協議離婚をする際、離婚後に双方の言い分に食い違いが生じないよう、離婚協議書の作成をおすすめします。
この記事では、離婚協議書を自分で作成する際に記載すべき事項と注意点について解説します。
ネクスパート法律事務所が
問題解決に向けて全力でサポートいたします
目次
離婚協議書とは
離婚協議書とは、離婚に際し夫婦間で話し合って決めた条件を整理し確認する合意書です。
離婚協議書を作成する効果とメリット
離婚協議書を作成すると契約書と同様の法的効力を持ちます。夫婦双方が離婚協議書に署名をすれば、記載された条件を守る義務が生じます。
離婚協議書を作成するメリットは、離婚後に意見の食い違いが生じたときに証拠資料として提示できることです。協議離婚は書面を作成する義務はありませんが、お金や子どもに関する約束ごとは口頭のみでは心もとないです。
将来を左右する重要な案件ですので、離婚協議書を作成しましょう。
離婚協議書を作成する時期
離婚協議書を作成する時期について定めはありません。
通常は離婚届を提出する前に作成しますが、提出後に作成もできます。協議離婚後、ある程度生活が落ち着いてからお金や子どものことで新たな問題が生じる可能性がありますので、その際に双方が話し合って離婚協議書を作成するのがよいでしょう。
ただし、離婚後あまりにも時間が経っていると、離婚協議書内に定められない事項(財産分与や慰謝料請求は、法律で請求できる期限が定められています)が出てくる場合がありますので気を付けましょう。
離婚協議書を自分で作成する際に記載すべきことは?
離婚協議書には、大きく分けて次の4つの事項を記載します。
- 離婚に関する事項
- お金に関する事項
- 子どもに関する事項
- 紛争解決に関する事項
離婚に関する事項
夫婦双方で離婚に合意した旨を記載しましょう。具体的に何年何月何日までに誰がどこの役所に離婚届を提出する義務を負うかも記載します。
お金に関する事項
離婚後に慰謝料、財産分与、年金分割について双方の言い分に食い違いが起きないように離婚協議書に合意した事項の詳細を記載しましょう。
慰謝料
離婚について一方の配偶者に責任がある場合などには、慰謝料の支払いについて取り決めておくことがあります。
慰謝料について離婚協議書に定めるときは、次の項目を記載しましょう。
項目 | 備考 |
慰謝料の金額 | 慰謝料としていくら払うのかを明記します。 |
慰謝料を支払う理由・内訳等 | 離婚そのものに対する慰謝料なのか、離婚の原因となった有責行為(不倫やDV等)に対する慰謝料なのかを記載します。 |
支払日・支払方法 | 何年何月何日までに慰謝料を受け取る側の指定する口座に振り込むことを記載します。一括で支払うのであれば何年何月何日限りとし、分割で支払うのなら支払う期間を明記します。振込手数料はどちらが負担するのかも記載しましょう。 |
支払いを怠ったときの扱い | 慰謝料を約束どおり払わなかったときの扱いを記載します。
例えば、分割払いによる支払いを怠った場合は、期限の利益を喪失して一括支払いとする、利息や違約金が発生する、などと定めることがあります。 |
慰謝料を支払わないと合意した場合も、後日の紛争を予防するためにその旨を離婚協議書に記載したほうがよいです。
財産分与
財産分与とは、夫婦のどちらか一方が他方に対して財産の分与を請求できる制度です。主に婚姻期間中に夫婦で作り上げた財産を公平に分配するのを目的としています。
財産分与については、次の点を記載するのがポイントです。
- 誰から誰に対し、何を分与するのか
- その期限や支払い方法
預貯金であれば、どちらが何年何月何日までに支払いをするか、不動産であれば当該不動産の表示を明記し、誰が不動産を取得するのか、いつまでに所有権移転登記をするか記載します。
不動産の住宅ローンが残っている場合は、住宅ローンを返済する人、住宅を取得する人、売却するならオーバーローンになっていないかを夫婦間で話し合い、離婚協議書に記載します。
