもあります。
それでも解決せずに離婚を考えているなら、専門家のアドバイスを受けながら進めていきましょう。妻の浪費癖が婚姻を継続し難い重大な事由に当たるかどうか、判断しなければならないからです。
ネクスパート法律事務所には、離婚全般に詳しい弁護士が在籍しています。
妻の浪費癖で離婚を考えている方は、一度ご相談ください。原則、初回相談は30分無料です。お気軽にお問合せください。