夫婦関係の破綻している状態とは?6つのチェックポイントを解説
長年連れ添った夫婦関係が冷え切り、会話もなく他人のように同じ屋根の下で暮らしている…。このような状況は、精神的な苦痛となります。
夫婦双方が離婚に合意していれば、理由を問わず離婚は成立しますが、離婚裁判になった場合は法定離婚事由に該当し、夫婦関係が破綻しているかどうか、認められなければいけません。
この記事では、夫婦関係の破綻はどのような状態か、夫婦関係の破綻と判断されるための6つのチェックポイントについて解説します。

夫婦関係の破綻とは?

夫婦関係が破綻している状態とは、夫婦が婚姻を継続する意思がなく、修復不可能に関係が悪化している状態をいいます。これは当事者間に夫婦関係修復の意思がないことだけでなく、客観的な視点で夫婦関係の修復は難しいと認められなければなりません。つまり外部から見ても夫婦生活を続けられる見込みが全くなく、関係の修復が難しい状態と判断されなければなりません。

夫婦関係の破綻と判断されるための6つのチェックポイント

夫婦関係が破綻している状態と判断される可能性が高い6つのポイントについて解説します。

長期間の別居状態が続いていること

長期間の別居状態が続いていれば、夫婦関係が破綻している状態と判断される傾向があります。期間の目安は事案によって異なりますが、一般的には3年から5年程度別居状態が続いていると、破綻していると認められやすいです。

夫婦としての生活が完全に断絶していること

夫婦としての生活が完全に断絶していれば、夫婦関係が破綻している状態と判断される傾向があります。生活費のやり取り、精神的な交流、性的な関係などが一切停止している状態です。いわゆる家庭内別居と呼ばれる状態で、一切の連絡や生活の断絶は、夫婦関係の破綻を裏付ける証拠となります。
具体的には、以下の状況が該当します。

  • 数年以上の長期間にわたって家庭内別居状態が継続していること
  • 一切口も聞かず顔も合わさない徹底した絶縁状態であること

家庭内別居状態であっても、同じ寝室で寝ていた、あるいは夫婦のどちらか一方が家計管理をまとめて行っていた場合は、わずかでも協力義務が残っているとして、夫婦関係の破綻が否定される可能性があります。家庭内別居の立証を目指す場合、共同生活の要素が完全に失われていることを示す具体的な証拠の収集が不可欠です。

夫婦の一方がDVやモラハラをしていること

夫婦どちらかがDVやモラハラをしていれば、夫婦関係が破綻している状態と判断される傾向があります。暴力や暴言、精神的な虐待が常態化していれば、夫婦共同生活の土台が壊れている状態です。
DVやモラハラを理由として破綻を立証する場合、その開始時期、回数、内容、継続性、および被害者が負った精神的・身体的苦痛の度合いで総合的に判断されます。相手が暴力や暴言を否定するケースが多いため、立証のために客観的な証拠(診断書、音声、動画、詳細な日記)の収集が必須です。

家庭を放置し夫婦の義務を果たしていないこと

夫婦どちらかに家庭を放置し夫婦の義務を果たしていない行為が見られる場合、夫婦関係が破綻している状態と判断される傾向があります。民法で定められている夫婦が負うべき同居・協力・扶助義務を著しく怠っているケースです。具体的には、以下の状況が考えられます。

  • 不就労や過度なギャンブルや浪費で扶助義務を果たせない状態
  • 家事や育児を完全に放棄し、協力義務を著しく怠る行為

離婚に向けた協議や調停が進んでいること

離婚に向けた協議や調停が進んでいる場合、夫婦関係が破綻している状態と判断される傾向があります。すでに離婚調停や訴訟を申し立てていたり、弁護士を通じて離婚の申し入れをしていたりする事実は、婚姻継続の意思がないことを示す証拠です。

その他の重大な理由があること

夫婦どちらかにその他の重大な理由があれば、夫婦関係が破綻している状態と判断される傾向があります。具体的には以下の状況が考えられます。

  • 夫婦のどちらかが犯罪により服役し共同生活の維持が困難と判断された場合
  • 性の問題(セックスレス、性的不能、性的異常)がある場合

夫婦関係破綻後の不貞行為は問題ない?

夫婦関係が破綻していたとしても、離婚が成立する前に他の異性と交際するのは避けましょう。
不貞行為をした人が慰謝料を請求された際、夫婦関係は破綻していたと主張して自分の行為を正当化するようなケースがみられます。夫婦関係の破綻を主張しても、客観的にみれば破綻したとはいえず、不貞行為をしたことに対する慰謝料請求が認められる可能性があります。
ここでは、別居中の夫が女性と不貞行為をしたことで妻が不法行為に基づき、損害金330万円の支払を求めた裁判を例に挙げます。夫婦は別居していましたが、夫が不貞行為の約3か月前に5日間,約1か月前には3日間、妻の自宅を訪問していたことが認められました。これにより裁判所は、婚姻関係が修復不可能な程度に破綻していたとまではいえないと判断し、夫に対して慰謝料の支払いを求めました(東京地裁令和3年6月24日判決)。

まとめ

夫婦関係の破綻に明確な基準は存在せず、個別具体的な事情を考慮して判断されます。別居期間の長さ、離婚原因の有責性、子どもの状況、婚姻期間など、多数の要素を総合的に考慮しなければ、客観的な夫婦関係の破綻の有無を断定できません。
当事者同士は関係を修復するつもりはなく、離婚したいと思っているほど仲が悪くても、ほかの人から見たら普通の夫婦に見えることもあります。夫婦関係が破綻していると認められれば、たとえ一方の配偶者が離婚を拒否しても調停や裁判で離婚が成立する可能性があります。自分たち夫婦の関係が破綻しているのでは?とお悩みの方は、ぜひ離婚問題に詳しい弁護士にご相談ください。
ネクスパート法律事務所には、離婚案件を多数手掛けた経験のある弁護士が在籍しています。初回相談は30分無料ですので、離婚問題でお悩みの方は一度ご相談ください。