住宅ローン問題は千差万別なので、どう対処すべきか不安であれば弁護士に相談するのがよいでしょう。
年金分割
年金分割とは、婚姻期間中の厚生年金保険料の納付記録(年金額の計算の基礎となる標準報酬)を分割する制度です。
夫婦間で話し合いに入る前に、年金分割のための情報通知書を取得しましょう。情報通知書は全国どこの年金事務所でも取得できます。
年金分割について話し合い、按分割合について夫婦間で合意ができれば、その内容を離婚協議書に記載しましょう。離婚成立後、2人がそろって年金事務所で年金分割請求の手続きをしなければいけませんが、離婚協議書を公正証書として作成すれば、年金分割をしてもらう方が1人で年金事務所にて手続きを行えます。
年金分割の手続きは、離婚をした日の翌日から起算して2年を経過すると請求ができませんので注意しましょう。
なお、夫婦間で合意に至らなかった場合でも、一定の条件を満たす場合には、実施機関に対し年金分割を請求できる場合があります(3号分割制度)。
参考:離婚時の厚生年金の分割(3号分割制度)|日本年金機構 (nenkin.go.jp)
子どもに関する事項
未成年の子どもがいる場合、親権、養育費、面会交流について、離婚後トラブルになる可能性があります。
子どもに影響を与える事項ですので、双方で合意したことは、もれなく離婚協議書に記載しましょう。
親権
婚姻中は父母による共同親権ですが、離婚をすると単独親権となるため、離婚の際にどちらが親権者となるか決めなければいけません。
親権者が監護権者を兼ねる場合が多いですが、親権者と監護権者を分けるケースもあります。
父母のどちらが親権者となるか合意した場合は、離婚協議書に未成年の子どもの名前と生年月日、親権者・監護権者となる者を記載します。
養育費
養育費は、未成年の子どもが経済的・社会的に自立するまで、監護や教育のために必要な費用です。
具体的には衣食住に必要な経費、教育費、医療費が該当します。離婚で親権者でなくなっても親は養育費の支払い義務があります。
夫婦間での話し合いがまとまったら、次に挙げる事項を離婚協議書に記載しましょう。
- 養育費の金額
- 支払期間
- 支払日・支払方法
- 振込先の口座
支払期間は年齢(例:「満〇〇歳に達する月まで」など)で指定してもよいですが、大学へ進学した場合は卒業するまでと条件を付したり、予期せぬ病気に備えて不測の事態には別途協議するといった事項を盛り込んだりするとよいでしょう。
面会交流
面会交流とは、離婚で子どもと離れている親が定期的に会ったり電話で話したりして交流することです。面会交流は、基本的には子どもが精神的に健やかに成長するために有益と考えられているので、特別な事情がない限りは子どもの権利として捉えておかなければなりません。
どのぐらいの頻度で面会交流するか、夫婦間で話し合って合意した内容を離婚協議書に記載します。
子どもを面会交流させるのに不安がある場合、抽象的な内容ではなく、例えば毎月第一土曜日の10時から17時までとする、親権者が同伴するといった具体的な内容を記載するとよいでしょう。
宿泊を伴う面会交流を行う場合には、その旨も離婚協議書に記載しましょう。
紛争解決に関する事項
離婚後、お互いにトラブルを蒸し返すことがないように、離婚協議書には清算条項を記載する場合も多いです。
清算条項とは、離婚協議書に定めたもののほかには当事者間に何らの債権も債務もないことをお互いに確認し、当事者間の権利関係を清算する条項です。
清算条項を入れた離婚協議書にサインをする場合は、本当に財産分与、慰謝料、養育費といった内容に納得しているかどうか、よく考えましょう。離婚協議書に清算条項を入れると、のちに財産分与や養育費に納得ができないから改めて請求したいと思っても難しくなる可能性があります。
離婚に関して離婚協議書で定めたもののほかに、後日相手方に請求する可能性があるときなどには、清算条項を設けない方がよい場合があります。
離婚協議書を自分で作成する際に注意すべきことは?
離婚協議書を自分で作成する際には、次の点に注意しましょう。
抽象的な内容で定めてはいけない
抽象的な内容を離婚協議書に記載するのはやめましょう。
どのようにでも取れる文面だと離婚協議書自体が無効になる可能性があります。そして抽象的な内容で作成すると、離婚後に文面の解釈の相違で、トラブルに発展する可能性があります。
子どもの福祉に反する条項を定めてはいけない
離婚協議書に、養育費請求の拒否や面会交流を請求する権利の放棄といった子どもの福祉に反する条項を定めてはいけません。
離婚後のお互いの生活を制限する条項を定めてはいけない
離婚後、相手に再婚を禁止したり、特段の事情がないのに住む場所を強制したりするなど、お互いの生活を制限する条項を定めてはいけません。
離婚協議書のテンプレートを紹介
ここでは、離婚協議書のテンプレートを紹介します。あくまでも一例ですが、参考にしてください。
離婚協議書
〇〇〇〇(以下甲という)と△△△△(以下乙という)は、甲乙間の婚姻の解消に関する件について、以下のとおり合意する。 第1条(離婚の合意) 甲と乙は、本日、協議離婚すること及び乙が〇年〇月〇日までにその届出を行うことを合意する。 第2条(親権) 甲と乙は、甲乙間の長女□□(□年□月□日生)、長男□□(□年□月□日生)の親権者・監護者を乙と定めて、乙において監護養育する。 第3条(養育費) 1 甲は乙に対し、前記子らの養育費として、各号に定める期間、当該各号に定める額の金員を、当該各号に定める日限り、乙が指定する口座(●●銀行●●支店口座番号●●●●)(以下乙が指定する口座への振り込みにつき同様とする。)に振込んで支払う。振込手数料は甲の負担とする。 (1)長女□□の養育費 〇年〇月から〇年〇月までの期間 毎月末日限り 各金〇円 (2)長男□□の養育費 〇年〇月から〇年〇月までの期間 毎月末日限り 各金〇円 2 前項各号に定める養育費支払いの終期たる月について、長女□□、長男□□のうち、当該各号に定める養育費支払の終期たる月においても大学またはこれに準ずる高等教育機関(以下「大学等」という。)に在学中の者がいる場合、当該者について、養育費の支払いは大学等を卒業する月まで行うものとする。 3 当事者双方は、子の病気、進学等の特別の費用の負担について別途協議するものとする。 第4条(面会交流) 1 乙は、甲が長女□□及び長男□□とそれぞれ月1回、面会交流することを認める。 2 面会交流の具体的な日時、場所及び方法については、長女□□及び長男□□の利益及び福祉を最優先として甲及び乙が協議して定める。 第5条(財産分与) 1 甲は乙に対し、本件離婚に伴う財産分与として金〇〇万円を〇年〇月〇日までに乙が指定する口座へ振り込み送金する。振込手数料は甲の負担とする。 第6条(年金分割) 甲は乙に対し、甲乙の婚姻期間中における双方の年金分割の割合を0.5とすることに合意し、その年金分割に必要な手続に協力することを約束する。 第7条(清算条項) 甲及び乙は、以上をもってすべて解決したものとし、今後、財産分与、慰謝料等名目の如何を問わず、互いに何らの債権債務が存在しないことを相互に確認する。 以上の合意成立を証するため、本書2通を作成し、甲乙が署名捺印の上、各自1通を保有する。 〇〇〇〇年〇月〇日 (甲)住所 氏名 印
(乙)住所 氏名 印
|
離婚協議書の作成に悩んだら弁護士に相談を
離婚協議書は、自分でも作成できますが、間違った記載をするとせっかく作成した離婚協議書が無効になる可能性があります。
どのように記載すべきか悩んだら、弁護士に相談をしましょう。
特に住宅ローンの支払いが残っていたり、夫婦共同で住宅ローンを組んでいたりする場合は、詳細に取り決めをした上で公正証書として離婚協議書を作成したほうがよいです。
まとめ
結婚生活が長ければ長いほど、離婚時に取り決めなければいけない事項が増えます。後のちトラブルに発展しないために、そして後悔しないためにも面倒がらずきちんと離婚協議書を作成しましょう。
離婚時、双方で取り決めるべき事項は人それぞれです。今回ご紹介した書式例は、あくまでも一例ですので、ご自身に合った離婚協議書を作成しましょう。
ネクスパート法律事務所では、離婚案件を多数手がけてきた弁護士が在籍しています。離婚協議書を作成したいけれど、配偶者と顔を合わせたくない、直接話し合いをしたくない方は、ぜひご相談ください。
初回の相談は無料で承りますので一度ご連絡ください。